カテゴリ:邦画・旧作( 52 )

●「連合艦隊司令長官 山本五十六」
1968 東宝 131分
監督:丸山誠治  特撮監督:円谷英二
出演:三船敏郎、稲葉義男、平田昭彦、松本幸四郎、森雅之、藤田進、安倍徹、加山雄三、久保明
   黒沢年男、田村亮、司葉子、酒井和歌子他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
山本五十六は東宝の太平洋戦記モノにはほぼ必ず出てくる。「ハワイ・マレー沖海戦」
「ミッド・ウェー」、この後年の「連合艦隊」さらに、同じタイトルの役所広司版と。

個人的に米内光政、井上成美、と並んでこの時代の軍人として興味があるので、WOWOWで
放映があると録画して見ている。本作も、だいたい世間で言われている山本五十六像をなぞって
いるので、新しいことはないが、三船敏郎の「山本五十六」っぷりが観ものであろう。特撮は
前作「ミッドウェー」や、その前の「ハワイ・マレー沖海戦」からの流用も目につき、時代が下った
この時期では、少々退屈というか、特撮として見応えがないというか。自衛隊の借り物?らしき
実写との組み合わせや、山本の最後を描いたところは、下を流れる川も含め、まずまずで、
そのほかには特に印象的なところはなかった。

冒頭の、川下りでの逆立ちシーンはいい入り方だった。その後、例によって日独伊三国同盟を
否定し、アメリカとの交渉を続けるべきとする山本海軍次官の一連の動きから連合艦隊
司令長官になるまでを描く。三国同盟を結んだ途端に始まるであろう、ABCD包囲網の中で
日本はどうやって石油や鉄、銅、スズなどを手に入れるのか、という普通に考えると分かり
そうなことが、国論の勢いで押し切られてしまう。
アメリカの工業力は侮れない、この国と決して戦争をしてはいけないとは、彼の2年間のアメリカ
留学でその目で見て身にしみているからこそ出る意見だろう。

軍人だから、やれといわれればやるけど、ぎりぎりまでは和平交渉を続けること、また一撃した
後早急に和平に持ち込むことなどを条件にしていたのだが、山本の願いとは逆に逆にと
時代は流れていく。しかも、真珠湾奇襲は、山本があれほど気にしていた「宣戦布告」なしに
行われたことになり、これでアメリカを徹底的に怒らせたわけだ。
また真珠湾で空母を撃滅しそこねたのに、インド洋まで出かけて行くという無駄な長征を
したり、軍令部と艦隊司令部が仲悪かったとはいえ、ひどい軍隊を日本は持ってしまって
いたのだな。陸軍は更なり。

如何に当時の権力を持った軍人がアホだったか、こうなると政治が何もできないか、ということが
山本を通して分かってくる。今の時代に見てもつながるところが大いにあると感じるのだ。

世上よく言われる山本像なので、どこまで真実に肉薄したかは分からないが、当時の海軍
軍人として、アメリカを真に恐れ、戦争はしてはだめだ、と言い続けた勇気は真実だったのだろう。
最近の役所広司版を見てみたい。監修が作家の半藤氏なのでかなりリベラルな仕上がりに
なっているのではないか、と思うのだが。
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<ストーリー>
「昭和十四年。揺れ動く世界情勢は未曽有の危機をはらんでいた。折しも日本国内では、
日独伊軍事同盟をめぐって、陸軍を中心とする軍事同盟賛成派と一部良識派が、対立して
いた。時の海軍次官山本五十六は、世界大戦突入を憂慮し、同盟結成を阻止しようとして
いたが、皮肉にも連合艦隊司令長官に任命されてしまった。
翌年九月二十七日、日独伊三国同盟が調印された。山本司令長官は任務のために
真珠湾奇襲作戦に出たが、それは早期講和に持込むための布石だった。この作戦は予想
以上の戦果をあげた。だが、米軍の空母が無傷だったことは、開戦劈頭に相手に致命的
打撃を与え早期講和につなごうという念願を崩し去った。

