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●「ミモザの島に消えた母 Boomerang」
2015 フランス Des Films du Kiosque.101min.
監督・脚本:フランソワ・ファブラ
出演:ロラン・ラフィット、メラニー・ロラン、オドレイ・ダナ、ウラディミール・ヨルダノフ、ビュル・オジェ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
★は6.5。パリの南西、ナントの西、大西洋に面したノワールムティエ島が本作の舞台であり、
この島には満潮になると消えてしまう県道(パッサージュ・ドゥ・ゴア=D948)が通っている、
というのが話の大きなポイントとなっている。 立派な橋もあるのだけど。
(Googleのストリートビューで観ることができます)

30年間家族の間では、語ってはいけないような雰囲気であった母の溺死。母を取り巻くそれぞれの
肉親たち(使用人もだけど)は、それぞれの立場で過去の「口にしてはいけない秘密」の重圧に
耐えて生きてきた。その臨界点が来てしまった模様を描く。

母の死について詳しいことを語らない父や祖母たち。離婚したばかりの長男アントワンと長女
アガットは、母の死について調べ始める。鍵を握るのが祖母であるらしい、ということと
決定的になるのは、妹アガットが、幼いころ、家で他の女の人と抱き合ってキスをしている
母の記憶が蘇ったことだった。

<以下決定的ネタバレです>
母はパリの絵画教室に通っていたのだが、そこの先生ジーンに見初められ、関係を迫られる。
当初は拒否をしていた母であったが、自分の家まで押しかけられて、そもそもその気があったのだろう、
ズブズブの関係になっていく。そして、子供を連れて、夫らを捨てる覚悟を決めたのだが、
それが義母にバレ、強制的に別れの手紙を書かされる。それをパリのジーンのところにもって
生かされたのが使用人の女性だったのだ。事情を知ってしまった使用人にも当然義母は口止めする。
祖母は自分の長男の嫁がレズビアンだった、なんて外聞が悪くてたまらなかったのだ。

しかし、母は、別れの手紙がすでにジーンの手元に渡ってしまったらしいことを知り、満潮になる
にもかかわらず、クルマでパリに向かったのだった。しかし、渡りきることは出来ず溺死。
ジーンは別れの手紙を受取り、傷心の中で30年間生きてきたのだった。
ちょっと迂回すればちゃんとした橋もあるのに、一刻もはやくパリに着きたい一心の母は、危険な
道を選んだのだろう。半分自殺みたいなものだったのだろうなあ。

アントワンが家族を前にしていい加減に秘密を話せ、と暴れるのがクリスマスの日。母とジーンの
写真を皆にプレゼントするという嫌味な作戦だった。これには妹も何を考えているの!と兄に
詰め寄るが。しかし、使用人夫妻からももうこれ以上秘密を抱えて生きていけないと、当日の
真実が語られる。しばらくすると祖母が心不全を起こし死亡。埋葬の場でも今度は父を責める。
事の真相を知ったアガットも、「よくも母を殺した女を祖母と呼ばせていたわね!」と父を
責める。ようやく父の口から当時の話が語られる・・。

母の溺死の遠因を作ったのが同性愛だった、というのがフランス映画っぽい。それまでは
もっと緊張して観ていたのだが、動機でちょっとたたらを踏んでしまった。それと長男
アントワン、40歳になるまで、母の死の悩みを抱えるなよなあ、って。建設会社も首に
なっちゃって、冒頭の交通事故での入院先で知り合った検死官?と恋仲になるのはいいの
だけど。自らの結婚生活が破綻するような悩みならもっと早くに何とかすべきだったのでは?

全体として、まずまず観られるサスペンス映画&主人公らの再生の話にはなっていたけど、
だいたいいくら絵画教室の先生に惹かれたからといって、その愛情の純粋さは理解すると
しても、母のその後の行動が無謀すぎないか?義母が怒るのも理解できるというものだ(したことは
やばいけど)。アントワンの長女16歳くらいかな、も、同性愛の気配だ。因果はめぐる、ということか。
ということで、何かすっきりしない鑑賞後の印象となってしまった。舞台の設定が面白いだけに、
もったいなかったかなあ。
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<ストーリー>
『サラの鍵』のタチアナ・ド・ロネのベストセラー小説を映画化したヒューマンドラマ。冬に咲く小さな花
から通称“ミモザの島”と呼ばれる島を舞台に、母親の死の真相を探る男が知る、衝撃の事実が描かれる。
主人公のアントワンを『アンタッチャブルズ』のローラン・ラフィットが演じ、メラニー・ロランらフランスの
実力派が脇を固める。

西フランスの大西洋に浮かぶノワールムティエ島は、冬に咲くミモザの花から『ミモザの島』と呼ばれている。
30年前、この島の海である若い女性が謎の死を遂げた。その女性の息子であるアントワンは、40歳になって
もなお喪失感を抱き続けていた。母の死の真相を追い始めるが、父と祖母は口を閉ざしてしまう。
家族が何か隠していると察したアントワンは、恋人のアンジェルや妹アガッタの協力を得て、ミモザの島に
向かった。そこで彼は、母の別の顔や衝撃の事実を次々に知っていく……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:---- Audience Score:60% >





by jazzyoba0083 | 2017-09-10 23:20 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「めぐりあう時間たち The Hours」
2002 アメリカ Milamax Films,Paramount Pictures,115min.
監督:スティーヴン・ダルドリー  原作:マイケル・カニンガム
出演:メリル・ストリープ、ジュリアン・ムーア、ニコール・キッドマン、エド・ハリス他
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     <2002年度アカデミー主演女優賞(キッドマン)他 受賞多数作品>
 
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

本作は2008年に一度観ている。その時の感想http://jazzyoba.exblog.jp/8591718/ を
ご参照ください。その時期はまだ評価、というものをしていなかったので、今回の
再見を終わり、★8とさせて頂きました。

いま自分の9年前の感想を読むと、なかなかちゃんと観ているな、と我ながら
ほくそ笑んでしまいました。 時代と設定を変えて、ヴァージニア・ウルフの
書いた「ダロウェイ夫人」を巡る3人の女性の生き方を、シーン転換も実に
上手く構成し、見せていく。1800年代のイギリス、1950年代のLA、そして
現代のNY。時制の行き来などあり、また結構「メタファーのかたまり」みたいな
映画なので、難しいとは思いますが、多くの方は、ラスト近くで、ジュリアン・
ムーアがメリル・ストリープを尋ねてくるところで、1つカタルシスがあるでしょう。

