我等の生涯の最良の年 The Best Years Of Our Lives

●「我等の生涯の最良の年 The Best Years Of Our Lives」
1946 アメリカ MGM映画 170分
監督:ウィリアム・ワイラー 製作:サミュエル・ゴールドウィン
出演:フレデリック・ローチ、マーナ・ロイ、テレサ・ライト、ダナ・アンドリュース
    ヴァージニア・メイヨ、ナンシー・オドネル、ホーギー・カーマイケル、
    ハロルド・ラッセル、スティーブ・コクランほか。

<1946年度アカデミー賞最優秀作品、監督、脚本、主演男優、助演男優
     特別、音楽、編集賞受賞作品>

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170分という長い映画だが、実に色んなことを考えさせる映画だった。「憲法記念日」に
見たのも何かの因縁か。
昭和21年のアメリカの地方都市には、戦闘機も飛んでこなかっただろうし、爆弾の
炸裂音など聞いたことのない、一見平和な時間が流れていたんだろうな、と
3人の復員兵がB-17で帰還するとき上空からみえた故郷を見て、そして着陸して
タクシーで街を走る風景を見て、まずそんなことを思った。
銀行家だった軍曹アル(F・マーチ)の住む豪華なアパートとそのキッチンを見て、
昭和23年(日本公開時)の日本人は何を感じただろうか。
さらにいえば、終戦直後にこういう映画を作ってしまうアメリカという国の思想や力を
どう見ただろうか。アルが持ち帰った、寄せ書きの入った日の丸を見て何を思った
だろうか。

ブーン・シティという街に3人の兵隊が復員してきた。陸軍軍曹で銀行家であった
アル、空軍の爆撃手で、ドラッグストアのソーダ係だったフレッド大尉、
そして、海軍水兵で乗艦していた空母の沈没時に両手を失ったホーマー。
彼らが長い時間を経て、家族の待つ故郷に帰ってきた時の「きしみ」をそれぞれの
立場で描いていく。

恋人は愛し続けてくれているのに、両手を失い、コンプレックスに暮れている
ホーマー。家族や周囲の人も彼とどう接していいか、最初は戸惑う。
大尉ではあったが、妻とは結婚20日で出征してきてしまったフレッドは、もう
ソーダ係には戻りたくないと、賢明に職を探すが、理解の薄いアーパーな妻は
派手な暮らしに慣れてしまい、貧乏生活が出来ず、やがて分かれることになる。

ろくな職についたことが無い割りに、気位だけは高いフレッドだが、ソーダ係と
して、職に戻ることになった。しかし、客として訪れたホーマーに「あの戦争は
無駄だった」と吹っかけた男を殴り、クビになってしまう。
町をでることにするフレッド。しかし、飛行場で、使われなくなった膨大な戦闘機や
爆撃機を見、そのエンジンだけが、取り外された姿を見て、己の姿とダブらせる。
そして、こうした航空機をスクラップして建築材にしていく仕事を天職とする。
自らの過去をスクラップして、やり直すというフレッドの人生そのものである。

銀行家のアルは、元いた銀行に小口融資担当の副頭取として迎えられる。
復員兵の担当でもあったが、担保を取らずに農家に融資して、頭取に叱られたり
する。二人の子供は成長していた。3人は同じ飛行機で帰還したことから
仲良くなり、帰還の夜に町のホーマーの叔父ブッチの店で大いに盛り上がり、
酔いつぶれたフレッドは、アルの家に世話になるのだが、そのあたりからアルの
娘はフレッドに惹かれていく。
結局、フレッドが離婚するので二人の間の障害はなくなるのだが・・・。

ホーマーは、恋人に、諦めて町をでるのがいい、という。手を失ってもホーマーを
愛し続けてくれている心を理解しようとせず、心を閉ざしていた。
しかし、両手のないことがどんなに不自由で、彼女の自由を奪うかを実際に
やってみせるが、そんなことで愛情が揺るぐ恋人ではなかった。彼女の愛の
深さに心を開いたホーマーは、彼女との結婚を決意する。

結婚式の日、立会人になる、と帰還の日から約束しいたフレッドは、会場に
来ていたアルの娘と、抱き合い、「辛い道だぞ、金も家もないぞ」というフレッド
に笑顔を返す娘。あなたさえいれば何もいらないの、とその顔は物語っていた。

戦争の負の置き土産
戦争が終わったことの明るい側面と、こうした暗い側面が
あったことをこの映画をみた全ての人は理解しただろう。
地味ではあるが、しっかり創りこまれた映画で、アカデミー賞独占も理解できる。
個人的には、ブッチを演じたホーギー・カーマイケル(“スターダスト”の作曲家)
が、ピアノを弾く姿がみられたことがラッキーだった。
それと、アルが人物を見極めて融資した、と胸を張った農家の男が、融資された
金で獲れたトマトをアルの前に持ってくるシーンを観たかったな。

両手の無い水兵を演じたハロルド・ラッセル(すでに故人)は、この映画のために
ウィリアム・ワイラーが連れてきた素人さんで、彼自身、本当に戦争中の事故の
ため、両手を失っていた。ワイラーが彼のドキュメンタリーを観て採用を決定し、
この映画のストーリーも彼の実話に即するように変更したという。
どうりで鉤の使い方が上手いはずだ。初演でアカデミー賞助演男優賞と特別賞を
獲得、その後実業界にいたが、妻の目の手術のためにオスカー像を売りに出し、
6万ドルで売ったという。
邦題に「の」が3回も使われているのはウザい、と感じてしまいました、些細なこと
ですが。
尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2007-05-03 20:10 | 洋画=ら~わ行 | Comments(0)