カテゴリ:洋画=か行( 265 )

●「グランドフィナーレ Youth」
2015 イタリア・フランス・スイス・イギリス Indigo Film and more.124min.
監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演:マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ
   ジェーン・フォンダ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

この監督の作品は初めてかもしれない。非常に観念的な映画で、私の苦手とする
ジャンルである。観ながら、カンヌやベルリンで評価されそうな作品だなあ、と
思っていたら、やはりそうであった。

出ている人は円熟の役者ばかりだから玄人受けはするだろうが、日本での興業は
おぼつかなかったのではないだろうか。素直な感想を言えば、「何をいいたいのか
よく分からない」ということ。邦題もミスリードを誘う。現代の「YOUTH」(若さ)に
こそ、この映画の本質があろう。出てくる人がほとんど老人で、おそらく
過去と現在と未来に行き来する、それぞれの様々な思いが重層的に重なって表現
されているのだと思う。断片的エピソードは理解できるのだが、全体として、何を
表現したかったのか、「若さ」とは何か?ということなのか?それはちょっと違うだろう。

スイスの温泉療養施設付き豪華ホテル。セレブが集まるところだ。
コアになるエピソードをもたらすのは、クラッシック音楽の世界の巨匠ブレッド・
バリンジャー(ケイン)。彼は高名な指揮者であり作曲家。引退してここにいる。
もう一人はそろそろ映画監督業も終いにしようかと考え最後の作品を製作中に
滞在しているミック・ボイル(カイテル)の二人。二人は親友という設定。
(ブレッドの娘の旦那がミックの息子、という関係。親戚ですな)

もう人生は最終ステージ。これから新しいことはしない、と決めいているブレッドは
女王陛下が勲章を授けたいと言っている、ついてはフィリップ殿下の誕生日でもある
授賞式に、代表曲「シンプル・ソング」を指揮して欲しいと懇願してくるイギリス
政府の役人に「引退したからもうやらない」とにべもなく断る。

一方、監督のミックは、まだまだ演出に色気を出し、これまで長い間コンビを
組んできた恋人でもある大女優ブレンダ・モレル(ジェーン・フォンダ)がスイスに
到着するのを待ち、ラストシーンを仕上げようとしていた。
(ミックが今作っている映画がどう見ても傑作になるとは思えないような描かれ方)

そんな二人は温泉に入れば健康や病気の話、でも全裸で温泉に入ってくるミス・
ユニバースを見ると「神だ」とか言って、まだまだ男としての名残がある状態。

この二人の男の考え方というか、自分が理解している自分自身の立ち位置が
少しずつ変化していくところが面白い。ブレッドは、勲章を受け、BBC交響楽団を
指揮して女王夫妻の前で「シンプル・ソング」を演奏することになり、片や、ミックの
元にやっとのことでブレンダ・モレルがやってくるのだが、ブレンダは映画には出演しない、
と断言する。慌てるミックに、ブレンダは53年間の恨みつらみが爆発するのだった。

作品全体としては上記だけのことではなくもっと複雑であって、二人の老人の
家族や生い立ちが絡んでくる。そしてブレッドがなぜ指揮をしようとしたかも
ミックの存在が大きかったりするのだ。

最終局面での老人二人に起きる大変化については面白く観たが、それが「若さ」と
いうタイトルにどう結びついていくのかは、謎だった。
Life goes on.ということなのだろうかなあ。年齢に関係なく。

画がとても綺麗で、構図などに非常にコダワリが感じられる。なんでも説明してしまう
作品よりも、観ている側の想像を刺激する意味での「観念的」な描写もいいのだが、
時としてシュールに過ぎてしまうと、言いいたいことが分からりづらくなる。

そうした意味で「観念的な」本作は、見る人に人生のいろいろな側面を考えさせる
ことだろう。だめな人は途中で脱落するタイプの映画。
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<ストーリー>
アルプスの高級リゾートホテルでバカンスを送る作曲家フレッド・バリイジャー
(マイケル・ケイン)のもとに、女王陛下からの勲章の授与と出演依頼が舞い込んでくる。

フレッドの名を世界中に知らしめた不朽の名曲「シンプル・ソング」を、フィリップ殿下の
誕生日に指揮するという名誉あるオファーであったが、彼は興味すら示さない。
BBC交響楽団の演奏で偉大なソプラノ歌手スミ・ジョーが歌うと言われてもフレッドは
もう引退したからと頑なに拒むのだった……。

母国イギリスのロンドン、そしてニューヨーク、最後はヴェネチアの楽団で24年、
作曲と指揮に持てる才能の全てを注ぎ込んだフレッドは、80歳となった今ではすっかり
燃え尽きていた。ホテルの宿泊客は、今も世界中のヒーローである元サッカー選手や
かつて大ヒットしたロボット映画の役名で呼ばれることにウンザリしているハリウッド
スターのジミー・トリー(ポール・ダノ)などセレブぞろい。そんな彼らは皆世間とは
違う風変わりな事情を抱えていた。

フレッドの60年来の親友である映画監督のミック・ボイル(ハーヴェイ・カイテル)も
同じホテルに宿泊していたが、現役を続けるミックは若いスタッフたちと新作の脚本
執筆に励んでいる。そんな中、父を心配する娘のレナ(レイチェル・ワイズ)が予約した
マッサージやサウナ、健康診断を淡々とこなすフレッド。何ごとにも無気力になって
しまったフレッドの唯一の楽しみは、ミックとの昔話と悪ふざけ、そして歳を重ねたが
ために頭と体のあちこちに出て来た不具合自慢だった。

ある時、部屋へ戻ると、夫のジュリアンと旅行に出かけたはずのレナが泣きじゃくっている。
ジュリアンの父であるミックに、君の息子が私の娘を捨てたと告げるフレッド。
驚いたミックはすぐに息子を呼び出すが、彼は新しい恋人を連れて来る。フレッドは
レナを慰めようとするが、音楽が全てでママのことなど一切顧みなかったパパに夫婦の
愛情の何が分かるのかと激しく責められる。フレッドのもとに女王の特使が再び現れ、
頑として断るが必至で食い下がる特使に遂にフレッドは本当の理由を語り出す。

