アイデンティティ Identity

●「アイデンティティ Identity」
2003 アメリカ Columbia Pictures(SPE) 90min.
監督:ジェームズ・マンゴールド 脚本:マイケル・クーニー
出演:ジョン・キューザック、レイ・リオッタ、レベッカ・デモーネイ、アマンダ・ピート他
アイデンティティ Identity_e0040938_0443619.jpg

全然予備知識なしで観ました。ちょっと血が多めに出たり、生首が出たりするので、PG-12
になっていますが、その手が大丈夫な人には絶対にお勧めの一作です。
観終わってしまえば、そういうことか。なんだけど、最後まで犯人が判らないというか、
予想を次々と裏切っていく脚本のうまさに脱帽です。allcinemaでも90分の映画で日本では
あまり評判にならなかった割に、絶賛の書き込みの多い映画。だから玄人受けするんだろうな。
テンポも良く、配役もいい。こういう映画に賞を撮ってもらいたいけど、「多重人格もの」は
珍しくなくなったからだろうか。

「階段を上るとまた人が見えるんです。もう現われてほしくないのに」とかいうセリフで映画は
はじまるので、サイコ系の映画だな、ということは判る。時制が行ったり来たりするので、
普通の映画でもないな、というのも判る。
死刑前夜のマルコムという殺人犯に、多重人格を証明する日記が発見されたという。
弁護側は検察が意図的に隠した主張、再審理となることに・・・
マルコムの母は売春婦(これも伏線・物語の中でモーテルの主人がやけに売春婦をクズとか
いって嫌うなあと思ったら原因はここにある)。そして車に放置され捨てられた。
アパートで6人を殺し、死刑判決が確定していた。殺したのは自分だとは分からない。
判るのは首都がワシントンということだけさ、という。

ある土砂降りの夜。いなかのモーテルに血だらけの女性をつれた中年の男性が現れる。
あわてる支配人。彼女は男の妻で、クルマにはねられ重傷をおって、近くにあった
モーテルに助けを求めてきたのだ。
はねたのは女優をロスに送る途中のお抱え運転手(キューザック)エド。事故を無視しろという
女優を振り切って、自分たちの乗ってきた車に乗せて病院に向かったのだが、川が増水し
生き止め、あとからきたアベックの乗った車も立ち往生。エドの車が動かなくなったので
アベックのクルマでモーテルに来たのだった。

一方、はねられた妻は、5歳くらいの息子と父とで移動中、前に走り去って行った娼婦の
運転する車から落ちたハイヒールでパンク。修理を見守っていたところを、エドの前方
不注視(女優の指示でバックの中から何かを探していて、妻に気がつくのが遅れた)で
跳ねてしまったのだ。
そのハイヒールを落とした娼婦の車は、川の増水で行けないためバックをした時に電柱に
激突し、土砂降りの中をオープンカーでこのモーテルにやってきたのだ。

さらに、このモーテルには囚人を護送してきた、刑事と囚人が土砂降りのため、臨時に
このモーテルに泊まることになる。

警察無線も通じず、ケイタイも通じない辺鄙なところ。病院まで50キロもあるため、妻の
出血を止めるため、エドはそこらにあった針と糸で、妻の首を縫合する。

こうしてこのモーテルには11人の人々が土砂降りの中に集まったのだった。
一方、深夜に集まった持ち回り裁判の判事と弁護士ら。彼らが待つのは、連続殺人犯の
マルコム・リバースだ。
そういえば、モーテルで護送されていた囚人がそんな名前だった。(ここでまずだまされる)

そのうち、モーテルで殺人事件が次々と発生、まずケイタイの受かる場所を探しに外へ
出てきた女優が、ランドリーの洗たく槽のの中から生首で発見された。次に、アベックの
男が部屋で殺された。囚人が脱走したことから、彼が犯人と思われ
たが、彼もなぜか逃げてきたつもりの場所がまた同じモーテルで(伏線)、モーテルの
支配人が持っていたバットを口に差し込まれて殺されていた。

実はこの支配人、ラスベガスで大損をこいて帰る途中、モーテルに寄ったところ、主人が
心臓発作かなんかで死んでいたので、遺体を冷蔵庫に隠し、まんまと支配人になりすまし
やり過ごしてきた、気の小さい男であった。しかし、殺人を疑われ、クルマで逃げようとする
が、妻の子供が飛び出してきて、それをよけさせようとした旦那を引き殺してしまう。

エドは元警官で自殺をする人を止められなかったことがトラウマになり精神障害を患い
警官を止めたのだった。彼も護送してきた刑事ローズと捜査を手伝うが、犯人は分からない。
そして、遺体のそばには必ず次に死ぬ人の部屋番号があるのだった。近くにある
かつて渇水で全滅した先住民の墓地の呪か、などというアベックの片割れの女と、娼婦と
母親も傷がもとで?死んでしまったので今や孤児となった男の子の3人を車で逃がそうと
するエドだったが、乗り込んだとたんに車が爆発、しかし3人の遺体はない。不思議に
おもったエドとローズは遺体があるはずの部屋を見回ると、どの部屋からも遺体は消えていた。
お、これはオカルトか?と思わせるがだまされちゃいけません。

