つぐない Atonement

●「つぐない Atonement」
2007 イギリス Unversal Pictures,Working Title Films,Relativity Media,
Studio Canal  123min.
監督:ジョー・ライト 原作「イアン・マキューアン『贖罪』
出演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、シアーシャ・ローナン、ヴァネッサ・レッドグレイヴ
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<2007年度アカデミー賞作曲賞受賞作品>


'07に、かなり評判になった映画ですね。WOWOWで放送されましたので、鑑賞してみました。
イギリスの文芸モノ、というと重いなあ、という印象が強いのですが、この作品も、アンハッピーエンド
ですし、主人公の妹(ある意味主役)の結果論ではあるかもしれませんが、タイトルどおり「つぐない」
になりきれてない、というスッキリしなさついて回ると思います。配役陣は、キーラもマカヴォイも、
レッドグレイヴもいいです。映像も、タイプをリズムに使った音楽も良かったです。
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何がダメだったかというと、(ストーリーは面白いのですが)、原作を読んでいない身とすると、前半が
なんともたるい。何が言いたい映画なのかが判ってくるのは、マカヴィオイが逮捕されてから。
そこからは一気呵成に見せるので、もったいない気がします。思わせぶりな前半にはそれなりの意味が
あるのでしょうが、原作を読んでない人にはわかりづらいですね。

タイムシフトを使って時制を少しずらして、後追いで見せる方法などは、上手いなあ、と思ってみてい
たのですが、後半、マカヴォイの戦争のシーンは、(取材はしっかりしたといってますが)妹ブライオニー
の創作物だったわけで、そのあたりの整理の仕方に戸惑いを覚えました。

『1935年、夏のイングランド。政府官僚ジャック・タリスの屋敷では、小説家を夢見る末娘のブライオニー
が休暇で帰省する兄とその友人を自作の劇で歓待しようと準備に追われていた。
一方、大学卒業後の身の振り方が定まらず鬱屈した日々の姉セシーリア(キーラ)は、ある出来事を
きっかけに使用人の息子ロビー(マカヴォイ)への愛を自覚する。<中略>
そんな時、タリス家に預けられていた15歳の従姉妹ローラが敷地内で強姦されるという事件が起きる。
現場を目撃したブライオニーは、ロビーが犯人だと告発、彼は無実を証明することも出来ず警察に
連行されていく。
4年後、ロビーは戦場の最前線に一兵卒として送られ、セシーリアはそんなロビーとの再会を信じて、
彼への手紙をしたため続けていた…。』(allcinema)
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前記、中略に入るの部分は、実は妹ブライオニーもロビーに憧れていて、庭の噴水の前で繰り広げられる
シーンや、図書室での、シーとロビーのセックスシーンを目撃して衝撃を受けたブライオニーは、姉に
無垢な少女らしいジェラシーを持つのだった。そこで、森で従姉妹が襲われた、と言ったとき(襲ったのは
後に襲った少女と結婚し、軍用チョコレートを開発して金持ちになるポール・マーシャルだった。彼女は
性的な関係を森でしていたことを隠すため、とっさに襲われた、とうそをいい)ブライオニーはそれを
ロビーに対する復讐(大事になるとはその時は思わなかった)としたのだ。
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医者を志していたロビーは逮捕され、刑務所からフランス北部の戦線に送られてしまう。仲間と協力して
何とかドーバー海峡のところまで逃げてきて、戦争も終わったことだから、引き上げようと待っていた
ところロビーは敗血症にかかり死んでしまう。 戦場のロビーと手紙をやり取りし、無罪を立証し、結婚
する、という一途でいたシー(セシリア)も、ロンドンでドイツ軍の爆撃を逃れるため地下鉄の駅にいたところ、
運河かなんかが決壊して、大量の水が地下鉄に流れ込み、シーは溺死してしまう。
(この真実は後に晩年のブライオニーが語るのだが)

突然画面は現代に。テレビのインタビューに答える作家ブライオニー。21作目の作品は「つぐない」という。
インタビューに答えて、自分は痴呆症に罹っていて、次の作品を作ることが出来ないから、この作品は
遺作となると語る。ブライオニーは、自分がついたささやかな?嘘で、姉と恋人の人生を狂わせ、二人とも
死なせてしまったことを、戦時中は大学を諦め看護師として奉仕したり、つぐないの一生を送ってきたと
いうのだ。実際はロビーは、二度と英国の地を踏むことなく、姉は二度とロビーと会うことはなく亡くなって
しまうのだが、小説の中では、二人は無事にロンドンで再会し、謝罪にきたブライオニーを酷く責める、
というシーンになっていて、二人は夢に見ていた海辺に建つ窓枠の青い白い家の前で幸せそうにしている
シーンで映画は終わっていく。
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「あの二人に幸せを上げた」と現代のブラオニーはいうのだが、その小説を書き上げることで、一生掛け
てきた「贖罪」の締めくくりとし、二人の幸せを壊したことの罪滅ぼしとして、小説では、二人の希望どおり
の結末とした、という訳だろうが、そう言われてもねえ、死んだ人間が生き返るわけでもなし(それを言っ
ちゃおしまいか)、ブライオニーは、「つぐない」を出版したことでも贖罪仕切れたわけではないだろう。
それはブライオニー自身が一番よく判っていたはずだ。彼女は死ぬまで二人からは許されない、いや
死んでも許されないだろう。ブライオニーの行動は、そこまで自分を責めなくても、、という人もいるだろう
が、私としては、些細な(とその当時は思っただろうが)嘘が、結局姉と恋人の人生を破壊したことを思うと、
どうしてもブライオニーを許す気にはなれないのだ。
ブライオニーが小説の中で、ロビーに、「首を折ってやろうか」と言わしめるのは彼女の贖罪意識が高い
ことを主張している訳だが、それでも、許されない。死んでも天国で、二人に謝りつづけなくてはいけない。

この映画で一番私がうなったのは、戦後からいきなり現代に(テレビ局のモニター群)に、時制がワンカット
で変わったこと。これは実に鮮やかだった。そしてレッドグレイヴの登場。
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前半が良かったって人もいるんだよなあ。映画って見る人によってホントに千差万別。またそれが面白い!
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この映画の情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-03-31 22:05 | 洋画=た行 | Comments(0)