ハリーとトント Harry and Tonto

●「ハリーとトント Harry and Tonto」
1974 アメリカ 20th Century Fox Films,117min.
監督・製作・脚本:ポール・マザースキー   音楽:ビル・コンティ
出演:アート・カーニー、エレン・バースティン、チーフ・ダン・ジョージ、ラリー・ハグマン、
    ジェラルエディン・フィッツジェラルドほか。
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<1974年度アカデミー賞主演男優賞受賞作品>

この映画は、観る人の感性を問う。難しい意味でなく。この映画を観て、たいくつだなあ、と感じる人もいる
だろうし、涙を流す人もいるだろう。映画をどう感じるかについて正解はないので、どう感じようと勝手では
あるが、私はこの映画に感動しない人、少なくとも心を動かされない人を信じない。

多くの人は愛猫「トント」が亡くなる時、泣けた、というが、私の場合はどの場面でも涙は出なかった。が、
ハリーが出会う様々な人々との触れ合いでハリーが発する言葉や、人々の口にする言葉に胸を打たれた。

ポール・マザースキーという人の作品は初めて観たのだが、人生でこの名作一本、というだけで映画史に
名を残す監督がいるなら、さしずめマザースキーはそのタイプだろう。

主人公ハリーを演じるアート・カーニー(既に故人)は、これまたこの名作一本で映画史に金字塔を打ち
立てた俳優ということが出来よう。実に自然体で、彼の言動はまさに「しみじみ」と心に伝わってくる。

大きな意味で人の生死感を訴えている映画のようだが、「生きるということの美しさ、そして儚さ」、
「精一杯生きたか?」と老いたときに問われるとしたら私たちは胸を張れるだろうか、という点、トントという
猫の目線から何を感じるのかなど、いろんな事を考えてみればいいと思う。
数あるロードムービーの中でも燦然と光輝く作品だろうと思う。

NYに妻に先立たれ愛猫トントと暮らす72歳の元大学教授ハリーは、再開発でアパートが壊されると
いうのに頑として立ち退かない。ついに強制的に追い出され、(古いレンガのアパートが鉄球で壊される
シーンは象徴的)息子の家に居候になるが、嫁に気兼ねしシカゴの長女の所に行くことに。飛行機の
チケットまで買ってあったのだが、猫と一緒に乗れない、と判るとバスでの移動を決意。
それも猫のおしっこ騒動で途中で降りてしまい、安い中古車を買ってシカゴを目指すことに。

結局ロスの次男(こいつが無一文)まで行くのだが、途中で、コロラド州モルダーのコミューンに行くのだ
という15歳の少女を乗せたり、初恋の女性(そうとう痴呆が来ている)に会いに行って老人施設で一緒に
ダンスしたり、サプリメントや健康食品を売り歩く、胡散臭そうな男と出会ったり、
ラスベガスのカジノの玄関でおしっこをしていて逮捕され監獄でであったインディアンの酋長に長年
苦しんでいた肩の痛みを呪術で直してもらったり、1974年のアメリカ人てこんなにいい人ばっかじゃない
だろう、と思いたくなるが、そんな出会いを繰り返し、ロスの次男(ラリー・ハグマン=可愛い魔女ジニーに
出ていた)に行き着く。羽振りのいい事を言っていた次男だが、実は無一文。逆に金を施すことに。

そんな中、大陸横断に付き合ってきたトントが亡くなる。11歳だった。人間の年にすると77歳だと、ハリー
は言っていた。サンタモニカあたりの海岸でぼんやりしていると、野良猫に餌をやる婦人が現れ、
私の家には空き部屋があるの、来ない、とか誘う。(いやらしい感じでは決してなく)。そして集まった
猫の中にトントそっくりの猫を見つけ海岸を追うハリー。そして砂遊びをする少女のところで足を止め、
彼女のしぐさを眺めていた・・・・。
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何か人生の縮図を見せられているよう。「誰でも死ぬんだよ」というハリーの言葉が重い。不器用だけど
一生懸命生きたよ、と。頑固者ではあったけど、愛された人生だったよ、と。これは亡くなっていった
トントそのものだろう。老人と猫(映画に使いたくない動物だろうな、言うこと聞かないから)という面白い
組み合わせに人生の妙味をかもし出させて見せたマザースキーの脚本と演出が素晴らしい。もちろん
アート・カーニーの一世一代の演技も。
長らくDVD化されていなかったが、ついに09年春にDVDが出ますね。欲しくなります。
この映画の情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-03-05 22:50 | 洋画=は行 | Comments(0)