「シンプル・ソング」にまつわる母への想いを初めて聞いたレナは思わず涙する。
そんな折、長年タッグを組んできたブレンダ・モレル(ジェーン・フォンダ)に主演を
断られたミックの映画が製作中止に追い込まれる。ミックが選んだ結末に衝撃を受けた
フレッドは「君の音楽は驚きや新しい感動をもたらした」という友の言葉を胸に最後の
ステージに立つことを決意。だが彼はその前に会わねばならない人がいた。
そしてフレッドは10年ぶりにヴェネチアに暮らす妻を訪ねる……。(Movie Walker)

<IMDB=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 74%  Audience Score:68% >



by jazzyoba0083 | 2017-06-05 23:25 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「クーパー家の晩餐会 Love the Coopers」
2015 アメリカ CBS Films,and more.107min.
監督:ジェシー・ネルソン 
出演:ダイアン・キートン、ジョン・グッドマン、アラン・アーキン、エド・ヘルムズ
   アマンダ・サイフリッド、マリサ・トメイ、ジェイク・レイシー、オリビア・ワイルド他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

「クリスマス啓蒙用の聖書的教訓一杯の大人の絵本」という感じで、クリスマス前に
クリスムードの中で観てナンボの映画だ。居並ぶ大スターの演技さえ楽しめば
それでよし。教訓的なセリフが耳に届けば、日本人には更によし、というもの。

クーパー家でなくても年に一度の大イベント、クリスマス。かの家には大家族が
集まりお祝いと食事をする習わしになっていた。今年もクリスマスがやってくる。
しかし、それぞれがそれぞれの悩みを抱えたまま集まってくるからもう大変!

家族構成はこうだ。おじいちゃんにアラン・アーキン。彼はダイナーの娘、アマンダ・
サイフリッドに熱を上げ、こう5年も通い詰めている。
その娘ダイアン・キートンと夫ジョン・グッドマン。結婚40年で、もう離婚がすぐそこ
に用意されていて、今年のクリスマスが最後という覚悟。
ダイアンの独身の妹マリサ・トメイは、姉にペンダントのプレゼントを万引きして
警察に捕まる。夫妻の長男エド・ヘルムズは失業中。妻も家を出ていくという状況。
娘オリビア・ワイルドはおじいちゃんの病院の医師と不倫中だが、空港で軍人の若者に
「一日だけ恋人になって」と拝み倒し家に連れてくる・・・・。
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いよいよクリスマスイブの晩餐会が始まった。それぞれが抱える小さな嘘がバレて
きてしまう。そんな中おじいちゃんが倒れしまった!
しかし幸い軽度の脳卒中でクリスマスディナーは再開される。
家族は大切だ。(アメリカ人のキリスト教的倫理観ではなおさら、家族愛は大事)

「人だもの、欠点は多い。なぜみんな細かい欠点ばかりを気にしてあげつらい、
大きな愛情に感謝しないんだろう」ということだね。

この作品は一家の愛犬のナレーションで進行するのだが、
「一番近くにいる人が一番大切だ、ということに気が付かなくちゃね」と締める。
分かりやすいオチとなっている。

多人数(しかも大俳優だらけ)で、キャラクターの設定とかそれぞれのプロット
の進行(時制も含め)はバラバラにとっちらからずに手堅く纏められているので、
それこそ前述のようにクリスマス時期にホノボノ観るにはいいだろう。悪い映画
ではない。が、その後どうなるのかという示唆が、プロットにあったりなかったり。
これはしょうが無いかな。で、作品としてどうか、と言われちゃうと、そこまでの
映画ではないなと。クリスマスを機に家族の絆を再確認したい向きにはピッタリ。
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<ストーリー>
 クーパー家の人々が年に一度顔を揃えるクリスマス・ディナーを舞台に、
それぞれに問題を抱えながらもそれをひた隠して晩餐会を楽しくやり過ごそうと
する中で巻き起こる騒動を、ダイアン・キートン、ジョン・グッドマン、
アラン・アーキン、マリサ・トメイはじめ豪華オールスターキャストで描いた
群像コメディ。監督は「I am Sam アイ・アム・サム」のジェシー・ネルソン。

 クリスマス・イブ。クーパー家では、この日に一族が一堂に会し晩餐会を
開くのが毎年の恒例行事。今年も各地から続々と集まってきた家族を温かく
迎える夫婦のシャーロットとサム。
しかし40年連れ添った2人は離婚を決意し、シャーロットはこれが最後の晩餐会と
覚悟を決めていた。そのシャーロットの父バッキーは、若いウェイトレスに夢中で、
彼女の働くダイナーに5年も通い詰めていた。
一方、シャーロットとはケンカばかりの妹エマ。姉へのプレゼントを探していて
出来心から万引きで捕まってしまう。そんな中、独身の娘エレノアは、空港で
出会った軍人の青年ジョーに一日だけ恋人のフリをしてもらうことを思いつくが…。
(allcinema)

<IMDb=★5.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:18%  Audience Score:36%>




by jazzyoba0083 | 2017-05-10 22:15 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「カフェ・ソサエティ Café Society 」
2016 アメリカ Perdido Productions,Gravier Productions,FilmNation Entertainment.96min.
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ジーニー・バーリン、スティーヴ・カレル、ジェシー・アイゼンバーグ、ブレイク・ライブリー他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ウディ・アレン大好きなので、封切の日にシネコンに。GW真っ最中というのにガラガラだったなあ。
出演者にも派手さはないし、賞がらみの話題もないから、致し方ないかもな。
でも映画としては面白かった。しかし、なんだろう、いつものコテコテのアレン節じゃないので、
「え?こんな純情な恋愛ストーリーでいいの?」と、例のシニカルな「不条理とも不合理とも
非情とも毒とも」受け取れる粘っこい調子、また時として使われるサスペンスなタッチもないし、
おバカな風情もないので、ちょっとタタラを踏んでしまった。まあ、結論的には「人生、いうほど
上手くは行かない」と見せておいて、アレン流の「時代を飲み込んで(そして捨てた)恋愛観の
素敵な提示、ということなのだと受け止めた。
恋愛観、ノスタルジー、ジャズ、ファッション、これらはいつものアレン流が貫かれているので、
作品としての上質さが欠けているということはない。そしてこれもいつも通り、女優の存在は華麗に
して大きいのだ。
ユダヤ教やユダヤ人を自虐的に揶揄するのはいつも通り。それが物語の生死感の皮肉だったりもする。

