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●「ジャッキー/ファーストレディ最後の使命 Jackie」
2016 アメリカ Fox Searchlight Pictures,LD Entertainment,Wild Bunch.99min.
監督:パブロ・ラライン
出演:ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、グレタ・ガーウィグ、リチャード・E・グラント他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

ジャクリーン・ケネディ、華やかで悲劇的な存在。大統領暗殺の数年後、ギリシアの大富豪オナシスと
再婚し、死亡時の名前は、ジャクリーン・ケネディ・オナシス、であった。また長男のJFKジュニアも
自ら操縦する自家用機の墜落で死亡、いまやJFKの直系の血を継ぐのは、現在楽天に勤務している
キャロライン・ケネディの長男となってしまった。
そのあたりの毀誉褒貶がないまぜになり、ジャッキーの本心というか実態は我々普通の日本人には
あまりよく理解さいれていないのではないか。また多くのアメリカ人庶民とても。

そんなジャッキーの、JFK暗殺後ほぼ1週間後に雑誌記者からインタビューを受ける形で、ホワイト
ハウスでの生活やJFKを巡る、あるいは子どもたち、ホワイトハウススタッフたちを巡る、結構
重い話が展開される。有名な話は知ってはいても、彼女が語る真実は、ジャッキーの新しい
イメージとして、個人的には面白かった。(映画に書かれたことが本当かどうかは分からないが)

ジャッキーは美人だし、富豪の娘だし、頭はいいし、ファッションアイコンでもあったので
ミーハーな気分で観に行くと、あかんですよ。映画は「重い」。けだし本作は、脚本と
ナタリーの演技を味わうものなのだろう。

ダラスで夫が銃弾に倒れた後、脳が飛び散る頭を押さえ、必死に呼びかけた。しかし、夫は
既に死んでいたことは判ったという。国の安全と政治を継続的に執行するために、棺を乗せ
ワシントンへともどるエアフォースワンの中で、副大統領リンドン・ジョンソンの次期大統領
への宣誓式が行なわれる。(有名なシーンだ)ジャッキーは側近のアドバイスを受け付けず、
血の付いた服で、どうどうと飛行機の先頭出入り口から外へと出ていく。

ジャッキーがホワイトハウスに入り、調度品を全て国民と現代のモチーフに会うように変更した
ドキュメンタリーの再現映像も使われ(この初めてホワイトハウス内部を公開した
ドキュメンタリーでジャッキーはエミー賞を獲得した)、自分がファーストレディとして
ホワイトハウスをどう変えようか、また夫をどうサポートしようか腐心したことが語られる。
一方で、暗殺後ジャッキーは、周囲からは同情の目で見られるが、立場的には「元大統領婦人」。
自分と夫がやってきたことが次々とジョンソンのスタッフににより上書きされていってしまう。

夫の葬儀さえ、自分の主張が通らなくなってきている。しかし自分を主張するジャッキー。
そこには、自分とJFKの仕事とホワイトハウスでの時間を、国民の心に永遠に残して欲しかった
という強い思いがあったからだ。それが二人の生きた証だからだ。そこにジャッキーの強い
こだわりを感じるのだ。そこには大統領夫人として幸せだったのか不幸だったのか、などの
感情は入らない、入れてもらえない。ラスト。最初に流産した子と、産まれた直後に死亡した
二人の子供の棺を夫の隣に埋葬してもらったシーンにおいて、彼女のケネディ家の嫁として
またJFKの妻としての「私的な」感情が戻ってきたシーンであったように思えた。

ナタリーのジャッキーは、似ている似ていないは置いておいて、そのほとんど笑わない演技は
弱さと毅然さがよく演じられ迫力があった。
アップの多用、記者との会見は正対ショットで、いわゆる「ナメ」を使わない新鮮さ、モノクロの
映像でホワイトハウスを紹介するドキュメンタリー映画の質と、当時の音声の再現、葬儀を
中心として時折使われる当時の映像も巧みであった。ジャッキーの心情を代弁するような、
いささか大仰ではあるが、音楽も映像・物語にマッチしていたといえる。

JFKがどういう人であったかとか周囲のスタッフがどうであったか、自分の子供たちはどうで
あったかとかはあまり関係なく、「元ファーストレディ」としてどう振る舞わなければなら
なかったか、そうでなければ、自分とJFKは歴史に残らなくなってしまう、という側面を
ジャッキーサイドから描いた映画である。
故に、サースガードがいきなりボビーとして出て来るが、アメリカ人なら知っている所では
あってもこれが、弟で司法長官だったロバート・ケネディとすぐには分かりづらかろう。また
もう一人の弟、エドワード・ケネディも作品中で紹介されることはない。

ひたすら「元ファーストレディ」となってしまったジャッキーの心情が綴られる作品なのだ。
毎度のことながらRotten Tomatoesでは、玄人筋に受けが良く、一般客にはそうでもない、と
いうのも理解出来る。日本でもヒットはしづらかろう。
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<ストーリー>
1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領は、テキサス州ダラスでのパレードの最中に
銃撃される。
目の前で愛する夫を暗殺されたファーストレディのジャッキーことジャクリーン・ケネディは、
怒りと衝撃に震えていたが、悲しんでいる時間はなかった。
すぐに副大統領が新たな大統領に就任して激務を引き継ぎ、刻一刻と夫が過去の人になって
いくのを目の当たりにしたジャッキーは、彼の名前と功績が後世に残るかどうかは、
この数日間の自分の行動にかかっていると気付いたのだ。
自らの手で築き上げてきた<ケネディ伝説>を永遠にするために、ジャッキーは命の危険さえも
顧みず、最後の使命に身を投じる──。(公式HPより)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:89% Audience Score:63%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=358900こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-04-16 16:40 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「人生は小説よりも奇なり Love Is Strange」
2014 アメリカ Parts and Labor.95min.
監督・(共同)脚本・製作:アイラ・サックス
出演:ジョン・リスゴー、アルフレッド・モリナ、マリサ・トメイ、ダーレン・バロウズ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

