カテゴリ:洋画=ま行( 138 )

●「マン・オン・ワイヤー Man on Wire」
2008 イギリス Discovery Films,BBC Storyville,UK Film Council.95min.
監督:ジェームズ・マーシュ
出演:フィリップ・プティ他
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         <2008年度アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
1974年8月7日朝、一人の男が完成間近の今は無きワールドトレードセンターの2つのビルの間に
渡したロープを渡る光景が見られた。25歳の誕生日を数日後に控えた若きフランス人、フィリップ・プティ
である。この男、45分間に渡りロープ上で踊り、ジャグリングをし、膝をつき、横たわって見せた。

本作はプティの「偉業」を捉えたドキュメンタリーである。このイベントに付いては後年、ロバート・
ゼメキスの手で3D映画化された。WOWOWでは映画化版を放映するに際して、本ドキュメンタリーも
放映しれた。こういうのがWOWOWのいいところだ。これを観ると「ザ・ウォーク」がいかに
事実に忠実に作られていたかを確認出来て、その点でも良かった。一つだけ、再現映像とドキュメント
フィルムの両方の出来が良かったので、再現ドラマなのか記録映像なのか分かり辛かった。

本作に長所は、世紀の大イベントに対し、当事者を含め「共犯者」たちの証言を加え、さらに
再現ドラマも加えるという多角さの演出にあると思う。さらに全部で10人にもなろうという仲間がいなくては
なし得なかった「狂気」の驚くべき裏側がリアルに描かれる点もあろう。
加えて、400メートル上空での命綱なしの綱渡りという、ありえない事態が映画の緊張感を加速させている
という「ゲタ」はあると感じたが。
いずれにせよ、プティという、我々が及びもつかない「特殊能力」を授かった男の、文字通り
「綱渡り」な人生を綴っていく。と言っても、24歳になるまでに彼はパリのノートルダム寺院、
シドニーのハーバーブリッジでも信じられないような綱渡りを決行しているのだった。彼はパリの歯科医の
待合室にあった新聞で、6年後に完成するWTCの存在を知り、もう渡るしかない!と確信する。そこから周到な
準備が始まったのだ。まだ十代であったことを思う時、プティの狂気のモノ凄さが分かるような気がする。
WTCの場面は写真しかないが、ノートルダムや彼の綱渡りの光景はちゃんと動画で残っていて、その
リアリティにも圧倒される。

プティの思い込んだら命がけの行動力は、常人には想像が難しい。ただただ、凄い!と言って見守るのみだ。
何かに憑かれたようにとことん取り組んでみる、そういう事が人生であっただろうか、そんなことに思いを
致してしまう。彼自身「人生は綱渡り(タイトロープ)だ。」と発言しているが、分かるように、このセリフは
ダブルミーニングになっている。

今はもうないWTCへのトラウマが軽くなる2008年頃まで、原作となる本の出版をプティは待っていたので
あろうか。そして逮捕されたプティを待っていた裁判所の粋な対応とビルの大人な対応を思う時、今はもう
コンプライアンスだのガバナンスだのと称してこういう「誰も傷つかない美しい犯罪」に対する懐の深い対応は
望むべくもないのだろうか。
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<ストーリー>
1974年8月7日、24歳のフランス人フィリップ・プティは、ワールド・トレード・センターのツインタワーの
間に張られた地上411mの綱で綱渡りを披露する。6年前、ツインタワー建設計画の雑誌記事を目にした彼は、
1971年6月、ジャン=ルイ・ブロンデューとジャン=フランソワ・ヘッケルに支えられ、パリのノートルダム
大聖堂の2つの尖塔の間の綱渡りを行う。また1973年、オーストラリアの友人マーク・ルイの助けで、シドニーの
ハーバー・ブリッジ北側の鉄塔で、2度目の違法綱渡りを敢行する。

1974年1月、ニューヨークにやってきたフィリップは、ジム・ムーアの協力を得て、何度もツインタワーを訪れる。
ジャン=ルイ、マーク、恋人アニーが彼の仲間だった。計画の日、ワールド・トレード・センターの屋上は工事中
だった。フィリップとジャン=フランソワは南タワーに、ジャン=ルイとアルバートは北タワーに、工事作業員と
ビジネスマンに変装して入る。南タワーの82階にある保険会社で働くバリー・グリーンハウスが装置の運搬を許可し、
さらに、エレベーター作業員のミスで104階まで上がることができた。
フィリップたちは道具を隠し、自分たちも身を潜めた。闇夜の中、作業が始まる。ジャン=ルイはフィリップの
合図で綱をつけた矢を放つ。しかし重い鉄のワイヤーが、固定される前に落ちてしまう。

ジャン=ルイとアルバートは素手でケーブルを引っ張るが、アルバートが途中で諦めて去る。ジャン=ルイの尽力で
何とか綱を固定することはできたが、理想的ではなかった。それでもフィリップは綱の上に足を踏み出す。
そして45分間8往復の綱渡りの後、フィリップは不法侵入と治安紊乱行為の罪で逮捕される。
しかしその後の裁判で、セントラルパークで子供たちにジャグリングを見せるという条件で容疑は撤回される。
港湾管理委員会はフィリップに、永遠に有効と記されたワールド・トレード・センター展望デッキへのVIP
許可証を贈呈する。(Movie Walker)

<IMDB=★7.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100% Audience Score:87%>

この映画の詳細はhttp://movie.walkerplus.com/mv38139/こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-03-04 23:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「真夜中のピアニスト De battre mon coeur s'est arrêté」
2005 フランス Why Not Productions and more.108min.
監督・(共同)脚本:ジャック・オーディアール
出演:ロマン・デュリス、ニエル・アレストリュプ、オーレ・アッティカ、エマニュエル・ドォヴォス、リン・ダン・ファン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

この年の「セザール賞」作品、監督など主要8部門で賞を獲得した作品。主演男優賞は外れてしまい、ロマン君、
せっかくピアノを一生懸命弾いていたのに残念だった。もともとはアメリカ映画でハーヴェイ・カイテル主演の
「マッドフィンガー」をリメイクした形となっている。監督・脚本はフランスでは既に定評のある人のようだが
私は良くは知らない。手持ちの荒々しいカメラと、後半ピアノ演奏会などで使われる脚を使った安定した画が
対象的だ。
個人的に難点だったのは、前半しばらく、主人公が何の商売をしているのか分からなかった点。予備知識無しで
観たので、不動産ブローカーであることが分かったのは30分位経過してからであろうか。それは置くとしても
主人公がピアノを弾き始めてから、ストーリーが動く出す。それまでがもどかしかった。