時代は1930年代。「華麗なるギャツビー」のジャズエイジ、「ロアリングトゥエンティ」が29年の
世界大恐慌とともに終焉、そこからニューディールで立ち直ろうとするもののアメリカ経済はあまり
上手く行かない。
欧州ではヒトラー、日本では軍部によるファシズムが台頭し始めていた。そんな時期、トーキー時代を
迎えたハリウッドは本作にもその名が出てくるフレッド・アステア、ジュディ・ガーランドなどが活躍を
始めたころで、活況を呈していた。映画中に全面的にフィーチャーされるジャズは、スィングジャズと
言われるボールルームでのダンスのバックで演奏されるようなものが全盛を迎え、ベニー・グッドマンや
トミー・ドーシーらが人気だった。振るわぬ経済をしり目にハリウッドは華やかであったのだ。
そんな第二次世界大戦に突入するまでの幸せな時期が舞台となっている。

アレンの映画は「夢・夢想」がキーになり、独特の幻想感を醸し出すものもあるのだが、本作は
リアリズムが基本だ。そんなアレン流リアリズムの中から逆に「夢」を紡いで見せているような感じを
受けた。繰り返すがいつものアレン風毒気がほとんど感じられないので、逆に評価が自分の中では
ちょっぴり下がってしまった。じゃあ、「ギター弾きの恋」はどうなんだ?ということなんだけれども。
こんな純情なのがアレンでいいんだっけ?と¥。蘊蓄系のセリフはいつものように多々あるが。

今回、アレンは演出に徹していて、その役をジェシー・アイゼンバーグが担っている。どこかアレンを
想起させる雰囲気がある。しゃべり方も演出だろうが、早口でアレン風。風采が上がらず、女性に
モテず、屁理屈ばかりは上手いという感じもそのままだ。

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大雑把にストーリーを言っちゃうと、以下のごとし。(ネタバレですからご注意)

NYからハリウッドに出てきて凄腕映画エージェントの叔父の元で働くことになるボビー
(アイゼンバーグ)。叔父フィルはスティーヴ・カレルが演じる。ボビーはその叔父の秘書ヴェロニカ
(クリスティン・ステュワート)の美しさにやられてしまう。高嶺の花だと思いつつ、彼は積極的に
アプローチ、やがてヴォニーの心をつかむことに成功する。しかし、ヴォニーには不倫相手がいたのだ。
それが叔父フィル!ヴォニーは、フィルがボビーの叔父とは知らず身の上話をボビーにする。

離婚を約束していたフィルだが、不調に終わり、ヴォニーとは終わることに。失恋したヴォニーは
ボビーのところに。二人はやがて結婚を意識する仲となる。そして結婚してNYへ行こう、というところ
まで来た。だがだが、この期に及び、叔父フィルは離婚を成立させ、ヴォニーに再度求愛するのだった。
もともと尊敬もし愛していたフィル。でもボビーも愛している。結局、ヴォニーが選んだのはフィルで
あり、ハリウッドに残る道であった。

失意のうちにNYに帰ってきたボビー。ギャングの長兄が経営するクラブを手伝っているうちに、この
クラブ、政治家、文化人、芸能人らもたくさんやってくる有名な店となっていく。そこに客として
やってきた女性。彼女も名前はヴェロニカ。美しい!ボビーは積極的にアプローチし、もう一人の
ヴォニーの心をつかみ、結婚、子供も生まれる。そして店はどんどん栄える。
ある日、その店に
フィルと、妻となったヴォニーが客としてやってくる。ヴォニーの美しさは相変わらずであり、かつて
ハリウッドではちゃらちゃらした映画スターをバカにしていたのが、今やそんな身になってしまって
いた。今どうして自分の前に現れたのか、戸惑うボビーであったが、自分の心の奥底にヴォニーへの
愛情がしっかりと息をしているのに気付くのだった。
NYの夜景が美しいセントラルパークでキスを交わす二人。でも、それぞれの妻、夫は確かに愛して
いるのだ。が、結ばれはしなかったが、二人の一番大切な愛は確かにここにある、それは誰に対する
裏切りでもなく(背徳ということばすら消化してしまった)、と思う瞬間だったのかもしれない。

こうやって書いてくると、はやり、時代をくみ取りつつ、時代を排した普遍性を持つアレン流の恋愛観
の提示なのだな。「夢から夢へ」「現実から夢へ」「夢から現実へ」そんな恋愛におけるフェイズが
上手く多層的に示された、やはりアレンならではの恋愛映画ではある。ラストのボビーの後ろ姿が
語ること、そんなことではなかったか。

<IMDb=★6.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 71% Audience Score:57%>

この映画の詳細は・・・



by jazzyoba0083 | 2017-05-05 15:40 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

極秘捜査 Geukbisusa

●「極秘捜査 Geukbisusa」
2015 韓国 108分
監督・(共同)脚本:クァク・キョンテク
出演:キム・ユンソク、ユ・ヘジン、チョン・ホビン、ソン・ヨンチャン、イ・ジョンウン他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

WOWOWのオンデマンドで、「誘拐報道」と間違えて観始めてしまった作品。このところの
こともあり、余程の興味が向かないと韓国映画は観ないのだが・・・。
最後に本人たちの写真のも出てくるのだが、1978年、釜山で実際に起きた誘拐事件を扱った
ものだ。が、これが事実に基づいたものじゃなくて単なる創りものだったら絶対に見続けよう
とは思わなかった。というのも、捜査の大きな力になっているのが「導師」といわれる
占い師だからだ。もちろん警察がそういう捜査を公認しているわけではないのだが、ソウル対
釜山とか、内部闘争とか、腐っている警察の中で、誘拐された子供の母親の気持ちを考えれば
いたたまれず、捜査に乗り込む際の、たまたま相棒となるのが、導師だったわけだ。

幼い幼稚園児が誘拐され身代金が要求されるのだが、心当たりがない。捜査を任されたのは
両親とつながりのあるコン刑事。母親はあちこちの占い師にすがるのだが、だれもが「もう
死んでいる」という。最後に訪れたキム導師のみは「まだ生きている」と占う。
そこからコン刑事とキム導師の真剣な捜査が始まる。そうしているうちにも、警察内部の
足の引っ張りあいや、「極秘捜査」を進めるコン刑事に対し、公開捜査をしようとする
上層部、敵はあちらこちらにいるのだった。