老人のゲイカップルの哀愁に満ちた話である。ゲイを主体にした映画は基本、あまり好まない
ので、どうしようか迷ったが、アメリカでの評価が高いので鑑賞してみた。短いし。
(お断りするが、私はLGBTに対し何ら偏見もない。が、映像としての男性同士の絡みが苦手
なんであります)

ショパンの曲をうまく使い、ニューヨークという都市の雰囲気の中、70歳を超える画家ベンと
やや年下の音楽教師ジョージの、老齢に及んだゲイカップルの哀愁が独特のタッチで描かれ、
ベンは最期は亡くなってしまうのだが、彼の甥の子の最期の涙とガールフレンドが象徴する
夕景は、希望よりも物悲しさが胸に広がる。監督としてはラストは若い人を登場させてカタルシスと
したかったのだろうけど、やはり映画全編に流れる哀愁の強さを、ラストだけで消すことは出来
なかった。39年もの間、パートナーとして暮らしていたベンとジョージはNY州が同性結婚を
認めたことから、晴れて結婚式を挙げ、一緒に暮らし始めた。家族を始め周囲に彼らを白い目で
みる人はいない。そこはさすがNY州である。

しかし、つまづきはジョージが教師をしている学校が、ミッション系であったことから始まる。
教区司祭の許しは得られず、クビとなり、アパートの家賃を払えず、二人は別れ別れに親戚の
家に居候することになる。せっかく一緒になれたのに、この有様。親戚に世話になりながら
肩身の狭い暮らしを余儀なくされる。もうそう長くない人生を愛する人と豊かに暮らしたいと
小さい願いも叶わないのか・・・。

主役の二人は、キャリアも長く、NYの秋を感じさせる哀愁を上手く演じ、またマリサ・トメイと
いうヴァーサタイルなキャストをしたことで、(彼女はベンの甥の妻)作品が一段と締まった
感じを受けた。
全編を流れる「愛する人との居場所」に対する哀愁に胸がつまる。LGBTに対する過剰な反発が
必要以上に描かれていないのも良かった。
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<ストーリー>
長年連れ添ってきたゲイの熟年カップルが、同性婚合法化を機に正式に結婚するも思わぬ逆風に
さらされ、改めて世間の厳しい現実に気づかされるさまと、それでも変わらない2人の深い愛情を
描いた感動のヒューマン・ドラマ。
主演は「ガープの世界」のジョン・リスゴーと「フリーダ」のアルフレッド・モリナ。
共演にマリサ・トメイ。監督は「あぁ、結婚生活」のアイラ・サックス。

 ニューヨークのマンハッタン。画家のベンと音楽教師のジョージは、連れ添って39年になる
ゲイのカップル。法律の改正によってニューヨーク州でも同性婚が認められ、ついに念願叶い
晴れて正式に結婚した2人。周囲にも祝福され、これまで以上に幸せな新婚生活が始まると
思いきや、同性婚を理由にジョージは勤めていたカトリック系の学校をクビになってしまう。
2人は瞬く間に経済的に追い込まれ、長年暮らしたアパートメントを出なければならなくなる。
こうして新婚早々離ればなれとなり、それぞれに肩身の狭い居候生活を余儀なくされるベンと
ジョージだったが…。(allcinema)

<IMDb=★6.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:95% Audience Score:66%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354802こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-04-06 22:50 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「幸せをつかむ歌 Ricki and the Flash」
2015 アメリカ Clinica Estetico,LStar Capital.TriStar Pictures.101min.
監督:ジョナサン・デミ
出演:メリル・ストリープ、ケヴィン・クライン、エイミー・ガマー、オードラ・マクドナルド、セバスチャン・スタン他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

まず感じたのは、メリルは歌が上手いなあ、ということ。「マンマ・ミーア!」はそれなりに、先日
オスカーにノミネートされた「マダムフローレンス!夢見るふたり」はそれなりに、そして今回はロックと
来たもんだ。ハスキーにシャウトするロックはなかなか聞かせる。上手いよ!だが、歌の披露が長すぎ
だったな。実の娘との共演も話題であったが、話時代としては、落ち着くところに落ち着いた、という
感じで、あまり面白みが無かった。が、エンディングのウェディングパーティーでの全員でのダンスなど
観終わって嫌な感じが残るようなものではなかったのは、ジョナサン・デミの上手さだろう。

ロックな母ちゃん、リッキーは子供を捨ててバンドをナリワイとした生活。場末風のクラブでシャウトする日々。
充実はしているが金が無い。そんな折に娘のジュリーが離婚して荒れているという前夫の要請で
西部からインディアナポリスへと出かける。長い間ほっぽらかされて、今更何よ、という娘。まあ
しょうがないわな。

ある日、次男が婚約者を連れてくるという長男も来て久しぶりに家族で食事会を開くことになるが、
お互いに罵り合いで収集がつかない。長男はゲイだとカミングアウトするし。

別れれた夫には長い間リッキーの子供を我が子のように育ててきた黒人の後妻があった。次男の結婚式で
しゃしゃり出てこられてはたまらない。

娘のジュリーは次第に心を開き始める。そして次男夫婦の結婚披露宴の招待状が舞い込む。バンドの
リードギターで今のリッキーの恋人であるグレッグは自慢のギブソンのギターを質に入れ、西部までの旅費を
作ってくれたのだ。そして披露宴当日、回りの白い目にさらされて着席する。そしてリッキーのスピーチが
来た。リッキーはバンドのみんなでステージに上り、演奏を始めた。初めは躊躇したり、バカにしていた
参加者も、次第にダンスの輪に入っていったのだ。もちろん最初に踊り始めたのは次男夫婦であった・・。