初見のときも書きましたが「不安」の映画。自分の信じる拠り所を求めて苦悩し、
精神にいささかの異常をきたしてしまう。女であることの鬱々さに、観終わって
暗くなってしまう人もいるでしょう。暗く明るくない映画ですが、訴えてくるものは
多いと思いました。

ヴァージニア・ウルフの生活は原作通りかなり現実に忠実に構成されていて、
抑鬱気味の生活の中で、自分がいなければ夫が幸せになれると、ポケットに
石を入れて川に入水自殺したのも本当のこと。読まれる手紙もほぼリアルです。

「自分の存在と何か」という、「実存主義的な」問いかけをしてくる作品だ。
しかし、映画を観ている人は必ずしもそれに答える必要はない。ドラマだから。
自分なりに何かが得られればいいし、つまらん映画だ、と思う人もいるだろう。

原作があるとはいえ、よく構成され、よく演技され、画作りも工夫された
一級の映画であることは確かでしょう。
映画の詳細については、所見のリンク先にも書いてありますが、再掲しておきます。

<ストーリー>
1923年、ロンドン郊外のリッチモンド。作家のヴァージニア・ウルフ(ニコール・
キッドマン)は、病気療養のために夫レナード(スティーヴン・ディレイン)と
この町に住み、『ダロウェイ夫人』を執筆していた。そんな彼女のもとに、
姉のヴァネッサ(ミランダ・リチャードソン)たちがロンドンから訪ねてくる。

お茶のパーティーが終わり、姉たちが帰ったあと、ヴァージニアは突然駅へと急ぎ、
追ってきたレナードにすべての苦悩を爆発させる。その悲痛な叫びにより、
レナードは彼女と共にロンドンへ戻ることを決意するのだった。

1951年、ロサンジェルス。主婦ローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)は妊娠中。
夫のダン(ジョン・C・ライリー)は優しかったが、ローラは彼が望む理想の妻で
いることに疲れていた。今日はダンの誕生日。夜のパーティーを準備中、
親友キティ(トニ・コレット)がやってきて、腫瘍のため入院すると彼女に
泣きながら告げる。
やがてローラは、息子のリッチー(ジャック・ロヴェロ)を隣人に預け、大量の
薬瓶を持って一人ホテルへと向かう。その部屋で彼女は『ダロウェイ夫人』を
開きながら、膨れた腹をさするのだった。

2001年、ニューヨーク。編集者のクラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)は、
エイズに冒された友人の作家リチャード(エド・ハリス)の受賞パーティーの
準備をしていた。彼女は昔、リチャードが自分につけたニックネームミセス・
ダロウェイにとりつかれ、感情を抑えながら彼の世話を続けてきた。しかし
リチャードは、苦しみのあまり飛び降り自殺。パーティーは中止になったが、
そこにリチャードの母親であり、家族を失ってしまったローラが訪ねてくるのだった。

<IMBD=★7.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometers:81% Audience Score:84% >



by jazzyoba0083 | 2017-07-20 23:35 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「持たざるものが全てを奪う/Hacker」
2016 アメリカ Skylight Picture Works and more.107min.
監督:アカン・サテイェフ
出演:カラン・マッコーリフ、ロレイン・ニコルソン、ダニエル・エリック・ゴールド他
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<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>

幼い頃からコンピューターが友だち、みたいな男の子が、成長するに及び
母親のクビを切った銀行への復讐心からハッカーになっていく、というのが
主軸ではあるが、途中、サイという仲間が加わり、更にキーラという謎の
女性も加わる。三人で偽のクレジットカードを作っては高価な貴金属や時計を
買い、売りさばいてはカネを作っていた。そのあたりの発端まではテンポも
良かったのだが、後はなんか目的もなくカード詐欺みたいなことを繰り返して
いるだけでだらけた。

最後にネタバラシがあるのだが、全てそれが先にありきで遡って伏線を埋めながら
ストーリーを作っていったような雰囲気があり、さっぱりスッキリしない映画だった。

レストランなどでレジを扱う人間を巻き込んでカード情報を仕入れるとかいうのは
「ちょっと、怖いんじゃないの?」などと思ってしまったが、後はキーラの
正体を引っ張りすぎた感じだ。そしてネタバラシをドドドとやってしまうので、
「なるほど、そういうことか!」というカタルシスを感じるところまでもいって
いない。幼いころカナダに移住してきたがオヤジが分不相応な家を買ってしまった
ので、暮らしが貧しくなり、母は銀行へと勤めに行くことになる。しかし、ならば
家を売れよな、と思っちゃうし、幼い頃から結構いいPCをあてがってもらって
いたりで、あれ?貧乏なんじゃないの?と突っ込んでしまった。

母親をクビにしようとした銀行がゼッド率いる「ダークウェブ」潰しのために
キーラを使って主人公アレックスを引っ張り出し、という筋立てはいささか
強引じゃないかな。事実に基づくとあるけど、ならがもう少しいい映画にして
欲しかったなあ。もったいない。
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<ストーリー>
移民の貧しい青年アレックスの一家は、父が定職を得られず、母が運良く見つけた
銀行の仕事でかろうじて支えられていた。だが、そんな母がリストラに遭い、
アレックスは大学進学のために蓄えていた資金も失ってしまう。
社会への恨みを募らせるアレックスは、ネットのブラックマーケットサイト
“ダークウェブ”を主催する謎のカリスマ“ゼッド”に心酔し、彼の歓心を得ようと
仲間たちと危険なビジネスにのめり込んでいく。
(WOWOW)

<IMDb=★6.3>
<Rotten Tomatoes:Tomatometer:0% Audience Score:45%>




by jazzyoba0083 | 2017-06-29 23:15 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

メッセージ Arrival

●「メッセージ Arrival」
2016 アメリカ Paramount Pictures,21 Laps Entertainment.116min.
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 原作:テッド・チャン「あなたの人生の物語」
出演:エイミー・アダムズ、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

