SAYURI Memories of a Geisha

●「SAYURI  Memories of a Geisha」
2005 アメリカ コロムビア映画+ドリームワークス+スパイグラス 146分
監督:ロブ・マーシャル 製作:スティーブン・スティルバーグ
原作:アーサー・ゴールデン著「Memories of a Gisha」
出演:チャン・ツィー、渡辺謙、ミシェル・ヨー、役所広司、桃井かおり、大後寿々花
    工藤夕貴ほか

  <2005年度アカデミー賞撮影、美術、衣装デザイン賞受賞作品>
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日本の芸者の世界を、中国人の主役が英語でやるのか、と思うとなかなか観る
勇気がでなかった作品だ。結果、観てよかったかな。まあまあだと思った。
最初、昭和初期の日本の寒村で、姉妹が売られていくシーンから英語だから、
やはり、なんか変。「硫黄島からの手紙」みたいに、いっそ日本の役者に
日本語でやらせたほうが、潔かったんじゃないかなあ。チャン・ツィーくらいの
女優さんは日本にもいますから。

しかし、日本人の知らなかった世界をハリウッドが描いて見せる、しかも上質な
作品に仕上げて・・・。悔しい思いもある。

昭和初期の寒村から売られてきた姉妹は、別れ別れになり、千代(大後)は
芸者の置屋のおかあさん(桃井)の下で、女中として、辛い下働きの日々を
送っていた。長じても生活に変化も無く、嘆きの人生であった。そんな中、
使いにいって転んだところを会長さん(渡辺)に慰めて貰い、カキ氷をご馳走に
なる。これを転機に、会長さんの女になりたい、芸者として一流になる、と
決心をする。
それからは、おねえさんの豆葉(ミシェル・ヨー)に仕込まれて、めきめき芸の道で
上達していく。しかし、行く手を、当時は都一の芸者といわれていた初桃(コン・リー)
に、意地悪され妨害されるのだった。
そんな中、会長さんの命の恩人(満州で爆弾の爆発から体を張って会長を守り
自らは右の頬に大ヤケドを負った)の延さんと相撲見物で出会い、延さんは
サユリと名づけられたこの芸者に引かれていく。サユリは、たちまち都一の芸者
と言われるようになり、誰にいくらで水揚げされるかが豆葉たちの勝負になった。
結局、サユリは「蟹の先生」と呼ばれる医者に1万5千円で水揚げされた。これは
歴史上最高金額だった。

都一の芸者になったサユリにおかあさんは、自分の養女にして、置屋の跡継ぎと
する、と指名した。しかし、その座は、サユリと仲良かった、おカボ(工藤)に行く
はずだったのだ。絶望するおカボ。
みずから座を追われた初桃は、嫉妬に狂い、サユリの部屋で見つけた会長さんから
もらったハンカチを燃やそうとして、つかみ合いになり、ランプが倒れて置屋は
火事になってしまう。

そして、戦争の悪化。サユリたちは延さんのつてで山の中に疎開する。そして何年も
経った。すっかり芸者の世界から遠のいたサユリのもとに延さんがやったくる。
大阪の工場を再建するためにアメリカ人の大佐の接待をしてもらいたい、と
頼みに来たのだ。もう芸の道から遠のいているから、と一旦は断わるサユリだったが
恩返しのつもりで、山から京へと出る。豆葉に焼け残っていた着物を借りて、
会長や、今やパンパンのようになったおカボたちと、温泉に接待に出かける。
よろこぶ米軍の一行だったが、芸者を娼婦と勘違いした大佐にいいよられる。
なんとか窮地を脱したサユリだったが、今度は、延さんに俺の女になってくれ、と
迫られる。

サユリは一計を案じた。米軍の大佐と寝ているところを延さんに見せて、サユリが
そういう女だと思わせて身を引かせたい、と考え、おカボに、9時に延さんを
指定の場所に連れてきて、と頼む。いやいやサユリが大佐と抱き合っているところに
おカボが連れて来たのは、なんと会長だったのだ。
おカボは「私は自分の夢を奪われたわ(置屋の養女になること)。夢を奪われること
がどんなに辛いかわかったでしょ?」と言い去っていったのだ。

悲しさに絶望するサユリ。海辺の絶壁から会長にもらったハンカチを、空に飛ばして
捨てた。(ここで自殺するのかと思った)
そして、春。延さんから花見に誘われ、出かけたサユリのもとに現れたのは、会長
だった。会長は、幼い千代を最初に見かけたときから気に入り、豆葉に頼んで
芸の道を教え込んで貰っていたのだ。いつかは見受けができることを夢見て。
そんなこととは知らなかったサユリ。彼女も会長への思いを告げ、ひしと抱き合う
二人だった・・・。

着物の着方、とかお寺に賽銭を投げ入れた時、ガラガラを鳴らすのは神社じゃなかった
っけ?しかも音がゴ~ンって! かなり高い山の稜線からハンカチを飛ばすのだが
どうやっていったのだろう、と思っちゃった。
基本的に全編英語だが、おかあさん、おねえさん、こんにちは、とかは日本語。
日本軍が花街に退去を呼びかける拡声器の声も日本語。なんか中途半端だったな。

