エデンの東 East of Eden

「エデンの東 East of Eden」
1954 アメリカ Warner Bros.115min.
監督・製作:エリア・カザン 原作:ジョン・スタインベック 音楽:レナード・ローゼンマン
出演:ジェームス・ディーン、ジュリー・ハリス、レイモンド・マッセイ、リチャード・ダヴァロス他
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いわずと知れた、ジミーの代表作。溢れる青春のエネルギーを伏せ目がちの目に蓄えて
はにかむジミーの姿に、圧倒される。
映画に序曲(オーヴァチュア)がある時代の、エリア・カザンらしい、映画が映画であった
ころの名作。ジミーは、この作品のあと、「理由なき反抗」「ジャイアンツ」と撮影し、
55年の9月30日に24歳の若さで、愛車ポルシェと共に私たちの前から去っていった。
主演はこの「エデンの東」が初なので、ぶっきらぼうな主人公キャル・トラスクは地なのか
演技なのか、ジミーそのものなのだろう。
彼を見出し、自分の映画に使ったエリア・カザンこそ、慧眼の持ち主というべきであろう。
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物語は、御存知のとおり聖書のカインとアベルを下敷きにしたスタインベックの名作を
アドプトしたもの。2時間弱に手際よく納まっている。
舞台は中部カルフォルにアのモンテレー(モンタレー)とサリナス。訪れたことがある町なので
親しみがある。サリナスはスタインベックの生誕地であり、モンタレーには彼の銅像もある。
サリナスは、ジミー演じるキャル一家がそうであるように、農業地帯で、私が訪れた時は、
一面のアーティチョーク畑だった。
時代は、第二次世界大戦の始まる前後。サリナスのレタス農家トラスク家の次男坊、
キャルは、父の愛情が所謂いい子の長男アーロンに厚く、気ままな振る舞いの多い自分は
冷たく扱われていると感じている。
父に褒められたい、とする行動も、認めてもらえない。

“It’s awful not to be loved. It’s the worst thing in the world.”
「愛されないのはつらいことです。この世の中で1番つらいことです。」

キャルは自分たちを捨てて、今はモンタレーで酒場を経営している母を突き止める。
兄弟は母は死んだと説明されていたのだった。
父アダムは、氷を貨物列車に積んで大陸を横断させ、新鮮なレタスをニューヨークで売る
作戦を立てたが、氷が解けて失敗。多額の借金を背負った。一方彼は町の徴兵委員会の
委員も務めていて、辛い作業が続いていた。何とか父に認めてもらいたいキャルは
母に5000ドルを借り、大豆相場に賭ける。これが戦争によって高騰し、キャルは大金を
手にすることが出来た。

一方、長男アーロンの恋人アブラは、実直だけのアーロンに息の詰まる思いも感じていて
弟のキャルにも惹かれていくのだった。
大金を手にしたキャルは、アブラを誘って、父の誕生会を開くことを計画、そこでビックリの
プレゼントとして、お金を渡そうとした。
そしてその日、アーロンはプレゼントとして、自分とアブラの婚約を伝えた。謹厳実直な長男
の婚約に「これほど嬉しいことはない」と手放しで喜ぶ父。そして、キャルから送られた
包み紙を破いて現れた現金には、「戦争でもうけた金を受け取ることはできない」と
冷たくあしらう。衝撃を受け、家を飛び出すキャル。追うアブラ。
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“I don’t want any kind of love any more. It doesn’t pay off!”
「僕はもうどんな愛も欲しくない。引き合わないんだから!」

その夜、キャルは兄アーロンに母は生きている、と告げ、会いに行こうとモンタレーまで
連れてくる。母子は対面を果たすが、母から告げられた、父の真実にアーロンは
激しく動揺する。勤勉が服を着て歩いているような父だったが、母から聞かされた父は
母をドレイのように束縛していたのだ。

父に裏切られたことを知り、兄は徴兵に応じ、素早く列車に乗って、欧州戦線へと出かけて
しまう。信頼して後を継がせようとした長男が戦争に行ってしまったことで、父は追いかけて
来た駅頭で、脳溢血で倒れてしまう。

一命は取り留めたものの、殆ど全身マヒになった父。友達の保安官は聖書のたとえを出し
キャルに町を出たらどうか、という。しかし、アブラは、父の自分の思いを今のうちに
伝えるように説得、そして、アブラ自身もキャルを愛する本当の自分に戻ろうと決意する。


ラスト、父の横たわるベッドにひざまずき、父に何かを耳打ちするキャル。涙が溢れている。
こんな目にあわせようとしたのではないのだ。愛されたかっただけなのに。
聖母のたたずまいのアブラ。一幅の宗教画を見る思いだ。ただ、キャルの心の転換が
早すぎていささか付いていけなかった部分もある。

シネマスコープの斬新なアングルをあざとく言う人もいるが、当時は新鮮なカットだったろう。
歩道に腰掛けたジミーをアオリで撮る、エデンの東 East of Eden_e0040938_23322350.jpg横長のシーンを斜めにして使う、ブランコを使って
奥行きを演出する、など54年当時では前衛的だったと思われる。
こういう名画を結構見逃している。折に触れて観て行きたいものだ。

原作では、この後がもっと悲劇的になるが、映画ではここまでとした。いいチョイスだと思う。

尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2007-12-05 23:20 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)