2008年 09月 06日
鯨が来た時 When the whales came
1989 イギリス Golden Swan,101min.
監督:クライヴ・リーズ
出演:ポール・スコフィールド、マックス・レニー、ヘレン・ピアース、ヘレン・ミレン他
静かに時が流れる101分。基本はファンタジーなのだが、実在する島や第一次世界大戦
なども織り込まれ、お子さま向けの映画ではない。
1914年のイギリス南西部のシリー諸島が舞台(現実にある島で、ロケも全てここで行われた
という)。対岸のサムソン島から来たバードマンと呼ばれる耳の不自由な老人が、主人公と
いえば主人公。島の住民が遠ざけている彼と、ダニエル、グレイシーというふたりの子供が、
バードケイビングを通して親しくなり、やがて耳の不自由さを乗り越えて心の交流が始まる。
島は貧しく、難破船の漂着や、高級木材の漂着などを歓迎した。やがて第一次世界大戦が
始まる。グレイシーの父は、義憤にかられ、海軍に入隊する。グレイシーと女2人の生活に
なった妻は一人で漁に出たりするが、なかなか芳しくない。グレイシーとダニエルは、2人
で漁に出て、海流に流されやむを得ず、老人も絶対に近づくな、と言っていたサムソン島に
着くことになる。上陸してみると井戸は枯れていて、廃墟には、一角鯨の角が飾れられて
いた。島中大騒ぎとなったが無事に島に戻ったダニエルとグレイシーは、両親から酷く
叱られたのだった。特にダニエルの父は彼を理解しようとせず、その叱責は度を越すもの
であった。
やがて、グレイシーの父が作戦中に行方不明になった、との知らせが・・・。悲嘆に暮れる
妻とグレイシー。彼らがサムソン島に渡ってから、島に不幸が目立ち始めたのだった。
島の呪いか。
ある日、海岸に一角鯨が漂着する。片や、ダニエルの兄たちは、バードマンをスパイだとして
彼の家に火をつけてしまった。
島への漂着物は島の住民の等しい財産として分ける、というしきたりに従い、肉としようと
する住民に、バードマンは、サムソン島の悲劇を語り始める。かつてサムソン島にも
同じように一角鯨が漂着、彼らはそれを殺し分配しようとした。そして一角のツノを本土に
売りに行った連中の乗った船は難破し、バードマンの父も遭難して死亡したのだった。
加えて疫病が発生、生きていた皆は島を引き上げていった。最後まで残ったのがバードマンの
母と彼だった。しかし、井戸まで枯れては生きていけず、今の島に引っ越してきたのだった。
それ以来、サムソン島は呪われているのだ、だからこの鯨も海に戻さないと呪いがこの島に
かかる、と力説する。島民は何とか理解し、鯨を海に戻した。しかし、その後をおって鯨の
大群が押し寄せた。島民たちはかがり火を焚き、海に向かって振り続け、鯨の大群を
追い払うことに成功した。
そして呪いは解けたのだ。バードマンはサムソン島に帰っていった。ダニエルが追いかけて
島にいってみると枯れていた井戸には水が満々と・・・。バードマンも耳が聞こえるようになった
だろう。そして、一艘の帆船が島に流れ着いた。そしてその船には、行方不明のグレイシーの
父の姿が・・・
イギリス映画だからかな、トーンはどこか寒々しく、使われている色も茶とか黒、白が多い。
小さな貧しい漁村に起きた不思議な話と、日々の普通の暮らし。静かに流れる時間とごく
普通の生活が、逆に映画にリアリティを与え、ファンタジーの浮つくところを押さえている。
なかなか見っけモンの一作であった。
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