「未知との遭遇」「コンタクト」など、意思を表示しない宇宙からの生命体と地球人との
やりとりを描いた映画はこれまでも何本か作られてきている。本作も、突然地球の12箇所に
現れ、空中に浮かぶ繭型の飛翔体と、そこから出てきた7本足のタコの大きなやつみたいな
異星人たちとの「コミュニケートの苦闘」を描くと当時に、彼ら異星人が持っている(操る?)
時制の不思議を、宇宙モノでは極めて地味に、哲学的、内省的に、形而上的ともいえる描き方で
綴っていく。
本作で多く使われ、しかも重要な表現となる「フラッシュバック(フォワード)」、しっかり
観ていないと時制が混乱するかもしれない。 私はラストでなんとなく腑に落ちた程度で
しっかり理解出来たか、というと「すっきりと判った」レベルではなく後から考えればそういう
ことなのだろうなあ、という状況であった。

冒頭にルイーズと娘、その娘が病を得て、やがて死別というシーンが示され、娘との
交流からインスパイアされ(霊的に導かれたようにも見える)異星人たちとの会話を
成立させていく。彼らとの接触から時制を解き放された主人公ルイーズは、共同研究者で
あるイアンとの未来を獲得していくのだった(んで良いんだっけ?)。
ルイーズの娘の名前はHannah。どちらから読んでもハンナだ。これは、映画全体の
メタファーとして認識してよいのではないだろうか。はずれのないヴィルヌーブ監督、
自作の「ブレードランナー2049」に期待が膨らむ。

異星人たちは攻撃をしてくるわけではなく、墨絵みたいな黒い煙で大気中に文字を書く。
この解読に呼ばれたのは、国際的言語学者のルイーズ(エイミー)だった。彼女は最愛の
娘を白血病のような病で失っていて、そのダメージを引きずっていたのだった。
相棒を組むのは物理学者のイアン(ジェレミー)。二人を中心とし、軍により結成された
異星人の言語解析チームは、「何のために地球に来たのか」と問うために、まったくゼロの
状態から、解析を始める。まるで言葉を覚えたての赤子に言葉を教えるように、また古代
文字を解析するように。

彼らの使う文字は「象形」「表意」「表音」ではなく、「表義」文字という種類らしい。
「未知との遭遇」のような音で表すのもまた面白いが、原題の私達の文字という概念では
推し量れない模様のようなものを、ルイーズとイアンは(相手が悪なのかどうなのかも
分からない中)果敢に解読に挑む。

意思が通じえない同志が、苦労して意思を通わせることが出来る状況は、穿ちすぎかも
しれないが、現在の地球人同士にも通じる重いテーゼではないか。「言語こそ武器」と
本作の異星人たちは教えているのだ。果たして、地球人はこのことを上手く使えて
いるのだろうか。
時間切れで、宇宙船への攻撃が始まる直前、異星人たちは地球を救いに来た、3000年後に
自分たちが助けてもらう状況が来るから、ということが分かり、(つまり意志の疎通が
出来た、ということ)一旦異星人たちは地球を離れていく。
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<ストーリー>
言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)は湖畔の家に独りで住み、
今はいない娘ハンナとの何気ない日常を時おり思い出す。ある日、地球各地に大きな
宇宙船のような物体が出現する。
ルイーズは、宇宙船から発せられる音や波動から彼らの言語を解明し、何らかの手段で
こちらのメッセージを彼らに伝えるよう、国家から協力を要請される。
タッフのなかには、物理学の見地から取り組むよう招集されたイアン(ジェレミー・
レナー)もいた。

ウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)に急かされながら、スタッフは少しずつ
相手との距離を縮めていく。ルイーズは忙しくなるほど、ハンナの思い出が色濃く蘇る。
しびれを切らした中国は核攻撃をしようとしていた。ルイーズは自分を指して「人類」と
いうところからコミュニケートの端緒を掴む。

彼らにはタコの足に似たものがあったため、彼らをヘプタポッドと呼ぶようにした。
彼らはその先端から図形を吐き出す。刻々と変化する図形の規則性を見出すと、それらを
コンピュータに打ち込んで会話ができるようになる。ルイーズとイアンはそれらの2体を
アボットとコステロと名付ける。
政府や軍はヘプタポッドが地球を攻めようとしているのではと相変わらず疑っていたが、
そんなとき、ヘプタポッドの時間の概念は自分たちと大きく違っていることに気付く。
彼らはアインシュタインの相対性理論の進化形の如く、驚くべき真実をルイーズたちに
伝える。それは、3000年後の地球も現在と同じ座標軸にあるというものだった。

ルイーズは彼らの言語を研究し理解するにつれ、自分の人生における経年も今までの
時間軸の概念を超越したものになることを知る。ルイーズは彼らからの影響に混乱するが、
過去が未来にやってくることが分かっても、愛することをやめないと確信する。
ついに最終決断を下した中国の行動を止めるため、ルイーズはイアンを使って思い切った
賭けに出る。彼女の行動は、地球を、そして彼女自身を救うことができるのか?
(Movie Walker)

<IMDb=★8.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 93%  Audience Score:82%>




by jazzyoba0083 | 2017-06-10 18:00 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マンチェスター・バイ・ザ・シー Manchester by the Sea」
2016 アメリカ Amazon Studios 137min.
監督・脚本:ケネス・ロナーガン
出演:ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラー、ルーカス・ヘッジス他
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            <2016年度アカデミー賞脚本賞・主演男優賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
タイトルのマンチェスター・バイ・ザ・シーというのはアメリカ・マサチューセッツ州に実際に
ある街の名前で、ボストンの北に位置し、人口5000人程度の小さい港町である。
この小さな港町を舞台にした、主人公リー・チャンドラー(ケイシー)とその周辺の人々の
ドラマである。大向うを唸らせるような事件が起こるのでもなし、殺人があるわけでもない。
小さな街のどうってことない一人の男の人生の一コマを切り出してドラマとしている。

なぜこの作品がオスカーの脚本賞を獲ったか、考えてみるとわかるのだが、全く何気ない
いわゆる「everyday people」に起きる小さな(個人にとっては大きな)出来事を体験しつつ
どう人生を送ったか、言い方は悪いかもしれないが、そこらにある「何の変哲もない」、ある
人生をドラマツルギーにまで高めた構成力、作劇力が評価されたのであろう。

