カテゴリ:洋画=あ行( 364 )

●「アニーよ銃をとれ Annie Get Your Gun」
1950 アメリカ Metro-Goldwyn-Mayer. 107min.
監督:ジョージ・シドニー  脚本:シドニー・シェルダン
出演:ベティ・ハットン、ハワード・キール、ルイス・カルハーン、J・キャロル・ネイシュ他
e0040938_16253158.jpg
<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
今日は月イチの市が開催する映像鑑賞会。この半年は古いミュージカルシリーズで、今日午前の
出し物が「アニーよ銃をとれ」だった。
この時期のMGMものは大好きなれど、たまに鑑賞が抜け落ちているものがある。本作もそれで、
これに続く「ショウほど素敵な商売はない」は観ているのだが、今回は初見であった。

この映画調べるといろいろと面白いことが分かってきて、ますます興味深くなったDVDを買おうかしら、
とも思う。まず主演の実在の女性ガンマン、アニー・オークリーを演じたベティ・ハットンだが、まさに
本作が彼女のピークとも思える演技と歌が素晴らしい。小柄でそう美人という訳でもないのだが、愛すべき
キャラクターを十分に発散。吹き替えをしない乗馬シーンやその歌声など、今見ても一級品の芸・演技で
ある。その後はあまり作品に恵まれず、もともとブロードウェイでの舞台劇であったこの作品のその舞台で
アニーを演じ、その後「ショーほど~」にも主演する御大エセル・マーマンにかなり意地悪されたり、テレビの
世界に軸足を移したことが裏目に出たりして本作からほどなく引退してし消息不明となってしまう。

本来この映画のアニーにはジュディ・ガーランドがキャスティングされていたのだが、彼女は当時精神が
安定しておらず、急遽代役としてキャスティングされたのだが、本作こそ大ヒットとなったがその後は、
ガーランドはいろいろあったが銀幕に復帰したがハットンはついに戻ることはなかった。惜しい人材では
ある。

この映画が不滅の価値を獲得しているのは、シドニー・シェルダン(後述)の、王道なストーリーの中にも
細かい笑いのシーンを入れ、コメディエンヌの才覚も有るベティ・ハットンがそれを上手くこなしている点、
またストーリーに乗せて歌われるアメリカのポピュラー音楽の巨人アーヴィング・バーリンの今やスタンダードと
もなっている名曲の数々、さらに発色がいいテクニカラーの映像、当然ジョージ・シドニーの演出と
それぞれが上手く組み合わさって相乗効果を出している点であろう。

脚本家シドニー・シェルダンはその後「ゲームの達人」で注目されるのであるが、もともとは映画の脚本家で
名作「イースター・パレード」「Anything Goes」を始め、テレビの世界では「可愛い魔女ジニー」の
企画・原作・製作・脚本を手がけている。

巨人アーヴィング・バーリンはブロードウェイとこの映画のために曲を書いたが、多くの曲がスタンダードと
なっている。(リチャード・ロジャーズとオスカー・ハマースタイン二世は舞台の製作)ジョージ・ガーシュイン、
ジェローム・カーン、リチャード・ロジャーズ、オスカー・ハマースタイン、そしてコール・ポーターと並ぶ
いわゆる「ティンパンアレイ」出身のポピュラーソング作曲家で彼らが作った多くのブロードウェイミュージックは、その後ジャズやアメリカンポップスのスタンダードとなった。
本作を手掛けたアーヴィング・バーリンといえば、「ホワイトクリスマス」が我が国では有名だ。

本作の見所は先程から行っているように、ベティ・ハットンの身体能力も高い演技と、コメディエンヌの
才能も有るコケットな面白み、今では「くさい」とも言われてしまうが安心の王道なよく出来たストーリーと
安定した演出、名曲の数々と上手い歌。映画そのもののハッピーエンドも含め、幸福なアメリカの50年代を
象徴するような、悪い言葉で言えば「能天気」な映画であるが、古き良きハリウッドの楽しさ、価値はこうした
ところにある。

ただし、この映画には先住民(インディアン)が重要な位置を占める(バッファロー・ビルのショーには
インディアンは欠かせない。)が、彼らの描き方はティピカルなヒールであり、白人を殺す(本作では
あくまでもショーの団員でいい人ばかりなのだが)存在。アメリカ西部開拓史は、先住民からの搾取・略奪・
ごまかしの歴史であるため、字幕でもしょうがないところはインディアンと使っているがそうでないところは
先住民としている。このような描き方は、現代にあって、いくら昔の映画、舞台、の話とはいえども、
彼らの理解を得るには努力が必要なはずだ。またバーリング側との曲の著作権を巡るいざこざで長い間
DVDにもならなかったのだそうで、今これを観られる私たちは、先住民のことを思いつつ観るにしても、
幸せなことだ。
e0040938_16260238.png
<ストーリー>
1946年以来ニューヨークで大当りをとった、リチャード・ロジャース=オスカー・ハマースタイン・2世製作の
同名のミュージカル・プレイを映画化した、1950年度色彩音楽映画の代表作。原作はハーバート及びドロシー・
フィールズ(「春を手さぐる」)、これを「イースター・パレード」のシドニー・シェルドンが脚色し、
最近音楽劇専門のジョージ・シドニイ(「赤きダニューブ」)が監督している。

作詞作曲は「イースター・パレード」のアアヴィング・バアリン、ミュージカル・ナンバーは同じく
「イースター・パレード」のロバート・アルトンが担当する。撮影はチャアルズ・ロシャア、音楽監督は
「大雷雨」のアドルフ・ドイッチェ。「腰抜けと原爆娘」のベティ・ハットンがアニイに扮して活躍の他、
相手役はMGM新進のハワード・キール、以下「赤きダニューブ」のルイス・カルハーン、「群衆」の
エドワード・アーノルド、「ジャンヌ・ダーク」のJ・キャロル・ナイシュ、「恋愛放送」のキーナン・
ウィンらが共演する。

バッファロ・ビル(ルイス・カルハーン)の西部ショウ一座がシンシナチの町に乗り込んで来た時、ホテルで
座の2枚目スター、フランク・バトラア(ハワード・キイル)を見そめた山の娘アニイ・オークリイ
(ベティ・ハットン)は、ショウの射撃競技でフランクを打ち負かし、憧れの彼とともに一座に加わって
旅することになった。

