2007年 11月 17日
ブロードウェイと銃弾 Bullets Over Broadway
1994 アメリカ Miramax Films,Magnolia Productions,99min.
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ジョン・キューザック、ダイアン・ウィースト、ジェニファー・ティリー他
<1994年度アカデミー賞助演女優賞(ダイアン・ウィースト)受賞作品>
20年代のブロードウェイ。一人の売れない舞台作家が自らを発見していくまでを
ウディ独特のシニカルでヒューモアな視点で描く。いつもの爆裂セリフを喋るのは
今回はウディではなく、ジョン・キューザック。情けない、自信のない劇作家に嵌った
役であった。そして、アカデミー助演女優賞を獲得した、熟女女優をいい味で演じた
ダイアン・ウィースト。邦題の「と」は、原題の「over」とはややニュアンスが違うが、
「に」でもないし、まあ適当か。
閑話休題。ローリング20。ギャングが跋扈する禁酒法時代のNY。売れない劇作家
デイヴィッドは、何とか自分の劇を上演するパトロンを探していた。そこへ
歌もセリフもヘタッピーなオリーブという女優志望のレビューガールを、セリフたっぷりで
起用してくれるなら、資金を援助しようという申し出がきた。援助の主はギャングのボス
だった。レヴューガールは愛人だ。
なんとか本を完成して舞台の座組をつくる。主役にはヘレン・シンクレア(ダイアン)を
起用。この女優、デイヴィッドに何かと色目のようなものを使ってくる。挙句には
ディヴィッドも、歳の差を越えて恋愛感情をいだくようになる。しかし、ディヴィッドには
売れない時期を支えてくれていた恋人がいた。
上演に向けて稽古が進むが、やはりオリーブの素っ頓狂な演技は、舞台を台無しに
してしまう。しかし資金と繋がっているので切るに切れない。そんなオリーブの護衛に
付いているのがチーチという子分。こいつがなかなかの文才があり、ストーリーの
手直しのアドバイスをする。すると劇がどんどん面白くなっていく。さらにシンクレアの
アドバイスもあり、更に面白くなっていく。しかし、ガンはオリーブだ。
この劇が自分の劇だと思い始めたチーチは、オリーブの存在が許せない。ある夜、
家まで送るふりをして、桟橋で撃ち殺してしまう(殺人シーンそのものは無い)。
行方不明になったオリーブの代役が立ち、いよいよ劇は面白く、完成度の高いものに
なった。そして、まずボストンで公演。これが大評判になり、いよいよブロードウエイで
上演されることになった。初日、オリーブを亡き者にした犯人探しに躍起になるギャングの
ボスに、チーチは追い詰められ、舞台の袖で、子分に撃たれてしまう。その最後の
言葉も、芝居をこうしたら面白くなるというアドバイスだった。
翌日の新聞には、芝居を絶賛するコメントが並んだ。銃撃の音さえ効果音として激賞
されるありさま。自分の実力で舞台が成功したわけではないことを悟ったデヴィッドは
他の恋人に走ってしまった彼女を奪い返し、筆を折って、田舎へと帰って行ったのだ。
バックステージの事情はウディの得意とするところ。時代設定やギャングの登場、
ステージの居座るタレントレスなボスの愛人そのあたりまでは、よくある設定だが、
ボディガードのチーチの登場が、俄然この映画を面白くする。チャズ・パルミンテリという
俳優さんだが、演技の上手い下手というより、こういう人物を設定したことがウディの
勝利だ。いつものウディの映画のようにアクが強くないので、ストレートな娯楽映画に
仕上がっていると感じた。
尚この映画の詳しい情報は
こちらまで。