このローズという刑事、実は2人組の脱走犯の一人。護送中に警官を殺し、ローズが刑事役、
もう一人が囚人役で護送車を奪ってモーテルにやって来たのだった。
最後に残った娼婦は、護送車で、探し物をしていたとき、2人の資料写真を見てしまった。
エドにそれを知らせようとしたが、ローズに見つかり、銃を向けられる。逃げる娼婦、そして
エドとの撃ち合い。エドはローズに数発食らうが、ひるまず彼の元に銃を撃ちながら
接近し、射殺。だが、エドも娼婦の腕の中でこと切れたのだった。

ここで、白衣を着たエドが登場。「え?」と思う。先ほど護送され判事らの目の前に現れた
マルコムは太ったはげ男だったのに。弁護士いわく、君は「同一性解離障害」なのだから、
殺人者としての人格が死んだことで死刑は停止されるのだ、という。
そして事実、彼は措置入院と治療を受けることなったのだった。彼がモーテルで殺し殺された
人たちはマルコムの多重人格であり、全部マルコム自身であったのだ。それは彼が書いた
日記が、字体も内容もバラバラであることからも判明していた。

ラスト、田舎に帰って果樹園をやりたいと言っていた娼婦に対しエドが死ぬ間際に「オレンジ
畑にいる君が見えたよ」と言っていたのだが、病院に護送されるマルコムの目には、
幸せになった果樹園にいる娼婦が庭を掘ると、モーテルで彼女が泊まっていた部屋の
ナンバーの付いたキーが出てきた。そしてその後ろには、あの虎児となった子供が
カギ手を持って襲いかかろうとしていた。そして、あのモーテルの全部の殺人があの子どもが
やったことを描くフラッシュ映像が流れる。(え?そんなバカな)そして画面は再び護送車。
子供の人格となったマルコムは、娼婦を殺すつもりで、振り返って後部座席との窓を開けて
こちらを振り返った医師の首を絞めて殺すのだった・・・。(へえ、その手で終わるかね!)
最後のセリフが「くたばれ!あばずれ!」。なるほどね。


「多重人格」はなんでもできちゃうある意味禁じ手ではあるが、これほどうまく作れば、作った
ほうを褒めるしかないね。いいやつ役が多いジョン・キューザックの配役にまんまとだまされ
たし、あとから思えば、洗濯機の中で生首がごろごろ転がっている不思議、爆発した車に
遺体の欠片もない不思議、脱走した囚人が逃げて別のところにきた、と思ったら、今さっき
逃げてきた場所に戻ってきていた不思議、モーテルに集まった11人全員が10日生まれで、
苗字が州の名前であった、というありえない不思議、妻の傷を外科医並に縫うエドと、そんな
発想で応急手当が出来ると思う不思議、エドとローズの撃ち合いで、エドの無謀な振る舞いの
不思議、などなど、おかしいところはたくさんあったのだ。それを先住民の墓、とかいう
地雷を埋めておいて、オチを他へといざなう陽動作戦。そして驚愕のラスト。
いやあ、まいりました。
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-11-29 09:50
タイトル : アイデンティティー
 コチラの「アイデンティティー」は、ジョン・キューザック主演の巧緻に練られたミステリアスなPG-12指定のサイコ・サスペンスです。あらすじだけを読んだら、どんな映画なのか想像がつかなかったのですが、とても面白い映画ですねぇ〜♪  監督は、「ニューヨークの恋人...... more
Tracked from ★YUKAの気ままな有閑.. at 2008-12-11 22:04
タイトル : アイデンティティー
TV鑑賞だけど、面白かったよぉ〜【story】大雨で閉ざされたモーテルに、行き場を失った11人の男女が居合わせる。そこで起こる連続殺人。生存者たちは疑心暗鬼になりながらも、自分達に奇妙な共通点があることに気付く。これは偶然ではなく、誰かの企みなのか―?【comment】こういう設定のストーリーって大好き『外界から遮断された場所での殺人事件』は、ハラハラドキドキしながら惹き込まれていく設定だと思う。しかも本作はそれだけではなく、予想もつかない展開を見せていく―寂びれたモーテルに閉じ込められた11人―『売...... more
Tracked from Yuhiの読書日記+α at 2008-12-14 23:12
タイトル : アイデンティティー
 豪雨によって動けなくなった11人の男女が、仕方なく とあるモーテルに泊まることになるが、そこで次々と殺人が起きるというサイコ・ミステリー。 11人の男女も、それぞれいわくありげな怪しい人たちばかりで、誰が犯人なんだろうとドキドキします。  閉ざされた世界で(例えば、孤島ものや雪の山荘とか、ミステリーの世界ではよくあるテーマですが)、次々と殺人が起き、限られた人間しか犯人となりえないというのは、すごく惹かれるテーマなんですが、それだけに犯行の動機や手順は、使い古されているので、今回はどうなるのかとす...... more
Tracked from 小部屋日記 at 2010-08-23 12:37
タイトル : アイデンティティー
IDENTITY(2003/アメリカ)【DVD】 監督:ジェームズ・マンゴールド 出演:ジョン・キューザック/レイ・リオッタ/レベッカ・デモーネイ/アマンダ・ピート/ジョン・ホークス/アルフレッド・モリナ/クレア・デュヴァル/ウィリアム・リー・スコット ここに集まったのではない。 ここに集められたのだ。 ゲオで旧作が80円だったんで、まとめて借りてきました。 いや〜やられた!って感じ。よくできたサイコサスペンスです。 監督は「17歳のカルテ」「ニューヨークの恋人」のジェームズ・マンゴールド。 ...... more
by jazzyoba0083 | 2008-11-28 22:56 | 洋画=あ行 | Trackback(4) | Comments(0)