ピクニック Picnic

●「ピクニック Picnic」
1955 アメリカ コロムビアピクチャーズ 113分
監督:ジョシュア・ローガン 原作:ウィリアム・インジ
出演:ウィリアム・ホールデン、キム・ノヴァク、スーザン・ストラスバーグ他
<1955年度 アカデミー賞 美術監督・装置賞 編集賞 受賞作品>
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監督のジョシュア・ローガンは、この作品の翌年にマリリン・モンローを起用
した「バス停留所」を、その翌年には、最近、ナンシー梅木がアカデミー賞
助演女優賞にノミネートされたことで一躍有名になったマーロン・ブランド
主演の「サヨナラ」を、その翌年には、ミュージカルの傑作として名高い
「南太平洋」を作った。55年から58年の4作品で、ローガンは映画界に
燦然と輝く名匠となったのである。生涯、寡作の人であった。

この「ピクニック」は、朝鮮戦争も終え、ベトナムの泥沼にはまる前の、
いわゆるアメリカン・ドリームが輝いていた、ある意味でいい時期の
アメリカが舞台だ。
恋愛映画ではあるが、若者や人生の苦悩といったものも嗅ぎ取れる。

カンザス州の穀倉地帯。ある年のレイバーデイに、ハルという男
(ホールデン)が現れる。ある家に転がり込み、朝食を食わせてくれ、
その代わりに庭仕事をするから、と申し込み、気のいい老婦人に気に入られ、
朝食を与えられ、庭仕事を手伝っていた。そんなハルを隣家の美女マッジが
見ていた。
隣の家は女4人。上の娘マッジ(キム)は、町でも随一の美人。しかし、
いい寄る男は多いが、本心で恋心を打ち明けあえる男性に出会えないで
いた。しかし、道を隔てた、穀物倉庫会社の社長の息子アランとは、愛を
感じていないまま、周囲に進められ、結婚の方向で進んでいた。
そして次女ミリーは、姉の美貌に嫉妬し、勉強ばかりしている、ひがみ
屋さん。大学卒業後はNYに出て、世の中を驚かせる小説家になるんだと
意気込んでいる。

そのアランとハルは大学の友人。ハルは、何とか職を得ようと、アランを
頼ってカンザスに来たのだった。
ハルはアランのオヤジさんにも気に入られ、アランの会社に就職する
ことが決まったのだった。

そんはハルは、自分が大学の体育奨学生で、頭も良くなく、家も貧しく、
世渡りも下手なでることを悩み、劣等感に苛まれていた。その裏返しと
して、すさまじい上昇志向の持ち主であった。いつかは成り上がりたい!と。

レイバーデイのパーティーに、みなでピクニックに行くことになり、ハルも
誘われる。マッジの家を間借りしている、オールドミスの教師と、やもめ商人
ハワード、マッジとアラン、ハルも妹のミリーと一緒に、会場に出かけ、
様々なゲームに興じるのだった。
そして、訪れた夜、ダンス音楽が流れると、あちらこちらでダンスの輪が
広がる。
マッジとハルのダンスは、お互いに恋心があることを認識するのに十分で
あり、まわりには危ない光景として映っていた。
そのとき、酒に酔った女教師が、ヒステリーを起し、ハルのシャツを破いて
しまう。これで、楽しかったピクニックも台無しになった。

会場からアランのクルマでマッジを家まで送ったハルは、アランがマッジを
奪いクルマも盗んだといって、警察沙汰にする。
そんな中、アランの家にクルマを返しに来たハルに対し、アランは口汚く罵る。
そしてハルは警官を殴り、警察に追われる身となる。

次の朝、マッジの家に、彼女に別れを告げるハルの姿があった。しかし、
彼は「愛している」と告白、君も僕を愛しているはずだ、一緒にタルサに行こう、
と誘うが、家族などのしがらみを離れられないマッジは、彼に付いて行く事が
出来ない。「私も最初に見たときからあなたを愛していたわ」と口には出すの
だが。
妹のミリーに、「人生で一回くらいは自分の決断をしたら」と言われ、マッジは
家族を離れ、バスに乗り込み、貨物列車に飛び乗ったハルを追いかけたの
だった。

保守的な南部で、自らの殻を破り恋に走った19歳の女性。社会のある種
閉塞した雰囲気を、なんとか打ち破りたい、とするローガン監督の
メッセージがあるのか、と思うのは考えすぎか。

キム・ノヴァクは、大好きな女優さん。美人で肉感的なのですが、「夜の豹」と
いい、影のある役どころが多いような気がします。
彼女は、ロス近郊で今でも静かに暮らしているといいます。そのほかのこの
映画の出演者はほとんど鬼籍に入っています。妹のミリー、新聞配達の小僧
でさえ。合掌。
尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
Tracked from この広い空のどこかで今日.. at 2007-05-22 12:19
タイトル : 辛い辛いが楽しい内よ!不倫の掟!
直訳に近いタイトルにしても、これはなかなかの翻訳で、逢う時はいつも他人の視線を気にして逢わなければならず、仕方なく見知りの集団の中で逢えば他人のよそよそしさも演じなければならず、ことほど不倫はオープンにはしがたい苦衷の恋なのではある。... more
Tracked from この広い空のどこかで今日.. at 2007-05-22 12:47
タイトル : これ以上美しい魔女が似合う女優は思い浮かばぬなあ。
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by jazzyoba0083 | 2007-01-28 15:00 | 洋画=は行 | Trackback(2) | Comments(0)