未知への飛行 Fale-Safe

●「未知への飛行 Fale-Safe」
1964 アメリカ・コロムビア映画 101分
監督:シドニー・ルメット
出演:ヘンリー・フォンダ、ウォルター・マッソー、ダン・オハーリヒー他
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作られた時代、1964年という年をまず考えなくてはなるまい。
前々年62年の10月に世界を核戦争の恐怖の瀬戸際に追い込んだ
キューバ危機があり、ケネディとフルシチョフの戦争回避に向けた
必死の攻防という事実があった。

この映画は、その事件が無くては出来なかっただろう。
ストーリーはアメリカの3箇所で3人の登場人物の同じ時間の早朝から
始まる。テンポ良くシーンを展開し、ぐいぐいと観ているものを引き込む。
あえてモノクロの映画とし、陰影を巧みに使い、恐怖を加速させる。
映画のほとんどは、フォンダ演じる合衆国大統領とソ連共産党議長との
会話を中心にした密室会話劇。戦闘指令室や攻撃機の機内が
写るだけで、映像の広がりは無いが、そんなことは微塵も感じない。

物語は単純で、アメリカの支援爆撃機が誤った情報でソ連に報復の
攻撃に出撃してしまう。
大統領はホットラインでソ連の議長と「こちらの誤りだ。当方の攻撃機は
撃墜してくれ。さもないと、モスクワは水爆で壊滅する。こちらの情報は
あらゆる手段でそちらに提供する。」と伝える。
ソ連の議長もアメリカのミスを認めたものの、編隊の1機が、モスクワ
上空に進入、狂信的な機長は司令部や彼の妻の説得も振り切り、
核弾頭の付いたミサイルのボタンを押す。

大統領は、もしモスクワが壊滅したときは、アメリカの誠意を見せるため
ニューヨークにも自ら核弾頭を落とし、全面的な核戦争にによる人類への
大打撃を防ぐとソ連に悲壮な約束していた。
そして、モスクワが水爆で灰燼に帰したと判ると、NYに核弾頭を落とす
命令を自軍に下すのだった・・・。

エレクトロニクスの世界で1歩間違うと、人間がコントロールできない
戦争が始まってしまう恐怖を描いていて、ひしひしと人間の愚かさが
伝わってくる。ルメットの手法にやられた。
それとフォンダの演技。会話だけだけど、モノクロフィルムの中での
圧倒的な存在感は、アメリカを代表する男優だと思い知らされる。
ラストの映像表現は、今だと陳腐かもしれないが、当時は素晴らしく
新鮮だったのだろう。いや、今でも少しも古びていない。

ウオルター・マッソー、ダン・オハーリヒイー、ラリー・ハグマン、
エド・ビンズなど、脇を固める助演陣も素晴らしい。
尚、この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2006-12-30 01:15 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)