旅の日数が増えるに従いアニイは見ちがえるような美人となってフランクの愛をかち得ることに成功するが、
仕事の上では彼女の方がすべてに立ちまさって、スタアダムの位置を奪われたフランクは何かにつけて失意の
日を送るようになった。
アニイの名射手振りに惚れこんだインディアン酋長シッティング・ブル(J・キャロル・ナイシュ)は彼女を
養子に迎え、ますます意気あがった彼女はヨーロッパ興行でも人気を高めるばかりであった。一方商売仇の
ポウニイ・ビル(エドワード・アーノルド)一座に転じたフランクは、帰国したバッファロ・ビルと共演
することになり、2人はニューヨークで再会するが、しばらく意地を張り合っていたアニイも、呼びもの
射撃競技では勝ちをフランクにゆずり、天下晴れて手をとり合った。(Movie Walker)

<IMDb=★7.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100% Audience Score:67% >





by jazzyoba0083 | 2017-12-14 11:50 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「オリエント急行殺人事件  Murder on the Orient Express」
2017 アメリカ  Twentieth Century Fox,Mark Gordon Company,Scott Free and more. 114min.
監督:ケネス・ブラナー  原作:アガサ・クリスティ=「オリエント急行殺人事件」
出演:ケネス・ブラナー、ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォー、ジュディ・デンチ、ジョニー・デップ
   ジョシュ・ギャッド、トム・ベイトマン、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー他
e0040938_15202064.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
1974年に名匠シドニー・ルメットによる評価の定まった佳作があるのだが、ケネス・ブラナーは敢えて
挑戦した、そのキップを買います。製作させた会社も。
私はルメット版は未見な上、クリスティのミステリは原作でも読んだことがないというひねくれものゆえ、
前作とも原作とも比較対象出来ず、本作のみの評価となることを事前にお断りしておく。というか
それが当たり前なんだろうけど。そりゃローレン・バコールやアンソニー・パーキンスやイングリッド・
バーグマンらが綺羅星の如く出演している重厚さはないだろう。

この手のミステリの王道としてミスリードっぽい伏線を幾つか埋め込んで、観客の目くらましとし、
探偵なりが、大団円において、「あっとびっくり!」な謎解きをしてみせるという、最後に向かって
どう盛り上げていくのか、テンションを引っ張っていけるのかに尽きるだろう。一人ひとりの事情説明の
シーンが繰り返されるのだが、そのセリフの往来で眠さが襲わないようにしなくてはならない。
その点で行けば、この映画は乗客のポアロによる聴取の間にもトピックを入れ、全体の筋を分かり易くし、
米国で起きた「アームストロング大佐令嬢誘拐殺人事件」へと収斂されていく持って行き方は良かった
のじゃないか。おかげさまで私は前作も原作も知らないので、全貌が見えた時に、クリスティの面白さが
見えた気がした。それならケネス・ブラナーは成功した、と言えるだろう。

現代の映画ならではのVFXを使いながらも、衣装、小物、列車の内部そのものにも安っぽさを出さず、
再現性が高く、映像も綺麗である。ケネス・ブラナーのポアロも髭が大仰だが、いい線だ。さらに
ジュディ・デンチ、ミシェル・ファイファー、ウィレム・デフォーらのベテラン勢が映画の重心を
低くしている。最近悪人面が良く似合うジョニー・デップ、ペネロペ・クルスの存在感も良かった。

恐らく最後の大団円シークエンスで、あの人があれで、あの人とこの人がこうであって、というまとめを
自分自身でなぞらないと、全体の相関図が浮かんでこないかもしれない。(浮かんでこなくても概要は
理解できるけど)

単なる謎解きに収まらず、その事件に至った人間模様がキチンと描けているのが(ミシェル・ファイファーの
存在に代表されるように)クリスティ原作に対するリスペクトになっているのではないか?
冒頭でつかみとして使われる、エルサレムの「嘆きの壁」(聖墳墓教会)で起きた盗難事件で、ユダヤ教、
キリスト教、イスラム教が絡む盗難事件では、まさに今紛争が起きているところなので思わず引き込まれて
しまった。壁に刺したステッキの効用がナイスでしたねえ。
ルメット版も観てみたくなった。

ポアロは「ナイル殺人事件」にも出動するのかな。
e0040938_15205135.jpg
<ストーリー>
アガサ・クリスティーの名作ミステリーをジョニー・デップ、ジュディ・デンチ、ペネロペ・クルス、
ウィレム・デフォーをはじめとする一流キャストの豪華共演で映画化。大雪で立ち往生したオリエント急行を
舞台に、密室の車内で起きた殺人事件を巡って、容疑者である乗客全員にアリバイがあるという難事件に
挑む名探偵エルキュール・ポアロの活躍を描く。
監督はポアロ役で主演も務める「から騒ぎ」「シンデレラ」のケネス・ブラナー。

 エルサレムで華麗に事件を解決した名探偵のエルキュール・ポアロは、イギリスでの事件解決を依頼され、
イスタンブールでの休暇を切り上げ、急遽、豪華寝台列車オリエント急行に乗車する。ほどなくアメリカ人
富豪ラチェットから、脅迫を受けているからと身辺警護の依頼を受けるが、これをあっさりと断る。

ところが深夜、雪崩で脱線し立ち往生してしまったオリエント急行の車内でそのラチェットが何者かに
殺害される。鉄道会社から調査を依頼されたポアロは、列車は雪に閉ざされており、犯人は乗客の中にいると
確信、一人ひとりへの聞き込みを開始する。しかしやがて、乗客全員にアリバイがあることが明らかになるの
だったが…。(allcinema)

<IMDb=★6.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:58% Audience Score:59% >






by jazzyoba0083 | 2017-12-10 11:30 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「アイヒマンを追え! ナチスが最も畏れた男 Der Staat gegen Fritz Bauer」
2015 ドイツ Zero One Film. 105min.
監督・(共同)脚本:ラウス・クラウメ
出演:ブルクハルト・クラウスナー、ロナルト・ツェアフェルト、リリト・シュタンゲンベルク、ミハエル・シェンク
e0040938_16451241.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
本作はアルゼンチンに潜伏中、イスラエルの諜報機関モサドに誘拐され、イスラエルで裁判にかけられ
死刑に処せられた、ユダヤ人殲滅作戦移送指示責任者アドルフ・アイヒマンにまつわる話ではあるが、
その顛末をアクションぽく描く映画ではない。その作戦の影にあり、むしろ作戦の根回しをし成功させた
フリッツ・バウアーの人間ドラマと言える。原題が示すように「国家対フリッツ・バウアー」という構図で
描かれた映画だ。

