ブロークン・フラワーズ  Broken Flowers

●「ブロークン・フラワーズ Broken Flowers」
2005 アメリカ Focus Features Films 106分
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ビル・マーレイ、ジェフリー・ライト、シャロン・ストーン、ジェシカ・ラング他

<2005年度カンヌ映画祭審査員グランプリ獲得作品>
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ジャームッシュという監督の映画は、初めて観た。データによれば、
「オフ・ビート」映画ということだが、なるほど、である。
日本語で言うと、「脱力系」とか「まったり」系とかになるのだろうか。
「Five Easy Pieces」が、この系統だろうか。
映画好きには、カッコイイ映画だろうなあ。どこか北欧の臭いもするのだが・・。

コンピュータ系の起業で成功し、いまはセミリタイア?のジャージーおじさん
ドン・ジョンストン(B・マーレイ)は、かつてはドン・ファンと呼ばれたが、
いまはカウチポテト(死語)を決め込んでいる。同居の女性にも、結婚しないなら
さよなら、と去られてしまう。

そんなドンの元に、20年前に別れた女性から「実は別れる時に妊娠していて、
産んで一人で育てた。男の子だが、父親探しの旅にでたらしい。19歳になる。
住所を見て、そちらに行くかもしれない」という手紙が来た。

この話を近くに住む友人ウィンストンに相談すると、おせっかいなウィンストンは
彼に、当時付き合っていた女性のリストを作れ、と迫る。だれが母親か探しに
行け、というのだ。いやがっているドンだが、結局リストを作る。すると
ウィンストンは一夜のうちに、5人の女性の現住所を割り出し、航空券や
レンタカーの手配までやってしまう。ヒントはピンク。特にピンクのタイプライターだ
と、ウィンストンは主張する。

そして、全米へと母親(自分)探しに出るドンだった。
最初に訪れたのはローラ(ストーン)。カーレーサーだったダンナが事故で亡くなり
人の家の整理を請け負う仕事をして、娘を育てていた。
彼女には男の子はおらず、一夜を共にして、次の朝は他へと出発する。
彼女はピンクのバスローブを身に着けていた。

次に訪れたのは、不動産屋と結婚し、一見幸せそうなドーラのところ。豪邸を
訪ねると、突然の訪問に驚きながらも家に入れる。
ダンナが現れて、夕食を共にするが、テーブルの上のディナーは冷凍食品を
解凍して並べただけのもの。彼女の“幸せ”度を物語っていた。
ドーラ夫妻には子供はなく、早々に切り上げる。

次に訪ねたのは動物コミュニケーターと称するカルメン(ラング)だった。
弁護士だったが、仕事に疲れ、愛犬が死んだ時に備わったという動物と会話が
出来る能力を利用して、ペットのカウンセリングをしていた。
彼女には別れた夫との間に16歳になる娘がいて、彼女はスゥエーデンに留学中。
昔話に花は咲いたが、ここでもなかった。

そして、最期に訪ねたのはヒッピーのような生活をしているペニー。彼女は
暴走族風の男たちと集団生活をしていたが、玄関に出てきたペニーは、
子供の存在を尋ねると、ドンを罵って、部屋に引きこもって泣いてしまった。
彼女の家の前にはピンクのタイプライターが捨ててあり、彼女の乗っていたらしい
バイクはピンクだった。
これを聞きつけた男たちにドンは殴られ、クルマごと畑の真ん中に放置されてしまう。

そして、唯一、交通事故で亡くなっていた、ミシェル・ペペの墓参りに訪れ、
雨降る墓場で、しばしたたずみ涙を流すのだった。

故郷に帰ってきたドン。空港で、ヒッチハイクの若者を見かけるが、どうも気になる。
家には新しい手紙が配達されていた。事態は終わっていない、と匂わせていた。
ウィンストンに成果を告げて、結局なんだか判らなかったと。お前の作り話じゃ
ないのか?とか。「過去は終わったことだ。未来は、これからどうにでもなる。
結局大事なのは現在さ」と、自分で結論を見出したドンだった。
ウィンストンとの話を終えてカフェから出てこようとすると、昨夜空港でたたずんでいた
若者がいた。ドンは、彼に朝食をおごり、いろいろと話をする。
「で、キミは私を父親だと思っているんだろ?」と話しかけて、気持ち悪がられてしまう。
若者は走って去り、追いかけたドンは、呆然と佇むのだった・・・。

衆目の一致するところだが、ビル・マーレイのジャージー中年が、実にはまっている。
脱力系の縁起は、ジャージーとサンダルそのものだ。
エチオピアの音楽が常に流れている(ウィンストンの愛聴盤だという)が、これが
独特の雰囲気を醸し出している。映画に相乗効果を与えている。
溶暗を多用し、好いリズム感を出していた。音の無いところ、あるところのメリハリも
好いリズムを作り出していた。
ラストは、物凄いうっちゃり、だが、これがこの映画の持ち味だろう。
「あれれ」と思うか、「ウーム」と唸るか。
本作品は、思い出したときに観たくなる、味をもった作品だろう。
尚、この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
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