やがて、“大和”が連合艦隊の旗艦として就役。真珠湾の余勢を駆って、日本軍は西南
太平洋から印度洋にかけて、破竹の進撃を続けた。だが昭和十七年四月十八日、
米空母ホーネットを発艦したB25の編隊が、日本本土を初空襲。これに動揺した軍上層部は、
ミッドウェー作戦を強行した。
しかし、作戦指導の失敗から、四空母を失い、山本長官の念願していた早期講和への道は、
全く絶たれてしまった。ミッドウェーの勝利から米軍は、俄然反撃に転じ、ガダルカナルへの
上陸作戦を開始した。日本軍はラバウルを基地に善戦したものの、補給に継ぐ補給、消耗に
継ぐ消耗と日米の物量の差が日増しにあらわれ始めた。

ガダルカナルの将兵には、飢餓、酷熱、疫病との戦いも加わり全滅寸前。ここに山本長官は
全責任を一身に集め、作戦を中止し一万余の将兵を救うべくガ島撤収命令を出した。
撤収を終った山本長官は、戦局挽回のため自らもラバウルに将旗を飜えした。

そして昭和十八年四月十八日、山本長官は六機の零戦に護られて前線部隊の激励に
出かけた。しかし米軍は日本軍の機密暗号電報を解読していた。やがて、長官機は護衛機
必死の応戦もむなしく、米軍P38に襲われ火を吐いた。
戦争反対を主張しながらも、戦争を余儀なくされた山本五十六は、皮肉にも自らの戦死に
よってその責任を全うしたのである。」(Movie Walker)
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この映画の詳細はこちら1まで。
by jazzyoba0083 | 2014-11-15 23:15 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

悪い奴ほどよく眠る

●「悪い奴ほどよく眠る」
1960 日本 黒澤プロ、東宝  150分
監督:黒澤明 脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄、久板平二郎、菊島隆三
出演:三船敏郎、森雅之、香川京子、三橋達也、志村喬、西村晃、加藤武、藤原釜足、笠智衆他、
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
昨年の今頃、WOWOWで放映していた「黒澤明シリーズ」、これまで黒澤作品の喰わず嫌い
だった私は、まずは見てみようと見始めたら、すっかり黒澤ワールドに魅了されてしまい、
放映された作品はほとんど見たが、本作だけは見逃してしまった。その後、再放送もされ
なかったため、今回初めて宅配DVDレンタルを利用し、鑑賞した次第。

昭和35年の芸術祭参加作品である。これまでの経験から古い黒澤映画はセリフが聞き取り
にくいので、字幕を出して観た。

長い映画だったが、脚本を5人で練ったことだけのことはあるよく出来たプロットで、後期の
黒澤一人だけの脚本作品の独善性と比べると、この初期中期ごろの複数脚本のほうが
出来が良いと自分は感じるのだが。それにしてもこれだけのオリジナル脚本を今の日本の
映画が出来るだろうか。ほとんどは原作あり、だもの。

さて、たまさか「特定秘密保護法」が国会を通り、成立、汚職ではないが、政治の不条理を
痛感していた昨今、実に今の時代にフィットしていた、というか日本の政治・官僚・経済の
中枢の腐れ具合は全く変わっていないのだな、と感じた。そういう風土を突いた黒澤の
慧眼は流石である。本作以前の「生きものの記録」もそうだけど、これだけ社会を告発する
映画、このところ新作は見ない。

