ファイブ・イージー・ピーセス Five Easy Pieces

●「ファイブ・イージー・ピーセス Five Easy Pieces」
1970年 アメリカ コロムビア映画 98分
監督・製作・脚本:ボブ・ラフェルソン
出演:ジャック・ニコルソン、カレン・ブラック、ビリー・グリーン・ブッシュ他

<1970年度ゴールデングローブ賞助演女優賞=カレン・ブラック>
他、受賞作品
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"イージー・ライダー"などと並ぶアメリカン・ニューシネマの傑作、と
言われていて今まで観る機会が無かった。日本で封切られた当時、
(71年)、私は東京で大学生活を始めたのだった。
今から35年前の時代の雰囲気を理解できないと、この映画の良さは
なかなか判らないのでは?
ベトナム戦争泥沼で、大国アメリカは病んでいた。青年たちも悩んで
いた。そんなバックグラウンドをもって見ると、この映画の主人公が
アメリカそのもののように思えてくる。
ジャック・ニコルソン、若い!(当然)でも、既にハゲ始めてる!
カレン・ブラック、いい味出してます。

裕福な音楽家一家に育ち、ピアノも上手いボビーは、カリフォルニア州
南部の油田で働き、ノータリンの女レイと自堕落な暮らしをしている。
なんか、やる気ないもんね、という人生の目標を失い、でも探そうと
するでもないボビー。
そんな中、レイが妊娠する。本来は知的なボビーとノータリンのレイは
本来かみ合わない(ボーリングのシーンは象徴的)し、会話だって
まともにはならない。でも、どうでもいいのだった。
父親が倒れ、重篤だという知らせを姉から受けて
ボビーはレイから逃げるようにワシントン州の実家に3年ぶりに戻る
ことにするが、結局レイも付いてくることに。このあたりも優柔不断。
実家に帰っても、自分の居場所はない。父親はすでに口が利けず、
泣きながら許しを請うても、反応はない。人生のポイントすらずれて
いる。そんな家族の中で、全く雰囲気を読めずアホな会話をする
レイ。「おれがいると周りが悪くなるから家をでた」とボビーは自分を
分析してみせる。
実家にもいたたまれず、カリフォルニアに帰るボビーとレイだったが、
途中で寄ったガソリンスタンドで、ボビーは木材運搬の大型トレーラーに
乗せて貰い、レイとクルマを放置し、その場から逃げていく。
そうだ、ボビーはいつも逃げているのだ。乗せて貰ったトレーラーの
巨大な材木が、ボビーのその後の人生の大きな重りのようだった。
何一つ解決していないボビー、で、どうするんだよ!えっ!

アメリカの苦悩をその体で一心不乱に演ずるニコルソン。
ボビーを苛立たせるノータリン女を言葉遣いや表情も含め極めて
優れた演技で演じてみせる、カレン・ブラック。観ている方がイライラ
してくるし、「おまえ、アホか」と突っ込みを入れたくなる演技は
素晴らしい。安っぽい化粧もいい。

何も努力しない、現状から逃げ回る、何も解決しない。当時のアメリカ
の苦悩そのものだ。
映画に意味や意義を見出したい人には実にいい映画だろうが、判り易い
エンターテインメント性を専ら楽しみたい人には理屈っぽくて、だめだろう
な。いずれにせよ、アメリカの70年代の傑作映画ではある。
この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2006-11-24 22:00 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)