2008年 03月 01日
ボビー Bobby
2006 アメリカ TWC,Bold Films,120min.
監督・脚本:エミリオ・エステヴェス
出演:アンソニー・ホプキンス、ハリー・ベラフォンテ、デミ・ムーア、シャロン・ストーン
ジョイ・ブライアント、エミリオ・エステヴェス、アシュトン・カッチャー、ヘレン・ハント
リンジー・ローハン、イライジャ・ウッド、マーティン・シーン、ウィリアム・H・メイシー他
1968年6月5日、JFKの後を継いだリンドン・ジョンソンの次期大統領選不出馬宣言を
受けて、民主党の候補に指名されることが確実であり、大統領になるだろうこともほぼ
確実視されていた上院議員ロバート・ケネディは、カリフォルニア州の予備選挙に勝利。
アンバサダーホテルで勝利宣言をし、厨房を抜けてホテルを退出する時、サーハンー=
サーハンに射殺された。兄に次いで弟までも。そのわずか2ヶ月前にはマーティン・ルーサー・キング牧師もメンフィスで射殺されていた。
当時高校1年生。まだ大学紛争華やかなりし時代で、多感な青年であった私にとって
この事件は、大変印象深い記憶がある。ボビーは翌日に亡くなったのだが、朝、その
ニュースに接し暗澹たる気持ちで通学の電車に乗っていたリベラルな青年は、車中で
スポーツ紙をのんきに眺めているサラリーマンが許せなかった。
アメリカが泥沼から抜け出せない危機にあるとき、そんな姿の大人が許せなかった。
随分自分勝手な怒りだが。
その時、新聞に載っていた写真も良く覚えている。白い厨房着を着た人物に頭を少し
引き上げられ、薄目を開けて、血を流しているボビー。その手にはロザリオがあった。
この映画は、そのボビーの撃たれた頭を持ち上げて介護しているメキシコ人の青年を
狂言回しに使っているので、いっそう気を入れて観る事ができた。
ボビーが撃たれる日のアンバサダー・ホテルの、様々な人生を積み木のように描いていく
いわゆる「グランド・ホテル」形式のドラマ。
冒頭ホテルの厨房で、メキシコ人が労働条件が悪い、ドジャーズの試合にいけなくなる
などの問題を抱え、黒人と職の取り合い状態になる、下層階級の労働環境の悪さを
提示するところからスタート。
リベラルな支配人と、ホテルの美容室で働く妻、支配人の浮気相手の電話交換手、
ホテルの老ドアマンと友達、株屋と奥さん、ボビーの選挙スタッフたち、そしてキャンペーン
を手伝う青年二人はLSDを初体験し、トリップしてしまう。
ベトナム戦争に行かせないために男友達と、形だけの結婚式を挙げようとする女性。
そして予備選のパーティーで歌う盛りを過ぎたアル中歌手(デミ)など、ホテルで
働き、ホテルつどう人間模様を描きつつ、ボビーの暗殺の瞬間を迎える。
当時アメリカは、ベトナムの泥沼から抜けられず、国内では白人と黒人の対立、貧富の差の
拡大、若者の退廃的な文化など、息が詰まりそうな閉塞状況が続いていた。
ボビーの演説には、そんな閉塞感を吹き飛ばしてくれる夢が語られていた。銃弾がボビーの
命を奪うまで、ほんの短い間、アメリカ人は夢を見ていたんだな、明日の希望をボビーに
見ていたんだな、と感じる。
ロバート・ケネディという政治家は、フーヴァーを筆頭とするCIA、マフィア、労働組合のボス
たち、軍需産業、など司法長官時代の強行な司法行政の反動で敵も多かったという。
早々たるスターが並ぶが、政治的な背景などはあまり感じない。普通の人の普通の生活の
中で見ていた未来への光を希望を一発の銃弾は奪った、ということをいいたかったのだろう。
だから、敢えて政治向きの話は避けたに違いない。そのあたりを覚悟しないと、見方を
誤り退屈な映画となってしまうかもしれない。
ホテルの厨房スタッフを演じ、このドラマの狂言回しを勤める優しい顔のメキシカン、
フレディ・ロドリゲスが、名優たちに混じっていい感じだった。
バラク・オバマが、ボビーと重なる。今のアメリカの閉塞状況も当時と良く似ている。
アメリカという国は、JFKやボビー、ノーベル賞の活動家を銃で殺されていても銃を規制しない
国なんだな。アジアの農耕民族には信じられない世界だ。
この映画の詳しい情報は
こちらまで。
『1968年6月15日、 アメリカの希望ロバート・F・ケネディ暗殺。 世界の運命が、変わるとき――。彼らは何を見たのか。』 コチラの「ボビー」は、2/24公開になるボビーことロバート・F・ケネディが暗殺された日に、事件が起こったアンバサダーホテルに居合わせた人々...... more
2007年4月上映 監督:エミリオ・エステベス 主演:アンソニー・ホプキンス他大勢w 暗殺事件当日に居合わせた22人の人間模様を描く社会派群像ドラマ・・スゴイ俳優陣に驚きw...... more
そうですね。
このような惨事になっても、アメリカという国は残念ながら銃を肌身離すことは出来ないようです。
軍需産業が絡んでいたと私も聞きましたが、その辺りが本当の背景なら、更に残念であり、永遠にアメリカと銃は切り離すことが出来ないのかもしれないと感じましたね。