そんなお話で、びっくりするようなスジではないのだが、ほんわかする作りにはなっている。深い
意味もないけれど、リッキーという母親の生き様みたいなものは伝わってきた。
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<ストーリー>
オスカー女優メリル・ストリープが夢を追って家族を捨てたワイルドな売れないロック歌手を熱演した感動ドラマ。
娘のピンチをきっかけに家族と再会したヒロインが、過去と向き合い、葛藤しながらも自らの生き様を見せることで
子どもたちとの絆を取り戻そうとしていく姿を描く。
メリル・ストリープと実の娘メイミー・ガマーが母娘役で共演し話題に。また、メリル・ストリープのバンド仲間を
リック・スプリングフィールド、リック・ローザスら一流ミュージシャンが演じているのも見どころ。
脚本は「JUNO/ジュノ」「ヤングアダルト」のディアブロ・コディ、
監督は「羊たちの沈黙」「レイチェルの結婚」のジョナサン・デミ。
 
ミュージシャンでの成功を夢みて3人の子どもと夫を捨てたリッキー。今は売れないバンド“リッキー&ザ・フラッシュ”の
ギター兼ボーカルとして、小さなライブハウスのステージに立つ日々。
そんなある日、元夫ピートから娘のジュリーが離婚して実家に戻ってきて以来、憔悴したままだと連絡を受ける。
なんとか飛行機代を工面し、ジュリーの元に駆けつけたリッキー。しかし20年ぶりの再会にも、ジュリーは自分を捨てた
母を許すことができない。そんな中、ピートから連絡を受けた2人の息子たちも戻ってきて、久々に家族が全員顔を
揃えるのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★6.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:64% Audience Score:43%>




by jazzyoba0083 | 2017-03-27 22:45 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

さざなみ 45 Years

●「さざなみ 45 Years」
2015 イギリス BFI Film Fund and more. 95min.
監督・脚本:アンドリュー・ヘイ
出演:シャーロット・ランプリング、トム・コートネイ、ジェラルディン・ジェームズ、ドリー・ウェルズ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

まあ、いろいろ有ったであろうけど、今はイギリスの田舎で穏やかな暮らしをしている老夫婦に
起きた「さざなみ」のような出来事。邦題はなかなか味がある。45年じゃ、何のことだか分からないから。

私くらいの歳になると、身につまされると言うか、人生経験を積み重ねないと分からない(若いことが悪い
ということではなく)ことが、じわりと胸に迫る。最後の結婚45周年イベントで踊る二人、特に主人公
シャーロット・ランプリングの目線の先にあったものは、果たして穏やかな未来であっただろうか、と
どきりとするようなエンディングである。ほぼ老人しか出てこない(最近は増えたけど)映画だが、主役
二人の演技で、原作はあるのだけど、えいや!と持っていった作画はなかなかだ。
シャーロットは本作でこの年のオスカーノミニーになったほか、ベルリンや全米批評家協会賞など沢山の
賞を獲得している。

冒頭、ジェフ(コートネイ)がケイト(シャーロット)と結婚する前、付き合っていたカチャという女性と
スイスアルプスの山歩きをした。彼女が転落し、行方不明になったのだが、半世紀近くも経って
当時のままの姿で氷河の中から発見された、という警察からの連絡が、なかなかミステリアスな設定で
宜しい。単に白骨体でないところに、現実の人間としてのリアリティが出ている。にくい出足だ。

「身内の方」って連絡が来ているけどなんで?と尋ねるケイトに対し「当時は夫婦と言わないと泊めて
くれなかったりしたからね」などと結構慌てている感じ。ケイトは、まあ結婚する前の話だし、死んだ
人の話だし、と余裕をカマしていた。スイスに行くの?こんな年になり、険しい山なんかに登れるかよ、
というジェフであった。

だが、ある晩屋根裏でゴソゴソしているジェフ、何しているの、カチャの写真が・・・見せてよ、と
いうやりとりが簡単にあり、後日、ジェフがいない時、屋根裏に入り、ジェフの当時の登山日誌を
見つける。そこにはカチャを写した多くのスライドが・・。
がぜん、夫に対する不信感が頭をもたげる。そして、カチャが死ななかったら彼女と結婚していた?
と尋ねると、「そうだな」という返事。間もなく結婚45周年のイベントがあるというのに、ケイトの
心には夫に対する不信感、嫉妬心がモクモクと台頭してきたのだった。ケイトも夫にいろいろと聞くが
夫ジェフは、心から悪気はなく、既にカチャは過去の人で、ケイトこそ愛する妻であるということは
不変であるようであった。ケイトが言いつのると、「彼女には関係のないことだ」と言うジェフ。
何気ない言葉だが、結構本質的だと思った。普通なら「お前には関係ないことだ」というだろう。
しかし、ジェフが口にしたセリフはカチャが主人公であったのだ。これにはケイトも傷ついたと
思う。だが、男の身として思うのは、(身勝手なんだけど)男は平気で複数の女性に平等に愛情を持てるのだ、
という事。これが分からないと、この老夫婦の「さざなみ」の本質は分からないのではないか。

気が乗らない、と言っていた自分たちの結婚45周年パーティーは、親友のジョージ夫婦が幹事となり
盛大に開かれた。スピーチでジェフは、涙を見せて、ケイトにこんな自分を長く愛してくれて
ありがとう、と感謝する。自分の人生で最良の事であったと。ジェフの言葉にウソはないであろう。
そして、結婚式の時と同じ「煙が目にしみる」でダンスをする二人。さて・・・。

たくさん使われる60年代英米ポップスが懐かしさを掻き立てる。
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<ストーリー>

2015年の第65回ベルリン国際映画祭で主演男優賞と主演女優賞をW受賞するなど、各国の映画賞に輝いた、
とある夫婦の姿を映す人間ドラマ。シャーロット・ランプリングが長年連れ添った夫の元に届いた1通の手紙に
より心を乱される妻を、その相手を『長距離ランナーの孤独』のトム・コートネイが演じ、イギリスの名優の
共演となった。


