2006年 12月 09日
息子と恋人 Sons And Lovers
1960 アメリカ 20世紀フォックス 105分
監督:ジャック・カーディフ 原作:D・H ロレンス 助監督:ピーター・イェーツ
出演:トレヴァー・ハワード、ディーン・ストックウェル、ウェンディ・ヒラー他
<1960年度アカデミー賞撮影賞(モノクロ)、NY批評家協会賞・作品賞
ゴールデン・グローブ賞 監督賞 受賞作品>
イギリスの炭鉱町で繰り広げられる、親子、恋人の愛憎を描いた
D・H ロレンスの著名なドラマ「息子たちと恋人」の映画化。
あえてモノクロで撮影、余計な情報をカットして、ストーリーに入りこめる。
それも炭鉱町であるから余計に。
ウォルター・モレルは学は無くて、妻にいつも辛く当たっている炭鉱夫。
3人の息子がいるが、長兄はロンドンへ。次兄は父と同じ炭鉱夫。
そして末息子のポールは絵描きになりたい、と願っている。
そして幼馴染のミリアムという恋人がいる。時代は1900年代の
初め頃である。
ポールの母、ガートルードは、ミリアムはポールをだまそうとしていると
信じて疑わず、交際を認めていない。息子を取られるという嫉妬に過ぎない。
ミリアムの母も頑固な純潔主義者でポールとの間を許さない。
ポールは若さゆえ、ミリアムの全てが欲しいのだが、ミリアムはどうしても
長年の純潔教育が身に染み付いていて、体を許すことができない。
あるひ、炭鉱で落盤があり、次兄のアーサーが死んでしまう。
そして、ウイリアムは、町の展覧会に自分の作品を出品、それは
石炭のすすにまみれた父の顔を写実的に描いたものだった。
この絵に感動した金持ちのハドロック氏がポールの家を訪れ、ロンドンに
来て絵の勉強をしなさいと薦める。もちろんお金は出すという。
しかし、ポールはミリアムや母のそばを離れることが出来ずチャンスを
捨ててしまう。
そして、町の小さな繊維関係の会社に就職する。そこで、ポールは
クララという人妻に出会い、その妖艶な姿に一目惚れしてしまう。
クララには夫がいて、別居中なのだ。
密かなデートを繰り返す二人だが、クララは夫を忘れることができず、
やがて二人は別れる。
ポールはミリアムの元に戻るのだが、ポールは一番愛しているのは母親だ、
と言って、ポールは最愛の人、結婚するしかない、と説得するが、ポールは
ミリアムの元を去る。
そんな中、母親のガートルードは心臓発作を起こし、帰らぬ人となる。
あんなにケンカして中が悪かった夫だが、悲嘆にくれる。
ポールはロンドンに出る覚悟を決め、ミリアムもロンドンで教師になる勉強を
することになる・・・。
さまざまな愛の形が提示される。いつもケンカばかりしていて、時に暴力さえ
振るうポールの父と母。彼らは実は底で深い愛情で結ばれていた。
しかし、最愛のポールをミリアムに取られたくない、と嫉妬する「女」でもあった。
ポールと一時愛人関係になるクララも、出来の悪い夫の元に帰っていくこと
になるのだが、彼らも抜き差しならぬ愛情で結ばれているのだ。
そしてポールとミリアム。あんなに愛し合っていて、初めのうちは体を
許さなかったミリアムだが、次第にポールの考えに沿うようになる。しかし、
どこかお互いに相容れない部分を感じている。これが母と父の愛情と実に
対照的だ。
このほかにも長兄とワリと軽い女の愛情なども描かれていて、「愛」とは?
ということを様々な側面がから考えさせられる。
原作がしっかりしているから、暗い映画だったが、大変興味深く観ることが
できた。1960年の製作ということを考えると、当時のアメリカの愛情観の
迷いみたいなものを感じ取ることができるのでは?
殆ど知らない俳優さんばっかりだったのが、変な感情移入が無く観れたのも
良かったかな。
尚この映画の詳しい情報は
こちらまで。