2008年 07月 05日
オール・ザ・キングズ・メン All The King's Men
2006 アメリカ Columbia Pictuers Co.Phoenix Films.128min.
監督・脚本:スティーヴン・ザイリアン
出演:ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、アンソニー・ホプキンス他
1949年にアカデミー賞作品賞、主演男優賞など3部門を獲得した同名の映画のリメイク。
原作は、ロバード・ベン・ウォーレンのピュリッツアー賞受賞作。
豪華な俳優が並んだ割には、なんだかなあ、という出来だった。49年のオリジナルを観て
いるが、あちらは筋がハッキリしていて、一人の正義感溢れる田舎政治家が、政治家として
大物になるに従って自分もかつて指弾していた金と権力に捕らわれて堕ちていく様が
実に力強く描かれていたが、本作は、俳優に拠った部分が多かったのか、脚本家が監督を
やる悪い例なのか、話が複雑で、原作本来の持つ主張が薄れていた。
1949年、ルイジアナの田舎町の正義感溢れる出納官ウィリー・スターク(ショーン・ペン)は、
学校建築に絡む汚職を告発し、逆に職を追われる。しかし学校の教師である妻にも支えられ、
さらに突然現れたダフィという男に誘われ、更なる正義を行うため、州知事選に立候補する。
汚職の舞台になった学校の階段が崩れ、3人の生徒が亡くなるという悲劇も彼を後押しした。
しかし、大舞台の選挙での演説が苦手なウィルは、大衆をアジることが出来なかった。
ある日、二日酔いで頭も痛かったのもあり、原稿なしで演説してみたところ、これが素晴らしい
演説となり、聴衆の心を捉えた。地元の石油会社や電力会社に搾取されている黒人労働者
を始めとする貧困層に圧倒的な支持を得たウィリーは地すべり的な勝利を得る。
州知事になると、道路を整備し、学校を建て、橋を架け、貧困層から税金を取らない
という善政だが、財政的には無謀な(財源を石油資本や電力会社への重税でまかなった)
行政で、財界や地元保守派と対立していた。
そして、次第に権力と金に溺れていく。彼を知事選にとたきつけたタフィは実は敵陣から
送り込まれた男で目的は、彼を立候補させることでもう一人の対立候補の票を二分させる
ことであった。しかダフィはウィルの陣営にとりこまれる。ウィリーは彼を側に置くのは
二度と他人のおだてに乗らないようにするための戒めの印だ、というのだ。
こんなストーリーが地元クロニクル紙の敏腕記者ジャック(ジュード・ロウ)によって語られ
ていく。ジャック自身も、取材するうちに新聞会社を辞め、ウィリーの側近になり、彼の
ダーティーな仕事に巻き込まれていく。
ウィリーの汚職の噂に議会が弾劾を主張し始めたのだが、判事(A・ホプキンス)がこれに
賛同する主張をしていることをに対し、ウィリーは判事の弱みを握れ、とジャックに指示する。
アーゥイン判事はジャックの実父のような存在のひとで育ての親でもあった。
彼に弱点はない、と言っていたジャックだったが、ウィリーにしつこく言われて過去を調べる
うちに、判事の座にあるのは、前知事との取引きがあったことに行き着く。
そして証拠の手紙を手に入れ、判事と対峙するが、判事はウィルの弾劾を取り下げるつもり
はなかった。さらにジャックに対し「君の大きな弱みも言うことも出来るんだよ、でも言わないが」
と謎の言葉を残す。
そして彼は自殺する。母親の絶叫で、実は判事はジャックの実の父であったことが判ったのだ。
一方、ジャックの親友アダムと妹のアン(ケイト・ウィンスレット)。3人は子供の頃からの
親友で、アンはジャックを愛していた。彼らの父こそ、前知事であった。
ウィリーは自分の名前を付けた病院を建て、そこの病院長にアダムを連れてこいとジャックに
指示する。アダムはこれを受けるが、どうも前知事の支持層の懐柔策の臭いがする。
そしてジャックにアンとウィリーが愛人関係にあるという情報が入る。信じられないジャックだが
アダムが自分がウィルの金儲けに利用されていることを察知し妹の愛人のためには
何も出来ないと家を出て行ってしまう。
ジャックの元に助けを乞いに来たアンだったが、ジャックにも知事と寝た女に協力する気は
ない。
そうこうするうちに、弾劾を議決する議会が開かれ、弾劾案は否決された。勝ち誇るウィリー。
議事堂のホールでジャックを見つけ近づこうとしたことろに、アダムが近づき、ウィリーに
数発の銃弾を打ち込んだ。アダムもボディガードにたちまち射殺されてしまう。
人間の弱み、といったものは誰にでも形はどうあれある、ということは判るが、人間関係を
もう少し整理した方が良かった。それと主人公はウィリー・スタークという男であり、
ストーリーテラーである記者は主人公でないのに、そのあたりがあいまいになってしまった。
アンが知事と寝たのも何故か良く判らない。アダムが心に病を得ていたことも説明不足。
ショーン・ペンとジュード・ロウの演技自体に文句はないのだが。
オリジナルがアカデミーを獲得したことと比較すると、スタイルに気が行き過ぎて、同じ原作
を戴く映画としてのダメさ加減が判ると思う。オリジナルの監督、ロバート・ロッセン(製作・
脚本も)は自ら赤狩りにあい不条理な転向を強いられた人だけに、腐敗政治の告発表現に
力がある。主演男優賞に輝いたブロデリック・クロフォードの演技も素晴らしかった。
モノクロだが一度ご覧になることをお勧めする。
この映画の詳しい情報は
こちらまで。
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ほほう、そんなに旧作品はお勧めですか?
アカデミー賞を複数部門受賞していると言うことからも期待できますので、機会があったら見たいと思います。
古い名作を探すなら、新しい珍作映画を見たいんですけどねぇ。
好みでしょうが、私は同じ原作なら旧作に軍配です。
機会があれば一度是非。本作のショーン・ペンの演技そのものは評価したいと思います。この人、最近ホントに外れがないですね。