マッチ・ポイント Match Point

●「マッチ・ポイント Match Point」
2005 イギリス・アメリカ・ルクセンブルグ BBC Films 124min.
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ジョナサン・リス・マイヤーズ、スカーレット・ヨハンソン、エミリー・モーティマー他
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WOWOWのウディ・アレン特集。ウディらしくない本格的なミステリーだけど、
同様な映画(「陽のあたる場所」など)と同じ、上昇志向の男の殺人譚ではある。
舞台はNYではなくロンドン、音楽はジャズでなくオペラ。この雰囲気がすでに
ウディのいつもの創りではないな、と思わせる。
ヒロインのジョナサン・リス・マイヤーズは、まだ売れる途中の俳優だけに、映画に
リアリティがあっていいと思った。対するスカーレット・ヨハンソン、ある意味汚れ役
を良く演じていて、憎憎しいとさえ思わせる演技はいいんじゃないかな。でももっと
綺麗な人かな、と思っていたけど。

元プロテニス・プレイヤーでアガシなんかとも対戦経験のあるアイルランド人青年
クリス(ジョナサン)は会員制テニスクラブのコーチとして働き始める。
英国の上流階級に憧れる彼は、やがて実業家の息子トムと親しくなり、その妹クロエと
付き合い始める。ところがそんなある日、クリスは女優を目指すアメリカ人女性
ノラ(スカーレット)と出会い、彼女の官能的な魅力に溺れていく。

しかし、ノラはトムと付き合い、婚約まで進むが、家族の反対に合いやがて解消。
母は、オーディションに落ちまくっているノラに「それだけの力しかない女よ」と
冷たい。上昇志向の強いクリスは、一流企業の社長をしている父親の財力と権力への
憧れもあり、クロエと結婚、義父の会社の役員に納まり、親が買ってくれた豪華な
マンションに住み、運転手付きのジャガーがあてがわれ、オペラ三昧のセレブな
生活を送っていた。妻は早く子供が欲しくてしかたがない。しかし、なかなか出来ない。

一方、ノラを忘れられないクリスは、いったんアメリカに戻ったもののまたロンドンに
現れたノラのアパートに入り浸り、肉欲に溺れる。会社や妻とのこともおろそかに
なり勝ちであった。
そんな折、ノラが妊娠した、と告げてきた。妻と離婚して、ノラと結婚すると口では
言うが、心では、セレブな生活をあきらめ切れないのだった。
クリスはギリシアに3週間の旅行に出かけるといって(旅行は中止になるのだが)
ノラを避けていたが、ノラからケイタイに、いつクロエと別れるの、と迫られる。
そしてロンドン市内にいるところを目撃され、うそをついていた、別れる気なんて
ないんでしょ、と詰め寄られる。 明日別れるというから、ともう見え見えのうそをつく
クリス。悩んだ末にクリスの取った手段は、義父の猟銃を持ち出し、テニスのケースに
入れて、まずノラのアパートの向かいの一人暮らしの老婆の家に「テレビの写りを
見せてくれ」と言って入り込み、老婆を射殺。宝石を盗んでみたり、クスリの棚を
荒らしてみたり、とヤクチュウか物取りの仕業に見せかけ、帰宅するノラを踊り場で
待ち構え、エレベータから降りてきたノラも射殺。妻の待つミュージカル劇場に急いだ。
アリバイを作ったのだ。

捜査に乗り出したロンドン警視庁は、クリスの筋書き通りの予想を立てる。だが担当の
刑事はクリスを疑う。警察に呼び出されたクリスは、署に向かう途中、老婆から盗んだ
宝石やクスリをテムズ川に捨てた。しかし、指輪が1つ、手すりに引っかかって川に
落ちず、歩道に残った。警察では、ノラの日記を示し、ノラとクリスの関係を追及するが
クリスは浮気を認めたものの殺人は否定、2人組みの刑事の一人はクリスはケチな
浮気男ですよ、というがもう一人の刑事は、どうも合点がいかない。

ついにクロエが妊娠したことが判明、家中大喜びとなる。刑事の一人が、クリスの犯行を
ぴったりと言い当てる夢を見て、同僚に意気込んで話すが、そんな折、ノラのアパートの
近くでクスリ目当てのジャンキーが殺され、この男のポケットから、老婆の指輪が見つかる
という事件があった。これで、ノラと老婆を殺した犯人は、ジャンキーということに
なってしまった。完全犯罪が成立。そしてクロエは男の子を出産。
台詞には出ないが、当然、クリスは罪の意識に苛まれて人生を送ることになり、誰も
しらなくても生まれてきた子は殺人者の子であることに変わりはないのであった。

ウディがドストエフスキーの「罪と罰」を意識したのは、クリスがテニスクラブで「罪と罰」を
読んでいることからも明らか。クリスはラスコリーニコフの役を担わされたのだ。

警察はノラの解剖をすれば赤ちゃんが出てきて、DNA判定をすればクリスが父親であり
犯行の動機は十分だということがわかりそうなもんだが・・・と誰もが思うだろう。
ノラは実は妊娠なんてしていなかったのだ。クリスをクロエから奪うためにうそをいって
いたのだ。離婚さえさせてしまえば、こっちのものだからだ。

よく出来たサスペンス映画だ。冒頭、テニスボールがネットに当たって、向こうに落ちるか
こちらに落ちるかで、勝負が決まることがある。人生もまた・・・、という意味合いの
映像で始まるのだが、偶然が人生を決める、(子供が出来てしまう、出来ないも含め)
ということを、最後の暗示も含めて、提示できたと思う。
この映画では本人は出てこないが、出てこれないわなあ、この作風じゃ。
尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2007-10-06 23:10 | 洋画=ま行 | Comments(0)