帝銀事件 死刑囚

●「帝銀事件~死刑囚」
1964 日本 日活 116分 モノクロ
監督・脚本:熊井啓
出演:信欣三、内藤武敏、井上昭文、高野由美、笹森礼子、鈴木瑞穂、山本陽子他
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昨年(2007 5月)に亡くなって一年が経つ、社会派監督熊井啓が脚本も手がけた
日本の重厚な社会派映画。傑作か、といわれれば「う~む」といわざるを得ないが。
この「帝銀事件」はドキュメント好きな私としては非常に興味のあるテーマで、松本
清張の小説も読んだし、この映画もたぶん二度目だとおもう。

戦後の混乱期には、進駐軍が絡んだと思われる怪事件が相次ぐ。「三鷹事件」「下山
事件」「三河島事件」そして「日航機木星号三原山墜落事件」などなど。そのあたりは
清張の「日本の黒い霧」シリーズに詳しい。

この「帝銀事件」も陸軍731部隊の存在と米軍との取引のなかで、平沢が犯人にでっち
挙げられた、という説は根強い。映画は実写フィルムも混ぜながら、当時の映画の定番で
あったナレーション付きで進んでいく。

『昭和二十三年一月二十六日の午後三時すぎ、豊島区の帝国銀行椎名町支店に、
中肉中背の中年の男が訪れた。男は東京都衛生課、厚生省医学博士の名刺を出し、
赤痢の予防薬と称して、進駐軍の命により予防薬を行員、家族十六名に飲ませた。

ピペットで白濁の液を茶碗に分ける手つきは、職業的な鮮かさであった。が、数分後、
その液を飲んだ行員は、苦悶の絶叫とともに、血を吐いて倒れていった。犯人は、現金、
証券十八万円を奪って逃走した。
警察、新聞、国民の眼は一斉に活動を始めた。昭和新報の敏腕記者、大野木、笠原、
武井らも動き始めた。被害者のうち十二名が死亡していた。毒物の捜査班は、
犯人の使った青酸性化合物が、終戦直前、七三一部隊で極秘裡につくられた毒物と
知った。
武井は七三一の生き残り将校佐伯に会い、毒物について、追求したが、佐伯は語ろうと
しなかった。

デスクの大野木は、その直前GHQのバートン主席から、七三一部隊を追求するのを
やめるよう注文された。一方国木田警部補ら名刺捜査班は、名刺の所有者である、
モンタージュ写真に似た画家平沢貞通を逮捕した。事件直後、かなりな金を預金して
いるのだ。首実検の結果、大半は彼を否定し犯人と言いきる者は一人もいなかった。
国木田と森田検事は、筆跡鑑定の結果クロをもって、執拗に食いさがった。九月、
平沢はついに真犯人であることを自供した。しかし、彼はすぐそれをひるがえした。
強圧的な肉体的、精神的尋問に耐えられず自白したというのだ。
しかし、東京地方裁は、死刑を宣告し、東京高裁も死刑を確定した。だが、刑の執行は、
いまだに行われない。彼は、仙台宮城刑務所に移送されているのだが……。娘の
俊子は、国籍を捨てアメリカに渡っていった。そして、それからみつけられた数々の事実は、
平沢のシロを証明するものばかりなのだが……。 』(C)キネマ旬報

この中で新聞記者(武藤武敏)が、最高裁で死刑判決が出たあとにしみじみ言うセリフ
「俺たちの報道が、国民に間違った印象を与えてしまったとしたら・・・」
これは、まさに現在の「光市母子殺人事件」の裁判に代表されるような、メディアによる
スクラムを指弾されているといえるのだ。

旧刑訴法の自白主義、戦後の混乱、新聞などが現場を土足で荒らしてしまったりする
メディアの未熟、これらが、平沢という獄死の人を生んでしまったのだ。

ただ、映画は、最後、仙台刑務所にいる平沢のアップで終わるのだが、映画としての
結末としては弱い気がする。
この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
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Commented by オンリー・ザ・ロンリー at 2010-04-17 21:56 x
子供の頃に見た犯罪映画は本作と「真昼の暗黒」が今でも鮮明に残っています。それにしても人命を奪わなかった「3億円事件」と「帝銀事件」が戦後の芝居がかった、不謹慎ですがスティング(ひっかけ)な事件ですね。 
1996年とあるのはDVD化した年ですか?。製作年そのものでしたら1960年代だった筈ですが。
Commented by jazzyoba0083 at 2010-04-17 23:12
オンリー・ザ・ロンリー さん。間違いのご指摘ありがとうございました。1964年が正解です。訂正しておきました。
「帝銀事件」の頃というのは米軍がらみの不可思議な事件が
多発していました。映画のネタとしては失礼ながらとても
面白いと思います。今の時代、作る必要もないのでしょうが。
by jazzyoba0083 | 2008-04-21 22:55 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(2)