ドラマツルギーと言えば、シェイクスピアの「お気に召すまま」に以下の台詞がある。

『全世界は劇場だ。すべての男女は演技者である。人々は出番と退場のときを持っている』

本作でも、リーという男の人生の一コマも切り出しで、観客に人生の有りようとは、こんな
ものもありますが、あなたはどう考えますか?と問うているように感じたのだった。

この作品でオスカーを獲ったケイシー、これまでも割りと覇気のないヘタレな役を演じる
ことが多かったと思うのだが、ここでも、精力に満ちた男ではない。善人なのだが、周りの
人に振り回され、自分というものを確立し得ない。しかし、そこにはかつて自分の過失から
起こした火事で二人の娘を死なせてしまったという大きなトラウマというかグリーフが
大きく影を落としていたのだった。そこへ持ってきての兄の急死。でもこの男、不思議と
悩みを柳に風とばかりに右から左へと受け流していく。強い意志をもっているわけはない
のだが。急死した兄の子高校生のパトリックの後見人をしぶしぶ引き受け、自分の人生を
なんとかしなくてはならないのに、いつも周囲のことに振り回されるというか、気遣って
しまう。(しかし最後まで見れば、彼なりに必死に考えていたことが理解できる)

こうした作品中のリーに対し、観客は知らず知らずに同化していくように思う。ああすれば
いいのに、こうすればいいのに、と思うだろう。これすなわち、主人公の人生を追体験して
いることにほかならない。そして、リーに対し、応援しているのではないか。私はそうだった。
二人の娘の死、兄の急逝、そしてその息子の後見人の役割と、その中で、なんとか自分の
暮らしを立て直さなくてはならないリーに対し、私たちは静かに応援をしたくなるのだ。
最後に、兄の息子に対し、自分なりに決断したこれからのことを説明するリーは、これまでの
リーとは違うな、と思わせたとき、私達はそこにカタルシスを感じることができるのであろう。

どこにでもいる人々のどこにでもある出来事が、観客を巻き込みつつどういう顛末になるかという
物語に仕立てた、そのドラマツルギーの見事さに尽きる。そしてケイシーの目線の動きを始めとした、
内面をしっかりと演技したその演技力を堪能するに尽きる。もちろん、イングランド地方の風景の
美しさ、切り取られる画の構成、音楽の選曲、登場人物たちのキャラクター設定など、
トータルでよくできた映画といえる。そこらにある話をここまでの映画に高める力、ケネス・
ローガン監督、次作が楽しみである。
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<ストーリー>
アメリカ・ボストン郊外でアパートの便利屋として働くリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)。
ある日、一本の電話で、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーにいる兄のジョー(カイル・
チャンドラー)が倒れたことを知る。リーは車を飛ばして病院に到着するが、ジョーは1時間前に息を
引き取っていた。冷たくなった兄の遺体を抱き締めお別れをしたリーは、医師や友人ジョージと共に
今後の相談をする。ジョーの16歳の息子で、リーの甥にあたるパトリック(ルーカス・ヘッジズ)にも
父親の死を知らせるため、ホッケーの練習をしている彼を迎えに行く。見知った街並みを横目に車を
走らせながら、リーの脳裏に仲間や家族と笑い合って過ごした日々や、美しい思い出の数々が浮かび
上がる。
リーは兄の遺言を聞くため、パトリックを連れて弁護士の元を訪れる。ジョーがパトリックの後見人に
リーを指名していたことを知ったリーは絶句する。弁護士は遺言の内容をリーが知らなかったことに
驚きつつ、この町に移り住んでほしいと告げる。弁護士の言葉でこの町で過ごした記憶が鮮明によみがえり、
リーは過去の悲劇と向き合わなくてはならなくなる。なぜリーはこの町を出ていったのか? なぜ誰にも
心を開かずに孤独に生きるのか? リーはこの町で、パトリックと共に新たな一歩を踏み出すことができ
るのだろうか?(Movie Walker)

<IMDb=★7.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:96% Audience Score:78%>






by jazzyoba0083 | 2017-06-10 15:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

モアナと伝説の海 Moana

●「モアナと伝説の海 Moana」
2016 アメリカ Walt Disney Pictures.107min.
監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ 
出演(声):アウリィ・クラヴァーリョ(モアナ)、ドゥエイン・ジョンソン(マウイ)
      レイチェル・ハウス(タラおばあちゃん)、ジェイマン・クレメント(タマトア)他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

回りの大人たちに結構評判が良かったのと、ハワイ好きなら観ておくべし、ということで
まさしく、先日のホノルルからの帰国便で観てみました。故に2D版。★は7.5。

ハワイの話ではなく、古代のポリネシア全体の話として描かれるので、昔、昔、と
始まるお話ですよ、というのが分かりやすい。モアナはハワイ語で「太平洋」を
意味している。「リトルマーメイド」「アラジン」を作ったコンビなので、破綻の
ないストーリー仕立て、そして冒険におけるハラハラ感やカタルシスの演出、そして
音楽と、どれを取り上げても一流であることは間違いない。喋る言葉や仕草が今日的
だが、それは今日のアニメなので、キャラクターの魅力を今日的に際立たせるためには
(味付けとして)必要だと理解できる。特に「マウイ」のキャラは非常に魅力的で
仕草やセリフも、おちゃめで力持ち。子どもにとっては観ていて気持ちのよいヒーロー
だろう。特に最後の登場の仕方は。

今回日本語字幕で観たのだが、吹き替えではどういうニュアンスであったのか、訳が
ちょっと気になる。基本的には子どもが観て分かるような仕立なので、単純で、勇気を
持って冒険に繰り出す、人間として「愛と優しさと勇気」という不朽の3大テーマを
ディズニーらしい作り方で提示するという筋立てである。

言わんとすることろが普遍的なので、大人が観ても十分に鑑賞に耐えうる、というか
より深い意味合いを汲み取れるという点では、大人が観たほうが良いんじゃないか
(ギャグの味わいも含め)と思えてしまう作品である。大人びたことをいうモアナと
なかなか会話のセンスが良いマウイとのやりとりは、大人の方が味わい深いんじゃ
なかろうか。
子供向けアニメなので、突っ込んでしまえば突っ込めるところもあるが、それを
言っちゃあディズニー・アニメにならんでしょ、ということで、気にしないのが礼儀。