 イギリスの小さな地方都市に暮らす夫婦、ジェフ(トム・コートネイ)とケイト(シャーロット・ランプリング)は、
結婚45年になる。子供はおらず、仕事を引退した今はささやかな日常を送っている。土曜日に結婚45周年祝賀
パーティを控えた月曜日、ジェフに一通の手紙が届く。50年以上前、雪山でジェフの恋人カチャがクレパスに落ち、
行方不明となっていた。しかし温暖化により雪が溶け、当時の姿のまま発見されたので遺体確認に来てほしい
というスイスの警察からの手紙だった。
ジェフが「ぼくのカチャ」と不用意に口にしたとき、二人の日常に変化が訪れる。ケイトに事情を説明する
ジェフは目の前の妻の存在を忘れ、上の空となっている。ケイトは家の中に冷たいものが入り込むのを感じる。

祝賀会の下打ち合わせに出掛けたケイトは、時計店でスイス製の高級時計を見つける。45周年の記念に夫に
ふさわしいと思い、家に電話を掛けるが、夫は出ない。何かに気を取られて電話に出られないのだと察し、
ケイトの気持ちに陰りが生まれていく。ケイトが家に戻ると、ジェフはいつもの夫に戻っていた。しかし夕食の
席で、ジェフはケイトにカチャとの出来事を語り出す。警察には夫婦と言ってあり、カチャはおもちゃのような
指輪を左手の薬指にしていた、と。ケイトは余裕の表情でやり過ごすが、内心は話を切り上げたくて仕方なかった。
ケイトは存在しない女への嫉妬心を重ねていき、夫へのぬぎいきれない不信感を募らせていく……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:97% Audiece Score:67%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355325#1こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-03-22 23:10 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「13時間 ベンガジの秘密の兵士 13 Hours」
2016 アメリカ Paramount Pictures and more.144min.
監督・(共同)製作:マイケル・ベイ
出演:ジョン・クラシンスキー、ジェームズ・バッジ・デール、パブロ・シュレイバー、デヴィッド・デンマン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

あのマイケル・ベイの作品が劇場で公開されなかったのだな。迫力あるドンパチだったけど、事件が
起きた当時のリビア、ベンガジの構造がよく分からず(冒頭に字幕で解説は多少あるが)、領事館が
攻められてくるまでは誰が何をどうしようとしているのか、とっても分かりづらかった。事態が動き
出すのは先述のように領事館襲撃、そして続くCIAなどが入る情報部隊への襲撃が始まってからだ。

現地で起きている事をペンタゴンやワシントンは見て見ぬふりをする、他のアフリカや欧州にいる
アメリカ軍は建前を突き崩せず、動けない、現地の指揮官はどうも保身に走っているようだし。
しかも、リビアでアメリカに味方している現地勢力、だれが味方で誰が敵か分からない!

こうした状況では、頼りになるのは自分とその仲間たちだけじゃないか!なんとかやりぬくしかないぜ!
しかも本土には帰国を待つ家族がいるというのに・・。という、そこはありがちで分かり易いが。
イーストウッドの「アメリカンスナイパー」、ビグローの「ハートロッカー」、「ゼロ・ダーク・サーティ」
など同様に実際に起きた事件を元に描かれた作品は、主人公を絞り安いのだが、本作の場合は
事件そのものが主人公のような体裁。かといってベン・アフレックの「アルゴ」ほど事件を上手くまとめ
切れているか、というとそうでもない、というこのあたりのどっち付かずが、一般受けしないと判断され
映画館での上映を見送られたのかもしれない。映像は成功していても作劇は失敗しているという・・・。

私としてはこの映画を見ていて唯一頭に浮かんだのは「みんな自分の事ばっかり考えて・・・。」と
いうこと。まあ、総じて戦争というのはそういうものなのだけれど。マイケル・ベイがこの映画を通して
言いたかったのはそればかりではなく、アメリカのために果敢に戦った少数の勇気ある男たちの話、だった
のじゃないか。もちろんその背後に言いたいことは山ほどあろうかと思うけど。それが描き切れていない
ところに本作の蹉跌があるといえよう。玄人受けはしないけど、素人さんには受ける、というRotten
Tomatoesの評価が、的を得ているようだ。
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<ストーリー>
「トランスフォーマー」シリーズなどのヒットメーカー、マイケル・ベイ監督が、2012年にリビアで
発生したイスラム過激派によるアメリカ領事館襲撃事件を映画化したアクションドラマ。
事件を取材したジャーナリストのミッチェル・ザッコフによるノンフィクションをもとに、支援を
絶たれた6人のCIA警備兵が繰り広げる13時間の激闘を臨場感たっぷりに描き出す。

12年9月11日、リビアの港湾都市ベンガジにあるアメリカ領事館が、イスラム過激派の武装集団に
占拠された。領事館のほど近くにあるCIAの拠点アネックスは救援要請を傍受するが、アネックスの
存在自体が極秘であるため手を出すことができない。アネックスに派遣されていた軍事組織GRSの6人の
警備兵たちも待機命令を受けるが、領事館を取り巻く状況が緊迫していくのを見過ごすことができず、
任意で救援活動に乗り出す。
出演は「プロミスト・ランド」のジョン・クラシンスキー、「ザ・ウォーク」のジェームズ・バッジ・デール
(映画.com)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:50% Audience Score:83%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=357056#1こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-03-18 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

ズートピア Zootopia

●「ズートピア Zootopia」
2016 アメリカ Walt Disney Pictures.108min.
監督:バイロン・ハワード 共同監督:ジャレド・ブッシュ
声の出演:ジニファー・グッドウィン、ジェイソン・ベイトマン、イドリス・エルバ、J・K ・シモンズ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

今年(2016年度)のアカデミー賞長編アニメ賞を獲得した作品。トランプ大統領登場を予見したかのような
内容なのだが、テーマとしてはアメリカに普遍的に横たわる根の深い問題なのだろうな、ということは良く
判った。お子様が見ても勿論面白いが、これは基本的には大人のアニメだ。思わず、あれが誰で、と実在の
人物に当てはめたくなってしまう。日本語吹き替えで観れば、画の楽しさをたくさん味わえるのだろうが、口の
動きを確認したくて、またオリジナル版の声も確認したくて、日本語字幕で鑑賞した。

