絞殺魔 Boston Strangler

●「絞殺魔 Boston Strangler」
1968 アメリカ 20世紀フォックス映画 119分
監督:リチャード・フライシャー
出演:トニー・カーチス、ヘンリー・フォンダ、ジョージ・ケネディ他
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昨年3月、惜しくもこの世を去った、「ミクロの決死圏」「ジャズ・シンガー」
などの名作で知られる名匠リチャード・フライシャーが、決死圏の2年後
に創った、野心溢れるサスペンス。画面を小窓のように幾つかに割り、
同時間に進む複数の事象を上手く見せる、スプリット・スクリーンという
手法を効果的に使っている。

ボストンで実際に起きた連続11件の絞殺事件を題材に、ドキュメント
タッチで描く。真犯人(トニー)が出てくるまで、やや時間があるが、
それまでをヘンリー・フォンダやジョージ・ケネデイといった名優らが、
捜査の混乱ぶりを上手く演じ、観客の推測をなかなか絞らせない
効果を産む。真犯人は始めから正体をばらして登場するのだが、
これが、多重人格というヤツ。自分がやったことを覚えていないのだ。
ある殺人に失敗し、逃走中にあっけなく逮捕される犯人だが、
捜査陣の追及に、自らも当惑する。どこかでそのような記憶のかけらは
あるのだが、いつなぜ自分にそういうフラッシュが蘇るのかが
判らない。複雑な犯罪の心理のやりとりが、カットバックや短いカットの
積み重ねで、ぐいぐいと引っ張っていく。

1962~64にかけてマサチューセッツ州ボストンでは、老女を中心と
して11~14件の連続絞殺事件が続いた。この実話を元に脚色された
映画だが、真実は映画とはやや異なる。
犯人であるデサルヴォは、多重人格者ではないらしいし、だいたい
この映画が封切られた時は、裁判中であり、かれが「ボストン絞殺魔」
であるかどうかはまだ断じられていなかったのだ。
当時、新聞に「裁判の判断が下りていないのに、映画が判決を下す
べきではない」と20世紀フォックスを非難する記事が出たという。

ただ、サスペンス映画の秀作であることは、紛れもないことでしょう。
尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2007-01-20 01:30 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)