ブラック・ブック Blackbook

●「ブラック・ブック Blackbook」
2006 オランダ、ドイツ、イギリス、ベルギー 144min.
監督:ポール・ヴァンホーヴェン 原案・脚本:ジェラルド・ソエトマン
出演:カリス・ファン・ハウテン、トム・ホフマン、セバスチャン・コッホ、デレク・デ・リント他
ブラック・ブック Blackbook_e0040938_2163259.jpg

これは面白かった。重厚一方でもないし、エンタテインメントだけでもない不思議な感覚で
観終わる映画だ。終わり方がイマイチぱっとしないが・・・。
2回観ると、更に内容が判るが、どんでん返しや裏切りの仕組みのドキドキ感はない。
当たり前だが。

「ロボ・コップ」「トータル・リコール」の監督とは思えない趣きだが、リアルさを追求する人
らしく、表現はエロ・グロの寸止め。事実にインスパイアされたとはいえ、やはり原作と
脚本が良く出来ているし。オランダ史上最高の制作費をつぎ込んだというだけあり、画面は
ダイナミックで、見ごたえがある。出来れば映画館で観たかった。これ、去年あたり
評判になったかな。有名な俳優が一人も出てないから人が入る映画ではなかったのだろう。
それにPG-12だし。でも、出来はいい。賞を獲っていないのが不思議だ。

戦争の悲惨さを訴えてはいるのだが、エンタテインメントとの中途半端がいけなかったのかな。
こんな作り方もあり、だと思うのだが。

物語は1956年のイスラエルから始まる。観光でキブツを訪れたロニーは、学校の先生を
しているラヘル・シュタイン(カリス)の姿を見る。二人は大戦下のオランダで苦楽を共にした
中だったのだ。奇妙な出会いをする二人。 当時の思い出が涙と共に蘇るラヘル。

1944年9月。オランダ。かつて歌手で今は農家の屋根裏に潜んでいるユダヤ人ラヘル・
シュタインは、逃げてきた英空軍の爆撃機が捨てていった爆弾が隠れ家に当たり、逃げ場を
失う。
ブラック・ブック Blackbook_e0040938_2182112.jpg

彼女を助けた若い男と逃げるが、やがて、別れ別れになっていた家族と落ち合うことが
出来た。彼らは裕福なユダヤ人で、公証人の名簿から、ナチの手を逃れる家族のリストが
作られ、財宝と身一つだけで集められた。船に乗り、夜陰にまぎれて逃亡するはずが、
運河に突然ナチが現れ、全員が射殺されてしまう。ラヘルの家族も目の前で射殺された。
彼女は川に飛び込み、九死に一生を得た。

ラヘルはオランダのレジスタンスに入り、名前もエリス・デ・フリースと変えて、ナチの軍人
ムンツェ大尉に接近、情報を仕入れる役を担うことになった。
ブラック・ブック Blackbook_e0040938_21122281.jpg

ムンツェは、終戦が近いこと
を察知し、無駄な殺し合いを避けるためレジスタンスと交渉していたのがが、これを面白く
思わないフランケン中尉と対立していた。フランケンこそ、ラヘルの家族を射殺した一隊を
指揮していた人物だっだ。
ブラック・ブック Blackbook_e0040938_2193010.jpg

ブラック・ブック Blackbook_e0040938_21102529.jpg

ムンツェはラヘルがユダヤ人だと判ったが、愛人としての生活を認めていた。
やがてラヘルはムンツェの部屋に隠しマイクを仕掛けることも成功、情報を得たレジスタンス
は、捕らえられた仲間を救うため、司令部に攻撃をしかけることになる。
しかし、この攻撃は情報が漏れていて、殆どの仲間が殺されてしまう。リーダーのハンス・
アッカーマンと一人のみが帰ってきた。
ラヘルは、フランケンのたくらみで、隠しマイクからニセの情報を流され、裏切ったのは
ラヘルということになってしまった・・・・。

