旅立ちの時 Running on empty

「旅立ちの時 Running on empty」
1988 アメリカ Double play 116min.
監督:シドニー・ルメット
出演:リヴァー・フェニックス、クリスティーン・ラーチ、マーサ・プリンプトン他
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リヴァーファンには怒られてしまうけど、彼の作品は初見。死に方は無様だったが
(ヤクのオーヴァードーズ)、この演技を観ただけだけど、輝いていた。
このとき、彼18歳。アカデミーの助演男優賞にノミネートされただけのことはある。
ルメットの名前に惹かれて観始めたが、始めのころはタルい映画かなあと思った
けど、判りやすいストーリーと出演者がみな好演技で、ぐいぐいと引き込まれて
いった。気がつけば、リヴァーの表情を追っていた。こんな素敵な演技ができる
俳優が23歳で世を去るなんてもったいないな。(神格化したくなる人もいるだろうが
それは止めといたほうがいい)

ルメットはこういう社会派の映画を撮らせるとさすがだ。今年で84歳になるので
もうメガフォンを取ることはないだろうけど。
脚本も良くできている。ストーリーは単純で、共産主義の両親が戦争に反対する
グループに参加し、ナパーム弾を作っている工場を爆破、居合わせた警備員を
失明させ、FBIから指名手配されて全国を家族連れで逃げ回っている。

長男のダニー(リヴァー)と弟は、家族の強い結びつきの中で逃亡の身では
あったが素直に育ち、3歳から始まった転々とする引越し生活にも耐えてきた。
そんな一家がニュージャージーにやって来た。
高校3年になったダニーは音楽の才能に恵まれ、転校してきた高校で、音楽担任の
フィリップスからジュリアード音楽大学に進むよう薦められる。
しかし、進学するためには過去の学校の成績が必要で、彼らの家族は、過去を
消してきたためそれができない。名前も偽名を使っているし。
母親はこれ以上自分たちのために息子たちの人生を犠牲にしたくないと思うが、
それするためには自首して刑務所生活を覚悟しなければならない。父親は
反対する。ダニーも家族のために進学をあきらめようとする。

そんなダニーはフィリップス先生の娘で同級のロニーと愛し合うようになる。
愛するロニーにうそはつけないと、ダニーは家族の真実を打ち明ける。
そしてひそかにジュリアードの推薦入学のオーディションも受けていた。
フィリップス先生は母と会い、ダニーにジュリアードに進ませたいと話す。
迷う母は、絶交状態の父親と会い、許しを請う。父も、お前は出て行くとき
最後に私のことを「資本帝国主義のブタ」と言ったのだぞ、と言い募るが、
娘から、ダニーを預かってくれ、と頼まれると嫌とは言えなかった。
(ダニーの母の実家は資本家でお金持ちのようだ。母の母は有名なピアニストで
ダニーは祖母の血を受けて、ピアノの才能があるようだ)
そんな一家にまたFBIの影が忍び寄る。また引越しだ、という父にダニーは
残る、というが父の説得に負け、ロニーに別れを告げて、町を離れようとする。
そのとき、父が、お前は残れ、自分の人生を歩け、とダニーに告げ、弟と
母と父の3人はトラックで別の場所を目指していった。

それまでは反戦グループの結束のため、息子の人生を犠牲にするのも止むを得ないと
主張していた父だったが、ロニーとの仲をいち早く認めたり、進歩的なところもあり
エンディングでの主張の反転となった。このラストシーンが感動的。
逃亡生活の中で育った男二人兄弟が、気持ち悪いくらい素直に育っているので
なんとなく違和感があるが、この映画にはそんな突っ込みどころを排除する力がある。

かつてのジェームス・ディーンがそうであったように、リヴァーも23歳以降の姿がない
ため、いつ観ても輝いている。ナイーブな初々しい青年はリヴァーそのもののような
感じ。その弱さがクスリに走らせたのか。
邦題は、そのとおりなのだが、あまりにもひねりがないと感じる。原題に込められた
ニュアンスを取り入れても良かったのではないか。
尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
Tracked from RAY's Favori.. at 2008-04-24 00:01
タイトル : 「旅立ちの時」
「4月5日は何の日?」と聞かれたら、「入学式の日」と答えるのが世の定番のような気がしますが、私の場合はカート・コバーンの命日を思い出します。そしてカート・コバーンとセットで想起されるのが、リバー・フギ..... more
by jazzyoba0083 | 2007-09-22 23:30 | 洋画=た行 | Trackback(1) | Comments(0)