三船敏郎は、時代劇で見られるようなコミカルさを押さえ、(映画の中にややコミカルな
タッチもあったりはするのだが、それは個人的な演技上のことではない)3年後の
「天国と地獄」(個人的には黒澤作品で一番好き)に繋がる現代の悩める男を好演する。
また、撮影当時49歳であった森雅之の、老副総裁ぶり、巨悪に押しつぶされていく
下っ端役人、西村晃の狂気が、個人的にはヒットした。三橋達也は面白い役どころだった
が今一つ生かし切れていなかったのではないか。
森雅之の副総裁、最後は「参りました」となるのか、と思うのだがそうでは無いところに
面白さがあり、さらに、ラストに副総裁が電話でヘイコラする相手こそ巨悪であり、
その悪こそが、この本当の主人公であり、タイトルの言わんとする所であるわけだ。
フレンチノワールの邦題のようなこのタイトル、優れものだと思う。

長台詞の長回しは、いささか説明的過ぎる面も。特に、ラストでの加藤武による三船の
最期の説明は、画竜点睛を欠いたと言わざるを得まい。(多くの人が指摘している事)

音楽の佐藤勝は早坂文雄の弟子であるが、「生きものの記録」の後、黒澤作品には
無くてはならないスタッフとなった人だが、三船が劇中で口笛を吹く音楽は、いかにも
黒澤作品ぽいメロディーラインで、不思議な旋律だが映画にマッチしていると感じた。

三船が公団に就職する前に、加藤武と経営していたのが外車のディーラーなので
懐かしいアメ車が出てくる。また、三船の嫁、香川美子の兄三橋達也の所有していた
のが当時のMGAで、これがまたカッコいい。クルマ好きにはそんな点も魅力だった。
面白い映画であったが、黒澤現代劇としては個人的には「天国と地獄」に軍配を
挙げたい。

この映画のストーリーなどの詳細はこちらのwikipediaをご参照ください。

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by jazzyoba0083 | 2013-12-16 23:45 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

たそがれ清兵衛

●「たそがれ清兵衛」
2002 日本 松竹 製作委員会(松竹・日テレ・住友商事・博報堂・日販・衛星劇場) 129分
監督:山田洋次
出演:真田広之、宮沢りえ、小林稔侍、大杉漣、田中泯、神部浩、草村礼子、岸惠子ほか。

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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
歴代の日本映画を代表する1作である。映画化された藤沢周平「海坂藩」3部作の
中でも、本作が一番好きだし、良くできていると思う。「隠し剣 鬼の爪」も良い
映画だとは思うけど。何回か目の鑑賞であるが、いつみても感動は減らないものだ。

公開された年の日本アカデミー賞を助演女優賞(岸惠子)以外で全部最優秀賞を
獲得、さらにアカデミー賞外国語映画部門にもノミネートされた。
決して短い柄画ではないが、ゆるゆると流れる山形・庄内地方の田舎藩下級武士の
話を飽きさせず、ストーリーの緊張を継続されていく手法は山田洋次監督の
凄腕、である。キャメラも音楽もまた良い。そして真田広之、宮沢りえらのキャストも
押さえながらもツボを得た演技を見せ、良質な映画の大きなポイントとなって
いる。

時代劇の文法を変えた、といえば黒澤明であるが、山田洋次監督の本作も
藤沢作品の主題を描き出すために徹底的にリアリズムにこだわり、田舎の藩の
下級武士の人生を叙情的に映像化した、という意味で画期的であった。
下級武士の日常、男女のこと、そして激しい剣戟、まとまりのいい作品である。

江戸時代の人たちは夜になれば寝るしかなく、おんなたちは家事をし男に
仕えるだけが人生だったのだなあ、それが当たり前で疑問の持ちようも
なかったのだなあ・・。人生って当時の下級の人たちはどう捉えていたのだ
ろうか、などと思いながら観ていた。

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<ストーリー>
一見冴えない侍だが、実はなかなかの使い手、というのは藤沢作品の王道であるが、
ここでも50石、手取り30石の家禄しかない上に幼い子供二人とボケが来た母親を
抱え、虫篭づくりの内職を余儀なくされる下級武士井坂口清兵衛は、実は剣術道場の
師範代を務めたほどの名手である。が、最近は剣の修行もままならず、腕はなまって
いる。小役人である彼は「たそがれ」時になると、仲間からの酒の誘いも断り
ボロボロの衣服と伸びた月代の手当てもせず、そそくさと家路に付くのだった。
それゆえ仲間から「たそがれ清兵衛」という綽名を付けられていた。