田舎の正義感溢れるウサギが警官試験に合格し、「誰でも何にでもなれる」という夢見る街、ズートピア警察に
着任する。しかし、実際の街は、差別や偏見にあふれているわけで・・・。ウサギの苦労が始まる、という出だし。
良さそうな人がそうでなかったり、怖そうな人が優しかったり。草食動物と肉食動物の確執があったり・・。

たくさんの魅力的な動物が、その動物が持つわかりやすいキャラクターを持って登場するが、私の一番の
お気に入りは狐のニック。小さい頃から「ずる賢い」という烙印を押され、ひねくれて生きてきたし、実際
ずるい商売をしていたりする。しかし、このニックが本作の重要な(ワタシ的には主人公といってもいいと
さえ思う)役割を演じ、映画の主題を体現もしている。アニメ化された表情がまた実にキュートでいい。
警官のボス、水牛のボゴもなかなか味のあるキャラクターで好きだ。

ウサギ警官との間の信頼するのしないのという関係から、ある捜査を二人で暴き、真の黒幕を暴き出すのだった。
狐のニックも警官となり、ウサギ警官とコンビを組むことになったのだ。

動物間の偏見はつまり人間社会のそれであり、多様性を認めあってこそ、というのは人間界以上に動物界では
重要なテーマ性を帯びてくるわで、アニメではあるが、動物たちがこうやってやって行けているんだから
人間が出来て当たり前じゃないか?と問われている気分になるのだ。
ズートピアとはアメリカそのものに他ならない。あるいは地球全体と見ても良いかもしれない。

しかし、今のアニメ技術は凄い。質感といい動きといい、アニメのほうが表現手段は豊富なんじゃないか。
今回感心したのは、背景に描かれる街並や大道具小道具、そして車などの質感が、リアルであって、
あんまりアニメを観ている、という気がしてこなかったのだった。
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<ストーリー>
高度な文明が発達した動物たちの楽園ズートピア。そこは、誰もが夢を叶えられるところだった。
田舎町バニーバロウで育ったウサギのジュディは、幼い頃から、世界をより良くするために警察官に
なりたいと思い描いていた。サイやカバといった大型動物だけが警察官になっているものの、ジュディは
警察学校を首席で卒業。ウサギとして初めて警察官になり、ズートピアに赴任する。

しかし、動物たちの連続行方不明事件が発生し、捜査に向かうのはサイやゾウといった大型の同僚たちばかり。
スイギュウの署長ボゴはジュディの能力を認めようとせず、駐車違反の取締りを命じる。そんな中、
街で困った様子のキツネの親子を助けたところ、彼らは詐欺師だった。だまされショックを受けるジュディに、
詐欺師のニックは、何にでもなれると思っていても無理だと言い放つ。
落ち込むジュディだったが、諦めずに、未捜査のままになっているカワウソのオッタートンが行方不明に
なっている事件の捜査に名乗り出る。ジュディを応援するヒツジのベルウェザー副市長の後押しもあり、
ボゴは期間は2日間のみであること、失敗したらクビにすることをを条件に、やむなく捜査を任せる。

チャンスを掴んだものの、手がかりは皆無だった。そこでジュディは、街に精通しているニックに協力を
依頼。秘密を握られているニックは、渋々彼女の捜査に付き合うことにする。ニックの情報網を駆使し
聞き込みを続けるうちに、ついにツンドラ・ラウンでオッタートンの痕跡が残る車を見つける。
しかしその車はツンドラ・タウンの闇のボス、ミスター・ビッグのものであり、ジュディとニックは
捕まってしまう。何とかこの危機を切り抜けたジュディとニックは、新たな手がかりを掴むとともに、
ズートピアに何かが起ころうとしていることに気付く……。(Movie Walker)

<IMDb=★8.1>
<RottenTomatoes=Tomatometer:98% Audience Score:92%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354239#1こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-03-16 22:40 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

砂上の法廷 The Whole Truth

●「砂上の法廷 The Whole Truth」
2016 アメリカ PalmStar Media and more.94min.
監督:コートニー・ハント
出演:キアヌ・リーブス、レニー・ゼルゥイガー、ググ・ンバータ=ロー、ガブリエル・バッソ、ジム・ベルーシ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

「犯人は被害者と一番遠い関係にある者だ」、「一見悪いと描かれる人は実はそうは悪くない、善人ぶるヤツこそ
怪しい!」という2時間ドラマの王道を行くような展開。ま、見事に引っかかったので、その点は良しとしても、
観終わって、騙されたなあ、という点以外に残らない映画なんだな。それを目指したのよ、と言われればそれ
までだけれど。

キアヌとレニーの名前に惹かれて観てみたのだけど、レニー、この後の「ブリジット・ジョーンズ~」の時より
痩せていて最初ダレだか分らなかった。法廷映画なんだけど、証言に基づく再現シーンにより、観客はミスリード
されていく。嘘をついているのはだれか?ということなんだけど、その割に緊張感は薄い。

キアヌは弁護士、レニーは殺された男(キアヌを育て上げた弁護士でもある)、犯人はレニーと殺された男の
長男(すごく優秀で法律家を目指している)という構図。
ある日、ロレッタ(レニー)の夫ブーンが寝室で胸にナイフが突き刺さった状態で死んでいるのを、ロレッタと息子
マイクが発見。警察はマイクが「自分がやった」と言ったという証言からマイクを逮捕した。ラムゼイ(キアヌ)が
顧問弁護士として裁判に臨む。マイクは証言をしない。なぜか知らないが口を開かないのだ。そのため
状況はどんどん悪くなっていく。 そこで、ラムゼイは助手を勤める若い黒人女性弁護士ジャネルと、ある
作戦に出る。

まあ、常道どおり、息子は母をかばって犯人と言っているのじゃないか、という風になるのだが、殺された
ブーンは、母にも、息子にも暴力を振るっていたらしい。近所に住む住人からも証言がなされる。
しかし、急にマイクが証言台に立つという。マイクは父に幼いころから性的暴力を振るわれていたというのだ。
陪審員の同情が一気にマイクに集まる。(観ている人も陪審員目線になるわなあ) 判決は無罪。すべては
暴力的なブーンのせいにされた。