そうこうするうちに、キム導師が、四柱推命から土、水、などの気を受けて、誘拐された
児童がいそうな場所を予言する。これに従って、コン刑事らが動き出すが・・・。

結局、借金だらけのそこらにいる男が犯人で、逮捕され、幼児も無事に保護され一件落着
だったが、警察で表彰、昇進したのは、コン刑事の足をひっぱり最後だけ美味しいところを
もっていった嫌な幹部だけ。さらに、占いを当てたキム導師は、恩師である導師に手柄を
譲ってしまった。ラストシーンで、キム導師は、コン刑事が今後活躍し、身分もどんどん
昇進する、と予言し、字幕では、実際に今刑事は出世し、警視正にまでになったという
説明がなされる。

70年代の韓国警察のカネで動く腐り具合がちゃんと出ているし、リアルに起きたことの
緊張感はあるし、相変わらず彼の国の人はエキセントリックだし、まあまあ面白く観ました。
現代は韓国語がわからないと意味不明だろうが、カタカナにすると「グクビスサ」。
極秘捜査のハングル発音であります。
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<ストーリー>

韓国犯罪史上に残る奇妙な少女誘拐事件を映画化した実録サスペンス。ある裕福な家庭の
少女が誘拐され、担当刑事は母親の信頼する占い師と協力して捜査に当たることに。

釜山。小学生の少女が何者かに誘拐された。少女の家庭が裕福だったことから営利目的か
と思われたが、犯人からは一向に身代金を要求するような連絡がない。
担当のコン刑事は、安全を優先する極秘捜査の継続を主張するが、膠着状態が続き、
公開捜査に踏み切るべきという声は高まるばかりだった。
彼が自信を失う一方、少女の両親、特に母親は、信頼する占い師のキム導師が言う
「コン刑事が娘を救う」との予言を信じ続けるが……。
(WOWOW)

<IMDb=★6.3>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=356447#1

by jazzyoba0083 | 2017-04-17 23:00 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

キャロル Carol

●「キャロル Carol」
2015 イギリス・アメリカ・フランス The Weinstein Company,Film4.118min.
監督:トッド・ヘインズ 原作:パトリシア・ハイスミス『キャロル』
出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、ジェイク・レイシー、カイル・チャンドラー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
「からまる視線の演技」「時代と女性2人の雰囲気を盛り上げる画面の色彩」「時代を演出するための
上等なプロダクションデザイン(美術・特に衣装、ヘアデザイン、クルマ)」そして、なんと言っても主役の
二人の醸し出す香り立つようなキャラクターとその演技に圧倒された2時間だった。冒頭とエンディングの
シークエンスが、本編の展開によって繋がっていく工夫も良かった。

ゴージャスな(実際にお金持ちなのだが)ケイトと、ボーイッシュな風貌ながらも、どこか終始戸惑っている
ようなルーニー・マーラ。目線を強調したカットだけではなく、映画全編において二人の目線は多くを語る。
1952年のNY。(私が生まれた年だ)トッド・ヘインズが目論んだ、まだ同性愛などタブーもタブーだった
時代の再現。戦後7年を経て、街もそれなりの潤い方をしてきたという時代の特性を、衣装やデパートの中、
音楽、映像のカラートーン、意識して使われているとしか思えない当時のクルマなどを複合的に演出し、
そこに二人の女性を配置してみた。トッドは私より10歳ほど若いからリアルタイムでこの当時を知らない。
時代考証はそうとう頑張ったのだろう。それはまんまと当たった。キャスティングはこの二人しかないんじゃ
ないか、と思うくらいだ。「ドラゴン・タトゥーの女」でピアスだらけの男勝りのリスベットを演じた
同じルーニー・マーラとは思えなかった。そのボーイッシュで儚げな気配はどこかオードリー・
ヘップバーンを想起させすらした。それを上回る凄さだったのがケイト・ブランシェット。幼い女の子が
いながら離婚協議を進め、同性がどうしようもなく好きという愛情の持って行きどころを、ルーニーに
求めるという、ちょっと間違うと、タバコ好きなお金持ちの妖艶な有閑マダムになってしまう寸前に確立した
女性像を演じきった。

結婚寸前のボーイフレンドがいながら、ケイトとの同性の恋に落ちていくルーニー。夫婦の冷えた
愛情の果て、自分の本性たる同性へ向かう愛をルーニーに求めたケイト。同性愛者にとっては
厳しい時代の中で、自分の心の声に正直であろうとし、厳しさの中で自分の本当に求める愛に生きようと
する女性の姿がここにはある。そうした物語がアメリカでは一年で一番華やかなクリスマスシーズンを
舞台に展開していく。季節が温もりを求めたい冬、というのも良いのかもしれない。

当時東海岸で生まれ勢いがあったハード・バップ、クールジャズを上手く使った音楽の趣味も誠に宜しい。
ルーニーがケイトに贈ったクリスマスプレゼントはビリー・ホリディとテディ・ウィルソンのアルバム
「イージーリビング」のLPであった。(このアルバム自体の録音は映画の時代から20年ほど前になるが)

この二人、ラストはどう落とし前をつけるんだろうかと思って観ていた。
ラスト近く、一旦はケイトとの間を精算した感じのルーニーだったが、会ってしまうと恋心を押さえる
事が出来なくなる。「テレーズ(ルーニー)、行くな!」と心で叫んでしまったが、そうはならなかったなあ。

とにかく二人の演技と監督の演出に酔った二時間、楽しいひと時だった。

<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:94% Audience Score:73% >
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<ストーリー>

『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』などで知られる女流ミステリー作家パトリシア・ハイスミスが
52年に別名義で発表した小説を「エデンより彼方に」のトッド・ヘインズ監督が映画化。
エレガントな大人の女性に心奪われた若いヒロインの切なくも美しい禁断の恋の行方を、50年代の
ニューヨークを鮮やかに再現した衣装・美術と素晴らしい映像美で描き出す。
主演は「ドラゴン・タトゥーの女」のルーニー・マーラと「ブルージャスミン」のケイト・ブランシェット。