冒頭、実写の本人が出て来る。映画の最後に説明されるが、アイヒマン誘拐作戦の裏にバウアーがいたことは
彼の死後10年経ってから明らかになったのだそうだ。モサドに誘拐させて、イスラエルにドイツでの裁判を
要求するという段取りがだめになったため、バウアーは国家反逆罪になってしまうところだった。
他の検事からは「ユダヤ人の復讐」と言われることもあるが、バウアーにとって過去と向き合い、ドイツが犯した
負を精算しなくてはならないという正義感は燃えるように強かった。冒頭の本人のセリフで曰く、
若い世代が過去の真実に向き合うことが可能であるが、親世代はそれが出来ないのだ、と。

フランクフルトがあるドイツ・ヘッセン州の検事総長バウアー博士。ユダヤ人でもある彼の1959年当時の
活躍が描かれていく。冒頭は酒と睡眠薬を飲んで風呂に入り意識を失いあやうく溺死するところから
スタート。これは後に彼を面白く思わない存在の伏線になっている。(彼らの犯行というわけではない)

部下たちにナチの戦争犯罪者の捜査を指揮する立場ではあるのだが、州政府、連邦政府の要路には、ナチの
残党が巧みにその位置をしめていて、捜査が筒抜けになる。事実自分のデスクから書類が消えるという
始末。しかし州政府の首相もバウアーの味方だったことも心強かった。

戦後日本でも公職追放が解けた後の政治家や高級官僚を見ても戦争指揮者たちが紛れ込んでいたことと
同じか、よりひどい状況がドイツにあったのだ。ナチに協力していた政治家が主要なポジションにいたり
して、もしアイヒマンのような大物が捕まり裁判になれば、芋づる式に自分たちの名前が出てきてしまう
恐れがある。故にバウアーの捜査に対しても妨害や無視が酷かった。しかしバウアーは負けない。

アイヒマンがアルゼンチンに偽名を使って潜伏しているとの情報が寄せられたのだが、これを連邦政府に
上げればたちまち逃してしまうことになると感じていたバウアーは、イスラエルに飛び、モサドに誘拐を
持ちかける。その間にも、州政府内でもバウアーの失脚を狙った動きが耐えなかった。

アイヒマンは中東に潜伏しているというニセの情報をわざわざ記者会見して流しておくという陽動作戦の
元、モサドは約束通り、アイヒマンを誘拐してイスラエルに連れてくることに成功する。
世界は大騒ぎとなる。バウアーは州首相に働きかけて、正式なルートでイスラエルに対しアイヒマンを
ドイツで裁判にかけたいから移送してほしいという要望を出させようとしたが、連邦法務省から
却下されてしまった。結局アイヒマンはイスラエルで裁判にかけられ死刑となった。

この映画がバウアーの人間ドラマである所以は、彼の全生活がナチの犯罪を許さず、ドイツで裁き、かつ
後世に伝えるとう熱意が映画から伝わったこと。また一緒に行動するアンガーマンが同性愛者であり、
バウアーの忠告(バウアーも同性愛者でありかつて逮捕された過去を持つ)にもかかわらず愛人(男)に
会いに行ってしまい、そこをバウアーの足を引っ張ろうとしている側に写真撮影されてしまうのだが、
アンガーマンは家族もいるが、バウアーの立場を守ろうと、自首していく。(対立派はアンガーマンに
バウアーがアイヒマン誘拐に関わっていたと証言すれば同性愛事件は大目に見ると条件をだす)アンガーマンに
そうした行動を取らせるバウアーの意思の強さ。結局ドイツでの裁判は実現しなかったが、後に彼の手に
より「アイシュビッツ裁判」が展開され、ドイツはナチの負の遺産と向き合うことになる。
バウアーはアイヒマンがイスラエルで裁判にかけられ「ユダヤ人がどういう目にあったか」が明らかに
されることより、ドイツで裁判を受けさせ「ドイツ人が何をしたか」を明白にしたかったのだ。
自分がユダヤ人であったこと、それにより逃亡生活を余儀なくされていたことなども下地にあったのだ
ろうけど、バウアーがいなければ、と思うと今のドイツがどうなっていたのかいささか恐ろしくなる。
e0040938_16452022.jpg
<ストーリー>
ナチスの最重要戦犯アドルフ・アイヒマン捕獲作戦の影の功労者フリッツ・バウアーにスポットを当てた
実録ドラマ。1950年代後半のドイツ・フランクフルト。検事長フリッツ・バウアーのもとに、逃亡中の
ナチス親衛隊中佐アイヒマン潜伏に関する手紙が届く。
出演は、「ヒトラー暗殺、13分の誤算」のブルクハルト・クラウスナー、「あの日のように抱きしめて」の
ロナルト・ツェアフェルト。監督・脚本は、「コマーシャル★マン」のラース・クラウメ。

1950年代後半、ドイツ・フランクフルト。検事長フリッツ・バウアー(ブルクハルト・クラウスナー)は、
ナチス戦犯の告発に執念を燃やしていた。そんな彼のもとに、逃亡中のナチス親衛隊中佐アドルフ・
アイヒマンがアルゼンチンに潜伏しているという重大な情報を記した手紙が届く。
バウアーはアイヒマンの罪をドイツの法廷で裁くため、国家反逆罪に問われかねない危険も顧みず、
その極秘情報をモサド(イスラエル諜報特務庁)に提供する。しかしドイツ国内に巣食うナチス残党に
よる妨害や圧力にさらされ、孤立無援の苦闘を強いられていく。(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:85% Audience Score:76% >





by jazzyoba0083 | 2017-12-07 22:55 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

ある戦争 Kringen

●「ある戦争 Kringen」
2015 デンマーク Danmarks Radio (DR)、Studio Canal and more.115min.
監督・脚本:トビアス・リンフォルム
出演:ピルー・アスベック、ツヴァ・ノヴォトミー、ソーレン・マニング、ダール・サリム、シャーロッテ・ムンク他
e0040938_19075854.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<評価>
NATO縛りなのだろうか、いわゆる「集団的自衛権」の発動なのであろうか。アフガンのデンマーク軍。
北欧の幸せ度の高い国も、こうした国防事情があるのだな。本作、静かな中にも、じわじわと心に迫るものが
ある。「ある戦争」とは、主人公の部隊長クラウスだけを指すのではなく、彼の家族、彼の部隊、彼の人生、
全部に対しての「ある戦争」なのだ。