144分の物語はとてもじゃないけど書ききれないが、ナチ同士の対立、レジスタンスの
中での対立や裏切り、あれあれ、という裏切りの連続で、長い映画だが決して飽きないし
眠くなることはない。ラヘルの「悲しみはいつまで続くの!!」という悲鳴が、ユダヤ人の悲劇を
象徴していて悲しい。
戦争は、人間の本性をむき出しにし、誰もが自分が可愛いゆえに、他人を裏切り、仲間を
売る。そんなことが判っていても唾棄したくなる、現実がそこにある。
身を捨てて、家族のカタキと取る、愛してしまったナチの軍人(彼もハンブルグの空襲で家族
を失い一人身となっていたのだった)との思いを遂げようとするラヘルに次々に裏切りの罠が
襲い掛かる・・・。
ブラック・ブック Blackbook_e0040938_21112998.jpg

リアリズムに徹したヴァンホーヴェンの描写は好き嫌いあるだろうが、私は、逃れることの
出来ないユダヤの悲劇を表現するのには避けては通れないと感じたが・・。
主役のラヘルを演じたカリス・ファン・ハウテンという女優さん(たぶんオランダの人だろう)
の体当たりの演技に感服。
屋外、屋内、ロング、アップとテンポのある映像は印象深い。インスリンとチョコレート、お棺
など小道具も良く効いている。
歌手として成功したかっただろう
ラヘルが何を思ってイスラエルに移民したのか。それはユダヤ人である彼女しか判らない
だろう。あれだけ裏切られたら、人間不信になってしまうなあ。
最後のところで、レジスタンスのリーダーの一人、カイパースに理解してもらえたことだけでも
ほっとした。力のある映画だと感じた。
ちょっと残念だったのは、ヒトラーの誕生日を祝うパーティーで歌うラヘルのバックバンドの
ドラムセットが現代のもので、一際違和感を放っていた・・・。ドラマー経験者じゃなければ
判らないことだけどね。
なおこの映画の詳しい情報は