しかし、実はマイクは父の死体の近くにラムゼイの腕時計が転がっていたのを知っていた。判決の後、
マイクはラムゼイに、あの日寝室で何をしていた、と問い詰める。そう、ラムゼイと母ロレッタは不倫の
関係?暴力を見かねた関係?にあったのだ。(あれあれ)であれば、何故にマイクは自分が逮捕された後、
黙っていたのか?ラムゼイをも庇ったのか? 父は本当は母を虐待もしていないし、マイクに性的暴力はして
いなかったのではないか?ただ粗野な性格だっただけで。ブーンがラムゼイに「どうやら妻が浮気している
ようなんだ、ダレだか分かるか?」というような問いを投げるシーンがある。別れ際にブーンはウィンクして。

恩師であるブーンの粗野な態度に嫌気がさした妻ロレッタは夫の教え子ともいうべきこの家の顧問弁護士
ラムゼイと不倫。夫にバレて、ラムゼイが殺した。しかし、魔が悪くそこに息子が帰ってきて死んだ夫を
見つけてしまう。「ボクがやれば良かったんだ」、普段から父からいじめのような言葉を投げられ、かなり
頭に来ていたマイクは、逮捕されても、母やラムゼイを庇って黙ってしまった。さらに自分が父から性的
暴力を受けていたという嘘までついた。彼は法律にも詳しかったから無罪は獲得できた。そして、ラムゼイに
詰め寄った。殺したのはお前だろう!と。・・・というのが全体像じゃないかな。

ラムゼイの腕時計がベッドの下にあって・・・あたりで映画がぐんと安くなってしまった感じだなあ。

<IMDb=★6.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:29% Audience Score:31%>

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<ストーリー>
巨額の資産を持つ大物弁護士が自宅で殺害される事件が発生。容疑者として逮捕されたのは、被害者の
17歳の息子だった。拘留後、完全黙秘を続ける少年の弁護を引き受けたのは、敏腕弁護士ラムゼイ
(キアヌ・リーヴス)。
何も語ろうとしない被告人をよそに、開廷された裁判では多くの証人から少年の有罪を裏付ける証言が
飛び出す。だが、その証言のわずかな綻びから、ラムゼイは証人たちの嘘を見破る。有罪確定に見えた
裁判の流れが変わり始めた矢先、沈黙を破って衝撃の告白を始める被告の少年。彼の言葉は果たして
真実なのか?そして、真犯人は別に存在するのか……?(Movie Walker)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355436こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-02-25 23:15 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

サウルの息子 Saul fia

●「サウルの息子 Saul fia」
2015 ハンガリー Laokoon Filmgroup,Hungarian National Film Fund.107min.
監督・(共同)脚本:ネメシュ・ラースロー
出演:ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン、トッド・シャルモン、ジョーテール・シャーンドル他
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       <2015年度アカデミー賞外国語映画賞、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品>

<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
「息詰まるアップ」「終始手持ちの長回し」「音楽なし」。それでもナチスによるユダヤ人収容所の様子は
極めて良く分かる。内容、演出ともに衝撃的な作品だった。昨年、オスカーを始め世界中の外国語映画賞を
総なめにし、映画ブロガーの中でも評価が高かった本作、WOWOWでの放映を機に鑑賞することが出来た。
映画館でみたら、あのアップはもっと息が詰まったことだろう。故にラストの緑の林のロングショットが
大きなカタルシスとして描き得るのであろう。

冒頭から主人公サウルのタイトバスト(肩から上の)ショットから長回しの映像が始まる。
映像に入る前、字幕で解説される「ゾンターコマンド」という、処分された死体が脱いだ服から金目の
モノを抜き出し(映画には描かれないが、死体から金歯を抜いたり髪をそったりもしたようだ)たりする
役目を背負ったユダヤ人が描かれる。彼らもやがて処分されるのだが。

黙々と何かの仕事をしているサウルのアップの背景に、ややアウトフォーカスで描かれるホロコーストの
実態。衝撃的なカットはアップの人物で隠すものの、着いた列車からおりた大勢のユダヤ人が、「シャワーの
後はスープだ」とか「脱いだ服のフックの番号はよく覚えておけ」とか言われて裸になり、ガス室に送られる。
その瞬間からゾンターコマンドたちは脱いだ服からいろんなものを抜き取り、時計や貴金属を手際よく
集める。すぐにガス室から聞こえてくる苦悶の絶叫やドアを叩く音。それでも彼らは表情一つ変えずに
仕事に打ち込む。ガスによる虐殺が終わると、ゾンターコマンドたちは死体を運び出し、焼却炉に運び、
シャワー室の床を掃除する。おぞましい光景があくまでもアップ画面の背景に映し出されていく。

はっきりと見せられるより、サウルの無表情は顔のアップの背後に展開されることにより、ホロコーストが
余計にリアルに迫ってくる。川に行って何かを川に撒いている。それが遺体を焼却した灰だと、説明され
なくても分かるのだ。
ゾンターコマンドたちもだまってこの狂気の作業をしているだけではなく、一部は武器をなんとか都合し
て反乱を起こそうと計画していたのだった。

<以下、結末まで全部ネタばれで書かれていますので、未見の方はご留意ください>

こうした中で、処分が終わったガス室からまだ息があると言って運び出されてきた男の子がいた。
担当のナチス将校は、まだ生きている少年の口を手で押さえてトドメをさし、解剖せよ、と担当医師に命ずる。
それを見ていたサウルは少年を自分の息子だと思い込み、解剖はしないでくれ、ユダヤ教に則りラビに
葬儀を取り仕切ってもらってくれ、と医師(彼もユダヤ人)に頼む。医師は少年の遺体を隠していてくれる
のだが、その間、サウルは狂ったようにラビ(司祭)を探しまくる。少年を埋葬することがゾンターコマンドと
してやっていることの贖罪と思い込んだか、またあまりの環境に狂ったのか。

