2009年 03月 19日
靴をなくした天使 Hero
1992 アメリカ Columbia Pictures,118min.
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:ダスティン・ホフマン、ジーナ・デイヴィス、アンディ・ガルシア、ジョーン・キューザック他
面白かった。楽しかった。期待しないで観て、これだけ面白いととても得した気分になる。唸る傑作では
ないけど、映画って楽しいよなあ、と思わせてくれる佳作。
出演者がみなハマっていて映画に上手くのめり込める大きな要素となっている。いかにもアメリカ人が
好みそうなストーリーだが、ところどころに笑うポイントのあるユーモアも配され、かといっておふざけの
映画ではない、「嘘」「偽」という人生の深淵を覗かせる大きなテーマもさりげなく持っている点もいい。
お気楽映画はどうも、という方にも、人生の一部をしっかり考えさせてくれるので、観て損はないでしょう。
オープニングとエンディングはWOWOWで見る限りテレビ放映用に後から作られたもの。著作権か
何かの問題があったのでしょうか。
詐欺とか寸借詐欺とかのちんまい悪をやっては捕まっているバーニー・ラプランテ(ダスティン)は、
6日間の保釈期間の延期を何とか許してもらい、娑婆に復帰。そんな彼がポンコツ車で家に帰る途中、
飛行機が頭上を落下して、目の前に不時着、炎上した。
100ドルもする靴を履いていたバーニーは、「嘘だろ!」とはいいつつ、救助を求める声に素早く反応
しない。そんなやつだ。おりしも降りしきる雨の中、靴を河原に脱いでしぶしぶ乗降ハッチに到着し、
押したり引いたりしているうちにドアが開いた。中からどっと逃げ出す乗客。助けたバーニーは彼らに
踏まれたりの、散々な目に。
しかし、脱出してきた少年に父がまだ中にいるんだ、スティーブっていうの、助けて、と言われ、突然
善人と化し、煙が充満する機内に入っていく。途中で一人の男性を、そして、その機にたまたま
乗り合わせていたテレビリポーター、ゲイル・ゲイリー(ジーナ)が、足を挟まれて助けを求めていた。
バーニーは彼女も救出し、機外に出たところで、消防隊から、爆発するから機体から離れろ、といわれ
少年の父親がまだいる・・、と後ろ髪を引かれながらも、機体を離れるのだった。そして大爆発。
(ゲイルを助ける時に彼女の財布の入ったバッグを失敬したことが後々大事件になってしまうのだが)
実は少年の父スティーブは、入れ違えで早くに機外に脱出していたのだった。
一人を助けられなかったバーニーは、悄然としてその場を立ち去り、自分が乗ってきた車が消防隊に
より排除されていたため、空き缶を集めて売って生活しているジョン・ババー(ガルシア)のクルマに
乗せてもらった。車中で飛行機が落ちて、泥だらけになって救助に当たったが、靴が片方なくなって
しまった、と愚痴る。ババーは、回収所に右足だけ必要なやつがいるから、そいつにやるよ、といって
預かる。
裸足になってしまったバーニーは職場に行くが、飛行機が・・・と裸足の恰好で言い訳するが、頭から
信用されず、その場でクビになってしまう。
家に帰って、飛行機が・・と言おうとするが、妻は鼻から夫を信じず、家から追い出してしまう。(家には
消防士の男がすでに妻と同棲を始めていた)
リポーターのゲイルらテレビ局は、54人の乗客を危険を顧みず救助し姿を消したヒーローを探しに
かかった。他の媒体に先を越されたくないテレビ局は、ヒーローに100万ドルの謝礼を用意した。
現場から靴が乗員乗客のものでない靴が見つかりそれが10Bだったことから、そのサイズの靴を持つ
さもしい偽者が大挙局に乗り込んできた。
そのころ、バーニーは酒場で、機内でゲイルから盗んだカードを故売しようとして囮捜査官に捕まって
しまい、監獄へ。これでは前の犯罪(塗料を大量に盗んだ)罪の執行猶予は絶望となってしまった。
なかなか現れないヒーローだが、ついに名乗りを上げる男が現れた。なんとそれはバーニーを乗せた
空き缶回収の男、ババーだった。ババーはバーニーから預かったあの靴を履いていた。
それからのババーは、ヒーローとして国民的英雄となり、マスコミから、慈善団体からひっぱりだこ。
また、彼のスピーチが、謙遜的でいいことをいうので、大衆はますますババーが好きになっていく。
自分を助けてくれたゲーリーも、髪を切り、スーツを着るとカッコイイ、ババーに心がよろめくのだった。
しかし、ババーは周りのあまりの変化に、良心の呵責を覚えていた。
病気の少年少女を励ましにいったとき、重病の少年に「勇気を出せ」と声をかけるとこの少年が覚醒し
