2006年 12月 31日
パーフェクト・ワールド a prefect world
1993 アメリカ ワーナーブラザーズ配給 マルパソプロダクション138分
監督:クリント・イーストウッド 脚本:ジョン・リー・ハンコック
音楽:レニー・ニーハウス
出演:ケヴィン・コスナー、クリント・イーストウッド、T・J・ローサー
ローラ・ダーンほか。
2006年最後の映画は、やはりイーストウッドでした。
いや~、泣かされましたな。しっかりと。イーストウッドの映画らしく
長い上映時間でしたが、脚本がしっかりしているお陰でしょう、
飽きることなく観させていただきました。忍び寄るように或いは
寄り添うように流れていく音楽は盟友レニー・ニーハウス。
いつものjazzyなテイストではなく、舞台となったテキサスの風を
感じさせるもの。「南部のワルツ」。
ある時点から結末はなんとなく予想できてしまうのですが、フィリップが
ブッチを撃ったのは衝撃でした。観客はあの暴力農夫をそこまで攻め
なくてもいいんじゃないの?と思いつつ、ブッチの育ってきた子どもの
頃の環境に思いを馳せるわけですね。
それと少年フィリップの家庭が「エホバの証人」であることも、ストーリー
に綾をなしていくわけで、このあたりのケレンは日本では無理ですね。
脱走犯ブッチは、ニューオリンズのラテンクオーター(ハリケーン・カトリーナ
でメチャクチャになってしまった街角ですな)で娼婦を母として産まれ
8歳で、母親に乱暴しようとした犯罪者を、娼館のダンスホールに
落ちていた銃で撃って殺してしまう。裁判所は少年に4年の少年刑務所
入りの判決を下す。
その時テキサスの警察で少年の裁判にかかわっていた警官こそ、
脱走犯ブッチを追う事になる署長レッド(イーストウッド)その人だったのだ。
彼は、少年ブッチの家庭環境を考え、判事をT-ボーンステーキで
買収し、あえて刑務所に送り込んだのだ。更正を期待して。
しかしその後犯罪を重ねたブッチはまた刑務所暮らしとなったが、
穴を掘って脱走。逃亡の途中で寄った家で一緒に逃げた男がトラブルを
起こし、その家の少年フィリップを連れて逃げることになってしまった。
やる事なすことが危険な、その一緒に逃げた男を途中で射殺してしまう。
フィリップは父親がすでに死亡していた。そしてブッチはフィリップに
自分の少年時代を重ねる。
ブッチは自分を「俺はいい人じゃない。極悪人でもない。ちょっと変って
いるだけだ」と分析してみせる。そう、ブッチは本当は愛情に飢えている
少し乱暴な男であり、お互いに父への、そして親への愛情に飢えている
二人は、必然のように惹かれあうのだった。
フィリップはブッチに次第に心を許すが、どこかで線を引いているな、
と思わせるのが、ブッチに対する返事が「Yes,sir」「No,sir」と敬語に
なっているところだ。これは字幕では判りづらいな。
クルマを乗り換え(盗み)ていく二人が、途中、親切から一晩世話になった
黒人農夫の家で、農夫が6歳の子どもに対し暴力的であることに異常に
イラつくブッチ。農夫を縛り、拳銃を突きつける。そんなブッチに裏切られた
思いのフィリップは、隙をみて銃を取り上げ、ブッチを撃つ。そして銃を
井戸に捨てクルマのキーを草むらに捨て逃げ出した。
ブッチはフィリップの後を追うのだが、キズはわき腹を貫通していて出血が
ひどい。逃げていたフィリップは、しかしブッチが気になり、一緒に投降
しようとする。追い詰めた警官隊の中から署長レッドは、丸腰になり
二人に近づき説得しようとする。FBIの狙撃手が、ブッチを射程に捕らえて
いた。レッドはFBIに狙撃は待て、と指示をしてあったのだが、レッドが
フィリップを受け取ろうとした時、ブッチが自分の父親が
アラスカから届けてくれた絵葉書を渡そうと尻のポケットに手を回した時
その動きを銃を取り出そうとしたと思ったFBIは・・・。
フィリップが駆けつけていた母親の手から離れブッチに抱きつく。涙が
溢れていた。「ブッチは悪い人じゃない・・・」
犯罪分析官(当時はプロファイラーという言葉はまだなかったのかな)の
サリーの描き方や警察側の描き方が足りない、とか、逆に脱走犯と
少年の話にまとめてしまったほうが良かった、などの批評もあるが、
イーストウッドのいいたいことは極めてよく判るし、ロードムービーとしても
良くできていると思った。最後の愁嘆場でも
ブッチが「参ったな、一日に二度も撃たれちまったよ」と洒落てみせる
雰囲気が、悲惨に流れる一歩手前で踏みとどまったし、サリーが
狙撃したFBIの股間に蹴りを入れるところでは、観客は快哉を叫ぶだろう。
実はレッドとブッチは本当の親子ではないのか?という疑惑があります。
確かに、サリーとレッドのキャンピングカー内での会話で、
「この事件をしくじれば知事は票を失うだろう。俺は・・・・」と言いよどむ
ところ、
キャンピングカーにあった知事用のTボーンステーキを食べちゃった後の
夜にサリーとの会話「記録は全然違う」「彼をもし少年刑務所に送らな
ければ、俺は・・・」と目を泳がせる場面は、確かに怪しい。
しかし、ブッチは父親がアラスカから送ってきた絵葉書を後生大事に
もっていた。アラスカからの手紙をだれかに頼んで出させることくらいは
簡単なことだが・・・。本当の所はどうなんだろうか?判りません。
この一年、イーストウッドの映画をWOWOWとNHKさんのお陰で
実にたくさんみることができたわけだが、食わず嫌いでごめんなさい、
って感じです。年明けに「硫黄島からの手紙」を観にいく予定なので
ますます楽しみになった。今年では今回の映画が一番心に沁みたかな。
「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」も良かったけど、今回は
時代設定(60年代半ば)も良かったと思う。
マカロニウエスタンの売れない役者、ダーティー・ハリーのイメージが
強かったイーストウッドだが、今年、その考えを見事に塗り替えて
くれました。いま、アメリカで最も輝いている監督の一人であろう。
尚この映画の詳しい情報は
こちらまで。
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