2017年 10月 16日 ( 1 )

裸足の季節 Mustang

●「裸足の季節 Mustang」
2015 フランス・トルコ・ドイツ CG Cinema. 97min.
監督・(共同)脚本:デニス・ガムゼ・エルギュヴェン
出演:ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシル、トゥーバ・スングルオウル他
e0040938_14230547.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
邦題から見て、もう少しチャラい映画か、と思ったら、やはりカンヌなど
それ系で評価されたのも頷ける結構重い内容だった。原題は「野生の馬」
なわけだけど、意味としては理解出来る。今でもトルコの田舎では、この
映画で描かれるような封建的な風習というか制度が残っているのだろう。
それを思うと、5人姉妹の思いに胸が潰れる思いだし、自由がある、ということが
どんなに大切なことか、特に若い人たちに対して重要か、が良く分かる。
暮らしや人間性の否定に繋がる封建制度は、しつけとか処女性とかだけでは
なく、自由な発想や芸術文化の圧迫にも繋がるんだなあ、と感じた。

イスラムの世界で女性はいつごろから頭をスカーフみたいなもので覆わなくては
ならないのか知識が無かったが、おそらく中学生くらまでは結構自由な感じ
を受けた。しかしある年齢になると親の決めた男性と処女性を極めて
重んじられた結婚を押し付けられる。

この映画ではイスタンブールから1000キロ離れた田舎町で、両親が早くに
亡くなり、おばあちゃんに育てられている5人姉妹のある夏を描く。

黒海にちかいため、学校帰りに海に制服のまま入って男子生徒とじゃれあい、
男子生徒に肩車をしてもらった、というだけで、もう村中に「はしたない」
という噂が流れる。女の子は男子となんか遊ばず、親の言うことを聞いて
良妻賢母になるべし、という教育で、結婚前は処女検査があり、初夜には
ベッドに血が付いているかいないかで大騒ぎとなる、という今の先進国では
到底考えなれないアナクロニズムで覆い尽くされている。一方で、こうした
いわば「天から与えられた自由」と私達が思っていることが、まったく認め
られない世界が、まだまだ地球上にはあるのだろう。

姉妹は自由奔放で、まあ、どの国でも若い人は大人の言うことは煩くて
自由にしていたいもの、束縛を嫌うものだが、姉妹の住むあたりでは頭から
押さえつけられる。それでも家から脱走してサッカーを観に行ったり
ボーイフレンドと会ったりするのだが、おじさんに家の窓に鉄格子を付け
られ、家の周りにはまるで刑務所のような高くて頂上に槍のような鉄骨が
突き出ている塀が作られた。もう籠の鳥そのもの。

映画の中の救いはそれでも姉妹は何とか抜け出そうと明るく諦めないことと、
末娘の活発な頭のいい行動力だ。まだ高校生くらいなのに上の姉二人が
同時に結婚させられ、いよいよ大人の世界の戒律にがんじがらめになろうと
する時、3番目の姉に悲劇が襲う。4番目の姉の時は家に閉じこもり反乱。

二人して高い塀を乗り越えて、脱出する。末娘は普段から自動車の運転を
研究していて、家からキーを取り、金を奪ってクルマに乗り込み夜道を
走る。しかし途中で脱輪してしまう。そこに以前から(サッカーに行く時に
止まってくれたトラック運転手)親しくし、クルマの運転も教えてくれた
男を呼び出し、彼のトラックに乗ってイスタンブールを目指す。

映画の冒頭で、末娘の大好きな女先生が異動で担任を外れてしまい、
姉らから慰められるシーンがあるのだが、その女の先生の住所を知って
いたので、そこを探し当て、末娘が先生の胸に飛び込むところで映画は
終わる。

旧習に立ち向かう若い女性のみずみずしい感性が、短い時間で上手く描かれ
ている。5人がそれぞれのキャラクターを持ち、それぞれの青春を生きるの
だが、最後に先生のところにたどり着いた末娘は、それからどうしていく
つもりだったのか。製作協力にトルコ文科省が付いているが、自分の国の
因習をいわば外に出したら恥と感じられる部分が描かれているのに、よく
お金を出したと思う。
若者の自由を求める純粋な気持ち、それを抑圧する古い考え。それに負けない
女性たち。トルコ政府が推奨しようとする点があったのだろうか。
それとイスラムの戒律がどうの、という点には繋がらないところがミソか。

5人全員の結末は全部がめでたいわけではないが、すがすがしい5人姉妹に
拍手を送りたくなるような映画だった。いろんな映画祭で評判になるのも
分かる気がする。短い映画なので、機会があれば観てみるとよいと思う。
e0040938_14233653.jpg
<ストーリー>
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた、デニズ・ガムゼ・
エルギュヴェン監督の長編デビュー作。
両親を亡くし祖母の家で暮らしている5人姉妹。学校生活を謳歌していたある日、
古い慣習と封建的な思想のもと一切の外出を禁じられてしまう。
オーディションで選ばれた姉妹役の5人は、三女エジェを演じたエリット・
イシジャン以外は演技初体験の新人。

イスタンブールから1000km離れた黒海沿岸の小さな村。10年前に両親を亡くした
美しい5人姉妹、長女ソナイ(イライダ・アクドアン)、次女セルマ(トゥーバ・
スングルオウル)、三女エジェ(エリット・イシジャン)、四女ヌル(ドア・
ドゥウシル)、そして末っ子の13歳のラーレ(ギュネシ・シェンソイ)が、
祖母(ニハル・コルダシュ)と叔父エロル(アイベルク・ペキジャン)のもとで
暮らしている。

ラーレの大好きなディレッキ先生がイスタンブールの学校へと異動になった日、
姉妹たちは下校の途中、海で無邪気に男子生徒の肩にまたがり、騎馬戦をして遊んだ。
帰宅すると、隣人から告げ口された祖母が怒りの形相で「男たちの首に下半身を
こすりつけるなんて!」と、ソナイから順番に折檻していく。

この日以来、姉妹たちは外出を禁じられ、派手な洋服やアクセサリー、化粧品、
携帯電話、パソコンも没収される。文字通り“カゴの鳥”となった彼女たちは
花嫁修業を命じられる。地味な色の服を着させられ、料理を習い、掃除をし、
毎日のように訪ねてくる村の女たちが花嫁として必要なことを伝授していく。

次々と見合い話がまとめられ、婚礼の日を迎える。浴びるように自棄酒を飲み干し、
涙を流すセルマに、「結婚したくないなら逃げて」とラーレは話しかける。
しかしセルマは、「どこへ逃げればいいの? イスタンブールは1000キロ先よ」と
諦めたようにつぶやく。この夜が、姉妹が揃う最後の日となった。
ラーレは祖母のへそくりから金を盗み、アリバイ工作のため自分の髪を切って
人形に縫いつける。そして運命を切り開くための計画を強行する……。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:98%Audience Score:88%>


 

by jazzyoba0083 | 2017-10-16 22:50 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)