ストーリーは分かりやすいものの、泥沼のようにハマってしまっていく戦争の不条理が、重く心に残るのだ。
ラストには一応カタルシスは用意されてはいるが、それですべてが解決、でななく、観た人に引き続き
問いかけ続けている。短い時間に提示しようとする内容が上手くまとめられている。

アフガンでタリバンの掃討と偵察を任務とするデンマーク軍のクラウス率いる部隊。地雷や敵なのかそうでないのか
判然としないアフガン民たち。疑心暗鬼の部隊に、次々と悲劇が襲う。地雷を踏み絶命する部下、それを見て
ビビっている男も撃たれて死亡する。そうした混沌とした戦いの中で、隊長クラウスは、空爆攻撃を要請する。
しかし、その攻撃で民間人多数が死亡するとう誤爆事件を引き起こしてしまう。

この事件の結果、クラウスは起訴され本国で裁判となる。裁判では隊員のヘルメットについていたカメラに
録音された会話に「敵がいると言え!」とさもそのあたりに敵がいるように命令するクラウスの声が入って
いた。言い逃れは出来ないのか。しかし、混乱した中でとっさに誰が何をしたのか、良くわからない。
クラウスは自分の部下の命を守る使命もある。当時一緒に戦闘に加わっていた部下たちも証言するが、実際の
ところ良くわからないのだ。

これではクラウスの有罪は決まりか、と思われていたところで、ブッチャーと言われていた男が「戦闘地区で
銃の光を見た」と証言した。本当かウソかは分からない。事実当時の戦闘では四方八方から銃撃は受けていた
のだから。ただ、クラウスは部下の信頼が厚い隊長ではあった。この証言が決め手となって、クラウスは無罪と
なる。

メインとなる物語はアフガン戦争での空爆要請が正しかったかどうか、なのだが、デンマーク本国では
クラウスの妻と子どもたちの「ある戦争」もあった。長男がどうも問題児っぽくなっていたり、子育てに
一番いて欲しいときに父親がいないという母親(妻)の苦悩、苦労。衛星電話で会話は出来るが隔靴掻痒だ。

アフガン人を救いにいったはずが、現地人も自分たち部隊も家族も「正解のない不条理」に叩き込まれて
いる。一体、誰を責めろというのか!それが市民が、庶民が「戦争に巻き込まれる」ということ。そういった
主旨が、じわじわと胸に迫るのだった。
e0040938_19085003.jpg
<ストーリー>
デンマーク軍の部隊長クラウス(ピルー・アスベック)は3人の子どもと妻マリアを国に残して、アフガニスタンの
平和維持のため現地に駐留し、命がけの任務に没頭していた。ある日、パトロール中にタリバンの襲撃を受けた
クラウスは、仲間と自分を守るため、敵が発砲していると思われる地区の空爆命令を行う。
しかし、そこにいたのは民間人だったことが判明し、結果、子どもを含む11名の罪のない命が犠牲になった。
クラウスは帰国後、軍法会議にかけられる。消えることのない罪の意識と、過酷な状況で部下たちを守るために
不可欠だった決断の間で揺れ動く彼に、運命の結審が迫る。(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:91% Audience Score:80%>






by jazzyoba0083 | 2017-11-19 22:55 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「アムール、愛の法廷 L'hermine」
2015 フランス Albertine Productions and more.98min.
監督・脚本:クリスチャン・ヴァンサン
出演:ファブリス・ルキーニ、シセ・バベット・クヌッセン、エヴァ・ラリエ、コリンヌ・マシエロ他
e0040938_14002659.jpg
<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
この映画、ヴェネチア国際映画祭で、男優賞と脚本賞を獲っているんだ。映画のオチが、裁判長と、陪審員に
選ばれた想いを寄せる女性との、異型な恋愛譚なのだね。最初は法廷劇だとばかり思っていて、裁判の進行に
注目が行っていた。自分の赤ちゃんを蹴り殺したとして逮捕された男と、被害者的立場の女房。一体真相は
どこになるのか、父親は殺していない、と主張する。どちらかが嘘をついているのか。その真相を追っかけて
いる間に、裁判長の恋愛話になってくる。裁判の行方はどうでもいいというか。(実は裁判の進行と判決は、
この映画に欠かせない心の動きを示すものとして重要なのだが、気がつく人がどのくらいいるだろうか)

フランスの陪審員裁判てこういうふうなのね、という勉強にはなった。一方、裁判の進行に裁判長とその
恋の相手となる陪審員の女性の心の動きがどのような具合に埋め込まれていたかわかりづらく、観終わって
一体、結局何を言いたかったのか、と思ってしまう。彼女への恋心が裁判長の人間に対する気持ちを変えて行き、
映画の背景となる裁判ではしごくまっとうな判決を出すに至る、というこなんだな、と分かるのは私としては
だいぶ時間がかかった。

ラシーヌは刑事裁判を担当する判事で、物事を杓子定規に捉えて人間味が薄く、判決は「懲役10年」以上が
多かったため周囲からは「10年判事」と揶揄されていた。しかし、今回の裁判。陪審員の中に数年前に
自分が入院した時に世話してくれて、それ当時ほのかな恋心を抱いていた女性麻酔医ディットの姿があった。
まあ、焼けぼっくいに火が付いたってやつ。裁判長なんだけど、陪審員を食事に誘い出したり、恋心を
打ち明けたり、彼女の高校生の娘と会ったりしている。(フランスでは法廷外で裁判官と陪審員が裁判中に
プライベートとは言え会えるんだなあ)そうこうしているうちに、堅物であったラシーヌの心に人を思いやる
心が厚みを増し始めた。(もともと無かったわけじゃないから)ディットの方も、素直に愛情を打ち明ける
ラシーヌを憎からず思うようになってきた・・。

裁判の方は、父が殺したのか、事故だったのか、母の陰謀なのかはわからないまま。疑わしきは被告人の
利益に(取り調べた警察官の杜撰さが分かるような証言シーンも挿入される)という原則から、「陪審員
の判断」は無罪。裁判長ラシーヌは、無罪を宣言し、父親を直ちに釈放するようにと命じて閉廷した。