今いる班にはラビはいないとなると、新たな列車で到着したユダヤ人の中に入り込み、ラビを探しまくる。
その頃には焼却炉が追いつかず、穴を掘って埋めていくようになっていた。
その中からようやくサウルはラビを見つけ出す。しかし、こいつがどうやら助かりたくて嘘をついているようだ。

やがて、ゾンターコマンドの中から70人の抹殺命令が出る。彼らはガス室の前で反乱を起こし、銃撃戦となり
一部は収容所から逃走する。サウルも遺体を担いでその中にいた。とにかく遺体を埋葬したい、その一心で。
大きな川まで来た時、一緒に逃げてきたラビに祈りをお願いし、木の枝で穴を掘ろうとした。祈りを始めた
男は途中で止めてしまう。やはり偽物だったのだ。その時遠くに犬の鳴き声が。追手が迫ってきたのだ。
ラビと称した男はすぐに逃げ出す。サウルも遺体の袋を抱いて川に入る。なんとか泳ぎきろうとしたのだが
力が尽きそうになってしまう。その時、仲間がが彼のクビを後ろから支え助けてくれた。しかし、遺体の袋は
流れていってしまった。

林の中の掘っ立て小屋に、逃げた数人が集まってきた。その時、入り口のところに運んできた遺体と同じくらいの
地元の少年が立っていた。サウルの顔にようやく笑顔が。(この映画唯一の笑顔だ)あの遺体の少年が来てくれた、
くらいに思ったのだろうか。少年は踵を返すと森に去っていく。それと入れ替わりに追手の軍隊が駆けつける。
逃げていく少年の姿。そしてやがて遠くで聞こえる機関銃の音。林の中に消えていく少年。林の遠景。
暗転し、エンドロール。音楽。音楽が切れてもつづく字幕の背後に、林のノイズが生き続けている・・・。
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107分、「息詰まる」といったが、「息つく暇もない」という見方も出来る。アップをあの近さから撮り続けるとは
どういう技術だろう、フォーカスはどうやって合わせているだろう、川を渡るときはどうやって撮ったのだろう、
などテクニカルな部分にも興味が行った。ナチスの狂気と、サウルのカウンターに位置する狂気。そこに
この映画の生み出すパワーがある。戦争と狂った政治が生み出す人間の仕業とは思えないナチスのホロコーストに
思いを致すのもいいだろうし、サウルは一体何をしようとしたのだろう、とそれぞれ思うのもいいだろう。
個人的には、このブログを書きながら「処分」とタイピングする軽さと現実の重さに心も重くなるのだった。
この映画は実際に観てもらわないとその凄さは理解はしてもらえない、ということだけは確かだ。

<IMDb=★7.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:96% Audience Score:80%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354579#1こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-02-20 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「サヨナラの代わりに You're Not You」
2014 アメリカ Darlyl Prince Productions and more.102min.
監督:ジョージ・C・ウルフ 
出演:ヒラリー・スワンク、エミー・ロッサム、ジョシュ・デュアメル、ロレッタ・デヴァイン、マーシャ・ゲイ・ハーデン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ALS(筋萎縮性側索硬化症)を描く映画はこのところ何本か作られている。バケツ水浴びリレーで
注目も集めた。本作では、ピアニストのケイト(ヒラリー・スワンク)が発症し、介護役として
自堕落な生活をしていた大学生ベックが選ばれ、その後、2人の心が寄り添っていく、2人の
心が成長してく、という感動のストーリーだ。ケイトの旦那がイケメン弁護士でお金持ちという点は
どうなのかな、という感じはしたが、全般的に面白く(という表現がこの映画に適切かどうかは
分からないけど)鑑賞した。ストーリーは予見できるものであるが、本作の良さは、何と言っても
鬼気迫るヒラリー・スワンクの演技と、彼女を支えるエミー・ロッサムの演技の出来であろう。
私は特にエミーのケレン味のない演技と存在感がとても気に入った。

破天荒は人物が介護役となる、という出だしは「最強のふたり」と似ている。ケイトの旦那の
秘書との浮気、ベックの大学教授との不倫なども絡めつつ、次第に悪化していくケイトと、
それを必死に支えようとするベックなのだが、介護なんてしたこともなければ料理もできないと
いうベックが別人になったように、他人のためになることをすることの価値や意義を見出していく
様子が心を打つ。ケイトが遺言として、人工呼吸器を付けるかどうかの役割をベックに与えたことに
対するケイトの母親との相克も見どころ。普段から何もしていない母親、そしてベックの両親も
人のために自分の人生を台無しにして、と責める。ケイトも、お母様の言うとおりよ、あなたは
あなたの人生を生きて、とベックを突き放すが、ベックの心は固まっていた。

やがてくる死が避けられない病気、病院を止めて自宅で最期を迎える選択をしたケイトとベック。
そしてやがてケイトはベックの腕の中で安らかに天国へ旅立つ。ベックとの日々で心が開放された
ケイトであった。一方、人生とは何か、ということをベックに教えてくれたケイト。
ベックは諦めていた音楽家としての道を力強く歩み始めるのだった。

病気モノはあまり得意じゃないのだが、演技が素晴らしいとやはり引き込まれてしまう。
「アリスのままに」もそうであった。
エンドロールでベック(エミー)が歌う歌は彼女自身の作詞作曲によるものだ。
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<ストーリー>
弁護士の夫エヴァン(ジョシュ・デュアメル)や友人たちに囲まれながら、充実した日々を過ごしていた
ケイト(ヒラリー・スワンク)は、35歳の誕生日パーティーでピアノを弾いた時、初めて身体に異変を感じる。
やがて難病・筋委縮側索硬化症(ALS)と診断され、1年半後には車椅子生活となり、彼女は人生のすべてが
変わってしまう。
友人たちの前で明るく振舞うことに疲れ、心の中でこんな筈ではなかったと嘆くケイトは、エヴァンの反対を
押し切り、患者ではなく友人として話を聞いてくれそうな大学生ベック(エミー・ロッサム)を介護人として雇う。
ところがミュージシャンになる夢に挫折し、気まぐれに生きるベックは、言葉遣いも荒く料理もまともに出来ない。
教養が高く完璧主義のケイトがそんな彼女とうまくいくはずもなかった。
だがある日、夫の浮気を知ったケイトの“家出”をベックが手伝ったことから、二人の関係は本音で語り合える
友情へと変わっていく。自由奔放なベックに、次第に心が解放されていくケイト。一方、ベックも生まれて初めて
自分を頼ってくれたケイトに影響され、自身の生き方を見つめ直すようになる。
しかしそんな二人に残された時間は、あとわずかであった……。(Movie Walker)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353284#1こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-02-04 22:50 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