 1952年、クリスマス目前の活気あふれるニューヨーク。高級百貨店のおもちゃ売り場でアルバイトを
しているテレーズ。フォトグラファーという夢を持ち、恋人のリチャードからは結婚を迫られるなど、
一見充実しているかに思えて、どこか満たされない日々を送っていた。
そんなある日、ゴージャスな毛皮のコートを着た女性キャロルが、娘のクリスマスプレゼントを探しに彼女の
売り場へやって来る。その美しく優雅な佇まいに一瞬で目を奪われ、強い憧れを抱くテレーズ。
後日、ふとした成り行きからキャロルにランチに誘われ、彼女が夫ハージとの愛のない結婚生活に苦しんで
きたこと、そしてついに離婚を決意したことを知るが…。(allcinema)
        
この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354600#1こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-03-01 23:15 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「5時から7時までの恋人カンケイ 5 to 7」
2015 アメリカ Demarest Films,Mockingbird Pictures.97min.
監督・脚本:ヴィクター・レヴィン
出演:アントン・イェルチン、ベレニス・マーロウ、オリヴィア・サールビー、ランベール・ウィルソン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
WOWOWの「W座」で放映された、日本劇場未公開作品。個人的には大いに「めっけもん」の作品だった。
★は7.5だが、今は亡きアントン・イェルチンに半星を捧げ8とした。
大体、邦題が全然ダメ。まるでラブコメの風情じゃないか。DVDのパッケージデザインもまるでダメ。
本来この作品が持つビターなラブストーリーを表しておらず、売らんかなのゲスな下心丸見えだ。
ラブコメを期待して買ったり見たりした人を裏切る行為でもある。

いちゃもんはこのくらいにして、本題。不思議な不倫関係を続ける2人の話なのだが、あまり期待しないで
見始めたのだが、次第に観ていて心地よさを感じてきた。俳優、NYという舞台、物語の設定、音楽、
ワンカット長回しの映像、もちろんオリジナル脚本を書いたレヴィンの力量も相俟って、実に味わいのある
作品になっている。
作品の中で、主人公の男女、また主人公の両親、友人などなどの会話が実にウィットとユーモアに富んでいて
アメリカの映画だなあ、と感じさせる心地よさもある。脇にベテラン名優を配したのも奏功した。
ただ、出て来る人がみんな基本セレブ、というのが気に入らないけど。また、NYでの男女の劇的な一目惚れ、
これも本来ありえないと思う。が、そんなことを言っていたらラブストーリーは始まらない。

主人公のなかなか芽の出ない作家ブライアンを演じたアントン・イェルチン、彼と5時から7時までの不倫
関係を結ぶ既婚のフランス人アリエルのベレニス・マーロウ、両者とも不思議な魅力を放っている。特に
ベレニスは映画に多く出ておらず、私には馴染みがないが、独特の存在感を持った女優さんだな、と感じた。
ただ、スタイルについていうと、映画の中ではウエストの位置が低く、胴長足太に見えて、それにヒールの
低い靴を履くので(アントンとの身長差をカバーするものだと思うけど)えらく見栄えが悪い。本来骨太の
体格なので、スタイリストのミスかもしれない。
昨年不幸な自動車事故で若くして亡くなってしまったイェルチンであるが、彼の幸せ薄そうな存在感も
見逃せない。監督はこうした2人を上手く使い、加えて、ブライアン(イェルチン)の両親にベテラン、
オスカーノミニーのフランク・ランジェラと、こちらも6度の主演女優賞ノミニーであるグレン・クローズを
配し、不倫とは対極にある夫婦像を描いていて巧みである。
また、ブライアンの不倫相手アリエルの夫の愛人であり(ややこしいな)雑誌編集者として彼の力になる
25歳の女性ジェーンに伸び盛りのオリヴィア・サールビーを置く、という全体のキャスティングは見事だ。

短い時間にメインストリームの話と回りのエピソードを上手く回収し、ラストは実に胸が苦しくなる切ない
ものとなっている。このラストシーン、イェルチンがもういない、と思ってみると、涙が出るほど切ない。
これはホントにいい映画に出会った、と感じた。
蛇足だが、「W座」のエピローグの中で濱田岳も指摘していたことだが、ブライアンがアリエルの夫から
手切れ金?として貰った25万ドルはどうしたんだろう?それと、一旦は離婚したはずのアリエルと夫が
ラストでまた復縁したようなんだが、そのあたりは観た人の想像に任されている。

<IMDb :★7.1>
<Rotten Tomatoes:Tomatometer 72% Audience score 71%>
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<ストーリー>
ニューヨークを舞台に、自由奔放な人妻パリジェンヌと真面目なアメリカ人青年の恋の行方を描いた大人の
ラブストーリー。ニューヨークで暮らす作家志望の青年ブライアンは、街角で煙草を吸っていたフランス人
女性アリエルに一目ぼれし、声をかける。2人はすぐに意気投合するが、実はアリエルは2人の子どもを持つ
人妻だった。アリエルから「5時から7時の不倫関係」を提案されたブライアンは、戸惑いながらも彼女と
付き合いはじめるが……。
「いとしい人」「アイドルとデートする方法」などの脚本家ビクター・レビンが長編初メガホンをとり、
2016年6月に急逝したアントン・イェルチンがブライアン役、「007 スカイフォール」のベレニス・マーロウが
アリエル役をそれぞれ演じた。(映画.com)

※補足しておくと、ブライアンは年上の人妻アリエルをホントに愛してしまい、やっと獲った雑誌ニューヨーカーの
新人賞作品の出版バンス6000ドルで指輪を買い、正面からプロポーズする。アリエルも、流れで結婚した初めての
男である夫にはないトキメキをブライアンに感じていて、2時間だけの関係よりも深く愛するようになっては
いたが、2人の子供がいることが大きなブレーキとなり、ブライアンと一緒になる道は選ばなかった。
だが、夫とは離婚した。ブライアンは深い悲しみの中に突き落とされるが、その悲しみを小説を書くエネルギーに
変えて、アリエルとの関係を題材にした小説を書き上げ出版にこぎつける。

そして時間が経ち、彼も結婚し、(編集者のジェーンと結婚するかと思ったらさにあらず)子供が出来た。
別れから3~4年経ったであろうある日、思い出のグッゲンハイム美術館の前を妻とベビーカーにのせた
赤ちゃんとで通り過ぎようとすると、アリエルが一家と共に美術館から出てきたのだった。あいさつを交わす
アリエルとブライアン。さり気なくブライアンに見せたアリエルの右手薬指には、ブライアンがプロポーズで
くれたものの一度は返した(ブライアンがいつも密会に使うホテルのドアマンに預けておいた)ディオールの
指輪が光っていた・・・・。視線を交わしながら、再び別の道を歩いて去る2人だった・・・。

