2007年 02月 04日
博士の異常な愛情
止めて水爆を愛するようになったか」
Dr.Strangelove:or how I learned to stop worrying
and love the bomb」
1964 アメリカ コロムビア映画 93分
監督:スタンリー・キューブリック
出演:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン他
言わずと知れた、巨匠キューブリックの不朽の名作。映画ファンの間で
コレにいちゃもんをつける人は相当勇気がある人か、凡人かどちらかだ。
シドニー・ルメットの「未知への飛行」と筋書きは殆ど一緒。
ルメットは、ヘンリー・フォンダの大統領にソ連首相との電話で息詰まる
展開を見せ、エンディングもショッキングなもので重厚感を感じさせた。
キューブリック版は、彼独特のブラックユーモアが底に流れていて、
皮肉に溢れた仕上がりとなった。
この映画を支えているのが、一人三役のピーター・セラーズだ。
特に、サングラスをかけた狂気の博士の演技は、白眉だろう。
ドイツ出身という設定のこの博士(事実、アメリカは大戦後、多くの科学者を
ドイツからアメリカに連れてきた。その一人がサターン型ロケットを完成
させたフォン・ブラウンであることはあまりにも有名)が、大統領を
総統と呼び間違えたり、どうしてもナチ式の敬礼が出てしまい、必死に
左手を右手で押さえるところ、車椅子の博士が世界が滅亡する寸前に
奇跡的に立ち上がることが出るという必殺の皮肉!
そして、これを際立たせているのが、これまた狂気の軍国(愛国)主義者、
私にはパットン将軍のイメージが強烈なジョージ・C・スコット演じる、
将軍だ。
そして、ラスト。「また会いましょう」の歌に乗せて、カット割りされたキノコ
雲の数々。軍拡時代を強烈に皮肉ったキューブリックの面目躍如だ。
あえてモノクロにしたのはストーリーからすればごく自然。そしてタイトル
バックのクレジットのレタリングのアンバランスささえも痛快だ。
ストーリーは、ある基地の狂気の司令官が作戦Rというソ連に対しての
核戦争を勝手に発動し、警戒飛行中だった何機ものB-52が、ソ連に
殺到する。大統領は駐米ソ連大使を作戦室に呼び、そこからソ連の
首相に電話、こちらのミスであることを侘び、米軍機を打ち落としてくれ、
と頼む。その電話でソ連の首相は、アメリカから核攻撃を受けると
自動的に発動する「地球全滅兵器」が完成していて、場合によっては
とてもまずいことになる、と説明する。
攻撃機に帰還を命令する暗号(狂気の将軍しか知らない)が解読され、
殆どの爆撃機が帰り、3機は撃墜されたが、敵の攻撃で低空飛行しか
出来なくなった1機が、手近なソ連の基地を目指していた!
この映画を観た人は是非、「未知への飛行」と「渚にて」を見て欲しいですね。
軍拡時代の秀作。
尚この映画の詳しい情報は
こちらまで。
第149回『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』スタンリー・キューブリック特集7 今回紹介する作品は米ソ冷戦下における核戦争の恐怖を鬼才キューブリック監督が徹底的に皮肉ったブラックコメディの傑作『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するように... more
コチラの「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」は、東西冷戦時代にこんなんあり?ってぐらいの、超ド級のブラック・ユーモア満載の近未来SFコメディです。タイトルめっちゃ長いんですけど、映画自体はフツーの尺ですw ...... more