キャラクターたちの動きもモーションキャプチャをアニメ化したのではないか、と思う
ほどリアルで自然だし、波の感じなどもCGというより写真を観ているようなリアルさを
感じる。重要な狂言回しとなる「頭のネジの切れた鶏」ヘイヘイがいい味を出す。
唯一、マウイのタトゥーがやたらにかっこいいので、これを真似たいという人が出てくると
ヤバイかもね。(ポリネシアやハワイには伝統的タトゥーをした男性を多く見るが)

時間も適当でエンドの想像も容易だが、モアナとマウイの冒険、なかなか楽しく
感動的だ。
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<ストーリー>
 「リトル・マーメイド」「アラジン」のジョン・マスカー&ロン・クレメンツ
監督が、海に選ばれた少女モアナを主人公に描く冒険ファンタジー・ミュージカル・
アニメーション。
海と運命的な絆で結ばれたヒロインが、世界を救うために伝説の英雄とともに
大海原を舞台に繰り広げる大冒険を描く。
声の出演はヒロインのモアナ役にオーディションで選ばれたハワイ出身の新星、
アウリイ・クラヴァーリョ、伝説の英雄マウイ役にドウェイン・ジョンソン。

 神秘的な伝説が息づく南海の楽園、モツゥヌイ島。16歳の少女モアナは、
幼い頃のある体験がきっかけで海と特別な絆で結ばれていた。島では外洋に出る
ことが固く禁じられていたが、好奇心旺盛なモアナは、いつか外の海を見て
みたいとの思いを募らせていた。
そんな中、島で不穏な出来事が起こり始める。それは、かつて半神半人の
マウイが命の女神テ・フィティの“心”を盗んだために生まれたという暗黒の闇が、
島にも迫っていることを示していた。
モアナは祖母タラに背中を押され、伝説の英雄マウイを見つけ出し、テ・フィティに
“心”を返すために大海原へと飛び出していくのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 96% Audience Score:89%>




by jazzyoba0083 | 2017-05-25 15:00 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

ムーンライト Moonlight

●「ムーンライト Moonlight」
2016 アメリカ A24,Pastel,Plan B Entertainment.111min.
監督・脚本:バリー・ジェンキンス 製作総指揮(共同):ブラッド・ピット
出演:トレヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、マハーシャラ・アリ他
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       <2016年度アカデミー賞作品、脚本、助演男優各賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

「ゲイの少年が、貧しいフロリダやアメリカ南部で苦労して成長してく話」ではない。
ゲイはこの映画の重要なファクターだが、決定的なものではない。
 この映画、とても雰囲気を持っていて、観ていて美しいし、クラッシック音楽を、
この灼熱の南部の貧民街に持ってきたのも良い、映像もおそらく大判のデジタル
カメラを使用したと思われ、貧民のエリアが描かれる割には美しい。そういう雰囲気の
良さをもっているので観ていて辛くなるようなものではないし、ゲイの場面はほとんど出て
こない。暴力的に苛烈であるわけでもない。ゆえに、どうだろう、この映画を観た人の
多くは「この映画、何を言いたいのだろう」と思うのではないだろうか。

ジャンキー漬けの母親に育てられ(育児は放棄状態ではあったが)た、いじめられっ子の
ゲイの少年が、なにがどうなったのか、大人になり一番自分が唾棄していた大人、ヤクの
売人になっていた。この一人の男、シャローンの半生を淡々と南部の光の中で綴る。
そうした暮らしや人々との交流の中から、観ている人は、エピソード毎に人生の実相に
ついて考えさせられるだろう。

全体はシャローンの少年時代(ここで彼をサポートするヤクの売人の親分が、オスカー
で助演男優賞を獲ったマハーシャラ・アリ。彼の存在感はデカイ。ヤクの売人を
しながら、自分のしている仕事を肯定しているフシがない。彼のインパクトは成長する
シャローンに大きく影響したのだった)
しかし、シャローンの母は売春でカネを稼ぎ、リトルと呼ばれるシャローンとまとも
に向き合わず、荒れた生活をしているのだが、彼女にヤクを売っているのもフアン
(アリ)だったりする。

やがて高校生になると、更にイジメは苛烈になり、ついに同級生の悪を椅子で殴って
刑務所送りとなる。青春時代に同級生で自分をブラックと呼ぶケヴィンとゲイの間と
なる。でもほんの一瞬。すでにフアンは亡くなっていた。

刑務所から出てきたシャローンは、子供の頃の面影は何処へやら。口中金歯の
入れ歯を付けて、どこからみても立派なヤクの売人になっていた。シャローンは
同じく刑務所に入っていた高校生時代の友人で、今は保護観察身分ながらコックを
しているケヴィンに会いに行く。彼には離婚はしたが、小さい子供がいる。
彼が店長をするダイナーに出かけ、再会。ケヴィンの、自分の暮らしとは違う
人生に、思うところは有った。シャローンはその晩ケヴィンのところに泊めてもらう。

その後、シャローンは施設に入っている母親に会いに行く。母親は幼い頃のことを
謝るのだがシャローンには今さらそれをどうこう言うつもりもない。

ラストは海辺で遊ぶ黒人の子供ら。そして小さい頃のシャローンがムーンライトに
照らされるところで終わる。

バリー・ジェンキンス監督はマイアミの危ない当たりに住んでいたことがあり、この
話、抒情詩のような一編は監督の実体験に基いているらしい。

貧困をベースにした、ゲイの(ハードではない)成分の入った男の子が、夢も
希望もないような世界で、何を思って行きてきたのか。自分の居所はここにしかない
男たち。結婚して家庭を持っている友人。死にそうに働くけど稼ぎは少ない、けどもう
あの世界には戻りたくないという。すさんだ暮らしはしているが、ゲイという心情は
どこかシャローンに人間らしさを取り戻す(実際にゲイと付き合っているわけではない
のだが)心根であったにちがいない。

貧困、育児放棄、イジメ、ゲイ、麻薬取引、暴力、刑務所、人生に対するあらゆる
マイナーなファクターの中で育って来たシャローンはどこへいくのだろうか、いや
どこへも行けないのかもしれない。