ピアニストであった今は亡き母親の影響でかつてピアノを弾いていたトム(ロマン)。彼は父の手伝いもあり、
仲間と結構危ない不動産ブローカーをしていた。そんな日々を送る中、荒廃する心を開放しようとしたのだろう、
昔習ったピアノに10年振りで手を付けて見た。
ある日かつての母のコンサートマネージャーからピアノのオーディションを受けることを勧められ、ピアニストを
目指し本格的にピアノを習う決意をする。いくつかの学校に断わられ、友人の紹介で中国人ピアニストの
ミャオリンの個人レッスンを受けることになる。ミャオリンはフランス語を話さない・・・。

片や荒んだ生活が続き、辛い心の逃げ口として、また別の自分になりたいという希望をもち真夜中にピアノに
向かうトム。だが、短気な彼は言葉の分からないミャオリンに当たったり、なかなか上手くならない自分に
自暴自棄になったり。
暴力的な商売とピアノレッスンという非常に対照的な事象を合わせ、主人公トムの揺れる心が手持ちのカメラで
表現されていく。
いよいよオーディションの日がやってきた。しかし当日も仲間から商売に連れて行かれ、心が乱れてしまう。

<ここからネタばれです>

ラストに向かうオーディションから二年後の生活もある意味衝撃的だった。結局ピアニストにはなれなかった
トムはミャオリンのステージマネージャーになっていた。殺された父の復讐を経て、血のついた服でミャオリンの
コンサート会場に座ったトム、演奏を聴いて笑顔になるのだった。結局、トムは別の形で自分を見つけた、という
ことなのだろうか。

ハーヴェイ・カイテルのオリジナルは未見であるが、本作は脚本がとても良かったし、映像が荒々しいトムの心や
商売を活写していた。全体としてみれば異質なフィルム・ノワールではあるが、独特の味わいを持っている。
セザール賞は逃したが、トムを演じたロマン・デュリス、悪くなかったと思う。
ジャック・オーディアールは、本作から10年後の2015年、「ディーパンの闘い」で、カンヌ国際映画祭パルム・
ドールを獲得することになる。
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<ストーリー・結末まで書いてあります>
28歳のトム(ロマン・デュリス)は、友人ファブリス(ジョナサン・ザッカイ)、サミ(ジル・コーエン)と
組んで、不法住民を暴力で追い出し物件を転がす不動産ブローカー。
同業の父ロベール(ニール・アルストラップ)からは再婚する予定の若い恋人クリス(エマニュエル・ドゥヴォス)を
紹介されるが、トムは素直に認められない。

そんなある晩、亡き母のコンサート・マネージャーに再会したトムは、オーディションの機会を与えられ、
ピアニストへの道を薦められる。10年ぶりでピアノに向かったトムは、忘れていた音楽への愛と情熱を再認識した。
そしていくつかの音楽学校を断られたあと、中国人ピアニストのミャオリン(リン・ダン・ファン)の元にレッスンに
通うことになる。

ファブリスからは浮気のアリバイ工作を頼まれ、父からは取り立てを催促され、現実に嫌気が差すトムは、どんどん
ピアノのレッスンにのめり込む。さらにはファブリスの妻(オーレ・アッティカ)と関係を持ってしまうトム。
そして父から金を騙し取ったというロシア人のマフィア、ミンスコフ(アントン・ヤコフレフ)の若い愛人(メラニー・
ロラン)とも関係を持つ。
オーディション当日には物件の裏取引に連れ出され、当日は心が乱れてうまくピアノが弾けない。思わず会場を飛び
出したトムは、無残に頭を撃ち抜かれた父の姿を見つけるのだった。

2年後、ミャオリンのコンサートに付き添うトムの姿。彼は父を殺したミンスコフを発見し、追いかけて暴力を加える
ものの、最後のとどめは刺さなかった。そしてコンサート会場の席に着き、ミャオリンのピアノ演奏を堪能するのだった。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:85% Audience Score:84%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=323086#1こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-02-18 23:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

マリアンヌ Allied

●「マリアンヌ Allied」
2016 アメリカ GK Films,Paramount Pictures and more.124min.
監督・(共同)製作:ロバート・ゼメキス
出演:ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス、サイモン・マクバーニー、リジー・キャプラン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

ゼメキスファンとして、正直な感想を言えば、「ゼメキスらしく、もうひとヒネリ、ふたヒネリ欲しかった!」。
大きなスケールの悲恋モノで、結末もハッピーエンドではない。それはいいとしても、筋書きがちょっと
単調で、ラストも想像できてしまう。あの「フォレスト・ガンプ/一期一会」「キャスト・アウェイ」
もっと言えば「バックトゥーザフューチャー」のゼメキスだから、期待も大きかったのだ。良い配役も得て
いるのになあ。特にマリオンの演技は、そりゃあ確かなものだ。ああいうシチュエーションで揺れる感情を
表現するのは難しいと思うのだ。彼女は演技派だなあと確認した。そこは良かった。ブラピは普通だ。

あと良い点を上げると、オスカーの衣装デザイン賞のノミニーにもなっている美術全般の仕上がりの良さ。
衣装・化粧から小道具、ロケーション美術、飛行機などの大道具と関連したCG、どれも一級品で
素晴らしかった。そのあたりはゼメキスの作品はこれまでも抜かりが無かった。結局、脚本が弱いんだろう。
映画は「カサブランカ」編と「ロンドン」編と大きく2つに別れる。激しいドンパチはカサブランカ編のみで
(空襲を除く)あとの銃声は、ラストに悲劇的に響くもののみだ。故にロンドン編は行き詰まる心理劇となる。

上官から「お前の妻はドイツのスパイだ。証拠も有る」と言われちゃ、普通じゃいられません。ダメだと
言われても、いろいろと検証してみたくなる気持ちも分かるというもの。そして、本当の姿を知った時の
夫(ブラピ)の行動も、そういうふうになるわなあ、というもの。そして悲劇のラスト。
日本のドラマや映画もそうだけど、急いで逃げたい時に限り、クルマや飛行機のエンジンはかからないものだ。
 