こちら
まで。
Tracked from 茸茶の想い ∞ ~祇園精.. at 2008-02-10 17:40
タイトル : 映画『ブラックブック』
原題:Zwartboek/Black Book 観終えたあとにもう一度キブツ・シュタインのシーンを観返してしまった。聖地巡りの観光で訪れていたのは確かにあの色気と笑顔で逞しく生き抜いた彼女・・・ ユダヤ人女性歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)はナチスドイツ占領下で家族と... more
Tracked from 利用価値のない日々の雑学 at 2008-02-10 18:16
タイトル : ブラックブック ~新作DVD~
1944年第二次世界大戦禍、ナチスの占領下にあった「オランダ」が舞台の作品を、オランダ人監督の、ポール・ヴァーホーベン、オランダの女優、カリス・ファン・ハウテンの主演で、オランダ・ドイツ・イギリス・ベルギーの4国合作で製作された期待の作品である。 ポール・ヴァーホーベンといえば、「ロボコップ」、「トータル・リコール」や「スターシップ・トゥルーパー」で、確かに「氷の微笑」などもあるが、前者の様な作品以外は、超不評作品となった「ショーガール」などもある意味代表的で、果たしてこういう社会派テーマをどの...... more
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-02-10 20:28
タイトル : ブラックブック
 『この愛は裏切りから始まる』  コチラの「ブラックブック」は、第二次世界大戦を背景に、オランダ映画界史上最高となる25億円の製作費をかけ、壮大なスケールで描かれたサスペンス・エンターテインメントで、3/24に公開となっていたのですが、観て来ちゃいましたぁ〜....... more
Tracked from ミチの雑記帳 at 2008-02-10 21:13
タイトル : 映画 【ブラックブック】
映画館にて「ブラックブック」 ポール・ヴァーホーヴェン監督が故国オランダで撮ったサスペンスドラマ。 1944年、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。若く美しいユダヤ人歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、オランダへ逃げようとするが、何者かの裏切りによって両親や弟をナチスに殺されてしまう。復讐のために名前をエリスと変えた彼女は、レジスタンスのスパイとしてドイツ将校ムンツェに美ぼうと美声を武器に近づく。 『シンドラーのリスト』や『戦場のピアニスト』のような作品かと想像していたら全く違うテイストの作...... more
Tracked from ★YUKAの気ままな有閑.. at 2008-02-10 21:36
タイトル : ブラックブック
レンタルで鑑賞―【story】1944年、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。若く美しいユダヤ人歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、安全な地へ逃れる途中にナチスに両親と弟を殺されてしまう。彼女は名前をエリスと変えレジスタンスに身を投じ、レジスタンスの仲間ハンス(トム・ホフマン)らに命じられ、ドイツ将校ムンツェ(セバスチャン・コッホ)に近づくが―   監督 : ポール・ヴァーホーヴェン 『氷の微笑』 『スターシップ・トゥルーパーズ』                          『インビジブル』【...... more
Tracked from カノンな日々 at 2008-02-10 21:48
タイトル : ブラックブック/カリス・ファン・ハウテン
けっこう話題の大作だと思ってたんだけど上映してるとこは意外と少ないんですよね。私は川崎のチネチッタで観たんだけど小さいキャパの劇場が割り当てられていたせいかかなりの盛況ぶりでしたよ。春休み映画としては他の作品に集客力で劣るのかな?確かに子供向けアニメって....... more
Tracked from 銅版画制作の日々 at 2008-02-10 22:43
タイトル : ブラックブック 信じることが出来るのは自分だけ?!
鬼才ポール・バーホーベン監督待望の最新作『ブラックブック』 セバスチャン・ゴッホ、 カリス・ファン・ハウテン、 トム・ホフマン 京都シネマにて鑑賞、「氷の微笑」や「ショーガール」などの作品でお馴染みのポール・バーホーベン監督が23年ぶりに故国オランダに戻って完成させた最新作『ブラックブック』かなり当時の状況を20年という長い年月をかけて、構想を練り、脚本を書いた2006年のベネチア国際映画祭でベールを脱いだこの作品は、第二次世界大戦を背景にひとりのユダヤ人女性エリスの波乱の半生を描いた素晴らしい映...... more
Tracked from レンタルだけど映画好き  at 2008-02-10 23:32
タイトル : ブラックブック
この愛は裏切りから始まる 2006年 オランダ/ドイツ/イギリス/ベルギー レンタル開始日2007.8.24 冒頭とラストの映像・・・「そうきたか」といった感じです。 戦争映画だけど、レジスタンスに身を投じた女性が主人公で今までにない視点から観る事ができます。人を信じるな!と言われても信じたいよね。 ブラックブック 監督 ポール・ヴァーホーヴェン 出演 カリス・ファン・ハウテン/トム・ホフマン/セバスチャン・コッホ/デレク・デ・リント/ハリナ・ライン/ワルデマー・コブス/ミ...... more
Tracked from Akira's VOICE at 2008-02-11 10:28
タイトル : 秘密の本
「あなたになら言える秘密のこと」 「ブラックブック」 ... more
Tracked from 我想一個人映画美的女人b.. at 2008-02-11 11:01
タイトル : ブラック・ブック/ BLACK BOOK