物語はそんな井口の妻が労咳で亡くなって、葬式を出すシーンから始まる。長じた
長女(岸恵子)がナレーターとなって物語を説明していく。
赤貧洗うが如しの井口の家に、幼馴染の朋江(宮沢りえ)が、離縁してヒマだと
いって遊びに来た。子供たちはすっかり朋江になついた。楽しい時間が流れて行った。

ある日、朋江を送っていくと、分れた夫(大杉漣)が来ていて、酒に酔って暴れていた。
それを取り押さえた清兵衛であったが、後日、果し合いをすることになってしまう。
しかし、なまったとは言え、剣術の名手である清兵衛は、棒切れで元夫を叩きのめして
しまう。その話が城下に広まって行った。

400石取りの武家の娘である朋江には縁談が舞い込むが、朋江の本心は井口の
ところに嫁に行くことだった。ある日、朋江の兄と釣りをしている時、兄から朋江を
嫁に貰ってくれないか、と言われる清兵衛であったが、50石の下級武家の暮らしが
どんなに酷いか、分っていない、亡くなった妻も結局身分の違いに慣れることは
なかった、しばらくはいいが、3-4年すれば必ず、やっていけなくなる、と申し出を
断ってしまった。兄は「朋江はそんな女ではない。覚悟はできている」と説得した
のだが、聞き入れることは無かった。

そんな話があってから朋江が清兵衛の家に来ることは無くなってしまった。

そんな折、藩内で跡取りのことから紛争が起き、粛清が行われたのだが、一人
余五善右衛門(田中泯)のみが、「なぜおれが、腹を切らねばならぬ」と抵抗、
自宅に閉じこもって、成敗に来た目付も切り捨てた。その刺客に選ばれたのが
清兵衛だった。ある夜、老中に呼び出され、藩命だ、と言われてしまう。
自分には幼い子供や母もいるので、最初は断ったのだが、聞き入れられることは
無かった。

成敗に出かける支度を、朋絵を呼んで手伝ってもらった。出がけにもし戻って
来ることが出来たら、嫁に来てくれぬか、と勇気をもって語りかけたが、
朋江はすでに他家への縁談を決めた、と口にするのだった。

余五の家に行くと、彼も藩の騒動に巻き込まれた不遇の身の上をつらつらと
酒を飲みながら語りかける。「逃げる、逃がしてくれ」とも。
しかし、小太刀使いの清兵衛の長刀が竹光(妻の葬式代出すために売ってしま
った)と知り、「俺を竹光で斬りに来たか、甘く見たな」と態度を豹変、
剣戟となった。死闘の上、清兵衛は余五を斃した。

自分も傷を負い、家に帰った清兵衛は、迎えた朋江と抱き合うのだった。

それからは長女の語りとなる。清兵衛と朋江は夫婦になったが平和に暮らせ
たのは3-4年。明治維新の嵐が海坂藩にも訪れ、佐幕であった藩は大勢の
官軍に攻め込まれ、清兵衛は鉄砲に撃たれて亡くなった、とのことだ。

「たそがれ清兵衛は不運な男だという人もいるが、私はそうは思わない。
私たち娘を愛し、美しい朋江さんに愛され、充足した思いで短い人生を
過ごしたにちがいない。そんな父を誇りに思う」と。
長女のそんなセリフで映画は終わる。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2013-04-02 23:33 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