       <ここから先は結末まで触れていますので、ご注意ください>

ブラピ演じるマックス・バタンはカナダ軍から派遣されたイギリス軍特殊作戦執行部の中佐。(結構エラい)
彼はパラシュートでモロッコに入り、カサブランカで「スズメバチの柄のドレスの女がお前の妻となる」
との指示で、マリオン演じるフランス人レジスタンス、マリアンヌ・ボーセジュールという女性と合流、
夫婦を装い、現地での信頼を獲得したのち、在モロッコドイツ大使と大使館付武官を一気に射殺するという
作戦に臨む。
作戦は成功し、2人は同じミッションを成し遂げたこともあり、急速に接近。ホントに結婚することに
なる。そして内勤となったマックスはロンドンに帰り、穏やかな日々を送ることになる。しかし、
ある日、上官から「お前の妻はドイツのスパイだ。マリアンヌ・ボーセジュールは既に死んでいる。
他人になりすましているのだ。正体が明らかになれば、お前が殺せ」と言われる。
明日、ニセの暗号をお前に電話するから、メモをしておけ、それがドイツに筒抜けになるのか
分かるようになっているから、そうなれば殺せ、お前も一枚噛んでいれば、「大逆罪」で死刑だぞ、と
宣告される。こえー!
その頃、夫妻には空襲下で生まれた女児がいた。

「え、マリアンヌがスパイ!?そんなことはありえない」とバタンは妻の写真を持って、彼女を
知っていると言われる兵士やレジスタンスに会いに出かける。そこで知った事実でバタン本人が
まだ知らなかったのは、マリアンヌが上手くピアノを弾いた、ということだ、しかも「ラ・マルセイエーズ」を。
揺れ動く心を押さえてバタンは彼女をパブに連れていき、ピアノの前に座らせ、「ラ・マルセイエーズ」を
弾いてくれ、と迫るのだった・・・。彼女の口から出た答えは・・・・。

他人の名前とはいえ、ボーセジュールとは。フランス語で書くとBeau ces jours と聞こえる。
(ホントは違う綴だけど)和訳すると、美しいこれらの日々、というほどの意味だが、マリアンヌの
魂の声のように思えた。彼女がロンドンで過ごした夫と娘を愛した日々に偽りは無かった、という
ことだ。(スパイはしちゃったけど)

冒頭でも書いたように、「ケレンの神様」のようなゼメキスにしてみると、非常にストレートな作劇で
いい映画なんだけど、あれえ、という感が無きにしもあらずなのだ。妻の疑惑がもう一段濃く提示される
ようなシークエンスが入らなかっただろうか。ちなみに原作の「Allied」(アライド)は、連合した、
同様の、などの意味をもつ割りと味も素っ気もないもの。

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:61% Audience Score:67%>
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<ストーリー>
「フライト」「ザ・ウォーク」のロバート・ゼメキス監督がブラッド・ピットとマリオン・コティヤールを
主演に迎えて贈る歴史サスペンス・ラブストーリー。
第二次大戦下のカサブランカとロンドンを舞台に、ナチス・ドイツとの戦いで極秘任務を負い偽装夫婦の
相手として出会った一組の男女が、時代に翻弄されながら繰り広げる切なくもミステリアスな愛の行方を
サスペンスフルかつエレガントに綴る。
 
1942年。モロッコのカサブランカに降り立ったカナダの諜報員マックス。イギリスの特殊作戦執行部に
所属する彼は、極秘任務を与えられ、ナイトクラブで偽装妻と落ち合う。彼女はフランス軍の伝説的女性
レジスタンス、マリアンヌ。2人は夫婦を装い、ドイツ大使の暗殺という過酷な任務に挑む。
その中で図らずも互いに心惹かれていくマックスとマリアンヌ。その後2人はロンドンで結婚し、可愛い娘
にも恵まれ、幸せな結婚生活を送るのだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=358099#1こちらまで。





by jazzyoba0083 | 2017-02-12 12:25 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章 The Second Best Exotic Marigold Hotel」
2015 イギリス Babieka,Blueprint Pictures.122min.
監督・(共同)製作、原案:ジョン・マッデン
出演:ジュディ・デンチ、マギー・スミス、ビル・ナイ、デヴ・パテル、ペネロープ・ウィルトン、セリア・イムリー
   ロナルド・ピックアップ、ティナ・デサイ、ダイアナ・ハードキャッスル、リチャード・ギア他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
たいそう面白かった作品の続編。いわゆるグランドホテル形式で、インドはジャイプルに開業した
マリーゴールドホテルは、ワケアリの熟年者たちが住んでいるように使っていて、他の部屋の埋まりも
良く繁盛していた。初作は青年の熱意と熟年者の知恵で、古いけどエキゾチックなホテルが開業する
までを描いた。続編冒頭はアメリカはサン・ディエゴ、ホテル業界の大物に、マリーゴールドホテルの
第二号店を出さないか、というオファーを、経営主任たるリュミエル(マギー・スミス)と若きオーナー
ソニー・カプール(デヴ・パテル)が、申し出にやってきたのだ。大物バーレイは、後日調査員を
派遣し、事の次第を判断する、ということになった。

さて、覆面調査員としてホテルにやってくる男は誰か?そんな折に、予約無しでぶらりとホテルに
現れたのは、いかにもの風体のガイ・チェンバース(ギア)という男があらわれた。
ソニーはバーレイが言っていた男(ガイ)の謎掛けで、彼こそ調査員と思い込み、まさにいい部屋に
チェックインしようとしていた女性の部屋を取り上げ、彼を厚遇するのだった。苦々しくそれを
見ていたフロントに勤める彼の婚約者スナイナと、リュミエルであった。

ソニーの母(リレット・デュベイ)と惹かれ合っていくガイは、本当に調査員なのか?そうこうして
いるうちに第二のマリーゴールドホテルとして買収をもくろんでいたホテルを、ソニーが恋敵と勝手に
思い込んでしまったクシャルに先を越されて買われてしまう。結婚式を間近に控えたソニーとスナイナの
間がギクシャクしてくる。さて、こんな状態で二号館をオープンできるのか?というお話を
縦軸に、ご老人5組の愛憎の行方を横軸に、大団円に向けて話が進む。ご老人それぞれのエピソードも
上手いこと纏められ、ソニーの母とガイの恋の行方も気になりつつ、ソニーとスナイナはすった
もんだで、ラスト、結婚式のシーンではインド式の大ダンス大会。そしてそれぞれに落ち着いた
カップルが各々のスクーターにタンデムで乗り・・・・。

