僕のピアノコンチェルト VITUS

●「僕のピアノコンチェルト VITUS」
2006 スイス 121min.
監督:フレディ・M・ムーラー
出演:テオ・ゲオルギュー、ブルーノ・ガンツ、ジュリカ・ジェンキンス、ウルス・ユッカー他
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単館上映で、チャンスを逃していたが、やっと観ることができました。幼い天才ピアニストの
音楽の話だと思ったら、さにあらず。ヴィトスという一人の神童の生き方に、見る方は
はらはらしたり、感動したり、羨ましく思ったり。映画の魅力がほとんど詰まっている傑作
だと思った。この年のアカデミー賞外国語映画賞スイス部門出品作であり、スイス国際
映画祭グランプリを獲った映画でもある。なるほどの出来栄え、面白い映画を見せてもらい
ました。

6歳のヴィトスは、補聴器メーカーに勤める父と、仕事を持つ母、別の場所で趣味の木工
を生きがいにしているおじいちゃんと暮らす。
母の生きがいはピアニストにさせること。周囲をうならすほど、さすがに上手い。一方父は
工科大学に進んで自分の仕事を継いで欲しい。周囲の期待を痛いほどしょったヴィトスは
才能を鼻に掛ける嫌な奴になりかけていた。唯一心が休まるのはおじいちゃんと遊ぶときだ。

12歳になったヴィトスは、学校で教師を馬鹿にしたような言動を繰り返すので、学校も
天才を集めた特殊学校へ行くか、大学に飛び級で行くようにすすめる。
母は、音楽学校へ連れて行くが、先生に、まず演奏してみせてよ、とか言って、母親に
恥をかかせる。

天才であることの窮屈に悩んでいたヴィトスは、おじいちゃんに相談すると、迷った時は
一番大切なものを投げ出してみるといい、と言われる。
ある雨の夜、ヴィトスは二階からおじいちゃんと作った羽を背負って飛び出した。当然
大けが?と思ったが、奇跡的にけがはなく、ただ、どうやら普通の男の子に戻ったようだった。
IQも180から120に低下し、ピアノもろくに弾けなくなってしまった。
がっかりする母親。一方父が工夫した補聴器が当たり、一家はお金もちになっていた。

しかし、次期社長、と思っていた父だったが、社長は長男に跡目をゆずり、アメリカ企業との
合併を画策する長男社長と対立、首になってしまう。

ヴィトスは実は、天才として生きるのがとても辛くて、けがを理由に普通の子になった演技を
していたのだった。彼は、おじいちゃんから35万スイスフランを借り、口座名義も借り、
ネットで株の取引に乗り出す。もともと音楽と数学の天才であったヴィトスは、父の会社の
株が下がるという情報を手にいれ、これで、大儲けする。おじいちゃんの口座には500万
スイスフランが振り込まれ、それでおじいちゃんはフライトシュミレータを買い、更に本物の
飛行機を買ってしまった。ドクター・ウルフと称して、ネットで金儲けを繰り返し、町の中のビルに
大きな部屋を借り、グランドピアノを置いて、好きなだけピアノを弾きまくっていた。
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父の会社が傾いてきた、と知ったヴィトスは一計を案じた。おじいちゃんを経営者にして
ドクター・ウルフの会社が父の会社を買収、長男社長を追い出して、父が社長となった。
それは、おじいちゃんが屋根の修理中に天井から落ちて大けがをし、そもまま亡くなって
しまったため、おじいちゃんの遺言としてヴィトスが実行したのだった。
実はヴィトスが本当は天才もままであったことは、おじいちゃんとヴィトスだけの秘密だったが
遺言の中で、おじいちゃんはほんとのことを両親に告白、これまでのすべてが氷解したの
だった。両親も自分たちの期待だけをヴィトスに押し付けていたことを反省したのだった。
そして、またピアノを練習し、オーケストラとコンチェルトを演奏、満場の拍手をもらったのだ
った。そしてラストはおじいちゃんが買った飛行機をシュミレーターで覚えた技術で、内緒で
操縦、ヴィトスの飛行機は空高く、まるで自由になったヴィトスを象徴するかのように町の
上空を旋回するのだった・・・。

主演のテオ・ゲオルギューは、92年チューリッヒ生まれ。亡命ルーマニア人の両親を持ち、
ロンドン郊外の名門、パーセル・スクールでピアノを学び、ドイツで行われた「若いピアニストのためのフランツ・リスト・コンクール」の10歳~13歳部門で優勝、ムーラー監督によって
見出された本当の神童だ。

ほとんど凡庸な我々は、彼の錬金術やピアノの手腕にため息をつき、天才ゆえに大人の中に
まざって天才を演じなければならないところはイヤダなと共感を覚える。
幼いころのベビーシッターだったイザベルがCDショップで働いているところを見つけ惚れて
しまい、7つも年上なのに、株で儲けたお金でレストランに誘い、本物の指輪をプレゼントし
求婚するシーンは思わず笑っちゃいましたね。「セックスはどうするの?」「それはもう少し
待ってもらわなくちゃならないけど、あんなのは単なるDNAの交換だからね」なんていちゃっ
てね。

おじいちゃんが亡くなってしまったのはちょっと残念だったが、またそれも少年が大きくなる
上で欠かせぬプロットであったのだろう。いかにもヨーロッパ映画らしいヒューモアと人間愛に
満ちた好作品だと思います。
この映画の情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2008-11-18 23:15 | 洋画=は行 | Comments(0)