本作を観て何をどう考えるのかは、観客に任されている。

最後に技術的なカット割りについて。全体的にアングルが低めだと思った。幼少期を
描く時も、上からのショットより、目線と平行して画角を設定し、安定を引き出すと
共に、観ている人に共感を生みやすくしている感覚がした。またラストに近く、
シャーローンがケヴィンとレストランで会う時の呼び鈴のカットアウトの音の使い方も
とても印象的だった。カメラが基本的に終始優しいという印象も得られた。(青年に
なってヤクの売人になったシャローンの目つきも、優しい)だからこそ観ている人に
いろいろなんことを考えさせてくれるのだろう。シャローンは幸せを掴めるのだろうか、と。

名古屋ではシネコンでは上映されなかった作品だ。オスカーで作品賞を獲っていると
いうのに。「地味」「分かりづらい」という点が敬遠されたのだろう。
好悪は別れると思うけど、私には、みずみずしく心が優しくなるような作品であった。
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<ストーリー>
シャロン(アレックス・ヒバート)は、学校で“リトル”というあだ名で苛められて
いる内気な少年。ある日、いつものようにいじめっ子たちに追われていたところを、
麻薬ディーラーのフアン(マハーシャラ・アリ)に助けられる。
何も話さないシャロンを、恋人のテレサ(ジャネール・モネイ)の元に連れ帰る
フアン。その後も何かとシャロンを気にかけるようになり、やがてシャロンも心を
開いていく。

ある日、海で“自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな”と生き方を教えて
くれたフアンを、父親のように感じ始める。家に帰っても行き場のないシャロンに
とって、フアンと男友達のケヴィンだけが心を許せる唯一の“友達”だった。

やがて高校に進学したシャロン(ジャハール・ジェローム)だったが、相変わらず
学校で苛められていた。母親のポーラ(ナオミ・ハリス)は麻薬に溺れ、酩酊状態の
日が続く。
自宅に居場所を失くしたシャロンは、フアンとテレサの家へ向かう。“うちのルールは
愛と自信を持つこと”と、変わらずにシャロンを迎えるテレサ。ある日、同級生に
罵られ、大きなショックを受けたシャロンが夜の浜辺に向かったところ、ケヴィンが
現れる。シャロンは、密かにケヴィンに惹かれていた。月明かりが輝く夜、2人は
初めてお互いの心に触れることに……。

しかし翌日、学校である事件が起きてしまう。その事件をきっかけに、シャロン
(トレヴァンテ・ローズ)は大きく変わっていた。高校の時と違って体を鍛え上げた
彼は、弱い自分から脱却して心身に鎧を纏っていた。
ある夜、突然ケヴィン(アンドレ・ホーランド)から連絡が入る。料理人として
ダイナーで働いていたケヴィンは、シャロンに似た客がかけたある曲を耳にして
シャロンを思い出し、連絡してきたという。あの頃のすべてを忘れようとしていた
シャロンは、突然の電話に動揺を隠せない。翌日、シャロンは複雑な想いを胸に、
ケヴィンと再会するが……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:98% AudienceScore:80%>



by jazzyoba0083 | 2017-05-23 14:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マジカル・ガール Magical Girl」
2014 スペイン Aqui y Alli Films and more. 127min.
監督・脚本:カルロス・ベルムト
出演:バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、ホセ・サクリスタン、ルシア・ポリャン他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想:観た人でないと理解できない内容かと思いますので、ぜひ鑑賞後にお読みください>
驚いた。面白い。funnyという意味じゃなく、もっと衝撃的な意味で。かつて、コーエン兄弟の
「ノーカントリー」を見た時の衝撃に似ているかもしれない。ストーリーは全然違うのだが、
「理屈がない」という点において、恐怖を覚えるような感覚。「理屈」はあるにはあるのだが、
「容赦のなさ」「有無のない」バイオレンスの、予見できない恐怖、といえるのだろうか。

本作、欧州を中心に多くの賞を獲ったのだが、当時、日本で話題になりましたっけ?日本の
アニメが主題に大きく絡んでいたり、長山洋子の歌が使われていたりで、日本との関係も
大きかったのに。少なくとも私は寡聞にして知らなかった。スペインの映画はWOWOWでも
ないと、なかなか見られないし。(←言い訳ですw)

白血病の娘を持つ、失業中の元教師、精神科医の夫人として精神的に不安定な生活をしている
バルバラという若い女性。そして、かつてバルバラを小学校のときに担任だったことがある
刑務所帰りのこちらも元教師。大きくいうと、その3つのバラバラだった運命がやがて交差し、
予測不能な衝撃のラストを迎える。先を読めそうで読めない面白さ、それが現実となったときの
衝撃、これが本作の面白味だろう。「え??!」と思うエンディング。そこには正義とか理性とかは
存在しない。「どうです?びっくりでしょ?」という監督の声が聞こえてきそうだ。

「びっくり」要素を加味するものとして、物語のコアとなるくらいの大事なプロットを省略し
説明していないので、観ているほうは想像するしかないわけ。で、その想像の世界に恐怖が
潜んでいるという・・・。
説明なし、の一番大きいヤツは、冒頭小学校の教室で出てくる教師ダミアンとバルバラの
その後の関係。途中、脅迫されたバルバラは、ジグソーパズルなどやらかしているダミアンに
金を貸してくれ、と頼むシーンがあるが、成長してからのダミアンとバルバラの間には何か
あったのだろう。それが刑務所に行く結果に繋がっているのかもしれない、という点。
また、バルバラが瀕死の重傷を負う「とかげの部屋」とは何か。中で何が行われていたのか、
これも(まあ、セックスがらみのサドの世界なんだろうけど)説明はない。(というか伏線は
ある)

