2018年 02月 01日 ( 1 )

●「92歳のパリジェンヌ La dernière leçon 」
2015 フランス Fidélité Films. 106min.
監督・(共同)脚本:パスカル・プザドゥー 原作:ノエル・シャトレ『最期の教え』
出演:サンドリーヌ・ボネール、マルト・ヴィラロンガ、アントワーヌ・デュレリ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
重いテーマだ。それをヒューモアとウィットをまぶして、「どっぷり」暗くしないところが
フランス映画の持ち味と言えるだろう。
本作は、実話を元にして作られた「尊厳死」についての一遍である。

人は生まれた以上は誰でも死ぬ。これは「絶対」。安倍晋太郎も、石原さとみも、
トム・クルーズも例外ではない。当然私とて、あなたも。

本作では90歳を超えた1人の寡婦が、自分のカラダが思い道理にならなくなり、もう
自分の人生にけじめを付ける時、信念としてベッドでチューブだらけでは死にたくないと
考えていたため、92歳の誕生日に、自分は3ヶ月後に死ぬ、と宣言する。

さあ、子どもたち、まごたちを巻き込んで大騒動が勃発する。おばあちゃんはとにかく頑固。
言い出したら聞かないことはみな知っているが、肉親と死病でもないのに別れるなんて
到底受け入れがたい。孫も含めて一所懸命介護もしてあげているのに。息子は怒り、娘は
次第に母の思いを受け入れていく。

助産婦だったおばあちゃんは、病院にいた時、庭で産気づいた女性から赤ちゃんを取り上げ
るという事件があったたのだが、そんなこともあり、自分からクスリを飲んで自死すると
いっても、みんなの暖かい心に触れて自殺を思いとどまるのかと思いきや、そうじゃない。
おばあちゃんの意思はあくまで固かった。

本作の優れている点は、おばあちゃんの一貫したぶれない行動に、人生をしっかり幸せに
生きた、という確信を感じ、こういう気持ちに、自分はなれるのだろうか、泣きながら生に
しがみつくのではないか、と思わせる点。
さらに家族の右往左往が、観ている人に「そういう気持ちにもなるよなあ」という
シンパシーを上手く引き出させている点だろう。母親の自殺を幇助すれば犯罪になって
しまう。

おばあちゃんは30年前から病院では死にたくない、という覚悟を決めていて、いよいよ
この世にサヨナラを言うときが来た、と悟る。寝ていておねしょをしてしまう。服がちゃんと
1人で着られない、やることを忘れる、転ぶ、心臓だかのことでよく倒れる、そうした
状況が、人間としての尊厳を傷つける、自分の行き方とは違うと確信したのだろう。
もちろん家族との別れは辛いに決っている。しかし、自分が迷惑を掛けて生き長らえるより
きっぱりとサヨナラしたほうがいい、とおばあちゃんは覚悟したのだ。女性として美しく
ありたいという矜持もあったのだろう。

私は出来ないなあ。

やがて家族は、おばあちゃんの「尊厳死」を受けいれるようになる。最後は離れた場所との
電話で終わる。「Merci,Au Voir」。

この映画のおばあちゃんのように、いずれ絶対だれにでも訪れる「死」を、鷹揚として
受け入れるためには、後悔のない人生を生きる、生ききることしかないと、観客は思う
だろう。人生に未練を残さないこと。そのために今をどう生きるか、この映画の訴える
ところは深い。

おばあちゃん役を初め子どもたちや孫のキャラクターも上手く描かれていたと思う。
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<ストーリー>
自らの人生を終える日を決めて実行し、世間を騒がせたフランスのジョスパン元首相の
母親ミレイユの実話を基にした人間ドラマ。
信念を貫き、最後まで“美しい人生”であろうとする92歳のヒロインの姿を描く。
84歳にして舞台やテレビ、映画などで活躍するマルト・ヴィラロンガが主人公のマドレーヌ
を、その娘ディアーヌをサンドリーヌ・ボネールが演じる。

かつては助産婦として活躍し、今は子や孫にも恵まれ、ひとりで穏やかな老後を過ごして
いるマドレーヌ(マルト・ヴィラロンガ)。まだまだ元気な彼女の気がかりは、数年前
からノートに書き記している“一人でできなくなったことリスト”の項目がどんどん増え
ていること。
そんな中で迎えた92歳の誕生日。お祝いに駆けつけた家族に、彼女は驚くべき決意を
打ち明ける。みんなに迷惑をかける前に、自らの手で人生に幕を下ろすことにしたと
いうのだ。絶対反対を主張する家族たち。
一方、マドレーヌの決意も全く揺るがない。限られた日々の中で、家族はマドレーヌの
想い、そして彼女の生きてきた人生と触れ合ってゆく……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.7>



by jazzyoba0083 | 2018-02-01 23:10 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)