恐らく、ディットとの出会いがなければ、もうすこし杓子定規な判決になっていたよ、といいたいのだろう。
でも裁判長の心の変遷が今ひとつ重みを持って伝わって来なかった。下記アメリカRotten Tomatoesの
批評家と一般観客との評価の差に私の心情が表れているような気がする。物語の骨子は面白いのになあ。

後から言われると、なるほどと思うけど、100分程の映画の中で、主人公ラシーヌ裁判長の心の動きが、
作品が言いたいことにように作られていたかというとかなり深読みしてこないと分からないんじゃないか。
WOWOWで観たのだが、ラブコメディって書いてあったけど、全然ラブコメディじゃない。人間ドラマだ。

なんか、面白そうで良くわからない。裁判のシーンと裁判長の恋愛シーンの割合はこれで良かったのかなあ。
嫌な映画ではないが、なんかひとつ引っかかりが残る作品だった。ディットがもい陪審員にいなかったら
裁判で父親は有罪になったかも、ってこと? 今回この父親はディットに感謝しなくちゃなあ。そこら辺も
すっきりしないところであった。キャスティングは良かったと思う。
e0040938_14012431.jpg
<ストーリー>
ミシェル(ファブリス・ルキーニ)は、厳格で人間味がないと恐れられている裁判官。ある日の法廷で彼は、
思いがけない人物と再会する。かつて入院していた時に想いを寄せた女医のディット(シセ・バベット・
クヌッセン)が、陪審員の1人として姿を現したのだ。
当時、彼女に受け入れられなかった気持ちが蘇り、動揺を隠せないミシェル。彼女の優しさは、患者に対する
医師としてのものでしかなかったからだ。だが、その再会は裁判長としてのミシェルの行動を変えて行くことに
なる。冷徹だった彼の審議は、ディットとのやり取りを経て、次第に人間らしい温かみを帯びてゆく。
その変化は、やがて彼女の心も動かし始める……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:90% Audience Score:50%>



by jazzyoba0083 | 2017-11-14 22:50 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「アトミック・ブロンド Atomic Blonde」
2017 アメリカ 87Eleven,Closed on Monday Entertainment and more. 115min. R15+
監督:デヴィッド・リーチ
出演:シャーリーズ・セロン、ジェームズ・マカヴォイ、ジョン・グッドマン、ティル・シュヴァイガー他
e0040938_16243263.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
この映画の魅力は3つ。まずシャーリーズ・セロンをこういうタフなスパイ役にキャスティングした
こと、二つ目は彼女を活かしたアクション(長回しの)、そして最後の二転三転のどんでん返し。
ストーリー的には、いろんな人が出てきてややこしいので、別に気にせずに見ていて良い。最後の
10分間で全部ネタバラシをしてくれるから。 激しいバイオレンス、レズビアンシーン、などで
R15+指定も、まあ仕方あるまい。まあまあ良いんだけど、メインのストーリー(ロシアに渡った
スパイのリストを奪還する?)はどうでも良いから、ウリのセロンのアクションをもっとたくさん
見せてほしかった。どうせ大どんでん返しで決着付けるんだから。全編の構成が主人公が過去の
出来事をボスたちに語るという体裁を取っているのも、タルい印象だったかも。原作がアメリカの
劇画なので、余計にアクションに特化したほうが面白かったと思った。

しかし、ポスプロの編集も入っているのだろうし、吹き替えやスタンドインももちろんやっている
だろうけど、シャーリーズ・セロン、40歳をとうに超えてるのに頑張っていましたね。はだかになると
やや痛い年齢になってきたかなあ。全裸の後ろ姿は男みたいだった。(鍛えてあるスパイの体型だからかな)

アクションに使われる(人を殺す)道具も、結構えげつないので、観ていて痛い。階段を蹴飛ばして
落とされるとことか、痛いだろうなあ、とかワインの栓抜きで喉を刺されたら、釘でオデコを打ち
抜かれたら痛いだろうなあ、とかリアリティはある。血しぶきもバシバシだし。
さすが、スタント育ちの監督さんらしい仕上げだ。娯楽作なので、意味を見出そうとかしない
ほうがいい。マカヴォイ他いろんな人も出てくるけど、どうでもいい感じ。ひたすらシャーリーズ・セロン。
そしてアクションとカーチェイスのシーンは非常に見応えが有る。

<ここから最後のネタを覚書のために書きますから、これから観たいという方は読まないでください>


イギリスのMI6のエージェント、ローレン(セロン)は、壁が壊される頃のベルリンに赴き、バレたら
世界情勢に大きな影響を与える極秘文章がKGBに奪われたのを奪還するとともに、二重スパイを摘発する
という難しい任務を与えられる。それで、なんだかんだとあり、MI6のメンバーだった男が二重スパイ
だったことが判明、仕留めることが出来た。さらに彼女は自分こそKGBの側につく二重スパイであると
KGBを安心させ、極秘文書を回収、そして乗り込んだプライベートジェットはCIAのもの。そう、ローレンは
CIAのエージェントで秘密裏にMI6に送り込まれ、KGB側のスパイであるとソ連さえ欺いていた、と
いうことなのね。
彼女の関係するアクションのキレの良さ、テンポ、アングル、そして音楽とラストのIKKOさん流に言えば
「せおいなげええっ」的な大どんでん返しが気持ちいい。中間は眠くなるので要注意。
e0040938_16250296.jpg
<ストーリー>
シャーリーズ・セロンがスゴ腕の諜報員を演じるスタイリッシュなスパイアクション。東西冷戦末期の
ベルリンを舞台に、二重スパイによって奪われた世界情勢に多大な影響を及ぼす極秘情報が記載された
リストを奪還しようとするスパイたちの攻防が描かれる。監督は『デッドプール』の続編を手がける
デヴィッド・リーチ。(Movie Walker)

 「モンスター」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のシャーリーズ・セロンが美しき最強女
スパイを演じるサスペンス・アクション。冷戦体制崩壊直前のベルリンを舞台に、極秘ミッションに
臨むヒロインが、次々と現われる刺客相手に壮絶な戦闘アクションを繰り広げるさまを、リアルかつ
スタイリッシュに描き出す。共演はジェームズ・マカヴォイ、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ。
監督はスタント畑出身で、「ジョン・ウィック」では共同監督を務め、「デッドプール」続編の監督にも
抜擢されるなどハリウッドで注目を集めるアクション演出のスペシャリスト、デヴィッド・リーチ。
(allcinema)