用心棒

●「用心棒」
1961 日本 東宝・黒澤プロダクション 110分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、仲代達也、山田五十鈴、加東大介、司葉子、河津清三郎、志村喬、
    東野英治郎、藤原釜足、沢村いき雄、渡辺篤、藤田進、夏木陽介他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
やはり時代劇の黒澤作品は面白いなあ。ユーモアも盛り込まれ、ストーリー、配役
演出、キャメラ、美術、音楽、エンターテインメントとしての映画のお手本のような
出来だ。どこか、何かが必ず動いている黒澤映画、本作も雨あり、風あり、望遠あり。
そしてシネマスコープのワイド画面をいっぱいに使い、並ぶやくざの対決構図も
迫力ある。またオープンセットの大迫力も、火災や穴の開く大きな酒樽などの
外連味もまた素晴らしい。カメラワークもダイナミックだ。

キャスティングでは、三船はもちろんだが、ニヒルな仲代、やり手のやくざの女房
山田五十鈴の怪演ぶりが素晴らしい。また、ドジなお笑い担当の加東大介、
この人だれ?と思わず乗り出した若き司葉子など、脇を固める黒澤オールスターズの
安定ぶりも、言うことない。相変わらずセリフが聞き取り辛いところはあるが・・。

音楽も、ちょっと大げさかな、とも思えるが、画面に合ったオリジナルはまた「映画
音楽」として素晴らしい。

黒澤自身、ダシール・ハメットの影響を強く受けた、と語っている通り、ハードボイルド
のセンスが光っている。殺陣も、市川昆「木枯らし紋次郎」に影響を与えただろう
様式美から離れた、リアルな斬り合いは、その効果音とともにダイナミックだ。

映画の素晴らしさを語るとき、外せない一作であろう。19本目の黒澤作品鑑賞と
なったが、時代劇では、これが一番かなあ。現代劇では「天国と地獄」か。
何回でも見られるエンターテインメントである。
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ストーリー、こぼれ話などはこちらのWikipediaをご参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-29 23:45 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

赤ひげ

●「赤ひげ」
1965 日本 東宝 185分
監督:黒澤明  原作:山本周五郎「赤ひげ診療譚」
出演:三船敏郎、加山雄三、山崎務、香川京子、団玲子、桑野みゆき、志村喬、二木てるみ
頭師佳孝、土屋嘉男、東野英治郎、笠智衆、田中絹代、根岸明美他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
これまで観た黒澤作品の中で一番長かった。インターミッション付の映画は久し振りだ。
長かったけど面白かった。迫力ありました。配役も綺羅星のごとく。
全体をいくつかのエピソードに分けて、赤ひげ(三船)が率いる小石川養生所の日々を
加山雄三目線で語っていく。
狂女~車大工佐八と女房おなか~蒔絵師六助と娘おくに~女郎屋の下働き、おとよと
4人の女中そして、長次。その間に、六助の臨終に関すること、メタボなお殿様、加山の
身の回りのこと、婚礼などのエピソードが挿入されていく。

各エピソードの中では車大工佐八(山崎務)と女房おなかのくだりと、女郎屋下働き
おとよと幼い長次の一家心中に至るくだりが良かった。役者たちは主役の三船を
筆頭に安定感のある配役ばかりで、安心してみていられた。特にやはり三船は
はまり役ともいうべき演技で、俗っぽさを持ちつつ清濁併せ飲む正義感あふれた
キャラクターを好演、初めて黒澤作品に抜擢された若大将加山雄三も、相変わらずの
滑舌の悪さではあるが、三船に反発しつつ、やがて三船の規格外れの人間性に
触れていくにつれ、医師としての意義に目覚めていく青年の成長を懸命に演じていた。
また、子役二木てるみと頭師佳孝(のちに「どですかでん」)の二人の天才的な演技に
は唸らせられた。

黒澤映画のダイナミズムともいうべき、巨大なオープンセット、カメラアングル
(フレーミング)、ドリーイン・ドリーバック、シルエットの効果的な使い方などなど
映像表現も満喫できる。
それにしても、黒澤作品というのは、画面の何かが常に動いているというイメージ
だなあと思う。人が動くのはもちろんだが、雨、雪、風、ほこり、光という物理的なもの、
カメラがトラックする、ドリーする、ズームする(これはあまりないか)、という風に
常に何かが動いているのだ。典型的なのは走る人や馬を追いかけてパーンする、
というものだろう。

wikipediaによれば本作は『黒澤映画における最後の「白黒映画作品」
「三船出演作品」「泥臭いヒューマニズム作品」』だという。
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この映画のストーリーやエピソードはこちらのwikipediaを参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-19 00:35 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

