チェンジリング Changeling

●「チェンジリング Changeling」
2008 アメリカ Unversal Pictures,Imagine Entertainment,Malpaso Production 142min.
監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド 脚本:J・マイケル・ストラジンスキー
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、ジェフリー・ドノヴァン、コルム・フィオール他
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<最初の22行以降はネタばれしています>

これは、「ベンジャミン・バトン」より、すごい映画かもしれない。それにしても近年外れのないクリント・
イーストウッド監督の力量に唸ってしまう。今アメリカで大ヒット中の「グラン・トリノ」も是非観たいと
思う。映画を観る観客の心のつかみ方を心得ているイーストウッド監督は、前半に、アンジェリーナ
演じるクリスティ・コリンズに、不条理を畳みかけ、観ている人に彼女に対する同情を集中し、手抜きの
捜査をして恥じないLAPDに怒りを募らせる。そうしておいて、後半、ジョン・マルコヴィッチ扮する教会の
牧師グスタヴ・ブリーグレブ、LAPDの中の良心派レスター・ヤバラ刑事らの手助けにより、その怒りや
クリスティに対する不条理な事態のカタルシスが次第に高まる。子供20人誘拐殺害犯の逮捕、そして
偽の子供の正体が判明し、市民の警察への抗議、ラジオ局を持つ牧師の援護射撃、ロサンゼルス市を
相手に4件もの勝訴をものにしている辣腕弁護士の登場、そして警察内部の査察員会と、連続殺人犯の
裁判の進行で、一気に観客の心は、リリースされていく。

お見事としかいいようがない。先日の日経新聞映画評は、エンディングの持って行き方を「神の領域」と
評していたが、まあ、それは大げさとしても、1つのテーマに絞られ、途中に余計なことが一切さしはさまれないつくりは確かにこの映画を近年の名作・傑作に仕上げているといえよう。

アンジェリーナ・ジョリーも、イーストウッド監督の要求に応え、素晴らしい演技。これにジョン・
マルコヴィッチが厚みを加える。アンジーは「トゥーム・レイダー」の頃のセクシーさを売りにしていたころとは
別人のように変化し、結婚し、子供を持った母として、物の捕らえ方も変わったのだろう、愛する我が息子
を取り戻したい一心の母親を圧倒的に演じる。オスカー主演女優賞は彼女ではないか?
「愛読む人」のケイト・ウインスレットがどういうものか未見で不明であるが。
「ベンジャミン~」が13部門でノミネートされているが、本作は主要部門では3部門でしかノミネートされて
いない。作品賞や監督賞にもノミネートされていないということは、日本ではまだ公開されていない
「ミルク」「愛読む人」「スラム・ドッグ・ミリオネア」「フロスト×ニクソン」がよほどいい出来だったんだろうな。
本作が実話を元にして作られている点もマイナスポイントなのだろうか。そうだとしても、いい出来だと思う。
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1928年にロサンゼルスで、電話交換手クリスティ・コリンズ(アンジー)の9歳の息子ウオルターが行方
不明になる。市警に捜索を依頼するが、24時間以内は受け付けないという。その後、5か月がたち、
ロス市警はウオルターが発見された、と連絡してきた。駅頭に迎えに行って見ると、そこにいたのは
ウオルターではない別人の子供だった。警察は、クリスティが錯乱していて自分の子供が判らなくなって
いる、と相手にならない。クリスティーは、人権派牧師グスタヴにも助けられ、腐敗しきっている市警の
怠慢捜査を指弾していく。しかし、市警は、クリスティを精神に錯乱を来したということで精神病院に入れて
しまう。(このあたりまで、観客のフラストレーションは最高潮に達するだろう)
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しかし、ロス郊外の不法入国者の少年を調べに出向いたヤバラ刑事は、少年から驚くべき事実を聞かされ
る。少年によれば、ゴードン・ノースコットという男が、少年を拉致して監禁しては殺していたというのだ。
彼の甥である少年は、逃げれば殺す、と言われ、少年殺しに手を貸していたという。しかし少年は悔悟の
念に苛まれていた。ヤバラ刑事が最近行方不明になっている少年の写真を見せると、中にウオルターも
いたのだ。彼はすでに殺されたかもしれないという。だた、2~3人が逃げたとも。
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カナダに逃げたゴードンは、叔母のところで逮捕される。市警は、大量の少年連続殺人犯の逮捕、しかも
ウオルターも犠牲者かもしれないという事実の判明に、愕然とする。クリスティは牧師と相談し、裁判を
起こすことに。代理人には辣腕の弁護士がつくことになった。一方で市警の査問委員会は、捜査を指揮した
ジョーンズ警部を召喚、彼に永久追放、警察本部長の更迭を決めた。
更に、警部が自分の意思でクリスティを精神病院送りにしたことを重くみて今後はそのようなことが出来ない
制度に切り替えるように指示したのだった。
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一方、ゴードンの裁判も順調に進み、彼は第一級殺人で2年の勾留後、絞首刑に処する判決が言い
渡された。2年後にはクリスティも立ち会いのもとゴードンの死刑が執行された。

