2017年 06月 17日 ( 1 )

●「教授のおかしな妄想殺人 Irrational Man」
2015 アメリカ Gravier Productions 98min.
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、ジェイミー・ブラックリー、パーカー・ポージー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

原題は、「非合理的な、筋の通らない男」ほどの意味だが、邦題から類推されるのは、いささか
コメディに振った感じを受けるであろう。確かに、いつものウディのように、シリアスな中にも
ジョーク(しかも相当ブラックな)を交えて、サスペンスコメディとでもいうようなジャンルを
形成するのだが、本作も大まかに言えばそいういう作りだ。だた、今回はやや薄味。
しかし、これも彼の作品に共通することで、作品に現れる辛辣なジョーク・夢想などから、人生の
実相を描き出しているのは彼の作品の味である。

ウディファンの私としては、本作はちょっと、発端がドストエフスキー「罪と罰」の思想に
似すぎたかな、という印象を受けた。確かに哲学教授エイブ(ホアキン・フェニックス)は
ドストエフスキーが好きだし、彼に入れあげてしまう女学生ジル(エマ・ストーン)も、
ドストエフスキーは読破したわ、と言っているので、物語の底には、ラスコーリニコフが明確に
存在しているのかもしれない。

ウディ自身は出演はしていない。人種やユダヤ教(人)に関する執拗な?辛辣ギャグもない。
ストーリーは非常に分かりやすく、O・ヘンリの短編を読んでいるようなわかりやすさと寓意で
ある。全編で使われるラムゼイ・ルイスの「ジ・イン・クラウド」が非常に作品にマッチしていた。
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人生に行き詰まってしまった哲学教授エイブが、ダイナーで教え子ジルと食事中、たまたま後ろの
席に座っていた一家の会話を聞いたことから話しが大きく動き出す。その話というのが
離婚に際しての子どもの親権についてなのだが、どうやら旦那方の弁護士と判事は癒着していて
母親に不利な判決を出すらしい。エイブは、この悪徳判事を亡き者にすることが人生の
生きがいになってしまうのだ。それまでは着任してきた大学で、哲学を教えはするが覇気はなく、
人生の意味を見失ってしまし、離婚したこともあり、加えてインポになっていた。
それが、悪徳判事を亡き者にする、ということの人生の生きがいを感じた途端、精力絶倫、
気力充実になってしまうのだった。
エイブは最近他の大学から異動しきた哲学科の教授。
だが、人生の意味を見失っていて、情緒不安定、自殺願望さえあった。そいいう状況だった。

教え子ジルはロイという結婚も視野にいれた恋人がいたが、彼を愛しつつも、高踏で知識が高く
面白い会話をし、奥が深いエイブに惹かれていく。しかしエイブは女学生との一線を絶対に
超えない。いらつくジル。疑うロイ。

エイブは悪徳判事の行動パターンを調べ上げ、毎週土曜に公園をジョギングし、途中で必ず
キオスクでオレンジジュースと新聞を買い、ベンチで一休みするという機会を伺うことに
決定した。そして、予定通りベンチに座って新聞を読んでいる判事の横に座り、予め買って
おいた同じ容器の青酸カリ入りのジュースと入れ替えに成功する。

判事は死亡し、エイブは狂喜、一緒にダイナーで話を聞いていたジルも、何も知らずに
無邪気に喜んで、お祝いの会食を開いたりする。

しかし、天網恢恢疎にして漏らさず。次第にエイブの行動がバレ始める。化学室でクスリを
いじっているところをジルの友人に目撃されたり、大学の友人教師でエイブに入れあげている
化学担当が、自分の家から化学室の鍵が無くなった、と騒ぎ、次第に、ジルはエイブが
判事殺しの犯人ではないか、と疑うようになっていった。その頃にはエイブへの愛を押さえきれず
ロイとは別れてしまっていた。

ついにジルはエイブが判事毒殺の犯人である確たる状況証拠を入手し、エイブに詰め寄る。
しかも、警察は間違った男を逮捕してしまう。ここに至って、ジルは無実の人を終身刑には
できないとエイブに自首を促す。あんなに惹かれていたのに、殺人を犯すのはジルにとっては
ありえないことだった。普通はそうだわね。
自白するエイブ。その理論は「罪と罰」のラスコーリニコフと同じだった。
自首しないと私が警察に告白するわよ、と言われ、自首を約束するエイブだったが、それは
ウソで、友人の化学の先生とスペインに高飛びを計画していた。
自首の日、かつてバイトで扱い方を知っていたエレベーターを細工。ピアノのレッスンに来た
ジルをエレベーターホールで呼び止め、開いた箱のないエレベーター扉からジルを突き落とし
殺そうとした。しかし、もみ合ううちに、エイブは小さい懐中電灯を踏みつけ、転倒、勢い
余って自分がしかけた罠に自らはハマりエレベーターの中へと落ちていった。(死んだのだろう)
因果応報。その懐中電灯というのが、二人で一緒に遊び行った夜店のルーレットで当てたヤツ
で、伏線の回収が心地よかったりする。

ジルはロイと寄りを戻した。「エイブは私には理解できない人だったのよね。」"Irrational Man"
だったということだ。しかし、エイブの心情、分かりますねえ。最期は自業自得という結末だけど、
あの結末だけで、因果応報とは言い切れない感情が残るのがウディ作品の面白みでしょう。
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<ストーリー>
「ミッドナイト・イン・パリ」「マジック・イン・ムーンライト」のウディ・アレン監督が
ホアキン・フェニックスとエマ・ストーンを主演に迎えて贈る不条理シニカル・コメディ。
世の中のための殺人に生きる意味を見出し鬱から脱した哲学教授と、彼に恋する2人の女性が
織りなす皮肉な運命をコミカルに綴る。共演はパーカー・ポージー、ジェイミー・ブラックリー。

 アメリカ東部ロードアイランド州ニューポート。この小さな海辺の町の大学に赴任して
きた哲学教授のエイブは、“人生は無意味である”との哲学的答えに至ってしまい、すべての
ことに無気力となってしまっていた。ところが、そんな悩める中年男に、教え子の優等生
ジルは興味津々。さらに夫婦生活に問題を抱える同僚リタからも猛アプローチを受けるが、
彼の心は沈んだまま。

そんなある日、ジルと立ち寄ったダイナーで悪徳判事の噂を耳にするエイブ。その時、彼の
脳裏にある完全犯罪への挑戦という企てがひらめく。以来、生きる意味が見つかったことで、
見違えるように気力を取り戻したエイブ。その急変ぶりに戸惑いつつも、ますます彼の虜に
なっていくジルだったが…。(allcinema)

<IMDb=★6.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:44% Audience Score:46% >




by jazzyoba0083 | 2017-06-17 22:50 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)