●「八月の狂詩曲(ラプソディー)」
1991 日本 黒澤プロダクション、フィーチャーフィルムエンタープライズ。(配給:松竹)98分
監督:黒澤明
出演:村瀬幸子、井川比佐志、茅島成美、吉岡秀隆、根岸季衣、リチャード・ギア他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
黒澤信者の方々からは怒られそうだが、個人的にはこれまで観た黒澤作品のなかで
一番納得がいかなかった作品だ。反核反戦はいいのだが、「生きものの記録」の
ようなパワーが感じられない。全体に古臭く、大時代的だ。学校の教育映画のようでも
ある。言いたいことは「家族」なんだそうだが、リチャード・ギアの出現も取ってつけた
感じ。 また、特撮に本田猪四郎を迎えたが、モクモクと湧く灰色の雲は、この時代の
特撮としては稚拙な感じだった。これでよく黒澤が納得したな、と。あれは雲じゃ
なかったのか??
全体として大仰ではあるのだが、村瀬幸子らキャストの演技は確かであった。
ラスト、暴風雨に傘をおちょこにして立ち向かい歩く村瀬の映像は、何かを言い表し
たかったのだろうけど、音楽と合わせて浮いた印象を受けた。
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<ストーリー>
「長崎から少し離れた山村に住む老婆・鉦のもとに一通のエアメールが届いた。
それは鉦の兄であるハワイの大富豪・錫二郎の息子・クラークからで、
不治の病にかかり余命短い錫二郎が、死ぬ前に鉦に会いたいというものだった。

ところが、兄弟が多い鉦には錫二郎という兄の記憶がなく、そんな鉦の気持ちとは
裏腹に、突然現れたアメリカの大金持ちの親せきに興奮した息子の忠雄、娘の
良江はハワイに飛んで行ってしまう。
それによって残された4人の孫・縦男、たみ、みな子、信次郎は夏休みを鉦の家で
過ごすことになった。

孫たちは鉦の家の生活に退屈しながらも、長崎の街にある戦争の傷跡や鉦が
いつも話す昔話を聞いて、原爆で祖父を亡くした鉦の気持ちを次第に理解する
ようになる。そして、鉦がついにハワイに行く気になり、縦男はその旨を手紙に
書いてハワイに送る。
それと入違いに忠雄と良江が帰って来た。手紙のことを知った二人は、その手紙に
原爆のことが書いてあることを知り、急に落胆する。アメリカ人には原爆の話を
してはいけないと言うのだ。
そんな時、突然クラークがハワイからやって来る。縁台で鉦と手を取り合って
対面を喜ぶクラークは「ワタシタチ、オジサンノコトシッテ、ミンナデナキマシタ」と
たどたどしい日本語で語った。
そして長崎で孫たちと楽しい日々を送っていたとき、錫二郎の死を告げる電報が
クラークのもとへ届き、クラークは急いで帰国するのだった。鉦も縁側で
その電報を握りしめていつまでも泣いていた。
そしてこの時から鉦の様子がおかしくなっていく。そして雷雨の夜、突然「ピカが
来た!」と叫びだし、翌朝、豪雨の中で鉦は風に揺られながら駆け出していく。
そして、そんな鉦を忠雄、良江、それと4人の孫たちはこみあげる熱い気持ちの
まま、泣き叫びながら追いかけていくのだった。 」(goo映画)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2013-01-16 22:50 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

