2009年 02月 01日
フォロー・ミー The Public Eye
1972 アメリカ Universal Pictures,93min.
監督:キャロル・リード 原作:脚本:ピーター・シェイファー
出演:ミア・ファロー、トポル、マイケル・ジェイストン、マーガレット・ローリングス他
私が大学2年の時封切られ、確か映画館で観た覚えがある。このたびNHK-BSで放映して
いたのを鑑賞したが、ほとんど内容を覚えていなかった。人間30年以上経つと忘れますねえ。
閑話休題。映画史に残る大名作「第三の男」のキャロル・リードもこういう作品も作るんだなあ、
という感慨を持ちつつ、最後の作品とはなったが、出来はさすがである。私の心の中でずっと
名作であったが、これがキャロル・リード作品とは改めて知った次第だ。
掌編だが、主張も判り易く、雰囲気も実にいい。今見てもいいが、70年代初頭の時代の雰囲気
を背負って観るともっと良いだろうな、ということは私ら年代は用意に理解できる。
ある種の虚無感とユーモアの融合、クールな恋愛観など、「永遠」を獲得した映画ということが
できるでしょう。
ミア・ファローの存在が、70年代初頭の時代の雰囲気を良く表している。ベリーショートのヘア、
どこかヒッピー風のファッション、そう美人でもない御面相。ガリガリのスタイル。どこか、
フェイ・ダナウエィを思い起こさせる。ニューシネマのころ映画によく出ていたタイプ。
会計士のチャールズは、カリフォルニアからやってきたべリンダという女性とレストランで
出会い(彼女はウエイターのバイトだった)、恋に落ちやがて結婚。しかし、チャールズは
妻が最近自分の知らない時間にどこかにいっているようで気が気でない。
そこでチャールズは探偵を雇って尾行させる。この探偵がクリストフォローといい、半分
おふざけで仕事をしているような人物。彼は、2週間べリンダを尾行し、チャールズに報告する。
内容は、べリンダのそばには外交官風の紳士の影がある。しかし、言葉を交わすわけでは
なく、遠くから見詰めている、というもの。チャールズはべリンダが浮気をしていると信じて
しまい、妻を責める。だが、真相は、べリンダを尾行しているうちに、べリンダに好意を寄せ
始めたクリストファローが、自分の存在を、外交官風紳士と称して、依頼主に報告していた
のだった。べリンダも最初は不審人物が自分の後を追ってくる、と気味悪がっていたが、
クリストファローのユーモアに満ちた、時にべリンダの行動をリードするような態度に好意を
抱いていく。
外交官風紳士がクリストファローであることを知ったチャールズは彼のもとに行き詰問するが、
そこにクリストファローを訪ねてきたべリンダが。真実を知ったべリンダはクリストファロー
にも絶望するが・・・。
クリストファローはチャールズに、彼女とやり直したいんだろ、そうしたら、彼女の後を10日
間尾行するんだ。ただし、声はかけちゃいけないよ。と持ちかける。
イギリスの貴族階級に属し博学なチャールズに対し、カリフォルニア生まれで両親が離婚、
フーテン(古!)でロンドンに流れてきた感性で生きるべリンダが、結婚したものの価値観の
違いからお互いを見失いかける。そこを探偵クリストファローに助けられる、という、ある種
夫婦再生の物語。お洒落で、小粋で、爽やかなハッピーエンド。(あれだけでわかりあえて
いくのだろうか、という不安は残るのだが)上質な映画ですね。
冒頭と映画の主要な部分(クリストファローがべリンダを尾行する、というかロンドン中を
追いかけっこして遊ぶシーンに効果的に使われるジョン・バリーのボーカル入りのテーマ
ソングも秀逸だ。どこか形而上的である面にも時代を感じる。
聞けば、DVDになっていないそうだ。ぜひDVD化すべきであろう映画ではある。
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