●「ティエリー・トグルドーの憂鬱 La loi du marché 」
2015 フランス  Nord-Ouest Films and more.91min.
監督:ステファヌ・ブリゼ
出演:ヴァンサン・ランドン、カトリーヌ・ドゥ・ミルベック、マチュー・シャレール他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

フランス労働界の底辺に近い人達の暮らしをドキュメントしたような作品。
現代社会を告発(とまではいってないかな)すると共に、観る人に問いかけて
くる主人公の心の動き。主人公ヴァンサン・ランドンの演技が素晴らしい。

終始アップで画角の美しさを排除したような手持ちのカメラでの長回し。
セリフを覚えるのも大変だったのだろうな。
クレーンとかの重機の訓練を受けても就職先は経験者しか採用しないと
職業訓練サポートセンターみたいなところで係員とやりあう長いシーンから
始まる。家には脳性麻痺の息子と妻。何とか食わしていかなくてはならないし
息子は専門校への進学を希望している。何にしてもカネがかかる。

そうやってやっと手に入れたのがスーパーの万引き監視員。多くのカメラを
モニターしながら、万引きを摘発する。そのうち、働き者の中年女性が
クーポン券を自分のために不正取得したことが映像から判明し、詰問された
彼女は職場で自殺してしまう。さらに、黒人のレジ係は客のポイントを不正
取得する。そうした仲間の不正も摘発しなくてはならないのだ。なぜ彼女らは
悪い人間ではないのにそんなことをしなくてはならないか、無言のメッセージが
伝わる。

次第に主人公ティエリー・トグルドーは仲間を疑ったり、また客を疑うのに
嫌気がさし、会社の従業員に対する扱いにも絶望し、職場から制服を脱いで、
去って行ってしまう。そこで映画は終わる。

ティエリー・トグルドーという中年男性のある暮らしの断面から、現在フランスの
おかれた格差社会、やりきれない庶民の(特に障害のある子どもをもった家庭)
「憂鬱」をただただひたすら描く。頑固で自分の信念は貫くタイプの人間の生き辛さ
みたいなものも感じられる。妻との踊りのレッスンシーンは何を言いたかったのだ
ろうか。トレーラーハウスの売り買いのシーンのリアリティの表現も面白かった。
役者は演技をしているというより、ドキュメントの映像を見せられている
ような自然な演技でリアリティ感は強い。

見終わって希望が湧くタイプの映画ではない。むしろ「憂鬱」が伝染するような
作品だ。監督が90分という時間で社会問題を画面を通してぶっつけて来た、
そんな気分になった作品だった。
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<ストーリー>

ヴァンサン・ランドンが社会の厳しさの中で板挟みになる中年男を演じ、
第68回カンヌ国際映画祭主演男優賞を獲得した人間ドラマ。
失業したティエリーは苦労の末にスーパーの警備員として再就職。不正を告発
した従業員が自殺し、会社の厳しい姿勢に疑問を抱く。
ステファヌ・ブリゼ監督とヴァンサン・ランドンが「母の身終い」以来の
タッグを組んでおり、ブリゼ監督もキリスト教徒の審査員が選ぶ同映画祭
エキュメニカル審査員賞を受賞した。
大衆よりも玄人に受けが良いのはRotten Tomatoesが示すとおり。


エンジニアとして働いてきた中年のティエリーは、集団解雇の対象となって
しまう。ストライキを起こしてでも闘うと息まいていたものの、やはり会社を
辞めることに。しかし頑固な性格も災いし、面接はうまくいかず、職業訓練の
場では若い人から頑ななところを指摘される。
厳しい状況下にある彼にとって、妻や障がいを持つ息子の存在が唯一の救い
だった。エンジニア職の希望はかなえられなかったが、ようやくスーパーの
警備員の働き口を見つけられたティエリー。
それは、客だけでなく従業員にまで監視の目を向けるもので、不正を見つけ
次第告発しなければならなかった。ある日、告発された従業員が自殺。
ティエリーは会社側の厳しい対応に疑問を覚えるが……。(Movei Walker)

<IMDB=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:91% Audience Score:60%>







by jazzyoba0083 | 2017-07-01 22:50 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)