2017年 08月 05日 ( 1 )

ロッキー

●「ロッキー Rocky」
1976 アメリカ Chartoff-Winkler Productions. Dist.United Artists119min.
監督:ジョン・G・アヴィルドセン 脚本:シルベスター・スタローン
出演:シルベスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウェザース、
   バージェス・メレディス、ジョー・スピネル他

 
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           <1976年度アカデミー賞作品賞、脚本賞、編集賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
私が食わず嫌いで見ていないシリーズに「パイレーツ・オブ・カリビアン」「ロード・オブ・ザ・リング」が
あり、この「ロッキー」の連作もその一つであった。

だた、先日読んだ町山智浩氏の本に、この「ロッキー」が、60年代から70年代初頭にブームとなった
いわゆる「アメリカン・ニューシネマ」の終焉を告げ、新しい時代の到来を告げた、と書いてあったので
それは、そんな大事な映画なら見ておかなくちゃなるまい、とAmazon Prime で鑑賞に及んだ次第。

町山氏の本で、内容はすべて理解してから見たので展開の驚きはなかったが、映画としては総じて
よく出来ている。キャスト、ストーリー、映像、音楽、時としてデジャヴ的なシーンもあったけど
それは意識したオマージュと解釈しておいた。しかし、スタローンが書いた脚本はプロデューサーサイド
とも揉めた部分も多く改変を余儀なくされたり、スタローンが承知をせずに変えてしまったり、
一方で低予算ならではの苦労も並大抵ではなかったようだ。

で、何が「俺たちに明日はない」「卒業」「イージーライダー」などのニューシネマと言われた諸作からの
変換点になったか、というと、アウトローのヒーローたちがこれまでのアメリカ的倫理観に抵抗し、
悲劇的なラストを迎える、という形式からの変換というのである。「暴力」「ドラッグ」「セックス」など
これまでハリウッドが扱わなかったものを積極的に扱い、世の中、ハリウッドが描くような綺麗事では
済まない、という主張が、当時ベトナム戦争や公民権運動で荒れていたアメリカの若者に支持されて
きたわけだ。
 70年台半ばともなると、ベトナム戦争は敗北という形で終わり、ヒッピーはヤッピーになり、ロック
ミュージックはメジャーレーベルの金儲け手段となっていく。そうした時代の中で、「ロッキー」は
「アメリカ、どうしちゃったの?」的なムードの中で、黒人の無敵なチャンピオンに立ち向かう無名の
ボクサーの「勝利」の話。世界タイトルマッチという描かれる舞台は大きいが、ロッキーが目指すものは
「クズ野郎」からの脱出とエイドリアンという恋人への愛情の証拠いう極めて個人的なもの。

イタリア系白人が見世物として設定された試合で黒人の無敗チャンプに一泡吹かせる。すななち努力の汗は
裏切らないと、やさぐれた世間に生きる俺だが、なんとか自らの手で隘路は打開できるのだ、という
ことを示す一方、黒人パワーを粉砕し、ぱっとしないアメリカになってしまった白人たちは快哉を叫び
溜飲を下げたわけだ。同じ年に封切られた「タクシードライバー」も、大統領候補暗殺から急遽、売春婦の
ヒモの元締めを射殺して英雄となる成り行きもまた、どんよりとしてしまったアメリカの白人たちの
溜飲を下げ、個人のレベルでの達成感というものを意識させた作品としては、「ロッキー」と通底する
部分がある感じだ。この潮流は町山氏によれば「JAWS/ジョーズ」「スターウォーズ」などへと引き継がれて
いくという。「アメリカンヒーローの復権」(極めて個人的な理由での)

私見だが80年代以降は、エンタメ系に徹底的に振ってしまったもの、大掛かりな設定の中で個人の心情を
描くもの、そしてまったく小社会、個人的なレベルでの話の中に観客のシンパシーを呼び起こすものに
大別されたような気がする。例えば今年のアカデミー賞ノミネート、受賞映画で言えば、「ラ・ラ・ランド」は
エンタメ系、「ムーンライト」「マンチェスターバイザシー」は個人的な小宇宙での話、「メッセージ」
「ハクソーリッジ」「LION」は大掛かりな設定の中で個人の心情にシンパシーを感じるもの、というふうに
なろうか。

確かにこの「ロッキー」のエンディングはそれまでの、鬱々とさせるニューシネマのエンディングとは
一線を画すものだろう。だが、本作もシリーズ化されるとまたその持っていた意味あいが変わっていく
のだが。ストーリーはもう皆さんご存知と思うので省略させていただく。
この映画をもって嚆矢とするステディカムの効果は特にスタローンのフィラデルフィア市内のランニングと
ボクシング試合のシーンで効果をうまく発揮している。試合のときの客席にステディカムをもったキャメラ
マンが写ってますね。

<IMDb=★8.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93% Audience Score:69%>



by jazzyoba0083 | 2017-08-05 13:52 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)