1989年、東西冷戦末期のベルリン。世界情勢に多大な影響を及ぼす極秘情報が記載されたリストが
奪われる。イギリス秘密情報部MI6は、凄腕の女性エージェント、ロレーン・ブロートン(シャーリーズ・
セロン)にその奪還を命じる。ベルリンに潜入中のエージェント、デヴィッド・パーシヴァル
(ジェームズ・マカヴォイ)と共に任務を遂行するロレーン。だが彼女には、リスト紛失に関与した
MI6内の二重スパイ“サッチェル”を見つけ出すというもうひとつのミッションがあった。
リストを狙って、ベルリンに集結する世界各国のスパイ。誰が味方で誰が敵なのか。敵味方の区別が
つかない状況の中、ロレーンと世界の運命は……?(Movie Walker)

<IMDb=★7.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:76% Audience Score:67%>



by jazzyoba0083 | 2017-10-23 14:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「歌声にのった少年 Ya tayr el tayer 」
2016 パレスチナ Cactus World Films 98min.
監督・脚本:ハニ・アブ・アサド
出演:カイス・アッタラー、ヒバ・アッタラー、ディーマ・アワウダ、タウフィーク・バルホーム他
e0040938_15345010.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
感動の映画ではある。私としてはパレスチナの映画って初めてみたと思う。
監督はイスラエル人。パレスチナのガザ地区というニュースでもよく出る
イスラエルとパレスチナの紛争で有名なところだ。ガザでのロケは相当苦労
したらしい。
歌うことが大好きな少年が、アラブ版「アメリカン・アイドル」に出て優勝する
までを描くのだが、最近「◯◯・アイドル」というオーディション番組を舞台に
した作品をよく見るが、この映画はその優勝者がパレスチナ人だったということ。
そしてまずは予選で歌うまでのさまざまな苦労を通して、本作がただのサクセス
ストーリーではないと綴られ胸が熱くなる。

「スターになって世界を変えたい」と紛争地で育った男の子はそう思っていた。
子供の頃から子供だけでバンドを作って歌うくらいに歌が好きで、結婚式で
バイトが出来るくらい周囲もそのうまさは認めていた。しかし、ギター担当の
姉が重い腎臓病にかかり、パレスチナの治療では助からず、亡くなってしまう。
自暴自棄になり、一時は歌も諦めタクシー運転手をしていたものの、亡くなった
姉との約束を守ろうと、エジプトへニセのパスポートで違法出国し、エジプトでの
予選へ、さらに本戦のテレビ収録のためにレバノンに。その頃には故郷では彼
ムハンマドの人気は沸騰しており、彼に対する期待は大きく膨らんでいた。

10週勝ち抜くのだが、決勝が近づくにつれ、自分の肩にかかるパレスチナ同胞の
プレッシャーを感じてしまい、体調を壊してしまう。やはりそこはパレスチナと
いう事情が大きくクローズアップされてくる。それは仕方がないことだろう。
夢も希望もない世界に生きる人達にとって、ムハンマドの存在は自分たちの見果てぬ
夢を実現してくれる「アイドル」になってしまったのだから。

エジプトに出国するために、ニセのパスポートを承知で出国させようとする役人、
かつてのバンド仲間で今は軍に入り違法な出国を取り締まる立場の友人の友情、
予選に出るための入場証がないムハンマドに、チケットをくれるエジプト生まれの
パレスチナ人、そしてムハンマドを応援するテレビのスタッフなど、彼を囲む
心温かくなる環境が物語を盛り上げる。

そしていよいよ3人の決勝進出者から優勝者を決めるシーン(楽屋を出て行くところ)
から、実際の映像に変わる。(これには戸惑ったが)そして優勝!狂喜するパレスチナ
同胞。その後彼は国連の親善大使になったり、歌という枠を超えて活躍しはじめた
のだった。おそらく今も。

彼には神様から頂いた素晴らしい歌声があり、それを自信の勇気と回りの理解と
協力で、自分の民族を鼓舞する力にしたのだった。彼が同胞のために歌うんだ!
と心に決めるのは決勝戦の前、同胞の期待に潰されそうになってレバノンの海に
向かって故郷の歌を歌った時。
その時にムハンマドの心は、ただコンテストに優勝することだけではない、他の
意味を見つけたのだった。「スターになって世界を変えたい」、小さい夢は
大きな現実となったのだ。
e0040938_15353480.jpg
<ストーリー>
全米の人気オーディション番組「アメリカン・アイドル」のエジプト版に出場し、
2013年の“アラブ・アイドル”に輝き、後にスーパースターになったムハンマド・
アッサーフ。彼をモデルに、姉との約束を果たすため、歌で世界を変えようと
奮闘する少年の物語がつづられる。
監督は『オマールの壁』のハニ・アブ・アサド。

長きにわたり紛争が絶えず、厳しい状況が続くパレスチナ・ガザ地区。この地で
育ったムハンマド少年はスター歌手になって世界を変えることを夢見て、お手製の
楽器を携え、姉のヌールや友人たちとバンドを組む。
ヌールはエジプトにある歌劇場カイロ・オペラハウスに出るという大きな目標を掲げ、
ムハンマドは練習と資金稼ぎを兼ねて結婚パーティーで美声を披露していった。
しかしムールは重い腎臓の病にかかり、治療費を工面できず十分な治療を受けら
れないまま亡くなってしまう。
姉との約束を守るため、ムハンマドは危険を承知でガザを囲む壁を越え、
オーディション番組『アラブ・アイドル』に出場しようとする。(Movie Walker)

<IMDb=★6.7 >
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:86% Audience Score:60%>






by jazzyoba0083 | 2017-09-24 22:40 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

エル・クラン El Clan

●「エル・クラン El Clan」
2015 アルゼンチン El Deseo 110min.
監督・(共同)脚本:パブロ・トラペロ
出演:ギレルモ・フランセーヤ、ピーター・ランサーニ、リリー・ポポヴィッチ、ガストン・コッチャラーレ他
e0040938_14041659.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想:決定的にネタバレしています>
これは、映画の出来不出来が後回しになってしまうような、事実としての衝撃が
大きい作品だ。アルゼンチンで1980年代に発生した、家族ぐるみの連続誘拐殺人
事件のお話なのだが、その一家の狂気っぷりと、ラストのエンドロールの内容まで
含めて驚きっぱなし。