わが青春に悔いなし

●「わが青春に悔なし」
1946 日本 東宝 110分
監督:黒澤明
出演:原節子、大河内傳次郎、藤田進、杉村春子、三好栄子、河野秋武、高堂国典、志村喬他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
終戦直後にGHQの存在がある中、作られた、という点を考慮すべきではあるが、
軍の関与から解放され、黒澤本来の反権力思想と、戦後の新しい風が
一体となったドラマとなっている。「女性」という視点、「思想」と「恋愛」と
いう視点、「都会」と「農村」という視点などなど、計算されたプロットが
落とし込まれている。
また走る人をパーンしてそれを連続するカット、(後「七人の侍」などで黒澤が
映画に動きを与える手法として多様。)カットバックでの驚愕表現、効果的な
ズームバックやトラックバック、計算されたフレーミングなど、既に映像
表現家の巨匠としての手法が存分に展開される。
また同フレームで人物を次々とデゾり、顔の変化を出す手法などは
当時としてはユニークではなかったか。

後に所謂黒澤組と呼ばれる配役陣になる前の、大河内傳次郎、原節子、
藤田進らが出演し、三船敏郎以下の布陣を見慣れたものとしては新鮮。
原節子はバタ臭い顔をしているが、艶かしく上目遣いをする演技は
当時の観客を酔わせたことだろう。彼女が農村で鍛えられて、所謂「女権
拡大運動家」として成長するさまは、なかなか良かったが、両家の娘という
「甘さ」がどうも吹っ切れなかった。描き方が短絡過ぎたか。
全編に旧制第三高校逍遥の歌「紅もゆる岡の花 早緑匂ふ岸の色
都の花に嘯けば 月こそかかれ吉田山 緑の夏の芝 ...」が様々なアレンジ
で印象的に使われる。冒頭のシーンは吉田山のハイキングだ。

投獄されるまでの幸枝(原)の行動の煮え切らなさが長かった。
また、八木原の両親。父親(高堂国典)が何も仕事をしないでいて、女ふたりが
やっとの思いで仕上げた田植えを村人に台無しにされるに及び、怒りつつ
田んぼに出てくるというのは、何を言いたかったのかよくわからなかった。
野毛(藤田)と糸川(河野)と幸枝の3様の生き方が、学生時代、戦中、戦後と
変化していく様子を反戦というニュアンスで描いた、と感じた次第。
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この映画のストーリー等の詳細はこちらのWikipediaをご参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-12 22:50 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

蜘蛛巣城

●「蜘蛛巣城」
1957 日本 東宝 110分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、山田五十鈴、志村喬、千秋実、佐々木孝丸、浪花千栄子ほか。
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
後の「乱」に通ずる作品。黒澤の様式美へのこだわりが見られる。大変良くできた
映画だとは思うけれど、個人的に様式美に傾倒した黒澤作品はあまり好きでは
ないので、評価を下げた次第。故に「乱」も未見である。

シェークスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えて翻案したが、
大掛かりなセットや美術、エキストラの動きなどはやはり素晴しいと言えるだ
ろう。ファンタジーとしての出来も良いと思う。霧の中から現れる「蜘蛛巣城址」
という標柱。「つわ者どもが夢の跡」であろ。これがエンドシーンへと繋がって
いく。円谷英二が特技監督をしたという動く森も良かった。
相変わらず、古語調、絶叫調のセリフは聞き取りづらいが・・。

最大の見せ場としてつとに知られる、終盤の「矢ぶすま」のシーンは圧倒的だ。

お馴染みの黒澤組の配役は安定しているが、フィーチャーされた山田五十鈴の
鬼気迫る演技は圧倒的で、不気味な味、おどろおどろしさが誠によく出ていた。
ある意味、彼女がこの映画の主役の一人でもあるだろう。
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この映画のストーリーなど詳細やエピソードはこちらのWikipedeiaまで。
by jazzyoba0083 | 2013-01-08 22:55 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