イギリス式のウィットに富んだ会話に、ご老人独特の辛辣さが加味され、粋な会話のキャッチボールが
楽しい。それぞれ人生を重ね、豊かな知見に裏付けられた会話は含蓄に富んでいて、メモしたくなる。
「自分を惨めだ、と思う人生こそ残念だ」というのが個人的に気に入った。若い人には辛気臭いドラマ
かもしれないが、その豊かな経験こそ映画を通して味わうとよい。またイギリスの名優たちの演技がお話を
サポートする。前作に続き、人間を描かせたら逸品のジョン・マッデンの演出も冴えている。

本作中ではまさに買収に失敗し、調査員を取り間違え他の客に迷惑をかけ、婚約者とこじれる若き
オーナーのソニーが、若者のコトバは悪いが「浅はかさ」を代表している。しかし、若い人は
若いなりの解決をし、ご老人はご老人なりの解決を図っていく。勢いは当然若い人にあるわけで。
そのあたりの心の揺れ動きをジュディ・デンチ扮するイヴリンが上手いこと演じている。仕事も恋も
遅すぎる、ということはないのだ、ということを。ラストに近く、「Strangers in the Night」に乗せて
円熟の人々が踊るシーンがあるのだが、まさにホテルに来るまでは見知らぬ同士が、心を許し合って
ダンスをする、う~ん、いいシーンだった。

前作に続き、心温まり、愉快痛快な、含蓄に富んだ良作に出来上がった。

<IMDb=★6.6
<Rotten Tomatoes:Tomatometer=63% Audience Score=59%>
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<ストーリー>
インドの自称“高級リゾート・ホテル”で第二の人生を送ろうとイギリスからやって来た高齢者たちが
繰り広げる悲喜こもごもの人生模様を描き世界的にヒットした群像コメディ・ドラマ「マリーゴールド・
ホテルで会いましょう」の続編。
出演はジュディ・デンチ、マギー・スミス、ビル・ナイ、デヴ・パテルら前作からの続投組に加え、
リチャード・ギアが新たに参加。監督は引き続き「恋におちたシェイクスピア」「コレリ大尉の
マンドリン」のジョン・マッデン。

 インドのマリーゴールド・ホテルに長期滞在するイヴリンたちイギリス人の男女5人。最初は
不満タラタラだったが、今ではこのボロホテルに愛着すら感じていた。おかげでマリーゴールド・ホテルは
今や常時満室状態。恋人スナイナとの結婚を控え、すっかり順風満帆の若きオーナー、ソニーは、
さっそく事業の拡大に乗り出す。そして宿泊客から共同マネージャーに転身したミュリエルとともに
渡米し、新館オープンの資金獲得のために投資会社へと乗り込んでいく。

一方滞在客のイヴリンも、現地で始めた仕事が本採用になり充実した日々を送っていた。しかし、互いに
好意を寄せ合っているダグラスとの関係はなかなか進展しないまま。そんな中、ソニーが帰国して間もなく、
予約なしの客が現われる。彼を投資会社が送り込んできた覆面調査員だと睨み、丁重にもてなすソニー
だったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353844#1こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-02-11 23:20 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マグニフィセント・セブン The Magnificent Seven」
2016 アメリカ MGM,Columbia Pictures.133min.
監督:アントワーン・フークア
出演:デンゼル・ワシントン、クリス・ブラット、イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオ、
   イ・ビョンホン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、マーティン・センスマイヤー、ヘイリー・ベネット
   ピーター・サースガード他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
よく出来た活劇である。黒澤「七人の侍」、これにインスパイアされた「荒野の七人」の
リメイク作品で、アメリカ人(でなくても)が大好きな、勧善懲悪西部劇だ。
ありがちなストーリーでは有るけれど、登場人物それぞれにまつわるエピソードやキャラ付けも
上手く、(下手に作ると黒澤明やジョン・スタージェスに失礼だろう)質の良い西部劇に仕上がった。
エンディングロールの音楽は「お!」と思う仕掛けがある。

現在のトランプ大統領時代に見ると、作品の構図が一段と際立つ。村を守る7人は、黒人、インディアン、
東洋人、アイルランド系、メキシカンなど、アメリカが成立してきた過程の人種の集まりである。
片や、ラスボスは金採掘で悪どく儲け、村の土地を奪おうとする成り上がりの白人資本家。まるで
トランプだ。
見どころはもちろん、7人が村人と組んで、悪人どもと一大決戦をし、死者けが人も多数でるが、最後は
勝利するというところ。7人の内4人も命を落とす結末だ。その悲劇性が物語を一層劇的に仕上げる。
村人組は悪人側のガトリング銃(機関銃)の登場で、被害甚大となるのだが、これの粉砕に臨む
ファラデー(クリス・プラット)の仕掛けに快哉を叫ぶ。もちろん全員が銃の名手なのでガンファイトは
見応え充分だ。なかでもグッドナイト・ロビショー(イーサン・ホーク)はワケアリのスナイパーで
またその活躍も見どころ。彼とコンビを組む謎の東洋人ビリー(イ・ビョンホン)はナイフの名手だ。

悪党らに旦那を殺され、正義と復習のためサム・チザム(デンゼル・ワシントン)に助けを求める女性
エマのヘイリー・ベネットが儚げなのだが芯が強い女性を演じて、一服の清涼剤的存在。
彼女まだ29歳なんだね。もっと大人にみえた。

監督のアントン・フークアとデンゼルは「トレーニング・デイ」「イコライザー」でコンビを組んでいた。
また個人的にはこの監督の「ザ・シューター/極大射程」が大好きだ。全般に活劇の作劇が上手い人。
本作においても伏線の回収も含め手堅く上手く纏めてある。デンゼル・ワシントンの秘密がラストで
明かされるが、まあ、こうだろうなあ、という納得の展開だ。
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<ストーリー>
黒澤明監督による不朽の名作「七人の侍」を西部劇に翻案した「荒野の七人」をデンゼル・ワシントン、
クリス・プラット、イーサン・ホークら豪華キャストでリメイクした西部劇アクション。
監督は「トレーニング デイ」「イコライザー」のアントワーン・フークア。
 
