2006年 06月 17日
バード Bird
1988 アメリカ ワーナーブラザーズ 161分
監督・製作:クリント・イーストウッド 音楽:レニー・ニーハウス
出演:フォレスト・ウィッテカー、ダイアン・ヴェノーラほか。
1988年度アカデミー賞録音賞、カンヌ国際映画祭男優賞、ゴールデン・
グローブ監督賞、NY批評家協会賞助演女優賞 受賞作品
ジャズ大好きで、息子もジャズ・プレイヤーのイーストウッドが、伝説の
ジャズプレイヤー、チャーリー・パーカーの半生を描いたセミドキュメント。
ジャズ好きの私としてはとっくに観て置くべき映画だったんですが、
なんの因果か今日まで、観る事なしに来てしまいました。
バードのあだ名で知られるパーカーについては、すでに色んなところで
語られているので、断片的には知っているかたも多いと思うのですが、
何が凄いって、それまでのスイングジャズをコード進行に従ってアドリブを
加える、ビ・バップという奏法を確立したことで、彼はそれまでのジャズの
概念を全く変えてしまったのですからね!
一緒に演奏してきた、ディジー・ガレスピーやチャーリー・クリスチャンなどの
果たした役割も大きいのは勿論ですが、現在活躍しているどのサックス
プレイヤーもバードの影響を受けていない人は居ないと断言できるほど
その影響力は強かったのです。
物語は事実なので、そこから先にどうなるのか、エンディングでバードが
どうなるのかは判ってはいるのですが、観てしまいますね。長いんですが。
フォレスト・ウィッティカーは、バードに似てないのですが、演奏の時の
クセや、彼の本当の演奏の運指をコピーする仕方なんかは頑張っています。
なぜ、アカデミーで録音賞を獲ったか、といえば、この映画で流れてくる
バードの演奏はどれも本人の演奏で、どうやったかというと、当時の演奏
から彼のサックスだけ抜き出して、現代のプレイヤーの音と演奏させた
特殊技術が買われたのでしょう。
映画自体は、暗いです。バードの人生を暗示しているかのように画面が
暗い。皮肉(演出?)なことに、死に近づくにつれて、明るいシーンが増えて
来ます。
バードは、一生麻薬と酒を絶つことが出来ず、それが元で命を失うことに
なるのですが、あまりにも短いその34年の生涯は、一瞬の光芒の眩しさ
に比例しているかのようです。
映画は愛妻チャンとの夫婦の愛情を縦軸に進んでいくのですが、チャンが
このジャンキーをよく最後まで面度見たな、と感心します。
最後は、ジャズの擁護者として知られたニカ男爵夫人の部屋で、テレビの
お笑い番組を見ているうちに心臓発作を起こすのですが、
検視に来た医者の「推定65歳」との電話報告に、ニカ夫人がすかさず
「34歳よ」と訂正しますが、それほどボロボロだったのですね。
レコードには、麻薬でヘロヘロになって演奏したものも残っていますが、
バードに限って言えば、確かに名演ではないけど、何か感じてしまいます。
映画の中でガレスピーが、「おれはジャズの改革者だが、お前はジャズの
殉教者だ」いうセリフが印象的でした。確かにバードはジャズに殉教したと
いえるのでしょう。
大きな山のない、淡々とした長い映画なので、ジャズに興味がないかたは
そう面白く感じないかもしれません。ただ、ジャズがお好きなかたは
一度見ておくべきかも知れませんね。
尚、この映画の詳しい情報は
こちらまで。
クリント・イーストウッドのイメージ、それはやはりタフなアクションスターとしてのものが一般的ではないでしょうか。私も彼が主演した『ダーティ・ハリー』シリーズや『ガントレット』、『荒野の用心棒』などのアクション作品が大好きです。しかし彼の監督作は以外と風変わりなものが多かったりします。そこがまた彼の魅力ではないでしょうか。中でも特に好きなのが『荒野のストレンジャー』です。ストーリーはありがちな西部劇なのですが、心理ホラー的な要素、そして人間のダークサイドを深くえぐるかのようなサスペンス的で謎めいた演出が作...... more