それにしても、最後の最後、白血病の娘アリシア(ダミアンにちゃんと理解されぬまま殺される
ルイスの一人娘。ルイスは彼女が日本のアニメの大ファンであるんで、高いお金を出して、
アニメのヒロインのドレスを買いたいと思うのだが、その日暮らしのルイスは、金策に尽きて
悪いことを考えたのだ。それがバルバラとの浮気をバラすぞ、と彼女を脅迫し現金をせびるというもの。
なぜルイスがバルバラと知り合い一夜を共にしたかというと、金が欲しいルイスが宝石店の
ショーウィンドウを割ろうと石を構えた時、そこのビルからゲロが落ちてきた、から。なぜ
ゲロが落ちてきたかというと、精神的に病んでいた(これダミアンに関係あるかも)バルバラが
自殺?しようと大量の睡眠薬だか安定剤を飲んだものの、気持ち悪くなり、窓からゲロを
吐いた、から。ゲロをかけてしまったルイスを家に入れ、洗濯し・・・といううちに。
ルイスは携帯で房事を録音していたんだな。ゲスの極み!=長くなりました)、そのアリシアまで
ダミアンは殺しちゃうんだぞ。ルイスを酒場で射殺して、観ていた客と店長も殺したうえでだ。
何がそうまでして、ダミアンをダークサイドに引きずり込んだのか。ダミアンとバルバラとの間に
何があったというのか。バルバラのせいで刑務所にいったのなら、瀕死で自分の家の前で倒れていた
バルバラの心は?そして彼女のために徹底的な復讐を完結したダミアンは、バルバラを過去のこと
から恨みこそすれ、復讐に手を貸すことはないと思うのだが。いや、そこまでバルバラは
ダミアンの心に食い込んでいたのか。ならなぜ最初に金を貸さなかったのか。最後のワンピースで
完成しえなかったダミアンの大きなジグソーパズルは何を語るのか。

一切の不思議と謎を内包したままエンドロールへとなだれ込む。パパが揃えてくれたドレスとバトンを
持ち、帰ってきたパパを驚かそうとしていた不治の病の少女を射殺するなんざ、許しちゃおけないのだが、
なぜか、観ている私は暴力肯定では全くないものの、なぜか、カタルシスさえ覚えてしまったのだった。
不思議な映画だった。
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<ストーリー>
失業中の父親が、病気で余命わずかな娘の望みを叶えてやろうとしたことから、出会うはずの

なかった人々が思わぬ運命に巻き込まれてゆく。ブラックユーモアに包まれた独創的なストーリーを、

アニメや歌謡曲などの日本テイストが彩る。

監督は、人気漫画『ドラゴンボール』を再解釈したコミックを出版するなど、日本のサブカルに

精通したカルロス・ベルムト。初監督となる本作で、サン・セバスチャン国際映画祭グランプリと

監督賞を受賞した。出演は「赤いブーツの女」のホセ・サクリスタン、「私が、生きる肌」の

バルバラ・レニー、「世界で一番醜い女」のルイス・ベルメホ、本作でスクリーンデビューを

飾ったルシア・ポジャン。


 12歳の少女アリシア(ルシア・ポジャン)は、白血病で余命わずか。そんな彼女の願いは、

大好きな日本のアニメ『魔法少女ユキコ』のコスチュームを着て踊ること。文学の教師だった父

ルイス(ルイス・ベルメホ)は失業中にもかかわらず、娘の最後の願いをかなえてやろうと、その

コスチュームを手に入れようとする。

ところが調べてみると、それは7千ユーロもする高額商品だった。金策に奔走したものの、

失業中の身ではいかんともしがたく、やむなく高級宝飾店への強盗を決意。大きな石で店の窓を

叩き割ろうとした、まさにその瞬間。空からおう吐物が肩に降ってきた。

それは、精神科医の夫と暮らしながらも心に闇を抱えた女性バルバラ(バルバラ・レニー)が、

大量の薬を酒で流し込んだ結果、気分が悪くなって窓から吐き出したものだった。逃げようとする

ルイスを呼び止め、自宅に招き入れるバルバラ。汚れた服を洗濯すると、バルバラはルイスに抱いて

くれるよう求め、2人は関係を持つ。


翌日、ルイスはそのことをネタに、7千ユーロを要求してバルバラを脅迫。やむなくバルバラは、

裏の仕事をしているかつての仲間、アダ(エリザベト・ヘラベルト)の元を訪れると、豪邸で暮らす

車椅子の男の暴行に耐え、7千ユーロを手に入れる。

その金を受け取り、アリシアにコスチュームを買ってやるルイス。ところが、魔法のステッキが足り

ないことに気付き、再びバルバラを脅迫。やむなく、豪邸を再訪するバルバラ。心身ともに傷を負った

バルバラは、自分と過去に因縁を持つ刑務所から出たばかりの元教師ダミアン(ホセ・サクリスタン)に

救いを求める。バルバラに会うことを恐れていたダミアンだったが、自分を“守護天使”と呼ぶ彼女の

変わり果てた姿に心を決め、ルイスの尾行を開始。出会うはずのなかったアリシア、ルイス、バルバラ、

ダミアン。やがて彼らの運命が交錯し、予想もしなかった悲劇へ向かってゆく……。


<IMDb=★7.3>

<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100% Audience Score:81%>




by jazzyoba0083 | 2017-05-04 23:10 | 洋画=ま行 | Comments(0)

●「ミッシング・サン Meadowland」
2015 アメリカ Bron Studios,Itaca Films.94min.
監督・撮影:リード・モラーノ
出演:オリヴィア・ワイルド、ルーク・ウィルソン、ジョバンニ・リビシ、エリザベス・モス、タイ・シンプキンス他
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<評価:★★★★☆☆☆☆☆☆☆>
<感想>

IMDbの評価は低かったが、「突然消えた子供に、夫婦は・・」というサマリーに釣られ
観てみた。いや、辛かった。「辛い人生」って意味じゃなく、観ているのがシンドいと
いう意味で。何を言いたいのか分からなかった。子供を失った夫婦の悲しみを表現しようと
しているのか?それだったらもう少し細部にコダワリがほしい所だ。

ドライブの途中で寄ったガソリンスタンドのトイレからこつ然と消えた一人息子ジェシー。
何処へ言ったのか、誰かが誘拐したのか、事故か、事件か。全く手がかりが無いまま、ラスト
では、警察から当時着ていたジェシーの服が証拠として示される。まあ、だれかに拉致され
殺されたんだろうな。ま、そういう平仄を合わせるに際し、ちらりと決定的なものを見せる、と
いう手法も分からない訳ではない。

