二十日鼠と人間 Of Mice And Men

●「二十日鼠と人間 Of Mice And Man」
1992 アメリカ MGM Pictures,111min.
監督・製作:ゲイリー・シーニーズ  原作:ジョン・スタインベック
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ゲイリー・シーニーズ、レイ・ウォルストン、ケイシー・シーマツコ他
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「フォレスト・ガンプ~一期一会~」のダン中尉で注目され、その後はテレビシリーズ「CSI」シリーズ
のマック・テイラー役でその人気を不動にしたゲイリー・シーニーズが、巨匠ジョン・スタインベックの
小説を、マルコヴィッチを迎えて製作したヒューマンストーリー。1939年に一度映画化されている。

スタインベックの生れ故郷、サリーナスがある中部カリフォルニアの1930年代が舞台。このタイラー
牧場を中心とする風景が、スタインベックの小説の雰囲気をとても良く出していたと思う。
青空と麦畑。全体にセピアっぽい色調だ。巨匠の作品を映画化しようとはゲイリー・シーニーズも
その時点では思い切ったものだ。でも、仕上がりは上々。大恐慌時代の、搾取される側や弱者といった
人々に焦点を当て、観る人に何かしらの思索を訴えてくる。

知恵者であるジョージ(シーニーズ)と体はでかいが幼い子供位の精神年齢しかないレニー
(マルコヴィッチ)。最初のうちは、この二人の関係がどういうものか判らないので、いらっとするかも。
人のいいジョージは、幼いがゆえにトラブルばかりのレニーを責めることなく、いずれ2人で小さな
牧場を持ち、家を建てて豚や鶏も飼って・・・という夢があった。
この二人はクララ叔母さんという共通の親戚があり、叔母さんが亡くなり天涯孤独になったレニーの
面倒をジョージが見ることになったのだ。

ある街で、トラブルを起こしたレニーをかばってやってきたのはタイラー牧場。トラブルを避けるために
ジョージはレニーになるべく宿舎にいろ、と話す。牧場主の息子カーリーは元ボクサーの乱暴者、
何かにつけてイジメをしている。そして女優を夢見ていたものの今は愛していないカーリーの妻となって
いる女性は、寂しさを紛らすために牧童たちのところにやってきては話しかける。それがまたカーリー
には面白くない。
穀物班チーフのスリムはいいやつで、何かと二人をかばう。怪力のレニーは黙々と働く。ある日、妻を
探しに宿舎に来たカーリーをみんなが冷やかしているのにつられレニーがにやりとするとカーリーは
それに難癖を付けて殴りかかる。殴られ放題だったレニーだが、ジョージの「やれ!」という命令で反撃に
出て、カーリーの右手こぶしを握りつぶしてしまう。仲裁に入ったスリムはカーリーに、お前は機械に
手を挟まれたんだぞ、もしバラすとお前のいじめを皆にいうぞ、と脅し、レニーを救った。

また、同じ宿舎に住む右腕が不自由なキャンディと呼ばれる老人は飼っていた犬を仲間の牧童から
臭いしリューマチだから銃で殺してやれ、と迫られる。犬が生まれているからそれを一匹もらってやるから
と、お前がいやなら俺が撃ってやるぞ、と半ば脅され、しぶしぶ同意する。黙って見ているジョージたち。

レニーはジョージと将来の夢を語るのが好きで、ある夜宿舎で、未来の牧場のこと、レニーが飼いたいと
いっていたウサギのことなどを話していると、キャンディが貯めた金があるからおれも仲間にいれてくれ、
という。年だし、腕も不自由だし、クビになったら行くところなどない、と。最初断った2人だったが、
600ドルの土地代の半分以上をキャンディが出す、というので、一度地主に手紙を書いてみることにした。
そして1か月後には、夢を叶えようという計画を立てた。
その時キャンディが言う「あの犬は他人に撃たせるべきじゃなかったんだ。俺が撃たなくちゃいけなかった
んだ」としみじみ語る。これがラストの伏線になっている。

しかし、ある休日、皆がてい鉄投げをして楽しんでいる時、レニーが貰った白い子犬が納屋で死んでいた。
嘆いていたレニーのところにカーリーの妻がやってきて、いろいろと話しかける。彼女も寂しかったのだ。
あんたとは口を利いてはだめだといわれている、と彼女を避けるのだが、レニーが自分がやわらかいもの
を手でなでるのが好きなんだ、というと、彼女はレニーの手を自分の髪の毛に導き、乱さないでね、
気持ちいいわ、などと寂しい同志の会話が続くと思われた。しかし、髪の毛の乱れを嫌がった妻が、
叫ぶのではないか、と勘違いしたレニーは、あわてて妻の口を押さえ、勢いあまって首の骨を折ってしまう。
手加減ということが判らないレニーであった。

レニーはさすがにまずいことをした、と考え、事前にジョージと、何かトラブルがあったらここに逃げてくる
んだぞ、と約束していた茂みに逃げていった。

妻が死んでいるのを発見したキャンディはすぐにジョージに知らせる。カーリーに見つかれば彼はきっと
レニーを撃ち殺すだろう、と感じるジョージは、キャンディに皆に知らせろ、と言って自分はレニーを
探しに出かける。そして、約束の茂みに来てみると、レニーはやはり来ていた。
そして、ジョージに、悪いことをしたよ、どうなるんだ、と問う。そして、未来の牧場の話をしてくれ、とせがむ
レニーの後ろまわり、カーリーの追手の犬のほえ声が近づく中、ジョージは、手にした銃の撃鉄を
起こしたのだった・・・・。

この時代の、ささくれだった世情、黒人は遠ざけられ、純粋なもの、弱者、金のないやつは容赦なく排他
される、その哀しさ、寂しさを詩情豊かに描いた。スタインベックなので明るい映画ではないが、独特の
哀しみを湛えたカリフォルニアの30年代のアメリカがよく表れていたと思う。マルコヴィッチの演技が
最高。監督もつとめたシーニーズの才人ぶりがよく判る傑作といっておこう。編集はシーニーズの
オヤジさんが手掛けている。

題名は、スタインベックがスコットランドの詩人であるロバート・バーンズの詩「ハツカネズミに」の中から
採っている。

「二十日鼠と人間の  このうえもなき企ても  やがてのちには狂いゆき  後に残るはただ単に 
 悲しみそして苦しみで  約束のよろこび消えはてぬ」



この映画の情報はこちらまで。
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2009-03-08 14:06
タイトル : 二十日鼠と人間
 コチラの「二十日鼠と人間」もKaz.姐さんじゃなくって。。。Kaz.さんのご紹介で観てみましたぁ〜。ジョン・スタインベックの同名小説を映画化した人間ドラマです。  「スネーク・アイズ」や「レインディア・ゲーム」のようなちょっとクセのある役もこなすゲイリー・シ....... more
Tracked from カノンな日々 at 2009-03-08 17:58
タイトル : 二十日鼠と人間/ジョン・マルコヴィッチ
アメリカの作家ジョン・スタインベックの同名小説をゲイリー・シニーズが制作及び監督とさらに主演を務め映画化された1992年の作品です。原作は未読でしたけど興味を持っていたところで、たまたまWOWOWでの放送があったので鑑賞することにしました。 出演はその他に、ゲイ...... more
by jazzyoba0083 | 2009-03-08 11:50 | 洋画=は行 | Trackback(2) | Comments(0)