魚が出てきた日 The Day The Fish Came Out

●「魚が出てきた日 The Day The Fish Came Out」
1967 イギリス・ギリシャ 110分
監督・製作・脚本:マイケル・カコヤニス
出演:トム・コートネイ、サム・ワナメイカー、キャンディス・バーゲン他 
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そのタイトルと、当時キャンディス・バーゲンのファンだったこともあって
観たいな、と思っていたが田舎な高校生には一人でこうした洋画を観に
行く勇気がなかった。で、40年ぶりでWOWOWに出現、ビデオもDVDも
ないので、いいチャンスとばかりに観たわけです。

「その男ゾルバ」で知られるカコヤニスの創ったSF。時代を反映して
非常にポップに、しかも皮肉溢れて作られている。この時代の映画としては
傑作じゃないかなあ。寓意的でありブラックであり、同じようなテーマを
扱った「博士の異常な愛情」や「未知への飛行」と並ぶいい出来だと
思いますが・・・。

フラメンコで鳴らされるカスタネット。あわせて唄われる、皮肉な歌。
実際に起きたスペイン沖の核兵器を積んだ米軍機行方不明事件。
「こんどはスペインじゃ、おきないのよぉ~」と。

そして舞台はギリシャ。核兵器と核物質を積んだ飛行機が、地中海に
墜落する。軍は墜落したことも、なかったことになり、目撃した青年は
うそつきにされてしまう。
墜落前に、核爆弾と核物質はパラシュートで落とされ、カノス島という
岩だらけで何も無い島に落下。爆弾は海中に没し、核物質を入れた
容器は岩場に落ち、ヤギ飼いに拾われる。

軍は、島に観光客を装った十数人を送り込み、必死に探す。そして
遂には、島の殆どをホテル用地にと買収する。
そのことが、島の観光地化に拍車をかけ、ギリシャ本土からの観光客が
鄙びた自然を求めて大挙して押しかけるようになってしまい、軍の捜索も
やりにくくなる。更には、島の人たちの歓心を買おうと始めた道路整備工事
で、彫像が発見され、考古学者たちも押しかける事態になる。

一方、飛行機から脱出した2人のパイロットはパンツ一丁で、島中を
駆け回り、なんとか基地に電話をしようと悪戦苦闘する。これがシュールな
笑いを誘う。
島にやってきたアメリカの考古学者の女性助手がキャンディス・バーゲン。

何をどうしても、絶対に開かない箱を何とか開けようとするヤギ飼いは、
バーゲンの持ってきた、何でも溶かす薬剤を盗み、やっとのことで
箱を溶かし、中身を取り出すことに成功する。むき出しの核物質を素手で
つかみ出し、何だか判らず、金目のものでないと判断し、中身を元に
戻し、海に捨てる。そのとき、ヤギ飼いの妻が、2つの核物質をエプロンの
ポケットに隠しいれる。

海中に没した爆弾は、何とか見つけた一隊は、やがて、ヤギ飼いの家にも
やってくる。慌てた妻は、街へ水を送る給水塔に核物質を投げ入れてしまう。

観光客で溢れた港の広場。海に魚が浮いてくる。沖に停泊した豪華客船の
周りにも。その客が飲んでいる水は、ヤギ飼いの妻が核物質を投げた
水だった。軍の捜査隊は、異常事態に気づき、基地に連絡、浮かれて
ダンスに興じる観光客に「アテンション・プリーズ」という拡声器の声が
響き渡るのだった・・・。

製作された時点で5年後の近未来を描いているのだが、来ている衣装が
飛びぬけてポップ。キャンディス・バーゲンの服なんて、びっくり。
そして、島に押し寄せた観光客のゴーゴーのようなダンス。やたらに踊り
狂う様。これは何を言わんとしているのか?
当時、あまり目に見えてなくても恐ろしいことだけは判っていた核物質を
軽快に描くことによってむしろ恐怖を加速して見せている。
ある種不思議な映画だ。しかし、最期は、後のことを考えると、この先は
もう笑っていられないのだ、と思わせて恐ろしい。
タイトルは、現代の直訳だったと、初めてわかった次第。
尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2007-04-21 16:15 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)