冒頭のシークエンスが物語の終焉に繋がっている、とか映画としての作り方に
びっくりはしないし、破綻なく出来ていると思うけど、何と言っても、こんな
一家がいたというのが驚き。しかも、ここがこの映画の肝だが、何気ない普通の
家族が淡々と誘拐殺人をやらかしていて、また音楽もポップで明るい。
本来は陰湿な話であるのだが、長男はアメフトのスター選手だったりして、外見との
落差に驚くわけだから、「事実」にゲタを履いた映画といえ、その落差の描き方には
成功していたといえるのではないか。ストーリーテリングが上手いのだろう。
極貧や病気ゆえの犯行とか超金持ちの趣味としての犯行ではなく、「何処にでもいる
善良な幸せそうな家族」だからこその怖さはよく出ていた。

罪の意識の無さ、どうしたらこうもサイコパスしちゃえるのか?あっけにとられて
見ている間に結局は逮捕されるのだがが、親父はまるで悪びれる素振りがない。
「ある組織に脅されてやったことだ。家族を殺されると言われ」と嘯く。
で、ラストの字幕でさらに驚くのだが、この主犯のオヤジは、獄中で弁護士の資格を取り
自らを弁護し、終身刑を短くして、シャバに出てきたこと。その頭を他の金儲け
に使えよ!と突っ込みたくもなる。

この一家、夫婦と男の子3人、女の子2人の家族なのだが、一番下の男の子が
「オヤジのやってることは犯罪だぜ」といって、海外?へのスポーツ遠征の
ついでにどこかに消えてしまう以外は、裁判では娘達は関係ないとして無罪に
なったようだが、とにかく、父親の支配の元に誘拐殺人を繰り返すのだ。

暗い中にも映画全体がアッケラカンとして音楽も含めむしろ明るさを強調することが
逆に恐ろしさを演出する結果を生んでいる。ただ、どうしてこんな家族が出来
上がったのか、という個人の心理的な背景が今ひとつ深掘りできていないので、
結構イケメンのアメフト選手の長男が平然と犯行に加わり(最初の誘拐殺人は長男の
友人だった)ニコニコしている心理とは(次男もだけど)那辺から来ているや、と
思ってしまう。いや、逆に説明されていないから余計に気持ち悪く怖いのかもしれない。
(ラストに長男が裁判所の二階からダイブして飛び降り自殺をする心理も含めて)

決して後味のいい映画ではないが、びっくりするのでご覧になるといい。
冒頭にアルゼンチン民主化宣言の実写映像がなぜ入っているか、というアルゼンチンと
しての事情を少し予習しておくと更に面白くなるかもしれない。
e0040938_14044651.gif
<ストーリー>
アルゼンチンで実際に起きた事件を映画化した第72回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞作。
近所の人々から慕われるプッチオ一家の周辺で金持ちだけを狙った身代金事件が多発。
住民たちが不安を募らせるなか、父アルキメデスは鍵のかかった部屋に食事を運んでいた。
製作に「オール・アバウト・マイ・マザー」のペドロ・アルモドバル
製作・監督・脚本は「セブン・デイズ・イン・ハバナ」のパブロ・トラペロ
出演は「瞳の奥の秘密」のギレルモ・フランセーヤ

1983年、アルゼンチン。裕福で近所からも慕われるプッチオ家は父アルキメデス
(ギレルモ・フランセラ)を筆頭に妻、息子3人、娘2人で幸せに暮らしていた。
そんなある日、二男アレハンドロが通う学校の友人の一人が誘拐され、姿を消してしまう。
以降、彼らの周囲で金持ちだけを狙った身代金事件が多発。犯人が捕まらず近所に不安な
空気が流れるなか、プッチオ家はいつもと変わらない生活を送っていた。

ある夕飯の時間、アルキメデスは妻の作った料理をキッチンから食卓ではなく、なぜか
2階の奥にある鍵のかかった部屋へと運んでいく……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:90% Audience Score:77%>




by jazzyoba0083 | 2017-09-23 23:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「エイリアン:コヴェナント Alien:Covenant」
2017 アメリカ 20th Century Fox Film Co.,Scott Free Productions.122min.
監督:リドリー・スコット
出演:マイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、ビリー・クラダップ他
e0040938_13385103.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
エイリアンシリーズは、リドリー・スコット以外のスピンアウト版まで含め殆ど
観ているほど好きである。一作目のクリーチャーの造作は、映画界に大きな影響を
与えた。リドリーにとっては前作「プロメテウス」の続編に当たるもので、前作は
一作目を遡り、人類の起源を求めた旅であったが、今回はエイリアンの起源に
ハイライトが当たる。この映画にいつも重要な役割を持つ、レプリカント・
アンドロイドが、今回も極めて重要な役割を担う、というか、彼が主人公じゃないか
と思われる描かれ方である。

本作は「プロメテウス」を観ていないと分からないところが多い。故に、復習を
してからご覧になることを強く勧める。今作のアンドロイド、ウォルターと
前作のアンドロイド、デヴィッドの物語と言い切っても過言ではないほどの
存在感だ。例によって気持ちの悪いエイリアンもたくさん出て来るが、話としての
根幹はウォルターとデヴィッドである。そして、次作も作られるであろうことを
示して映画は終わる。(つまり第一作に近い時代になってくる作品ということ
だね)

前作については私はケチョンケチョンに貶した。(本国の評価は結構高いんだけど)
本作はそれほどでもなかった。というのもラストシーンの衝撃が大きかったから、
かもしれない。また、前作の巨人とクリエーターというキャラクターがいないのも
さっぱりしていて良かったのだと思う。

描かれ方はいつもどおり、惑星移住に使われるロケット(今回はそれがコヴェナント
という名前)、そこには2000名の人間と1000名分の胎生細胞が載っている。
これがエイリアンの世界に引きずり込まれるパターン。エイリアンたちの造作や
誕生シーンはVFXの進化により、より気持ち悪さは倍加している。

冒頭シーンがデヴィッド(プロメテウスで使われたアンドロイド)の誕生シーンで
あるのが、この映画を象徴している。そしてそこでのセリフ「私はあなたが作り
ましたが、あなたは誰がつくったのでしょうか」とか、「あなたは死にますが、
私は死にません」とか、これがわかりにくいけど伏線になっているんだね。