開拓時代の小さな田舎町。そこでは冷酷な悪徳実業家バーソロミュー・ボーグが町の資源を独占しようと
荒くれ者たちを従え、傍若無人の限りを尽くしていた。ある日、ボーグに夫を殺されたエマは、サムと
名乗る賞金稼ぎの銃の腕前を見込んで、町を救ってほしいと住民からかき集めたなけなしの全財産を
差し出し懇願する。最初は興味を示さなかったサムだったが、この依頼を引き受けることにし、
ギャンブラーのジョシュをはじめ腕利きの男たちのリクルートを開始する。こうしてワケありの
アウトロー7人が小さな町を守るために雇われ、やがて彼らはボーグ率いる200人超の悪党軍団に
無謀とも思える戦いを挑んでいくのだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=357279こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-02-05 15:30 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マダム・フローレンス!夢見るふたり」
2016 イギリス Qwenty Films,Pathe Pictures,BBC Films.111min.
監督:スティーヴン・ステアーズ
出演:メリル・ストリープ、ヒュー・グラント、サイモン・ヘルバーグ、レベッカ・ファーガソン、ニナ・アリアンダ 他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

実に心温まる映画であった。富豪がカネにモノを言わせての酔狂、と断じるのは容易い。しかし、本作の底流に
流れるのは、お金があるかないか、は別として、「愛情物語」なのである。私も冒頭の付近では、「イタい勘違い
おばさんのコメディ」と思っていたのだが、フローレンス(メリル)と、夫(二番目の)シンクレアの愛の物語、
次第にウルウルとさえ来てしまったのだった。(夫には公認の愛人がいるのだが、梅毒という重い病に侵されている
フローレンスは、知って観ぬふりをしていたのだった。だからといって二人の愛情がウソである、とは思えない)
そして、最初は迷惑顔だった伴奏者コズメ(サイモン・ヘルバーグ)との間にも、信頼と愛情で結ばれるように
なっていくのだ。(このコズメがいい役どころでスパイスとなっている)

実在の迷歌手、フローレンスは、確かにお金にあかせて自分の歌に文句を言わないファンを集めてコンサートを
開いたり、夫は新聞記者を買収して、コンサートに好意的な記事を書かせたりはしていた。
ときは1944年。太平洋戦争も末期のころだ。そうした時代に現れた彼女の存在は、正統派クラッシック歌手の姿が
求められていたのではなく、エンターテナーとしてのそれが時代のニーズにあったような気がする。
フローレンスの純粋な心は、本当に歌うのが好きなんだな、それは上手いとか下手とかを超越しているんだな、と
愛おしくさえなるのだ。当時、カーネギーホールを満員にした(招待された引き上げ軍人が多くいたけど)、観客
たちは、そんな彼女の純粋な姿に、滑稽さを通り越した、一途な純粋な熱意みたいなものを感じたのではないか。
たとえは正しくないかもしれないが、安西水丸や、蛭子能収の絵を見る味わい、というようなところか。
フローレンスの歌は今でもCDで聞くことが出来る。キワモノ、怖いもの見たさ、というのは簡単だろう。
だが、本作を観終えると、そういう簡単な単語で言い切れない、不思議な何かが彼女の歌にはあることが分かる
のだ。実際がどうかは分からないが、映画としての表現は確固として提示されている。

正式なクラッシックの独唱のレッスンをしっかり積んでから、下手を演技した、というメリルは、フローレンスと
いうキャラクターの純粋無垢な所も併せて、実にチャーミングだ。梅毒の治療で頭髪も、眉毛もない風体も含めて。
唯一、メリルの素晴らしい歌唱がフローレンスの夢の中で出て来る。本来歌のうまい人なので、ちゃんと歌うと
素晴らしいものだ。
イギリスのプレイボーイ、ラブコメの帝王も、お顔にシワが増えて、愛する妻を支える心温かい夫を熱演。
ただ、映画は全般に平板となり、起伏が乏しいのが残念だった点だ。
ちなみにIMDbでは7.0、rottentomatosでは87%の評価を受けている。
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<ストーリー>
 “音痴の歌姫”として知られるフローレンス・フォスター・ジェンキンスの驚きと感動の人生をメリル・ストリープ
主演で映画化した音楽伝記ドラマ。筋金入りの音痴でありながら、ヒロインの音楽に対する純粋な気持ちがいつしか
人々の心を捉えていくさまと、そんな彼女の夢のために奔走する夫の深い愛をユーモラスなタッチで綴る。
共演はヒュー・グラント、レベッカ・ファーガソン。監督は「クィーン」「あなたを抱きしめる日まで」の
スティーヴン・フリアーズ。
 1944年、ニューヨーク。社交界の大物マダム・フローレンスは、持病を抱えながらも音楽を愛し、莫大な
遺産を音楽家のために惜しみなく使ってきた。そんな彼女がある時、ソプラノ歌手になるというかつての夢を
再び取り戻し、レッスンを再開することに。ところが彼女は自分では気づいていないが、歌唱力に致命的な
欠陥を抱えていた。それでも愛する妻から夢を奪いたくないと、夫のシンクレアはすぐにレッスンの手配を進める。

しかし伴奏者として雇われたピアニストのコズメは、フローレンスの歌声に呆然としてしまう。シンクレアは
そんな周囲の否定的な反応を懸命に封じ込め、フローレンスが気持ちよく歌える環境を整えるべく奔走する。
おかげでますます自信を深めていくフローレンスだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=358011#1こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2016-12-04 12:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

マシニスト The Machinisit

●「マシニスト The Machinist」
2004 スペイン・イギリス Filmax Group Castelao Producciones.106min.
監督:ブラッド・アンダーソン
出演:クリスチャン・ベイル、ジェニファー・ジェイソン・リー、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ジャン・シャリアン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
役作りのために30キロの減量をしたクリスチャン・ベイルのお姿で、この映画の半分の良さは
決まってしまったようなものだけど、映画としても、そのベイルの怪演を含め、面白かった。
一年間眠らないと死んじゃうんだけど、映画でも出てくるが、うつらうつらするんだよね。でも
なんかの物音がしたり、読んでいた本を落としてしまったりして、目が覚めちゃう。そのあたりの
細かい演出は良かった。
(ここから決定的にネタバレですが)主人公トレバー(ベイル)は赤いムスタングを運転していて
交差点で男の子をはねてひき逃げしてしまうのだな。この罪の重さに不眠症になり、様々な
恐怖の妄想を見るわけ。で、どこからが妄想なのか、どこからが現実なのかがわかりにくい構造に
なっている。マシニストとは機械工の事。トレバーは旋盤工みたいな仕事をしているのだが、
誤って仲間の腕を切断してしまう事故を起こす。その原因を作ったのはアイバンという男の姿
であった。この男、知り合いのようなのだが、実は幻想なのだ。