ザ・ウォーク The Walk

●「ザ・ウォーク The Walk」
2015 アメリカ TriStar Productions=SONY ,ImageMovers.123min.
監督・(共同)製作 脚本:ロバート・ゼメキス
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングズレー、シャルロット・ルボン、ジェームズ・バッジ・デール他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
シネコンに行きそびれ、やっとWOWOWで鑑賞できたが、う~ん!3Dで観たかったなあ。
地上410メートルの綱渡りには3Dは極めてインパクトがある。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」から
2000年前後、そのあたりから同時期に出てきたスピルバーグやロン・ハワードに遅れてしまい、
キワモノ作りのイメージが出来てしまったかもなあ、というゼメキス(私、大好きです)
ところがゼメキス、このところ、間もなく公開の「マリアンヌ」もそうだが、快作が続いていて、ファンと
してはとても嬉しいのだ。

そこで本作。いや、快作である。実話である、と冒頭断られるが、「実話にインスパイアされた」という
ものと一線を画すものだ。ほとんど事実のままに描かれるということ。この映画の主人公、フィリップ・プティは
大変有名な人なので、ネットなどで調べれば、その偉業や来歴は詳しく知ることが出来る。

冒頭、今はなきWTCをバックに、自由の女神のてっぺんに上がったフィリップが、自分の冒険の顛末を
語り始める。そしてイベントの時々で登場し、その時の自分の心情や周囲の状況を語っていく。ひょうきんに。
ゼメキス、相変わらず画面の転換の工夫が上手いなあ。つまり今生きて喋っている人間が説明するのだから
世紀の綱渡りでフィリップは死んでいない、という証。観客は安心して観ていられる、ということだ。
この仕立のアイデアも良かった。
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さて、このフィリップ・プティというフランス人、子供の頃サーカスに憧れ、綱渡りと運命的に出会う。
そこで師匠となったのがサーカスのルディ(ベン・キングスレー)という頑固おやじ。フィリップは
ルディに色々教えられる。そして彼は、美しい建物で綱渡りをしたい、という願望に取り憑かれ、
ノートルダム寺院の大きな2つの塔の間で成功させる。もちろん警察には大目玉で、社会奉仕として
綱渡りをタダでみせるということになる。カルチェラタンの広場で大道芸人風にジャグリングも
入れて見せていた時、同じ広場でギターを引いてお金を貰っていたアニー(シャルロット・ルボン)と
知り合い、たちまち意気投合、二人で暮らし始める。彼女もフィリップを応援していた。

そして新聞に乗っていたニューヨークのWTCの完成が近い、という写真に雷に撃たれたようにフィリップは
アメリカに渡ることを決意、仲間を集めた。

WTCはまだ建設途中。完成してしまったら屋上に出ることは不可能だ。工事中だから怪しまれずしかも
屋上まで出られる。そこでフィリップは、設計技師、現場監督、などいろんな人に化けて、ビルに
潜入、工事の動き、人の動き、などを緻密に調べ上げ、現地地での仲間も集め、いよいよ決行の日が
やってきた。1974年8月6日。 前日から、重い鋼鉄製ワイヤ、ガイドワイヤ、滑車など結構な量の
物資を2つの棟の屋上に怪しまれないように上げなければいけない。真夜中に準備し、ワイヤーを張り
夜明けとともに決行し、作業員が上がってくる前に撤収する予定だった。

しかし、WTCに潜入し、綱渡りを決行する間の、様々なトラブル、綱渡り決行寸前で現れた謎の男、
などなど、その部分だけ観ても質の高いサスペンスに仕上がっている。
47mの綱渡りそのものは順調で、風に煽られることもなく終了するが、フィリップの、もう良いだろう、
いい加減に戻ってこい、と思わず言ってしまうほど、空中の彼がロープの上で留まる気持ちの強さは
格別なんだろう。もちろん彼らは警官らに捕まる。しかし、ビルを降りてくる際は、工事担当者から
嵐のような拍手が起きた。彼らはすぐに保釈され、乾杯をするのだった。フィリップはビルのオーナー
から屋上展望台に行く永久有効のパスを貰った。
しかし、ずっとフィリップを支えてきたアニーは、NYに残るというフィリップと別れ、パリへ戻り
自分の道を見つける、という。あれだけ愛し合っていたのに、女心は判らんものだ。
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さて、ストーリーはそんなところだが、とにかく綱渡りのシーン、ほぼ完成したWTCの内外、屋上から
見えるNYの景色や夜景、そのCGの風景が実によく出来ている。この映画の白眉、観ている人が
ロープから落ちやしないか、高いシーンに「ひえ~」となるところなど、もちろんフィリーップが
綱渡りをしているシーン、2Dでもヒヤヒヤしたんだから、3Dでだったらどんなに凄いだろう、と
思ってしまったのだ。その他にもいろんな3D用のカットが用意されていた。

「スノーデン」で主役を張っているジョセフ・ゴードン=レヴィット、すでに一流の俳優になった。

全体としてゼメキスの演出が光る良作。アラン・シルベストリの音楽もいい。
ある意味、この映画の片方の主役で、今はなき、また多くの人が非業の死を遂げたWTCに対し、
最大のリスペクトが捧げられていることは、作品を通してよく分かったのだった。
1970年代、ベトナムの戦火は未だ止んでいなかったが、国内においてテロもなく、フィリップの
ような芸術的犯罪が拍手を以って迎えられるまだアメリカがいい時代だった、という世相も切って
見せているのだ。

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353088こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-01-30 22:50 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)