チルソクの夏

●「チルソクの夏」
2003 日本 ブレノンアッシュ 「チルソクの夏製作委員会」 114分
監督:佐々部清
出演:水谷妃里、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代、淳評、山本譲二、高樹澪

監督は「半落ち」の佐々部清。彼自身、映画の舞台になった下関市出身
なので、映画の中の町の描き方は、実に丁寧で、良い味付けになっている。

映画はセピアカラーで始まる。2003年の下関。10年振りで開催された
下関~釜山の姉妹都市の高校生選抜で争そわれる陸上大会に、
スターターを務め、かつ大会を仕切る一人の中年に差し掛かった女性体育
教師の姿があった。スターター用のピストルを上げる手にはブレスレットが
光っていた。

1977年の釜山。この年に釜山で開かれた大会に下関の代表の一員として、
長府高校の女子仲良し陸上選手4人組も参加していた。この大会で、
韓国の走り高跳びチームに居た安大豪選手に4人とも強く惹かれた。
安選手も、4人の中で同じ走り高跳びの選手、遠藤郁子に一目惚れ。
安選手は戒厳令下で夜間外出禁止にも関わらず、郁子らの宿舎に
忍び込んでくる。
そして、郁子に出て来いというのだった。友達の助けを借りて二人は
話すことができた。安の父は外交官で、幼い頃2年間日本に居たことが
あるため、安は少し日本語が出来る。安は郁子の住所を聞き出し、郁子は
来年の大会にも是非出場して、今度は下関で逢おうと約束する。
1年に1度しか会えない七夕の日の彦星と織姫に二人をなぞらえて・・・
(チルソクとは韓国語で七夕のこと)

下関と釜山で文通が始まったが、郁子の父は朝鮮人と付き合うことは
許さん、と酷くしかる。また周囲の目も郁子に差別的だ。一方、安の母も
自分の伯父が日本兵に殺されていることから日本人が嫌いで、息子が
日本人と付き合うことを許さない。今はソウル大学に入ることだけを考えて
いなさい、と諭すのだった。
挙句の果てには、郁子に自ら手紙を書いて、文通を止めるように言ってきた。
貧乏な郁子の家だが、陸上の成績がよければ体育奨学生として
体育大学へ進学の道があるのだが、安との間もままならず、しかもお金も
ない、ということで郁子はなかば自棄的に就職し、陸上もやめようとする。
しかし、4人組の友だちに諭され、考えを改め、来年の選抜大会にでよう、
と再び決意するのだった。
そして1978年の下関大会。釜山からやってきたフェリーの船上に安の
姿があった。彼も、約束を守りたかったのだ。
そして、4人組の力で二人は市内の公園で会うことが出来た。そして二人の
愛を確認したのだった。安は来年は大学に入り、20歳になったら兵役に
着くので、今度逢えるのは4年後だ、といって再会を硬く約束して、
帰って行った。

翌朝、昨夜の宿舎抜け出しを叱られていて安の帰るフェリーを見送ることが
出来なかった郁子だが、一人の女子高生が郁子に、安からの贈り物を
預かっていた。中には金に輝くブレスレットが入っていた。

そしてシーンは再びセピアになり、2003年の下関大会。中年になった
郁子は回顧する。
安君との約束は遂に守られることは無く、私は東京の体育大学に行き、
新しい恋愛もし、結婚も離婚も経験しました。きっと安君もたくさんの
恋愛をしたことでしょう・・・と。
無事に大会を終え、大会関係者が挨拶で「バブルがはじけてから
中止されていたこの大会を開くことが出来たのはある方の多大な援助が
あったからです」と明かす。

相変わらず中の良い4人組、すでに中年になっていた。そのとき恩師が
「そういえば韓国の関係者から郁子にメモをあずかっている」と紙を渡す。
そこにはハングルで「5番ゲートでまっている」と書いてあった・・・。

観た後が爽やかな青春映画。「パッチギ!」の「イムジン河」対こちらの
「なごり雪」という構図も良く似ているが、主人公の日韓関係が逆な分、
少し此方の方が柔らかい感じがする。
「パッチギ!」は日韓の関係の描き方がもう少し、政治的臭いがする。
安君が「僕は外交官になって、南北を統一することに役にたちたい。
僕たちの世代で憎しみあうなんておかしいよ!」といいうと、郁子は
「安君てそんなことを考えているのね。私たちなんか、テレビのタレントが
どうした、とかそんな下らないことしか話さないのに」。すると安君、
「それは日本が平和な証拠だよ。羨ましいよ。韓国人もそうなりたい」と返す。
まあ、高校生なりの青いセリフであり、本質のところはもっとおどろおどろしく
硬いのだろうけど、青年の考えとしてはまことに正論だ。
さすが文化庁推薦の映画だけのことはある。
そんなに骨太ではないけど、青春の眩しさ、そしてちょっとした問題意識を
提起するには良い映画でしょう。
私自身、1977年といえば、既に就職もしていたので、主人公たちよりは
早い世代ですが、同じ時代を生きてきた人間として時代感は実に良く
伝わってきました。e-mailもケイタイも無い時代からこそ描けた世界、
それは「三丁目の夕陽」にも通じる思想ですね。
4人組の女子高生が良かったですね。上野樹里はその後ブレイクして
いきますが、郁子を演じた水谷妃里さんは最近見ませんが、どうして
いるのでしょうか?
尚、この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2006-07-03 22:55 | 邦画・新作 | Comments(0)