それ以降、作品の中に出てくる主人公が毎日行く空港にあるカフェの従業員とその息子。
(ひき逃げしてしまった母と息子)彼らとのデートの幻影。冷蔵庫に貼り付けられる謎なぞの
ような気持ちの悪い絵、自分もあわや機械に巻き込まれそうになる事故、アイバンという男が
乗っているムスタングを調べていたら、それは自分が乗っていて廃車届けを出していたクルマで
あったこと、寂しさを紛らすために通っていた娼婦の部屋にあったアイバンという男の写真(実は
自分の痩せる前の写真)、アイバンの後をつけていくとカフェの女給の息子が一緒に家に入って
いく・・・。見ている人はあたかもトレバーになり、妄想幻想と現実の狭間を彷徨うことになる。
次にどうなるのか、という「悪い予感」がこの映画の魅力だ。

allcimemaの感想を読むと、オチは割りと簡単に分かった、と書いている人が多いが私は
分からなかった、その分映画を楽しむことが出来た。
結局、見ている人がクリスチャン・ベイルになり罪の意識から生まれる幻想妄想をともに恐怖しつつ
共有することにより、この映画の楽しさ面白さが出てくると感じた。だから、先回りしてオチを
探さないほうが楽しめるのではないか、そう感じた。
しかし、クリスチャン・ベイルの肋骨どころか背骨さえ浮き出た痩せ姿、顔のげっそり具合は
それだけでホラーだなあ。
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<ストーリー>
工場で機械工として働くトレヴァー(クリスチャン・ベイル)は、原因不明の極度の不眠症で
すでに365日眠っていない。体も生ける屍のように痩せ細っている彼は、ある日、
アイヴァン(ジョン・シャリアン)という大男と出会う。その日から奇妙な事件が次々と起こり、
工場ではアイヴァンに気を取られたトレヴァーの不注意で、同僚のミラー
(マイケル・アイアンサイド)が片腕を失ってしまう。

そして今度はトレヴァーが作業中に腕を切断しそうになる。しかも同僚たちは誰も
アイヴァンの存在を認識していない。トレヴァーはお気に入りの場所である空港のカフェの
優しいウェイトレス、マリア(アイタナ・サンチェス=ギヨン)と、彼女の息子と共に遊園地に
行くが、そこでも少年が持病の癲癇で倒れる奇妙な事故が起こった。

やがてミラーの事故がきっかけで同僚たちとの折り合いが悪くなっていたトレヴァーは、
工場をクビになる。彼は自分を陥れる陰謀を感じた。そして謎の男アイヴァンを再び見かける。
トレヴァーはアイヴァンの乗っていた赤い車のナンバープレートを突き止めるが、
なんとその車の登録はトレヴァーだった。混乱した彼は親しい娼婦スティーヴィー
(ジェニファー・ジェイソン・リー)の部屋を訪ねるが、ベッドの横に、アイヴァンとミラーが
一緒に写っている写真を発見する。スティーヴィーは、その写真はトレヴァーが置いていった
ものだと言う。衝撃を受けたトレヴァーはついにアイヴァンを捕まえて殺害するが、
アイヴァンの姿は消えない。実はトレヴァーは、マリアの息子をひき逃げして殺害しており、
その罪の意識が不眠症と幻覚を引き起こしていたのだ。そしてトレヴァーは警察に自首
することで、ようやく眠りにつけるのだった。(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-06-21 23:40 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マジック・イン・ムーンライト Magic in the Moonlight」
2014 アメリカ・イギリス Dippermouth Productions,and more.98min.
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:コリン・ファース、エマ・ストーン、アイリーン・アトキンス、マーシャ・ゲイ・ハーデン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ウディ・アレンの新作は舞台を南仏に変え、時代は1920年代。ローリングトゥエンティ。
自身の出演はないものの、セリフはいつものウィットとアイロニーに満ちたアレン節炸裂
なのだが、本作は、人生の実相みたいなものに直接触るセリフが多く、いつもの回りくどい
セリフ回しと比べると、分かりやすい気がした。ということは、セリフの中身に「なるほど」とか
「いいこと言うなあ」とかの相槌を打ちやすいということ。逆に言うと、それだけアレンっぽさが
少なくなったということでもあるか。
魔術師だから仕掛け、タネがあり、霊視や読心術なんてものはインチキだ、と合理的、
論理的な事だけしか信じず、神の存在さえ認めない男スタンリーと、アメリカ出身の美人
預言師ソフィがインチキであると何とか見破りたいが、次から次へと他人には絶対わからない
ようなことも当ててしまうソフィに、次第に自分の信念がぐらついてくる。
一方、南仏のブルジョアから霊視を頼まれたソフィはそこのボンボンにすっかり気に入られ
結婚を申し込まれていた。が、スタンリーの登場に彼女の心は揺らぐ。

論理的なスタンリーが、恋に落ちるという論理では割り切れない事象に揉まれて
次第に世の中の曖昧なことも理解するようになる一方、インチキ預言師ではあるのだけれど、
ソフィーはソフィーで、論理的、合理的なスタンリーに惹かれていく、という磁石で言うと
NとN、SとSであった関係がNとSという関係に変化していく様子が、洒落た会話の中で提示
されていく。ここが面白いところだ。

エマ・ストーン扮する霊媒師、私は本物なんじゃないか、と思っていたらラストでどんでん返し。
まあ、アレン的なのではあるが、それでもインチキ霊媒師は、正体を見破ろうとやってきた
一流の魔術師との愛を、南仏のブルジョアとの婚約を蹴って成就するという、まあ古典的な
恋愛劇の仕立てでもある。