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=358908こちらまで。





by jazzyoba0083 | 2017-02-09 22:45 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

グロリア  Gloria (1999)

●「グロリア Gloria(1999)」
1999 アメリカ Columbia Pictures,Mandalay Entertainment. 101min.
監督:シドニー・ルメット
出演:シャロン・ストーン、ジェレミー・ノーサム、ジーン・ルーク・フィゲロア、ジョージ・C・スコット他
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<評価>★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
1980、ジョン・カサヴェテス監督、ジーナ・ローランズ主演で作られた同名の作品のリメイク。
監督と主演の名前に惹かれて観てみたけれど、これが「セルピコ」「狼たちの午後」「評決」の
シドニー・ルメットの作品か?と疑いたくなるような、「スカスカ」な出来だった。

随分昔にオリジナルは観ていて、まずまずな感想を書いている。http://jazzyoba.exblog.jp/3840861/
中身は覚えていないけど、ジーナ・ローランズの凄みは何となく覚えていて、本作を見だして
しばらくすると、黒人の子供との逃避行は観た覚えがあるな、と思い出したのだった。

シャロン・ストーン、ヤクザなねえちゃんだが母性に目覚めるという役どころだが、深みに欠ける。
見事なスタイルと美形だけを理由にキャスティングされたんじゃないかと邪推してしまう。
彼女も作品に恵まれれば「モンスター」のシャーリーズ・セロンみたいになれたんじゃないかなあ。
共演者もパットン将軍(ジョージ・C・スコット)以外ぱっとせず、グロリアが母性に目覚める
シーンも唐突感がある。それぞれのシークエンスも、もう少し短くしたほうが緊張感が出るんじゃ
ないか、と思う。例えば、悪い男たちの服を全部脱がせて子供と共に逃亡するところなど、良い
シーンだけど、長い。そうしてみると、画角もなんかルーズで締まらないんじゃないか、と思えて
来てしまう。子供を学校に預けるのだが、帰りたくないグロリアが学校の前でクルマを行ったり
来たりさせるシーンも長い。カーチェイスなんかも入っているのだが、スリルを感じない。ルメット、
やる気が無いんじゃないか?と思ってしまう。そこに居れば見つかっちゃうだろう、と思うところに
いたり、詰めが甘いところも多い。
えらく腐してしまったが、素直な感想を記しておく。

「グロリア」を観たい人は、カサヴェテスを観ておけばオッケーじゃないかと思う。
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<ストーリー>
ニューヨーク。グロリア(シャロン・ストーン)はフロリダで3年の刑期を終え、恋人ケヴィンの
元に帰るが、そんな彼女を組織の冷酷な裏切りが待ち受ける。グロリアは居合わせた少年ニッキー
(ジーン・ルーク・フィゲロア)を人質に、男たちに銃を向けてそこを脱出。実はニッキーの父親は
マフィアの会計士で、組織の秘密を握るフロッピーを持ち出したせいで一家は惨殺され、父から
フロッピーを託されたニッキーも彼らの手中におちていたのだ。

マフィアの標的にされ窮地に陥った彼女は、絶縁状態にあった姉の元を訪ねるが追い返されて、
仕方なく安宿に身をひそめる。ところがそこにも追っ手が迫り、雑踏でグロリアとはぐれたニッキーは
再びつかまってしまう。かくしてグロリアは、親友ダイアン(キャシー・モリアーティ)の協力で、
ケヴィンら一味のボスであるルビー(ジョージ・C・スコット)にフロッピーとニッキーの交換を
持ちかけ、自らの命を賭けてニッキーを救い出そうと図るのだった。(Movie Walker)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=85265#1こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-01-12 22:55 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

K-19 The Widowmaker

●「K-19 The Widowmaker」
2014 アメリカ・イギリス・ドイツ New Regency Pictures and more.138min.
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ハリソン・フォード、リーアム・ニーソン、ピーター・サースガード、クリスチャン・カマルゴ、ピーター・ステッビングス他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

ソ連製原潜にまつわる映像は素晴らしいし、カメラワークも監督のこだわりを感じる。が、ストーリーと
して辻褄が合わないんじゃないか、というか艦長と副長の立場が突然真逆になったりで釈然としなかった。
後に「ハートロッカー」で名を挙げた女流監督ビグロー、コロンビア大学大学院で映画を学んだ才媛っぽい
なかなか硬派な作品に挑戦したが、抑制された重い潜水艦映画となってしまった感が少々する。
ソ連を舞台にした映画であるが、全編英語であるので、ならばとこの際日本語吹き替えで鑑賞。そのほうが
まだ違和感は少ないと思ったからだ。

東西冷戦時代に、祖国に忠誠を尽くし、原発事故に当たって、艦を見捨てるなどとんでもない、と、どこか
精神論重視の大日本帝国軍人を思わせるハリソン・フォード艦長、片や、乗組員と核爆発から世界を守る、という
側面から艦長と対立する人情派リーアム・ニーソン副長。彼らの立場が、乗組員の反乱を機に逆転したように
思えるのだ。
そばにいた警戒中のアメリカの駆逐艦に助けを求めようとする副長が、突然、反乱軍に逮捕され、自分が艦長に
指名された瞬間、艦長を守る立場に付き、反乱チームを鎮圧する。艦長がアメリカ軍に救助を求めようとしたり
そのあたりの一貫性のなさに、鼻白んだわけだ。ソ連で初めて作られたミサイル搭載型原潜の初の軍務において、
乗組員や艦の限界をギリギリまで試そうとする艦長の気持ちは分からない訳ではないが、である。
この物語は事実にもとづいてはいるが、艦内の模様などは相当脚色されているのだろう。
(ひとつ気がついたのだが、新造船というのに内部が相当古ぼけているのは何か理由があるのかな)