しかし、「シカゴ」のロブ・マーシャルだけあって、映像の美しさ、はさすがアカデミー
受賞もん。ハリウッドのスタッフは原作をよく読んで、日本のことを研究したんだろうな。
花柳界のシステムなんかは西洋人には解りづらいんじゃないかなあ。
そういう意味で、一人の女の人生を「芸者」という形を借りて描いてみせた迫力は
感じます。素直に。サユリの少女時代を演じた大後寿々花は、存在感のある可愛さだ。
ジョン・ウィリアムズの音楽にヨー・ヨー・マのチェロも、心地よい。
この映画を観た西洋人に、今でもこんな風かと思われたら困るな。
昭和初期の女性の一つの幸せの掴み方、を「芸者」という舞台を借りて表現したわけ
だから。「サユリ」の生きかた(生かされ方)を観るべきでしょう。
尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
Tracked from 茸茶の想い ∞ ~祇園精.. at 2007-05-20 12:14
タイトル : 映画「SAYURI」
原題:Memoirs of a Geisha チャン・ツィイーが日本を舞う、「LOVERS」で魅せた得意の舞を、今度は花街を彩る水揚げ前の芸者として、見事な扇さばきで・・・魅せる。 貧しい漁村に生まれた姉妹が"花街"に離ればなれに売られる。千代(後のさゆり)は姉と共に... more
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2007-10-14 00:16
タイトル : SAYURI
 絢爛 無垢 毅然  昨日予告しました通り、観てきましたぁ(〃'∇'〃)ゝエヘヘ  全体的な感想としては、良かったですねぇ。  基本的に観る前に批評系は読まずに観に行くんですが、チラっと聞こえてくる評判はイマイチ?ってよりもアラ探し系が多いみたいだったんだ....... more
Commented by よし at 2007-05-20 07:01 x
>チャン・ツィーくらいの女優さんは日本にもいますから。
この映画の感想をブログなどでみるとチャン・ツィーに匹敵する女優はいないというのが多数意見だと思うのですが(私もいないと思う)。具体的な日本人女優を揚げて欲しいのですが。英語で撮ったのは原作本が英語(大ベストセラー、傑作です!)、全世界を対象にしていること(日本での興行収入は全体の一割程度、英語なら理解できる人が多い)などが理由だと思います。
Commented by jazzyoba0083 at 2007-05-20 19:33 x
よしさん。コメント、Thanks! ここで私がいいたかったのは、具体的な名前ではなく、日本人の演技者を起用して、描いて欲しかった、という原則論なのです。チャン・ツィーを否定するわけではありません。彼女の演技、日本人も斯くやという演技など、演技上の問題は
ありません。原作を読んでいませんが、サユリは、中国人が日本に連れてこられての芸者なのでしょうか?ならば、オーディションを
するなりして、純粋な日本を、せめて主役は描いて欲しかったという
ニュアンスで書いたのですが・・・・。映画を観ている人は、チャン・ツィーを日本人とは思わないでしょう。中国人なのに見事に日本人を
演じているなあ、と思うでしょう。そこがこの映画の目的なのでしょうか。一人の日本人女性が「芸者」という生き方をどう生きたか、を
描くなら、日本人の中から主役を見つけたほうが、同じ英語を喋る映画としても、さらにシンパシーは深くなったのではないでしょうか?
生意気なことを申し上げました。くどくなりますが、チャン・ツィーに
怨みも何もありませんから。
Commented by よし at 2007-05-21 21:14 x
勿論日本でもオーディションをしました。うわさでは何人かの有名女優も受けたそうです。また本物の芸者さんを主役にすることも考えたそうですが演技が出来ないので中止しました。私には現代の茶髪の日本人女性よりチャン・ツィイーの方がよほど古典的な日本美人に見えるのですが。また日本人がどれだけ芸者さんのことを知っているでしょうか?私もこの原作本で知識を得ました。チャン・ツィイーは踊りのプロでもあり聡明なことでも有名です、テレビ(NHK)で観ましたが実際の舞妓さんに会って話しを聞いたり日本舞踊の練習もしていました。残念なことですが日本人女優はテレビの画面サイズの女優ばかりで映画の大きなスクリーンに耐えうる人はいません。100億近くの大きな予算の映画を安心して任せられる女優、日本にいますか?
Commented by jazzyoba0083 at 2007-05-21 22:31 x
よしさん。深い洞察に溢れたコメントありがとうございます。
なるほど、日本の今の映画界に、世界的な女優が存在するか、
と言われると、唸らざるを得ませんね。2005年現在で、チャン・ツィーはベストチョイスだったのでしょう。
ただ私見ですが、私がプロデューサーだったら、日本でオーディションをして、原石を見つけて5~6年かけて磨いて、日本人でこの
原作を映画化したでしょう。それが、この原作に対するリスペクトだと思うからです。
by jazzyoba0083 | 2007-05-19 22:55 | 洋画=さ行 | Trackback(2) | Comments(4)