名優コリン・ファースが語っても、台本があれだとアレンぽくなるから不思議だ。
コリン・ファースが扮する中国人魔術師のまあ、典型的なシナな感じが胡散臭くていい。
彼を含め、目の大きさをあれこれ言われるエマ・ストーンをはじめとするキャスティングも
なかなかだ。中でも、ブルジョアのボンボンでエマの婚約者となるブライス(ハミッシュ・
リンクレーター)がウクレレを弾きながら歌を唄うところがなんともノーテンキでいい感じ
だった。当時のジャズミュージックと、フラッパー的な20年代の女性ファッションや、
当時のクルマの仕立てなどもいい感じで、上映時間も適当、ウディ・アレン映画だなあ、
とつくづく思える作品だ。今回はユダヤネタは出てこない。
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<ストーリー>
頭が固くて皮肉屋のイギリス人マジシャン、スタンリー(コリン・ファース)は中国人に扮装し、
華麗なイリュージョンで喝采を浴びている。
そんなある日、とある大富豪が入れあげているアメリカ人女占い師ソフィ(エマ・ストーン)の
真偽のほどを見抜いてほしいと友人に頼まれ、早速スタンリーはコート・ダジュールの豪邸へ
乗り込んでいく。

ところが実際に対面したソフィは若く美しい女性で、スタンリーに“東洋のイメージが浮かぶ”
などとあっと驚く透視能力を発揮。この世に魔法や超能力など絶対に存在しないという
人生観を根底からひっくり返されたスタンリーは、笑顔も抜群にチャーミングなソフィに魅了
されてしまうのだった。

他人を騙し騙されまいとするマジシャンと、他人の心を見透かし見透かされまいとする占い師の
駆け引きは次第に加速していくが、二人は素直に想いを打ち明けることができない。
やがてその行く手には、大波乱が待っていた……。(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-05-01 22:50 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マッドマックス 怒りのデス・ロード Mad Max:Fury Road」
2015 オーストラリア Warner Bros.Kennedy Miller Mitchell,Village Roadshow 120min.
監督・(共同)製作・(共同)脚本:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース=バーン他
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<2015 アカデミー賞 美術、編集、衣装デザイン、メイクアップ&ヘアスタイリング、
                        音響編集、音響調整賞受賞作品>

<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
今年のオスカーの美術、音響など6つの部門を制し話題となった作品を、慌ててBlu-rayで
借りてきて鑑賞。それと映画ブロガーの中で昨年観た映画のナンバー・ワンに挙げていた
かたも多く、いずれは観てみようと思っていた所にこのオスカー騒ぎ。

30年ぶりのシリーズ4作目は引き続きジョージ・ミラーがトム・ハーディーを主演に迎え
ナミビアの砂漠で撮影したという。個人的にはシャーリーズ・セロンが助演女優賞ノミニーで
いいんじゃない?と感じた。メル・ギブソン主演の一作目は観ていると思うが、乗っていたクルマ
以外にあまり記憶がないのだ。また近未来の暴力的な映画は、最近では邦画の「進撃の
巨人」もそうだが(同列に論じるな、という声が聞こえそうだが)苦手なジャンル。そういう
点からは、前作までの感想を引きずって観るわけではないので、新しい気分で臨むことが
出来た。
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冒頭からシャーリーズ・セロンらが裏切って逃げてそれをイモータル・ジョー軍が追いかけると
いうカーチェイスのシーンくらいまでは、「なんじゃ、これは」という感じだったが、その後
映画のテーマが見えてくるに従い、多くのブロガーさんが昨年の上位に上げた意味が
分った気分だった。こいつはただの粗暴な映画じゃないぞ、と。
それは「近代文明への抗議、告発」が主テーマであり、その他にも「行った同じ道を再び
帰ってくる」という行動が発する「自由への渇望と行動」に対するメタファーなどなど。
勢い陳腐化してしまうテーマを、カーチェイスに伴う色々な攻撃様式などに多彩さを持たせ
、飽きさせない。また砂漠のシーンでの全体を覆う黄色いカラートーン、約束の地での
ブルー、イモータル・ジョーの世界のモノクロ、そしてラストの緑と、映画全体を覆う色彩の
アイデアも多弁である。
この映画、マッドマックスが口枷を付けられ、水を支配するイモータン・ジョーは人工呼吸器を
つけているということで最初のうちセリフが殆ど無い。監督はこの映画をサイレントで仕上げ
ようと試みたのだそうだけど、結局セリフが入ることになった。が、セリフが無くても十分通用する
ような映画だと思うけど。それだと客が入らないかな。
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オスカーを獲ったから言うのではないが、プロダクションデザインは上記色彩の工夫も含め
よく出来ていた。過去や現代は参考にするベースがあるが、終末感漂う近未来はなかなか
難しいと思う。最初から想像するしかないわけだから。登場人物が身につける衣装も同じ
ことが言える。
たとえば登場するクルマにも、過去に見覚えのあるクルマをくっつけて再構築したものを使い、
現代と未来をつなぐメッセージを発している。
個人的にお気に入りだったシーンは、イモータン・ジョー軍の「戦の太鼓」ならぬ、改造トラックに
乗せられた「戦いのエレキギター」と巨大なスピーカー群だ。
またやじろべえのようにスィングする攻撃法もなかなかなアイデアだった。こうして単純なテーマ
のカーチェイス映画にはさせないという構成の中で、主要なテーマを浮き立たせる監督の手法は
見事にハマっていてお見事というべきであろう。「輸血袋」マックスのシャーリーズ・セロンへの
蘇生のための輸血は大胆すぎでびっくりだったわ!
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一点だけ。フラッシュバックのように登場する少女は、恐らく殺された彼の娘だと思うのだが、その
あたりは前作からの主人公のなりたちを復習してから観たほうがいいのかもしれない。
ラスト、マッドマックスはどこかへ去っていくから5作目があるのかもしれない。

※Blu-rayの特典映像を観てから再度本編を観て・・・
特典映像では、ジョージ・ミラーら、スタッフやキャストが映画製作の裏側を語っていた。さすがに
いままで見えてこなかったことが見えてきた。それから再度観てみると、特に前半、手探りで
鑑賞していたなかで分からなかった事が明らかとなってきた。
上記に書いた映画の持つ意味、みたいなものについて深く語る人はいなかったが、深読みでも
いいので本作が少なくても私個人にはそういうふうに伝わったということは映画の持つ側面として
悪いことではないと思う。