それにしても、加圧型原発が冷却水装置の故障からメルトダウンの危険性が出て、それを雨合羽くらいの機能しか
ないものを着けて修理にあたり、ひどい放射線被曝を受ける下りは、フクイチを経験している我々には、正視でき
ないほど痛々しい。原子炉事故を起こしたK-19は味方の潜水艦に曳航されロシアに引き上げるのだが、修理に
当たったクルーは1週間後ほどに全員死亡したという。その他のクルーも相当被爆しただろうが、当然この事実は
秘匿された。
本作には、原潜を追い爆雷を投下する駆逐艦や、雷撃機の襲来もない。ひたすら炉心融解に晒された状態との
戦いが描かれるので、心理的な作品であり、活劇ではない。海の底で繰り広げられる潜水艦映画はこれまでも
沢山作られて来たが、原発と向き合う、という(ソ連が粗悪品を作っているという伏線は冒頭に張られる)地味な
ところに焦点を当てた初めての映画であろう。戦争において、自国民を守る役目の原潜が、クルーどころか
世界中の人たちに厄災をもたらす、という戦争の持つ(軍備の持つ)不条理、人間という愚かな生き物の悲しさ、
という主張(と私は汲んだが)は、ビグロー監督の後の作品「ハートロッカー」や「ゼロ・ダーク・サーティ」に
繋がるもの、と読み取ることが出来た。

重苦しい地味な映画であるが、見応え(上記の辻褄の合わなさを除く)のある作品といえよう。ちなみにこの
K-19は、その後も何回も事故を起こした。それゆえ「未亡人製造機」と呼ばれるのである。
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<ストーリー>
ソ連の原子力潜水艦K-19で1961年に実際に起った放射能事故を基に、「ブルースチール」「ハートブルー」の
キャスリン・ビグローが映画化した骨太のサスペンス。米ソによる核戦争に発展しかねない原潜事故という
最悪のトラブルに命懸けで立ち向かう乗組員たちの姿を緊張感たっぷりに描く。
主演は「エアフォース・ワン」のハリソン・フォード。
 
1961年、米ソ冷戦の最中、ソ連国家首脳部は原子力潜水艦K-19の処女航海の艦長にアレクセイ・
ボストリコフを任命した。副艦長には経験豊富なミハイル・ポレーニンが就き艦は出航。この2人の意見は
しばしば対立するが、K-19は次々にテストを成功させていった。困難なテストを乗り切り乗組員たちは
束の間リラックスする。
しかしその直後、新たな任務の遂行中、艦内の冷却装置のひび割れが判明する。原子炉は過熱し始め、
このままでは炉心の溶融が避けられない。ボストリコフはじめ乗組員は、大惨事をくい止めるべくひとつの
決断を下すのだった。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=239589こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2016-12-15 22:10 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「クライム・ヒート The Drop」
2015 アメリカ Foxserchlight Pictures. 107min.
監督:モヒャエル・R・ラスカム   原作:デニス・ルヘイン『ザ・ドロップ』
出演:トム・ハーデイ、ノオミ・ラパス、ジェーズムズ・ガンドルフィーニ、ジョン。マシアス・スナーツル他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

評価が難しいタイプの作品。ちなみにIBDbでは7.1、Rottentomatoesでは78%の支持を受けている。
しかし、日本では劇場未公開作品。

一言で言うと「暗い」。「テンション低め」、なんだけど、これは「狙いとして」こう作られている。
日本人にはなかなか理解しがたいアメリカ東部の暮らしなのだが、私がこの映画をみていて想起した言葉は
「日常の洋服を着た狂気」、あるいは「誰にでもある深層心理としての狂気」。(または怒りの
沸点の低さというか) 」
 
主人公ボブ(トム・ハーディ」が、隠された正体(というか性分・気質)を露わにして、観ている人を
びっくりさせるのは、お終いの方である。全般においてボブや、彼の従兄弟である、バーの主人公
カズン・バーヴを、どちらかといえば小心の平凡な市民というふうに強調しようとする展開に終始するので
ハイライトまでダレる。原作はどういうふうに引っ張ったのであろうか。

とにかく劇は太陽も出ない、暗い映画。ブルッリン?の底辺に生きている人々の、一見何気ない生活の
中で、チェチェン人のボスたちが稼いでくる汚いお金を、ロンダリングを主目的するバーが舞台となる。

そこで悪事から足を洗いバーテンをしているベン。彼は 大人しくて喜怒哀楽を外にださない。オーナーは
従兄弟(と称しているが実際はどうだか)で経営を任されている「カズン・マーブ」。この店も何年か
前に、チェチェンギャングに乗っ取られていた・

ある日、覆面をした強盗がバーに入り、現金を強奪していく。その犯行と、半年前に酒場で見られたのを
最後に姿を消したニック、さらに、捨ててあった子犬の件で知り合う女性ナディア(ノオミ・ラパス)、
加えて彼女の元カレで精神がオカシイ、エリックが、ボブの拾った子犬は俺のものだ、ベンに接近してくる。
こういたた登場人物で構成されるが、基本的に「まともな人がだれもいない」

それぞれの登場人物に、「実は」と言うエピソードがあり、それが時間を経るごとに相関関係を帯びて
きて面白くなっていく。特にボブとエリックの、金庫のカネを巡る対決は、なかなかスリリングだ。

日常ごく優しく普通の青年が、銃を至近からぶっ放して殺すことに、なんら躊躇しない(その前にはゴミ箱
から見つかった、強盗腕をラップでぐるぐる巻きにして平然と冷凍庫に投げたな)。
そした人間の深層心理の解析できない(映画ではそういう手のシーンもない)不気味さ。
普通の人に見えていてい、何かの拍子に頭をもたげる「狂気といか自制心の崩壊」という不気味さが
「ローテンション」(悪い意味ではない)の中でひしひしと感じてた。
主役のトム・ハーディは、こいうそこらにいる青年なんだけど、よく分からん、というタイプにはとても
いい。テンション低めのノオミ・ラパス、過去を引きずり結果それを抜け出ず殺されるマーヴと、
キャラクターも揃っていた。
ナディアに危害を加えようとし、ベンに瞬殺されたエリックの姿を見て、ナディアが言う「あなたも
同類じゃないの」と。普通の人はそう思うよね。