そして事件から5年後、ウオルターの失踪とほぼ同じ時期に行方不明になっていた少年が発見される。
彼はゴードンの元から脱出したのだが、その時の模様として、足を鉄条網に引っかけた自分を助け
ようとしたウオルターがいなければ、自分は助からなかったと証言した。5年も出てこなかったのは、
ゴードンらの仕返しが怖かったというのだ。クリスティは、数年経ってから姿を現した少年がいることで、
「希望」を見つけたと牧師に語る。そして、生涯を通してウオルターを探したのだった・・・・。

事実に基づいた作品を一流の娯楽作品に仕立てたイーストウッド監督の才能に改めて脱帽。最敬礼。
プロダクションデザインも、良かった。映像のカラートーン、衣装、照明の当て方、そして監督自らの手に
なるJazzyな音楽も、作品に見事にマッチしていた。
ラスト、その年のアカデミー賞で会社の上司とかけをするクリスティ。彼女は絶対に「或る夜の出来事」だ、
と予想する。ラジオの中継では、実に予想が当たっていて、エンディングロールのバックにながれる
ロスの街並みの中、映画館の看板には「或る夜の出来事」の上映を知らせる看板が・・・。このあたりもにも
映画を愛する監督の洒落っ気がでていたようだ。(「或る夜の出来事」=フランク・キャプラ監督、
主演:クラーク・ゲイブル。1934年アカデミーの作品、監督、脚本、主演男優、主演女優の5部門を独占
した傑作)
「レボリューショナリー・ロード」も「ベンジャミン・バトン」もすぐれた作品。この3本のどれが好きか
と問われれば、甲乙付けがたい秀作ぞろいだが、私はこの「チェンジリング」が一番好きかもしれない。
現時点では。
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<2010 2月10日 WOWOWにて録画のものを再び観賞>
1年ぶりで、当作品を観てみました。WOWOWです。いや、2度目だけど良くできた映画という
認識を新たにした。映画館で観てきた感想は今でも全く変わりが無い。
しかし2回目となると初回では気がつかなかったことが判ることもある。冒頭のクリスティ・
コリンズの自宅の前の通りのクレーンショットは、「インヴィクタス」でも使われていた手法。
また、ウォルターの偽物が出てきたときに、なぜ早く学校へ連れて行って、先生や仲間と
合わせなかったのかな、と思った。(いずれ、学校へは行くのだが)
それと、少年殺人犯、ゴードン・ノースコットの絞首刑シーンはあれだけ長々と微に入って
描く必要があっただろうかな、とも感じた。
それらを乗り越えても、映画史に残る作品であることは間違いない、ということを再認識した次第。
Commented by KGR at 2009-02-22 19:06 x
コメントありがとうございます。
脚本、演出、演技。
3つが揃うと、見る人にどれだけの感動を感慨を与えられるか。
アンジーも見事でしたが、ジョン・マルコビッチもよかったです。
Commented by oguogu at 2010-07-18 01:52 x
TB&コメントさせてもらっちゃいますねぇ~。
私はバトンの方が良かったですw
本当にクリント・イーストウッドは監督としてのチョイスもミスがないですよね!
グラントリノも見ましたが、まぁまぁの映画でした。
名優が名監督にならないとは思ってましたが、彼は例外のようです。
Commented by jazzyoba0083 at 2010-07-18 23:28
oguoguさん
毎度TB&コメント有難うございます。「お涙頂戴」ダメですか!私は、モロにそのものズバリでなければ、大丈夫です。(爆)そいういう点からも「グラン・トリノ」は昨年のナンバーワン映画でした。
by jazzyoba0083 | 2009-02-22 12:20 | 洋画=た行 | Comments(3)