ただただドッカンボッカンの追跡アクションと受け取る人もそれはそれで否定しない。が、深く
読んでみるのも楽しい。
クルマのシーンは全てリアルだ。画像的な合成はあるが、爆発シーンなどをCGで合成しては
いない。その辺りのこだわりは凄い。さらに改造車への執着も半端じゃない。その様子は
たっぷりと描かれる。古い車をリストアしたり部品を使ったり、一から作っちゃったり、それを
また惜しげもなくぶっ壊す。美術監督が語っていたが、日常でありえない組み合わせが狂気と
混沌を作り上げる、と。まさに本作からはそれがよく表出されていたと思う。
冒頭、マックスが「オレがマッドなのか、世界がマッドなのか」。そのテーゼが美術により
見事に実現されていたと言える。

<ストーリー>
終末的な世界で繰り広げられる壮絶なサバイバル・バトルを描いたメル・ギブソン主演の
アクション『マッドマックス』シリーズ。同シリーズで監督・脚本を務めたジョージ・ミラーが
再びメガホンを握り、放つバイオレンス作。
砂漠ばかりの荒涼とした世界に生きるマックスとフュリオサという2人の反逆者の物語が
つづられる。

石油も水も尽きかけた世界。元警官のマックス(トム・ハーディ)は、愛する者を奪われ、
本能だけで生き長らえていた。資源を独占し、恐怖と暴力で民衆を支配するジョーの
軍団に捕えられた彼は、ジョーに囚われた女たち“ワイブズ”を率いて反逆を企てる
フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、全身白塗りの男ニュークス(ニコラス・ホルト)と共に、
自由への逃走を開始する。凄まじい追跡、炸裂するバトル……。
絶体絶命のピンチを迎えた時、マックスと仲間たちの決死の反撃が始まる!
(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-03-02 23:30 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マダム・マロリーと魔法のスパイス The Hundred-Foot Journey」
2013 アメリカ DreamWorks,Amblin Entertainment,Touchstone Pictures.122min.
監督:ラッセ・ハルストレム  製作:スティーヴン・スピルバーグ、オプラ・ウィンフリー他
原作: リチャード・C・モライス 『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(集英社刊)
出演:ヘレン・ミレン、オム・プリ、マニシャ・ダヤル、シャルロット・ル・ボン、ミシェル・ブラン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ディズニーとスピルバーグ(アムブリン)が手を組んで、名称ラッセ・ハルストレムに
メガフォンを取らせ、主演にオスカー女優ヘレン・ミレンを据えたこハートフルドラマ。
この座組でつまんなかったら承知しないぞ、と思って観ていたのだが、安心して
観ることが出来た。佳作、良作である。

「移民」という今日的なテーマがたまたま設定されているので、インドとフランスの文化の
ぶつかり合いという意味でも興味が持てた。原作が面白いのであろうが、名匠ハルストレムの
演出も冴えていて、時々クスリと笑わせ、ハラハラさせ、ホロリとさせ、うるうるとさせる。

ミシュラン一つ星200年の伝統を誇るフランス料理レストランの前に開業したインド
移民のインド料理店。そのふた家族のプライドのかかったいがみ合いと、主人公たる
料理人ハッサンのフランス料理を学びたい、また彼の才能を見ぬいたマダム・マロリーの
慧眼により、仏印両家族が打ち解けあい、理解していくさまに、心温かくなる。

キャストの中ではやはりマダム・マロリーのヘレン・ミレンの時に凛とし、時に優しい
表情豊かな演技、加えてインド一家のパパ、オム・プリ(ジャン・ギャバンみたいだ)の
ぶつかり合い、頑固な様、意地の張り合い、理解、融和、愛情、と変化していく演技がとても
良かった。

ハッサンの努力と才能で、マダムのレストランは30年間星ひとつだったのが2つに昇格、
ハッサンはここに残ってみんなで3つ星を目指す、というと思いきや、もうひとエピソード
挟まれる。
ハッサンはパリへヘッドハントされ、雑誌の表紙になるまでの人気シェフとなった。作る
フレンチは超現代的はアートのようなものであった。しかしハッサンはどこか引っかかる
ものがあった。そんなエピソードを挟んで彼は故郷へ戻り、再びマダムから譲られた
レストランで三つ星を目指すのだった。そしてビジネスパートナーには彼を最初から
支え(一時険悪にはなったが)てきた副シェフだったマルグリットが伴侶としてなることに
なったのだった。そんな恋愛譚もさりげなくまぶしてある。めでたし!

邦題がハリポタ風で味気ないが、原題は100フィートほどの小道を挟んだ2つの
レストランの間を行き来し、成長の旅をするハッサンの姿を連想させる味のあるものだ。

ぶつかり、理解し、融和し、平和になる。どこかの国の政治家に学ばせたいことがホノボノ
と示される好編である。ディズニーとアムビリンなので安心して家族で観られる作品。
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<ストーリー>
南フランスを舞台に、100フィート(=約30メートル)隔てた真向いにある2つのレストランの
間で起きる衝突を描いたベストセラー小説を、名匠ラッセ・ハルストレム監督が映画化した
ヒューマンドラマ。フランス料理店の名物女店主がライバルのインド料理店の息子が作る
料理と出会い、変わっていく姿を名優ヘレン・ミレンが体現する。

南フランスの山間に建つミシュラン1つ星のフレンチ・レストラン“ル・ソル・プルルール”の
オーナー、マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)は、最高のサービスと味を提供することに人生を
かけている。
ある日、故郷を追われ、ヨーロッパで再起を果たそうと旅していたインド人一家が、車の故障
のために足止めを食う。そこで一家の父は、空き家となったレストランに興味を持ち、インド・
レストランの開業を決断する。しかしそれは、マダム・マロリーのレストランからわずか100
フィートの道を隔てた真向いにあった。

一家の次男ハッサン(マニッシュ・ダヤル)は絶対味覚を持ち、料理名人だった亡き母から
受け継いだ魔法のスパイスを操る天才料理人だった。しかし、大きな音量で音楽を流し、
強烈な匂いのスパイスを使った料理を出す“メゾン・ムンバイ”は静かな雰囲気のフレンチとは
対照的で、マダム・マロリーにとって向かいの店迷惑な存在だった。その上、市場での食材の
奪い合いも巻き起こり、2つのレストランは一触即発の危機を迎える。さらに、窮地の一家を
助けた縁でハッサンが想いを寄せていた女性マルグリット(シャルロッテ・ルボン)は、
ル・ソル・プルルールの副料理長だった……。(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-02-20 23:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)