とにかく独特の雰囲気をを持った、私もこんなタイプの映画をあまり見ていないので、ショックでは有った。
「普通の服を着た狂気」という言葉だでけでは到底言い表せないのがもどかしい。一見普通の人場が出てくる
狂気のサスペンスとして、何度も言うけど「テンション低め」に終わって行った。(何度も言うが狙いだね・
面白くないわけじゃないし)エンディングのバッサリ具合も余韻たっぷりだ。
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<ストーリー>
作家D・ルヘインが自身の「ザ・ドロップ」を脚色した犯罪ドラマ。多民族が暮らすニューヨーク郊外の町
ブルックリンで、犯罪者たちおよび彼らと関係する面々が織り成す、予測不可能な事態を活写。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「レヴェナント:蘇えりし者」などで人気上昇中のハーディが
主演し、「ミレニアム」3部作でリスベット役を演じたN・ラパスが共演。
ベルギー出身で、「闇を生きる男」が第84回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされたM・R・ロスカム
監督が、みごとな演出を見せた。

ブルックリンのある一角ではチェチェン系マフィアが暗躍し、違法な大金が日々変更される“ドロップ・バー”と
呼ばれる酒場に集まり、チェチェン系組織の手に渡る。そんな“ドロップ・バー”として使われることがあるマーヴの
店で働くマーヴのいとこボブは、偶然からナディアという女性と出会うが、彼は元恋人であるエリックにつきまとわれて
困っていた。そんなマーヴの店を2人兄弟の強盗が襲って約5000ドルを持ち去るが……。(WOWOW)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=356018こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2016-11-28 22:25 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「コードネームU.N.C.L.E. The Man from U.N.C.L.E.」
2015 イギリス Warner Bors.116min.
監督・(共同)製作、原案、脚本:ガイ・リッチー
出演:ヘンリー・カヴィル、アーミー・ハマー、アリシア・ヴィカンダー、エリザベス・デビッキ、ヒュー・グラント他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

テレビ番組「0011ナポレオン・ソロ」は、中学1年ころリアルタイムで見ていて、ソロの持っていた
ワルサーP38 UNCLE仕様やイリヤが持っていたワルサーPPKには強く憧れて、「MGC」でモデルガンを
買ったな。顎の先が割れたロバート・ボーン、ひょうひょうとした面白さが粋な感じだったデイヴィッド・
マッカラム、そしてウェイバリー課長のレオ・G・キャロルと、矢島正明と野沢那智の声もお洒落で、スパイ
映画といえどもハードボイルではなく、小洒落た出来が好きだった。スポンサーがブリジストンとSONYだった
のもよく覚えている。

そういうドンズバの世代であるので、なんで中身的にあるいはスタイル的にオリジナルと合わないものに
わざわざナポレオン・ソロの名前を出したのかな、と感じた。あたらしい、ガイ・リッチーらしいスパイもので
良かったのに。説明的な前半はいささか眠かったが、後半物語が動き出すと俄然面白くなる。
オリジナルの持つ「思わずニヤリ」なセリフやシーンも出て来始める。主人公2人はちょっとハンサムすぎというか
顔が整いすぎている。特にイリヤはオリジナルのイメージとはかけ離れている。 
全体に音楽の使い方が上手く、既成の曲をいい感じで使っている。個人的にお気に入りだったのが、ボート同士の
追撃のシーンで、海に投げ出されたソロが、停まっていたトラックを敵のボートにジャンプさせて沈ませるシーンで
流れるヒロシのテーマでおなじみ、映画「ガラスの部屋」でも使われたペピーノ・ガリアルディ歌うカンツォーネ
「QUE VEUT CETTE MUSIQUE」が良かった。シュールで雰囲気いい感じ。

東ベルリンで自動車整備工をしているギャビーを演じるアリシア・ヴィカンダーは、この映画のマドンナ的な役割
ながら、スパイ映画として重要なポジションでもあり、美人な役どころは悪のボス的存在のエリザベス・デビッキに
任せ、キュートで役得な存在としてなかなかスパイシーであった。彼女にまつわる謎も映画の終盤に明かされ、
続編の匂いプンプンの中でエンドロールとなる。ウェイバリー課長(映画では局長)のヒュー・グラントは、まあ
あんなものでしょう。
この映画はTVシリーズのソロとイリヤが出会い、U.N.C.L.E.という組織が出来上がる、黎明期の物語であり
映画の人気シリーズ「アヴェンジャーズ」や「Xメン」「スタートレック」などで取られる先祖返りパターンで
ある。しかし、ソロが大泥棒だった、というのは何かピンと来ないなあ。

冷戦が始まるころの東西ベルリンが舞台だが、近い過去なりの難しい小道具の苦労があっただろう。特に東側の
当時のクルマや服装などはゼロから再現しなければ無い状況だっただろう。またローテクのスパイ道具を逆に
お洒落に見せている上手い所もある。
全般のダルさのまま終わったら★は6つ以下だなあ、と思っていたら後半になり面白くなった。アメリカの
TVシリーズの映画版というよりも、イギリスの監督がイギリスの俳優を使って作ったイギリス的匂いのする
ある意味ストイックな雰囲気さえあるスパイ映画である。
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<ストーリー>
日本でも人気を博した往年のTVドラマ「0011ナポレオン・ソロ」を、「シャーロック・ホームズ」
シリーズのガイ・リッチー監督が映画化したスタイリッシュ・スパイ・アクション。東西冷戦時代を背景に、
アメリカとロシアのトップ・エージェントが手を組み、互いに衝突を繰り返しながらも世界を揺るがす巨大な
危機に立ち向かう姿を描く。
主演は「マン・オブ・スティール」のヘンリー・カヴィルと「ローン・レンジャー」のアーミー・ハマー。
共演に「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」のアリシア・ヴィカンダー。

 東西冷戦真っ只中の1960年代前半。アメリカCIAの敏腕エージェント、ナポレオン・ソロがベルリンへ
向かう。目的は東ベルリンの自動車整備工場で働く女整備士ギャビーを確保すること。彼女の父親は失踪した
天才科学者ウド・テラー博士で、核兵器を巡る国際的陰謀に巻き込まれている可能性が高かった。

やがて世界の危機を前にアメリカとロシアは協力を余儀なくされ、ソロはKGBのエリート・スパイ、
イリヤ・クリヤキンと手を組まされるハメに。しかし2人は考え方もやり方もまるで水と油。それでも
ギャビーを守り、テラー博士の奪還と大規模テロの阻止というミッションのために、渋々ながらも力を
合わせるソロとクリヤキンだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=352332こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2016-11-10 22:30 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)