では、子供を失った教師サラはどうか。精神安定剤を服用しながらも酒を飲む、学校にいるアスペルガー
の子どもアダムにジェシーの面影を重ね、彼の父親と会い、セックスに至る。何、この母の心情。
つまり壊れた、ってこと?まだ証拠のシャツの事を聞く前だよ。壊れたらそれでいいじゃない?
そして、アスペルガーのアダムへの対応の始末は?像の涙で終わりかい!って感じ。あのあたりは
情緒に流され過ぎではないか。警察官のオヤジの立場も今ひとつはっきりしない。
この手の神隠し映画はこれまでもいろいろあったけど、話が抽象?過ぎて分かりづらかった。
Rottentomatoesのtomatometerの100%は、壊れているんじゃないか?
日本劇場未公開作品。
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<ストーリー>
TVドラマ「The O.C.」で注目されたワイルドが、消えた息子を案じるあまり精神を崩壊させて
いく母親役を熱演したサスペンス。共演は「キューティ・ブロンド」シリーズのL・ウィルソン、
「テッド」のG・リビッシ。加えて「ジュラシック・ワールド」の子役T・シンプキンスが孤独な
少年役で印象深い好演を見せた。
サスペンスより、むしろ最愛の息子を突然奪われた両親の苦悩を描く人間ドラマに重点が置かれた
演出が光る。「最高の人生のはじめ方」などの撮影を手掛けたR・モラーノが監督デビューを飾った。
(WOWOW)

<IMDb=★5.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100%  Audience Score:57%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=357398#1こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-04-07 22:40 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マネーモンスター Money Monster」
2016 アメリカ TriStar Pictures.(a sony company) 95min.
監督:ジョディ・フォスター
出演:ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコンネル、ドミニク・ウェスト他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

面白かったけど、どうも底の浅さが気になる。いや、そういう映画じゃなく、活劇だから、と
いう向きには、上映時間も短いし、楽しいだろう。が、ウォールストリートのアメリカっぽい
お金のやり取りを描くものとしては、主張が弱いなと感じた。それとジュリア・ロバーツ、
テレビ局のディレクターなのだが、映画全体への取り込み方も含め、使い方が勿体無いと
思った。

現在の株の取引は、大型高速コンピュータを使いアルゴリズムを利用し、1秒以下の
差異で利益を得るという、素人筋ではなかなか対応出来ないシステムになっていることは
有名な話だし、それが暴走すると、企業の成績や地政学を反映せず、本来株式相場が持つ、
資本主義の有意な側面を崩してしまうということも発生し、証券取引等委員会が制限に
乗り出した、というニュースも記憶に新しい。
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そういう背景があり、FNNというテレビ局(おそらくfinancialNewsNetworkかなんかの
頭文字だろう)の株価や為替をネタにした人気バラエティ番組「マネーモンスター」の司会が
リー・ゲイツ(クルーニー)。その番組の辣腕ディレクター、パティにジュリア・ロバーツと
いう配置。
ある日の番組に宅配を装った若い男がスタジオに闖入、生放送中のリーに銃を突きつけ、しかも爆弾
ベストを着せて、デッドマンスイッチという押し続けたスイッチが切れると爆発するというボタンを
手にしている。彼は、この番組で上昇間違いない、銀行より安全有利と言われたアイビス社の株を
母の遺産6万ドル全額をぶち込んだ。これが暴落。アイビス社全体で8億ドルの損失を出しだのだった。
当日はアイビス社の広報責任者ダイアンに、「バグ」だと主張するトラブルの真相を聞き出そうと
中継を結んでいたところだったのだ。

乱入者カイルは、単純に頭に来たんだろうな。富めるものは常に富み、搾取されるのは常に貧乏人だと。
8億ドルを損失者全員に補償しろ、と要求する。生放送中の異常な事件に世間も警察も沸騰。
カイルは生きて出る気はないとは言うのだが。やがて妊娠した恋人も連れてこられて説得に当たる
のだが、恋人はカイルを馬鹿呼ばわりする一方で役に立たない。警察はスタジオ天井に侵入し、
犯人が爆弾のスイッチを入れても爆発しないよう、リーが着せられているベストに付いた受信
装置を狙い撃ちにする計画に出た。当然リーも怪我をする。それでも多くが救われるというわけだ。

そうこうする裏側では、アイビス社のCEOキャンビーの不正が次第にあぶり出されてくる。
アルゴリズムの設計者の言葉では、一社に集中して買うことは機械はしない、とかアルゴリズムは
嘘がつけないなど。「人の指紋があるのさ」。キャンビーの不正が確定的になる。
そこで、リーとアイビス社の広報ダイアンのアイデアで局の近くの連邦会議堂でキャンビーが会見を
開くことになる。その場まで銃と爆弾ベストで移動するリーとカイル。沿道には見物客が多数だ。
やがて、会議堂でキャンビーと相対したリーとカイル、爆弾ベストをリーからキャンビーに着せ替え
させ、キャンビーに真相を迫る。局に刻々と入るキャンビーの不正情報は追いかけてきた中継車の中から
送出されていく。彼の不正映像の数々を背景に、キャンビーを追い詰め、カイルはついにキャンビーの
口から「悪かった」という謝罪の言葉を引き出すことに成功した。しかし、回りはスナイパーだらけ。

実はカイルは全財産を失い頭に来ただけで、爆弾ベストも粘土製であった。途中からキャンビーを
責める役目はリーへと変わっていく。キャンビーが謝罪を口にし、カイルは武器を捨てようとした
瞬間、スナイパーに撃たれ絶命してしまう。恐らくテレビでカイルを応援していた大衆はがっかり
したことだろう。
そして、リーとパティは「次は何をネタにしようか」と語り合っている。
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最期のシーン、テレビ局関係者の軽いノリを表現したものだろうが、カイル射殺のシーンのリーの
心情とは一致しないような違和感を覚えた。ああいう終わり方で良かったのか?と。
スピード感もあり、次にどうなるのか、ハラハラもいい感じなのだが、高速取引を隠れ蓑にした
CEOの詐欺的投資行為に原因を求めた根本とその回りが弱い感じだった。ジュリア・ロバーツの
考え方が伝わってこない、そしてアイビス社広報ダイアンが最初からいい人で登場するのが勿体無い。
映像の構成、流れは良い。
全体としてそこそこ面白い映画ではあります。

<IMDb=★6.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:57% Audience Score:51%>


この映画の詳細はhttp://movie.walkerplus.com/mv60044/こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-04-05 23:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)