ジェシー・ジェイムズの暗殺

●「ジェシー・ジェイムズの暗殺 
    The Assassination of Jesse James By The Coward Robert Ford」

2007 アメリカ Warner Bros., Scott Free Pro., Plan B, Virtual Studios 160min.
監督:アンドリュー・ドミニク  製作:ブラッド・ピット、リドリー・スコット他
出演:ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック、サム・シェパード、メアリー=ルイーズ・パーカー他
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これまた、長い西部劇。テーマは、もう何度も映画化されている、アメリカ人ならビリー・ザ・キッドと並び
知らない人はいない(と思う)19世紀末の伝説の極悪人、ジェシー・ジェイムズ。強盗団を率いて何件も
銀行強盗をし、殺人も繰り返したのに、庶民には優しかった、という民衆の間に伝わった義賊伝説で、
英雄視されるジェシー・ジェイムズ(ブラッド・ピット)と、彼に憧れながらも、遂には「ジェシー・ジェイムズ」
にはなれず、背後から彼を暗殺したことから、臆病者(coward)とそしられた、ロバート・フォードの人生
を対比させながら、ジェシー・ジェイムズの人生の晩年を主に描いていく。

印象としては、ちょっと長すぎたな、という感じが、まずしましたね。特に前半では、端折れる、あるいは
端折った方がいいシーンもあったと思います。それと、これは事実だがら仕方がないのだけれど、
強盗団の誰と誰がどうで、という脇の登場人物の多さが、物語の理解をいささか複雑にする。
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最後にロバート・フォードも殺されるのだが、彼を撃ったのが、ジェシーの長兄、フランク(サム・シェパー
ド)ではない、ということが判るのに時間がかかった。(皆さんはすぐに判りました?もっともちゃんと冒頭の
頃を見ていれば、兄は暗殺の報をボルチモアで聞くことになる、って言っているのだが。いきなり
ナレーションで、エドワード・オケリーと言われてもとっさに誰だか判らなかったわけで・・・)
エドワード・オケリーというただの名声がほしい爺さんだったのだな。

物語の印象としては、ジェシー・ジェイムズという悪党は、時々突然泣き出したり、少年を半殺しにしたり、
ナレーションでは相当体もあちこち病気に蝕まれていたようだが、精神にも異常を来したとしか思えない
その振る舞いに、ちょっと感情の移入がしずらかった。悪党だが、実は寂しく、孤独で人を信じられず、
体もボロボロ、そして精神にも異常が・・・、ああ、あはれ、西部の極悪人・・・。というオチだろうが、
ジェシーは性来の粗暴犯で、そこにはなんら同情もなければ、ましてや英雄視などはあるわけはない。
(そう感じさせることが製作者側の成功なのかもしれないけど)、それに比して、ロバート・フォード。彼に
強い憧れを抱いて強盗団に加わったのはいいが、仲間さえ殺してしまうジェシーの非情ぶりに、いつか、
自分の命に危機を感じるようになる。そして、ついには一緒に暮らしていたジェシーの家で、丸腰の彼を
背後から撃ち、殺してしまった。賞金が目当てだった、と後から彼は言うのだが・・・。ジェシーは34歳
だった。

ここで映画は終わらない。そこからは臆病者ロバート・フォードのお話だからだ。殺されたジェシーは
雑誌の表紙になり、遺体は氷漬けにされて、全米を見世物として回された。世間は、英雄の暗殺と見て
いたようだ。そして、英雄を殺したロバート・フォードには称賛は寄せられず、兄と、ジェシーの暗殺の
一部始終を舞台劇に仕立てて、自ら出演してみたりしたが、卑怯者、とか臆病者、とかのそしりばかりが
投げつけられ、極悪人を殺した英雄になりそこねてしまった。そんな雰囲気に耐えられず、兄は自殺、
酒場では流しのギター弾きが(音楽担当のニック・ケイヴが歌を披露している)、「臆病者のロバート・
フォード・・」とかいうジェシー・ジェイムズの暗殺をネタにした歌を歌っていると、たまたま酒場で飲んで
いたロバートは、「おれがロバートだ!」と、やけを起こしたりしていた。そして後日、世間の称賛と名声を
狙った、エドワード・オケリーという男に、先込めの旧式銃で自分の経営する酒場で撃ち殺された。
彼には全米から嘆願書が集まり、終身刑が言い渡されたものの、後には釈放されたという。
ジェシー・ジェイムズは民衆の間ではあくまでも英雄だったのだ。彼を殺したロバートについてまわった
誤算には、ロバートも、彼の兄も事前に気づく由もなかったろう。ロバートは、自身殺される直前頃には
ジェシーを暗殺したことを、心から後悔し、暗殺なんてしなければよかったと悔いていたという。
ジェシー自身は、最後の方では、ロバートの心変わりを承知していて、銃を贈ったり、暗殺される直前には
ガンベルトを自らはずし、まがった絵を直すといって背を向けた、その絵のガラスには銃をこちらに
向けるロバートが映っていたことに気がついていたのに、何もしなかった。疑心暗鬼の生活に疲れていた
ジェシーは、もはやロバートに撃たれて死ぬことに平安を求めていたのかも知れない。

というわけで、邦題のタイトルより、原題の「臆病者ロバート・フォードによるジェシー・ジェイムズの暗殺」
というのが、やはり中身を表わしていて正しい。映画で描かれる主役は2人だからだ。
ロバートを演じ、アカデミーで助演男優賞にノミネートされたケイシー・アフレックと、彼の兄チャーリーを
演じたサム・ロックウエルが良かった。特に、最後の銀行強盗の会話を3人でするシーンは、すでに
ロバートに疑いを持ち始めたジェシーの気持ちと、警察の手先になっていた兄弟の心の微妙な動きが
現れた息詰まるハイライトシーンだと思う。
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ジェシー・ジェイムズを神格化せず、むしろ理解しがたい狂人の
タッチで描き、これにロバート・フォードを対比させて描いたところに、この作品の面白みがあるのだろう。
「アメリカン・ギャングスター」を観ても判るとおり、リドリー・スコットがプロデューサーの一人に名を
連ねていることからも判るように、殺人や暴力シーンは血がドバドバです。

全体としては、いろいろ言いましたが長い映画だったものの、結局面白く観ました。ブラッド・ピットは
狂気を孕んだ極悪人を、ストレートに演技し、これまた良かったと思います。ヴェネチア国際映画祭で
男優賞をとっただけのことはあるな、と。
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西部劇ですが西部は出てきません。ジェシーが生まれたミズーリやミネソタなどの中西部が主な舞台で
全体としては曇り空、雪景色。そのトーンが映画の中のやりきれなさを演出していますね。
この映画の情報はこちらまで。
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Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2009-03-28 19:25
タイトル : ジェシー・ジェームズの暗殺
 『あこがれて こがれて、心がつぶれた。』  コチラの「ジェシー・ジェームズの暗殺」は、1/12公開となったPG-12指定の"アメリカで最も愛された無法者を、背中から撃った卑怯者の物語"なのですが、早速観て来ちゃいましたぁ〜♪  25件以上の強盗と17件もの殺人を犯し...... more
by jazzyoba0083 | 2009-03-27 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback(1) | Comments(0)