言葉もしゃべるようになるという奇跡のおまけつきだった。このとき、バーニーは現場に行って、自分
こそ、ヒーローだ!あいつは偽物だ、と声をかけるが、誰も相手にしてくれない。
またババーのベトナム戦争時代の戦友たちが集められ、ババーにいかに助けられたかを証言、ますます
ババーの人気は高まる。彼は本当に勇気の人だったようだ。海軍大臣は、ババーに名誉勲章を
授けることを決定した。
そのうちに、警察が押収したバーニーが売りつけようとしたカードがゲイルのものであることが判明、
まさか、あの英雄ババーが、ゲイルを助ける時にカバンを盗み、カードをバーニーに売りつけようとした
というのか?みな、そんなことはあるわけない、と信じようとしない。
一方で、ゲイルのテレビ局は助けられた54人とババーで、救出の一部始終を本物の配役で再現ドラマを
作ろうとしていた。断っていたババーだが、ゲイルに説得され、出演されることに。よく覚えていないんだ
というと、相手があのときはああだったと言ってくれるので、本当はなにも知らないババーもなんとか
役を演じきった。しかし、心は痛んでいた。
バーニーが盗んだカードが警察に押収されたことに違和感を覚えたゲイルはカメラマンをつれて、
バーニーのアパートへ。バーニーは不在だったが、ソファの下から、ゲイルがハンドバックにいれていて
一緒に盗まれた局長賞のマイク型のトロフィーが見つかった。違和感が確信に変わっていく。
と、その時、大家が、ババーが自殺しようとしている、と駆け込んできた。ゲイルを呼んでいる、と。
テレビをつけると中継で、まさしくホテル尾ベランダの外に出ているババーがいた。
彼はあまりの自分の周囲の変化と良心の呵責に耐えかねたババーは飛び降り自殺を企てたのだ。
バーニーを伴ってババーの元に駆けつけたゲイルだったが、ババーの説得にはバーニーが当たった。
ババーはすべての真実を書いた手紙をバーニーに渡すが、バーニーは隣に座り、自分の計画を
話し始めた。自分は名誉なんていらないからおまえがもらった100万ドルの中からバーニーの息子が
大学院をでるまえの学費と、今係争中の裁判の弁護費用をだせ、そうして、お前はヒーローを演じ
続けろ、と。カードのことは小さなことだとも。取引に納得したババーは自殺を思いとどまり、窓へ戻ろう
としたその時、バーニーが足を滑らして落ちそうになる。腕一本で彼を支えたババーは、バーニーの
腕を離さず、そばに来ていたレスキューの力も借りて、バーニーを救ったのだ。これでババーは本当に
人命救助をしたことになった。またヒーロー度があがってしまう。
騒動が一段落してババーが記者に囲まれて「自分は弱さと勇気を併せ持つ普通の男だ。ヒーローは
誰にでもなれる」とまた美しいことを言っていると、バーニーのところにゲイルがやってきて、
本当の私の命の恩人はあなたでしょ、と尋ねる。「俺がそういう状況で、人を助ける人間に見えるか」と
悪ぶるバーニーに、一度は納得して見せるゲイルだったが、別れ際に、「私を助けてくれてありがとう」と
もう一度声をかけるとバーニーは「いいさ」と答える。やはり、と確信して笑顔になるゲイルだった。
ラスト、動物園で、息子と遊ぶバーニー。息子だけには本当のことを言っておかなくちゃと、すでに
大学院までの学費は用意した、で飛行機事故の真実は・・・と語ったのだった。息子が信じたかどうかは
不明だが。と、そのとき、子供がライオンの檻に落ちた、誰か助けて、という声が!バーニーはとっさに
だれか飼育員を呼べ!と叫ぶが、やれやれまたおれの出番か・・・とつぶやいて現場に向かうのだった。
この映画の見所は、嘘をついてヒーローになってしまったババー(ガルシア)が、良心を責められる
結果に。
そして、実際のヒーローのはずのバーニーは、小悪党だが、いざという時には黙っていられないタイプで
金が名誉に優先する。彼がヒーローとして脚光を浴びることはないわけだが、自殺者未遂者を救った
父として息子にはヒーローであり、ゲイルには真実のヒーローであるのは変わらないのだ。
「真実は大切だが、本当のことだけを言っていたら世の中は上手く回らない時もある」ということが
あちらこちらから感じられた一遍であった。
真実を説明するバーニーに、なんでみんな信じないんだ(普段の行いが悪いと信じてもらえないんだな)
あるいは、もっと強く自分が本物だと主張すればいいのに!と感じたあなたはノーマルです。
この映画の情報はこちら
この映画は、飛行機事故を巡る騒動を描いた映画です。 ジャンル分けするのが、ちょっと難しいくらい色んな要素のある映画ですね。 マスコミに対する風刺あり、恋愛あり、親子の絆あり、笑いあり、感動ありのごちゃ混ぜのてんこ盛りって感じです(='m') ウププ で...... more