2008年 05月 25日
チャーリー・ウィルソンズ・ウォー Charlie Wilson's War
2007 アメリカ Universal Pictures,Playtone,Paticipant Production 102min.
監督:マイク・ニコルズ
出演:トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス他
名作「卒業」のマイク・ニコルズ、御歳76歳になって、この怪作!豪華アカデミー俳優3人の
演技を見るだけでも十分に楽しい。が、アフガン問題などの経緯を知らないと、ちょっと
辛いかもしれない。お気楽な議員の実話を綴って見せたかのように見せて、実は、9・11に
繋がる原点の1つを提示しているのだ。アフガンをソ連から開放した英雄として描かれる
実在の下院議員チャーリー・ウィルソン、最後に、「最後に失敗してしまったけどね」と
字幕にでるが、この失敗こそ、タリバンを生み、オサマ・ビンラディンを育ててしまった根っこと
なっているわけだ。
ラスベガスのジャグジーで、美人のモデルをはべらせ、テレビプロデューサーに「ダラス」の
ワシントン版を作るための出資をねだられている、テキサス州選出の下院議員チャーリー
(ハンクス)は、酒と女好きのお気楽議員。テレビではダン・ラザーがアフガンから
現地リポートを伝えている。共産ソ連の進攻に、アフガンが喘いでいる実情だ。
チャーリーは何かを感じた。共産主義者にアフガンを渡してはいけないんだ、と。
議会に戻ってみると、アフガンへの支援は500万ドル。これをまず1000万ドルに増額させ
さらに、パトロンにして恋人のテキサス6位の富豪、ジョアン・ヘリング(ロバーツ)からも
アフガンの虐げられた人々を何とか救って、と頼まれる。
CIAのアフガン担当、ガスト(ホフマン)の協力を得て、現地に飛んだチャーリーは、難民
キャンプで、また隣国パキスタンで、ソ連のヘリを落とす武器さえあれば、何とかなるのに、
と強く感じたのだ。帰国して、下院議会議長を、篭絡し、予算を1億ドルまで増額することに
成功した。
アメリカが直接武器供与すると、アメリカの介入がばれるので、ソ連製の武器を多く抱える
イスラエルから武器を買い付け、パラシュートでアフガンのムジャヒディンに落とした。
この作戦で戦況は劇的に反転し、ソ連軍は進攻を諦め、撤退していったのだ。チャーリーは
アフガンを共産化から救った英雄となった。彼は、国民の半分が14歳以下のアフガンに
100万ドルで学校を作ろうと議会に働きかけるが、「もうアフガンはいいだろう」と言われて
しまう。CIAからの報告では「過激派が流入している」という評価も無視されてしまった。
映画の中でも言われていたが、アメリカは介入して放り出す悪い癖があると。事実、
アフガンでも真の民主化に力を入れていれば、(歴史にタラレバはないが)、タリバンも
ビンラディンもでてこなかったかもしれない。
チャーリーのとった行動は「喜劇」であり「悲劇」であった。
得てして長くなりがちなこの手の映画を2時間未満にまとめ、セリフの量はやや多いが
飽きさせずに引っ張っていくのはさすがに老獪な手法だ。チャーリズ・エンジェルと
呼ばれる秘書軍団や、エイミー・アダムス演じる助手ボニーの脇役もいい。
キリスト教的な善意が、結局救いになっていないというベトナムやイラクの悲劇が
チャーリー・ウィルソンという一人の典型的なアメリカ人議員を通して描かれていると感じた。
この映画の詳しい情報は
こちらまで。
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