『ショーガール』{/fuki_suki/}で、ゴールデンラズベリー賞(通称ラジー賞) (愛すべき(たぶん)"最悪"映画賞) 受賞経験アリの、ポール・バーホーベン監督の久々の最新作!! なんだかんだ言ってもわたし、 ポール・バーホーベン作品好きだなぁ{/hearts_pink/} 監督が23年ぶりに故国オランダに 戻って完成させたという本作、史実に基づきながら 20年以上構想を練りバーホーベン自身が脚本を書き上げたという。 (共同脚本はいつもコンビのジェラルド・ソエトマン)。 今年のアカデミー賞外...... more
Tracked from 映画鑑賞★日記・・・ at 2008-02-11 17:36
タイトル : ブラックブック
【BLACK BOOK】公開:2007/03/24製作国:オランダ/ドイツ/イギリス/ベルギー PG-12監督:ポール・ヴァーホーヴェン出演:カリス・ファン・ハウテン、トム・ホフマン、セバスチャン・コッホ、デレク・デ・リント、ハリナ・ライン1944年、ナチス占領下のオランダ。美しいユ...... more
Tracked from きららのきらきら生活 at 2008-02-11 23:21
タイトル : 映画〜ブラックブック
 「ブラックブック」公式サイト本年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品鬼才ポール・ヴァーホーヴェン監督が23年ぶりに故国オランダに戻り、過酷な運命に翻弄されながらも戦火の中で生き抜く女性の壮絶なドラマ。1944年、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。若く美しいユダヤ人歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、オランダへ逃げようとするが、何者かの裏切りによって両親や弟をナチスに殺されてしまう。復しゅうのために名前をエリスと変え、髪の色も変えた彼女は、レジスタンスのスパイとしてドイツ将校ムンツェ(セバスチ...... more
Tracked from ひらりん的映画ブログ at 2008-02-12 02:01
タイトル : ★「ブラックブック」
戦争モノは苦手なひらりんですが・・・ 予告で見た女優さんが綺麗っぽかったので、ついつい。 春休みで、他に見るものもなかったし・・・。... more
Tracked from 楽蜻庵別館 at 2008-02-13 10:23
タイトル : <ブラックブック> 
2006年 オランダ・ドイツ・イギリス・ベルギー 146分  原題 Zwartboek 監督 ポール・ヴァーホーヴェン 原案 ジェラルド・ソエトマン 脚本 ポール・ヴァーホーヴェン  ジェラルド・ソエトマン 撮影 カール・ウォルター・リンデンローブ 音楽 アン・ダドリー 出演 カリス・ファン・ハウテン  セバスチャン・コッホ  ハンス・アッカーマン:トム・ホフマン    デレク・デ・リント  ワルデマー・コブス  ハリナ・ライン  ドルフ・デ・ヴリーズ... more
Tracked from ミーガと映画と… -Ha.. at 2008-02-20 16:54
タイトル : ≪ブラックブック≫(WOWOW@2008/01/14@0..
ブラックブック   詳細@yahoo映画 第二次世界大戦ナチス・ドイツ占領下のオランダで、 家族をナチスに殺された若く美しいユダヤ人歌手の復しゅうを描いたサスペンス 主演の“カリス・ファン・ハウテン”はちょっと雰囲気が“キルスティン・ダンスト”っぽ... more
Tracked from cinema!cinem.. at 2008-02-21 01:56
タイトル : 『ブラックブック』
ブラックブック「氷の微笑」「ショーガール」「スターシップ・トゥルーパーズ」などの作品で知られるポール・ヴァーホーヴェン監督が母国オランダにて製作した戦争ドラマ。ドイツナチスの占領下に置かれたオランダで、ユダヤ人歌手のヒロインが非難途中に家族をナチス軍に...... more
Tracked from おきらく楽天 映画生活 at 2008-03-14 23:18
タイトル : 『ブラックブック』を観たぞ〜!
『ブラックブック』を観ました第二次世界大戦ナチス・ドイツ占領下のオランダで、家族をナチスに殺された若く美しいユダヤ人歌手の復しゅうを描いたサスペンスドラマです>>『ブラックブック』関連原題:BLACKBOOKジャンル:サスペンス/戦争/ドラマ上映時間:144分製作国...... more
Tracked from あず沙の映画レビュー・ノート at 2009-02-14 10:17
タイトル : ブラックブック
2006 オランダ,ドイツ,イギリス,ベルギー 洋画 ミステリー・サスペンス 戦争ドラマ 作品のイメージ:カッコいい、ドキドキ・ハラハラ 出演:カリス・ファン・ハウテン、セバスチャン・コッホ、トム・ホフマン、ミヒル・ホイスマン テンポの速いストーリー展開で観るものを飽きさせない。サスペンス・ドラマとしては充... more
Commented by turtoone at 2008-02-10 18:24
ドラムセット気がつきませんでした。
(結構、粗捜し得意なのですが・・・)
jazzyoba008さまはドラマーですか。私はそもそもキーボードだったのですが、その後ベーシストに転身しました。(本当にサックスがやりたかったのですが・・・)
音楽のジャンルはプログレ&少しフュージョンでした。(でしたというだけに過去の栄光です)

この作品大好きです。特に、カリス・ファン・ハウテンが綺麗に撮られています。私は映画の大原則のひとつとして女優を綺麗に撮ることが必要不可欠だと勝手に思っておりますので・・・。

DVDも持っているので、ドラムセットの確認をしてみます。

Commented by みのり(楽蜻庵別館) at 2008-02-15 11:02 x
わたしも上の方と同じ事を書こうと思ってました。 ドラムセットのこと全然気付きませんでした。 わたしも今はやってませんが、キーボード担当でした。
Commented by jazzyoba0083 at 2008-02-15 23:14 x
みのりさん、コメントありがとうございます。いつもTBも有難う!
ドラムセットは、些細な粗捜し。でもこういう専門的な粗って
私の専門外でも、結構あるんじゃないでしょうか。ドラムから遠ざかって久しいです。メロディー楽器できる人、尊敬します!
by jazzyoba0083 | 2008-02-08 23:32 | 洋画=は行 | Trackback(18) | Comments(3)