ハリウッドランド Hollywoodland

●「ハリウッドランド Hollywoodland」
2006 アメリカ Miramax,Focus Films,126min.
監督:アレン・コールター
出演:エイドリアン・ブロディ、ベン・アフレック、ダイアン・レイン、ボブ・ホスキンス他
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この監督さんの映画、初見だけど、まだ経歴が浅いからか、構図、カットカットの色調、
カメラワーク(俯瞰、アオリ、パン、ズーム、フレームイン、フレームアウト、クレーン、ドりー
などなど)がものすごく凝っている。1959年の時代の雰囲気を薄黄色のフィルターで
上手く出していたと思う。当時の車も、よく集めた。ベルエアとか映っている。

私は同世代としてテレビで観ていた「スーパーマン」の主役ジョージ・リーヴス氏の謎の多い
死亡について、ハリウッドの闇と、テレビの世界と映画の世界で悩む男の姿、そして女性関係、
親子の話など、てんこ盛りで、描く。テレビとしてはアメリカでは51年から59年まで放送され
ていた。
主演は「戦場のピアニスト」のエイドリアン・ブロディ。「スーパーマン」役のジョージにベン・
アフレック、さらに彼を愛し、応援するMGM映画の重役夫人トニにダイアン・レイン、
重役はボブ・ホスキンスという豪華ぶり。主演の探偵役シモの奥さん役にはモリー・パーカーが
配されている。
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1959年6月16日、テレビで一世を風靡したスーパーマン役で知られた男優、ジョージ・
リーブスが頭をルガーで打ち抜いて死亡しているのを一緒に遊んでいた婚約者や友人が
発見、警察に通報した。警察は自殺、と断定した。

しがない探偵シモ(ブロディ)は、妻の浮気に悩むシンクレアさんの追跡捜査などをして
何とか暮らしていたが、探偵仲間の一人に、かつての恩を着せて仕事を貰おうとする。
すると、その友人が、ジョージの母親が息子の死に不審を抱いていて、探偵に仕事を依頼
してきたという。その仕事を回すと言われた。

さっそく母親に会い、ジョージの身辺を洗い始める。映画の構成は、1951年頃にまで遡り、
ジョージがスーパーマン役を獲得するころに戻る。こうしてジョージの死後と、死に至るまで
の彼の生活が交互に現われて構成されていく。
「風と共に去りぬ」にも出ていたジョージは、最近仕事がなく、あるパーティーで、MGM映画
の重役夫人トニ(ダイアン・レイン)<出会った当時は彼女が映画会社の重役夫人とは
知らない>と知り合い、愛人関係となる。
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夫人の夫には日本人のヨシダという愛人がいる。
そうした状況で、トニは新しい家をせびり、そこでジョージと暮らすようになる。
彼女はMGMだが、ジョージは自分でオーディションを受けて、テレビ「スーパーマン」の
主役を射止めた。最初はスポンサーなしでモノクロだったが、子供たちの人気者になり
評判も上がってくるとケロッグ社がスポンサーに付き、カラーとなった。
人気も上がってきたものの、映画俳優とテレビ俳優は扱いが全然違っていて、子供相手の
営業の仕事などもこなしていた。

人気が出て、スーパーマンシリーズが終わると、ジョージはトニに別れを告げ、ニューヨーク
で監督が出来る仕事を見つけてくるという。たった2週間のNY行きでは仕事は見つからず、
レストランでレオノア・レモンという女性に引っ掛かって、連れて帰ってきてしまった。
レオノアに入れあげたジョージはトニの反対を押し切って婚約するまでになった。レオノアは
スターと一緒にいる見栄だけでジョージにくっ付いていただけで、愛情は薄かった。
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探偵シモは、警察の遺体安置所に行き、ジョージの遺体を係員を買収して見せてもらう。
右コメカミに銃創はあるが、体に不自然な打撲痕もあった。そして遺留品の中に、トニから
貰った時計も発見した。トニの夫が事件に関わっている疑いが強くなったため、彼の周辺を
洗い出すと、彼は事務所で重役に雇われた探偵仲間に暴行を受ける。
これで、映画会社が何か絡んでいることが匂って来た。
一方、シモの助手の女性が、ちょっと前に、ジョージのクルマがブレーキオイルを抜かれて
事故を起こしていたことが判り、どうやら、若い女性と婚約したジョージに嫉妬したトニの
仕業か、と思わせた。
トニは婚約者レオノアをも問い詰めた。遺体発見から45分後の通報は不自然じゃないか、と。
やったのはお前だろう、と。シモの頭には、レオノアとジョージが言い争ううちに銃が暴発し
彼の頭に当たるシーンが浮かんできた。
ジョージの母が、会社がジョージの銅像を建てるから、というのでもう終わりにしたい、あなたの
仕事も終わりよ、と会社に丸め込まれた様子であった。ついに重役と対決する場面が来たが、彼は証拠はあるのか?俺を誰だと思っているのか、
と言い放つ。どうしようもないシモであった。

シモの家庭も崩壊気味で、幼い息子があるのに、事件があるとそちらに没頭し、更に女関係
にもだらしなく、息子の気持ちはシモから離れていた。妻との気持ちも離れていた。
ラスト、ジョージの家を見上げると、今の暮らしや仕事に嫌気がさしたさみしいジョージが
自殺をする光景が浮かんできたのだ。
そして、シモは、妻と息子のいる家庭に戻っていったのだった。

実話がベースなので、引き込む力は下駄をはかせてもらっている映画だろう。しかしそれを
差し引いても面白く観た。最後はトニまで自殺をするのだが、それらの時制があっち行ったり
こっちに来たりで分かりづらい部分もある。それと、シンクレア氏のくだりはいらなかったんじゃ
ないかな。その分時間を減らしたほうがすっきりとまとまったのでは?

ブロディ、アフレック、ダイアン・レイン、ホスキンスら、安定した演技で映画を締めていた。
アフレックはこの役で06年のヴェネチア国際映画祭で男優賞を獲得した。
最後は自殺なのか、殺人なのか、よくわからないまま終わってしまうが、これは事実が
あるのでしょうがないか。同じ事実をベースにした「ブラック・ダリア」を思い出した。
ジョージがコロムビア映画の「地上より永遠に」に出演が決まり、その試写会が開かれたが
観客からジョージの出番で、「機関車より早く!」とか「ロイスはどこだ!」とかの野次が飛び
彼のシーンはカットになってしまうが、勃興していくるテレビがまだ価値を持ち得なかった
時代の悲劇ともいえる。いまや、サラ・ジェシカ・パーカーやジェニファー・アニストンら、
テレビ出身の俳優が映画を席巻する時代だというのに。
また、営業で、子供相手の寸劇に出たジョージが観客の子供に本物の銃らしきものを突き
付けられ、「跳ね返すんでしょ、だから撃っていい?」と尋ねられ、困惑するジョージの姿など
印象的だった。
ハリウッドという得体のしれない世界をベースに一俳優の苦悩、男女の愛憎、親子の絆など
それぞれに感じ取れた映画だった。
この映画の情報は

こちら
まで。
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-12-14 08:29
タイトル : ハリウッドランド
 『1959年6月16日―― 世界で最も有名な"スーパーヒーロー”が、死んだ…。 ハリウッド史上最大のタブーにして、ハリウッド史上最悪のミステリー。』  コチラの「ハリウッドランド」は、TV版スーパーマンを演じた俳優ジョージ・リーヴスの謎の死に迫った彼の命日6/16....... more
by jazzyoba0083 | 2008-12-13 23:10 | 洋画=は行 | Trackback(1) | Comments(0)