知恵(想造力)を持ったアンドロイドの怖さがこの映画の本質であり、エイリアン
そのものは生き物としては怖いけど、本当に恐ろしいのは別にあるのだ、と
いうことを映し出して映画は終わる。いやはや、続編はどうしてくれるのだろうか?
そろそろ第一作目との辻褄合わせが必要になってくるのではないか。

シガーニー・ウィーバー、ノオミ・ラパスときて、今回はキャサリン・ウォーターストン
という女優さん。いささかパンチに欠けました。この映画はマイケル・ファスベンダーの
映画だな。(アダムズとウォルターの二役)しかし、なんでアダムズとウォルターを
同じ顔にしたんだろう?
e0040938_13392568.jpg
<ストーリー>
人類初の大規模な宇宙への移住計画のため、滅びゆく地球を旅立った宇宙船
コヴェナント号は、コールドスリープ中の2000人の入植者を乗せ、移住先の
惑星オリエガ-6を目指していた。その航行中、大事故に見舞われ、さらに
女性の歌声が混じった謎の電波をキャッチしたことから、発信元の惑星へ向かう。

その神秘的な惑星は、女性乗組員ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)
にとっても、人類の新たな希望の地に思えた。果たして、ダニエルズの前に
現れた完全な知能を持つアンドロイド(マイケル・ファスベンダー)は敵か、
それとも味方か。そして、エイリアン誕生を巡る驚愕の真実とは?コヴェナント号に
エイリアンの脅威が迫る中、ダニエルズは哀しみを乗り越え、あまりにも過酷な
運命に立ち向かっていく……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:70% Audience Score:57%>


   

by jazzyoba0083 | 2017-09-21 12:30 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

エベレスト 3D  Everest

●「エベレスト 3D Everest」
2015 アメリカ Working Tiltle Films and more.121min.
監督:バルタザール・コルマウクル
出演:ジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン、ジョン・ホークス、イーサン・ホーク、
   ロビン・ライト、マイケル・ケリー、サム・ワーシントン、ジェイク・ギレンホール
   キーラ・ナイトレイ、エミリー・ワトソン、森尚子他
e0040938_12045306.jpg
<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
う~む、これはやはり3Dで観ないと、遭難の過酷さ映像のダイナミックさは味わえないのだろうなあ。
そういう意味ではタダの大遭難事件顛末となってしまった。出演者も揃い、事実に忠実に基づき
構成された物語はそれはそれで迫力がある。(ホントの話だから)また日本人として犠牲になった
難波康子の存在も我々にはシンパシーを感じられる点でも有る。

本作は1996年に起きたエベレストでの8人の死者を出した大量遭難事件を忠実にトレースしたもので
出演者は全員実名で出てくる。本事件に関する背景顛末についてはWikipediaが詳しいが、あまり
高山体験の無い登山家でもガイドが付いて8000メートル級の山にも登れる、いわゆる「商業登山」の
甘さが露呈された事件だった。
ここではニュー・ジーランドの会社が約700万円の料金で登山ツアーを組み、ベテランのガイドが
付いて顧客を世界最高峰へと登らせるのだが、そんな団体が季節の良い5月に殺到し、南ア隊、
台湾隊、など渋滞が出来るほど。それに参加者は高い金を払ったのだから、との思い、また
ガイド側は金を貰っているのだからなんとか登頂をというそれぞれの、登山家としての原則に
目をつぶる状況が、自体をどんどん悪化して様子が丁寧に描かれる。映画としては一つのドキュメンタリー
だが、これを3Dで魅せるところに本作の本領があるだろう。

登頂まではあっさり描かれ、下山から遭難までに時間が割かれるので、吹雪の中の遭難シーンは
どれも大差がない。それにいろんな国の部隊が入り乱れるので人物としては捉えづらい部分があったり
する。あとから避難を浴びる南ア隊や台湾隊の自分勝手な行動などもあったようだ。

その後エベレストでは2014年に再び大きな遭難事故があり、入山禁止となり、イッテQのイモトが
登れなくなってしまったのは記憶に新しい。それまでは本遭難事故が過去最大だった。

ガイドが付いて装備も向上し、ちょっとした登山家でもエベレストに登れる時代に対する警鐘で
ある。山を甘くみるなよという。ビッグネームが並んでいたがキャストとしては未消化で終わった
印象。もったいない。もっと事実の重みを前に出してこんなキャスティングでなくても出来たのでは
ないか、と感じた。
本遭難では同じエベレスト登山を映画に納めていたIMAX撮影隊も救助に参加したのだが、彼らは
その事件後、登頂して、映画を完成させ物議を醸したという。
e0040938_12050225.jpg
<ストーリー>
 1996年に起きたエベレスト登山史上でもかつてない悲劇として知られる大規模遭難事故を、
ジェイソン・クラーク、ジェイク・ギレンホール、ジョシュ・ブローリン、サム・ワーシントンはじめ
豪華キャストで映画化した群像山岳ドラマ。

ニュージーランドの旅行会社が公募した登山ツアーに集まったアマチュア登山家たちを中心に、
山頂付近の“デス・ゾーン”で悪天候に見舞われ窮地に陥った人々の悲壮な運命を、3D映像による
圧倒的な迫力と臨場感で描き出す。
監督は「ザ・ディープ」「2ガンズ」のバルタザール・コルマウクル。
 
 1996年、春。ニュージーランドの登山ガイド会社によって世界最高峰エベレストの登頂ツアーが
企画され、医師で登山経験豊富なベックや前年の雪辱を期す郵便配達員のダグ、著名なジャーナリストの
ジョン・クラカワー、そして紅一点の日本人女性登山家・難波康子ら世界各国から8人のアマチュア
登山家が参加した。彼らを率いるのはベテラン・ガイドのロブ・ホール。

一行は標高5000m超のベースキャンプに滞在しながら、1ヵ月かけて身体を高度に順応させていく。
その間、ベースキャンプは多くの商業登山隊でごった返し、様々なトラブルが発生していた。
そんな中、ロブ・ホールは別の隊を率いるスコット・フィッシャーと協調体制を取ることで合意、
互いに協力しながら山頂を目指すのだった。(allcinema)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:72% Audience Score:68% >



by jazzyoba0083 | 2017-09-06 23:02 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)