2007年 10月 20日
グッド・シェパード The Good Shepherd
2006 アメリカ Universal Pictures,Morgan Creek Productions 167min.
監督:ロバート・デ・ニーロ 製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ他
脚本:エリック・ロス
出演:マット・デイモン、アンジェリーナ・ジョリー、ロバート・デ・ニーロ、アレック・ボールドウィン
タミー・ブランチャード、ビリー・クラダップ、ケア・デュリア他
CIAを作り上げていった男たちの話。グッド・シェパードとは聖書の中の言葉で良き羊飼い。
新作を封切の日に観にいったのは何年ぶりだろう。いつも行くシネコンが周年記念で
毎月20日はどの作品でも1000円なので、一人で出かけました。「ヘアスプレー」などは
後ほど奥さんと。
監督も、総指揮も、脚本も、出演者も豪華で、話しの内容も実話を元にしたものなので
私好み。で、初日に馳せ参じたわけです。長い上映時間なので、水分などは一切
口にせず、167分。正直長かった・・・。
印象。重い。暗い。カタルシス不足。事実に基づいているので、歴史的なバックグラウンド
は少し勉強してから観たほうがいいでしょう。ケネディ大統領時代のキューバ危機、
ピッグス湾襲撃失敗、などが判らないと、筋が見えてこないところがあり辛いと思います。
エリック・ロスのストーリーは、主人公エドワード(マット)の少年時代から今までの歴史と
1961年現在のキューバ危機周辺をカットバックしながら進行していきます。
内容が複雑なので、全体を理解するのにとても苦労しましたし、たぶん観た人はみんな
苦労するんじゃないかな。
第二次世界大戦間近のアメリカが舞台。イエール大学に通うエドワードは、父親が
海軍の将軍であったこともあり、若いうちから軍に誘われる。熱心に勧誘するのが
サリバン将軍(デニーロ)だった。それも軍事諜報機関のエージェントとして。
父親が軍の機密を守るために拳銃自殺をした現場に居合わせたトラウマなのか、寡黙で
笑顔を見せないエドワードだったが、図書館に通い勉強するうちに図書館で耳の悪い
女性ローラと出会う。お互いに好きあうのだが、そこに親友の妹クローバー(アンジェリーナ)
が現れた。積極的なクローバーはエドワードに近づき、そして妊娠する。
兄から責任を取れといわれ、ローラと別れ、クローバーと結婚する。そのころ欧州では
ナチの跋扈で風雲急を告げていて、エドワードもロンドンに諜報活動に派遣される。
残されるクローバーと子供。
そして、終戦までの6年間、家族は会うことが無かった。戦争が終わり国に帰った
エドワードは、馴染まない息子となんとか暖かい家族を築こうとしたが、国は許さなかった。
サリバン将軍は、これまでのOSS(軍事情報局)をCIAに改組し、ソ連を対象とした
諜報活動をすることになったので、エドワードの力を借りたい、と申し出る。
「良き羊飼い」のエドワードは、新しい諜報機関に身を投じる。
この映画の縦軸になるのだが、最初の方でキューバ進攻が失敗したのはCIAに内通者が
いたせいだ、といって犯人探しが始まるのだが、そこに映りの悪い写真数枚とベッドの
中の男女の会話を録音したテープが送られてきた。エドワードはCIAの技術部に解析を
依頼するのだが、これがラスト近くに衝撃の結果を生む。
大学に在学中から諜報部員としての教育を受けてきたエドワードは、サリバン将軍からも
「だれも信じるな」といわれていて、家族以外に気を許せる人間はほんの一握りしか
いない。いつもだれかに見られているようだし、誰の言葉も信用できないし、事実信じていた
人間に裏切られることもたびたびだった。
父親の愛情を受けることなくそだった長男も、母の大反対を押し切りCIAに就職する。
彼も「誰も信じるな」と教育されるのだった。そしてレオポルドビルで、現地の女性と
恋仲になり、スパイとしてはあるまじき秘密を話してしまう。これが米軍のピッグス湾進攻
作戦を失敗に導いた原因になったのだった。対立する親子ではあったが、父は息子を
守ると軍に申し出、そのかわりの条件を飲むことになる。軍から言われたセリフは
「息子を守るか、国を守るか」。あまりにも苛烈な条件。その条件とは・・・・。
結局CIAの副長官として招かれるエドワード。彼は国の「良き羊飼い」でしか生きられない
人間になっていたのだ。妻との愛も、息子との愛も、息子と妻となる女性との愛も
壊して、国を守ることを選んだのだ。不幸な男の話、ということでいいのか?
国家という巨大な組織に組み込まれ、個人の幸せを犠牲にしなければならなかった
ある男の物語ということか?ラスト、新しいCIA本部の中に消えていくエドワードの姿に
デ・ニーロは何を言わせたかったのだろうか。
この映画のキャッチコピー「いくつ愛を失くせばこの国を守れるのか。」
世界の警察を持って任じるアメリカ合衆国の素顔なのだろう。
捜査で知り合うイタリア移民の男が、「イギリスには○○がある、フランスには○○がある
ドイツには○○が、イタリアには○○、黒人には音楽がある。で、きみには何があるのかね」
と聴かれ、「アメリカ合衆国」とエドワードが応えるシーンがこの映画を代表している
かのようだった。(○○はそれぞれの国の名物。忘れてしまった)
(10月23日追記:以上を書いてからも、この映画のことをずっと考えていた。ネットで
観た方の感想も読んでみたりもした。時間が経ってから、思ったこと・・・・。
マット・デイモンを中心とした抑制した演技は、3時間の会話劇を飽きさせない圧倒的な
表現力を獲得していた。ラスト、新築なったCIAの建物に消えていく副長官になった
エドワードの背中は、改めて考えると、勝利者でもなく、ただの小男に見えた。
その背中には、「公」と「私」の間で、人生を「公」に大きく振った男の「虚無感」が見えて
いたのではなかったのか。
ピッグス湾事件についても復習してみた。CIAのやり方に激怒したケネディはCIAの
解体も口にしたが、それを実現する前にダラスで凶弾に倒れた。これを以って
CIA解体に反対する勢力の犯行ではないか、という説もあるとか。
尚この映画の詳しい情報は
こちらまで。
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おっしゃるとおり、難しい映画でした。
でも、マット&アンジーの演技が素晴らしいので、それで良しとしますw
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国益や冷戦の話が裏で進むから余計に混乱するんだろうなぁ。
途中で早送りしたら訳がわからなくなりそうだったので、粘って見続けたら、すごく長かった印象があります。
次の日は仕事なのに非常に寝不足でしたw