お茶と同情 Tea and Sympathy

●「お茶と同情 Tea and Sympathy」
1956 アメリカ  MGM 122min.
監督:ヴィンセント・ミネリ
出演:デボラ・カー、ジョン・カー、リーフ・エリクソン、エドワード・アンドリュース他
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デボラ・カー没後1週年を記念してWOWOWが特集した彼女の作品の1つを見てみました。
ロバート・アンダーソンの原作・脚本でブロードウェイでヒットしたお芝居を映画化したもの。
人の動きやせりふ回しが舞台劇っぽいが、これをヴィンセント・ミネリが上手く映像化した。
作品中デボラ・カーのセリフが示唆に富んでいるのもそのせいだろう。

2時間を超える映画で最初はタルく、何の話が始まるのか、出ている人たちはどういう人
なのか分かりにくいが、大学1年の寮生トム・リー(ジョン・カー)が、女性っぽくて、他の
寮生からシスターボーイと呼ばれていて、そのことを気にしているのだが、これを母性なのか
愛なのか判然としない態度で接してくる優しい舎監夫人ローラ(デボラ)との話が進行するに
つれて、一気に観切ってしまった。舞台がオリジナルだけに、セリフが多い劇、という感じが
どうしても出てしまうのは仕方のないことか。

deluxeでないMGMオリジナルのカラーが、どこか時代を感じさせる。文芸調の映画には
上手くはまっていた感じだ。タイトルの「お茶と同情」は、原題の直訳だが、これの意味は
舎監というものは寮生との間を「お茶と同情」くらいにしてつかず離れず巻き込まれず、という
態度こそ大事、というルールみたいなもの。

このルールを逸脱して他の寮生から、女性っぽいといってからかわれるトム・リーを過剰に
まで感情を移入してしまう舎監夫人ローラ。彼女は、再婚した舎監の夫が最近冷たいので
その愛情をトムに求めていたのだった。そしてトムもローラに淡い恋心を抱いていたのだ。
トムをかばうルームメイトの悩み、トムを一人前の男にしたいと考え、多少の野蛮なことも
構わないという父親との相克、そしてローラと舎監の夫との間の冷えた愛情などリーを
中心とはしているが、様々な人と人との「男らしさ」に対する感覚や、人を愛することの形、
などを示唆に富んだセリフに埋めて展開する。
「ほろ苦い思い出は人生を味わい深いものにするわ」なんて、若い人には判らんだろうなあ。
友達にそそのかされて酒場の女のアパートに行って自暴自棄になり包丁で自殺を図る
トム。彼をひたすらかばうローラと夫との間の亀裂は決定的になる。
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映画は冒頭、大学の同窓会の様子から始まり、トム・リー(今や作家として成功している)も
やってきて(周りのみんなはよく来れたな、なんてまだ言っているが)一人、自分の生活
していた部屋に行ってみた。そこからの回想という形で映画が進んでいく。そして、ラスト、
また現在に戻り、舎監にあいさつに行くと、ローラはもう出て行ってしまっていて、トムに
手紙を残していた。そこには、ローラもトムのことを愛していたことが遠まわしに書かれていた
のだった・・・。

デボラ・カーという女優さんは「地上(ここ)より永遠(とわ)に」や「王様と私」などで知って
いたが、30代なかばの彼女は初めてかな。アメリカ女性でにはないイギリス出自の
気品、歳を経てもお人形さんのような美形。かつてハリウッドの女優とは、彼女のような
人を言ったものだ。主題歌「愛の喜び」はクライスラーのものではもちろん無く、
私の耳にはエルビスの「愛さずにはいられない」に似ているように感じた。

<後述>後で調べたら、上記の「愛の喜び」はフランスの作曲家マルティーニの手になる
有名な歌曲(プレジール・ダムール)で、ユーチューブで、いろいろなバージョンを聞くことが
出来ます。プレスリーの「Can't help falli' love」は、これは下敷きに作曲されたという
ことで、似ているはずだ。
Tracked from 或る日の出来事 at 2008-11-16 12:31
タイトル : 「お茶と同情」
「没後1年 永遠のデボラ・カー」という特集が、きょうからWOWOWで始まった。 「お茶と同情」「王様と私」「悲愁」「白い砂」というラインナップ。 ... more
by jazzyoba0083 | 2008-11-10 23:10 | 洋画=あ行 | Trackback(1) | Comments(0)