生きものの記録

●「生きものの記録」
1955 日本 東宝 113分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、志村喬、千秋実、清水将夫、三好栄子、千石規子、上田吉二郎、東野英治郎他。
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
音楽を担当した親友・早坂文雄の遺作として知られる本作、黒澤映画唯一の
反核作品である。フクイチを体験した私たちには、また同日性を持って迫る。
作られた当時はプリミティブな反・原水爆の作品(表現法は凝っているが)だが、
主人公中島翁の「死ぬのは止むを得ない。しかし殺されるのは嫌だ!」という
叫びと、ラストシークエンスでの精神科医(中村伸郎)の「今のこの世の中を
生きている私たちの方がおかしいのか・・・」というセリフは、まさに今の世の中に
突きつけられたセリフとして、残念ながら生きてしまっている。

大上段に振りかぶった(黒澤作品はその手が多いが)タイトルが皮肉を持って
迫るのだ。本作が作られた当時、「第五福竜丸事件」や「ビキニ水爆実験」など
東西冷戦構造から来る原水爆の恐怖というのが市民の間にも高まった時期で、
黒澤本来の反骨・反権力気質が作り上げたものであろう。当時の東宝首脳部が
良く製作を許したものだと思う。

35歳にして70歳の老人を演じた三船、頑張っていたがやはりどこか無理が漂う。
あえて若い三船に老人を演じさせた黒澤の魂胆、あるのだろうけど浮かび上がって
来なかった。脂ぎった移民への情熱の表現だろうか?(本作1番の売りだろうが
何故か私にはピンときませんでした・・・)
またブラジルからの客人、東野の色の黒さは何なのだろうか?
更に大きく残念だったのは、親子間の(妾の子も含め)葛藤相克を表現するパート
と、核に対する恐怖から常ならぬ行動に走る老人と家裁の調停員たちの苦悩とが
うまく両立しきれていないように感じたが、どうだろう。望み過ぎだろうか?
千石規子は、本当に目の演技、視線の演技ができる女優さんだなあ、とつくづく
感じた。
フクイチ前だったらまた別の感想もあっただろうが、それを体験してしまった後に
見た本作は、黒澤が意図しなかった別の命をもう一つ持つことになったのだ。
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本作のストーリーや詳細についてはこちらのWikipediaをご参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-05 17:30 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

虎の尾を踏む男達

●「虎の尾を踏む男達」
1945(1952公開) 日本 東宝 59分
監督:黒澤明
出演:大河内傳次郎、榎本健一、藤田進、志村喬、森雅之ほか。
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<評価:★★★★★★★☆☆>
<感想>
年明け黒澤映画連続鑑賞4作目は、終戦直後に完成していたものの検閲の
関係で公開が52年になった、歌舞伎「勧進帳」を元にした音楽仕立ての
掌編。ミュージカル、と書くものもあるが、ミュージカルというより、音楽に
ストーリーを補うセリフが入っていてそれを邦楽風の旋律で聴かせる所が
4つ位ある、という風に解したい。

桜井長一郎氏のモノマネでしか知らない大河内傳次郎を初めてちゃんと見た。
エノケンも然り。大河内傳次郎、何を喋っているか良くわからなかったけど、
映画スターとしてのオーラを感じる素晴らしい存在感と思った。またエノケンの
一見落語を聞いているかのようなやり取りは、この時代には秀逸なユーモアだ
ったと感じる。いささかオーバーアクションではあるが。
この映画は大河内傳次郎とエノケンの映画、と言い切れるだろう。

劇中歌われる唄は全部何を言っているかわからず、セリフも7割がた聞き取れな
いが、「勧進帳」を知っているのであまり苦にはならなかった。
冨樫とその配下の武士の魂もまた、感動するところであり、かつラストの、目覚めた
エノケンに掛けられてた高価な着物と、印籠は、義経一行の心使いを見た思いで
爽やかであった。あの朝焼けの空は、きっと黒澤がこだわりまくって決めた空に
違いない、と感じた。もう少し長いときっとくどくなるがいい時間配分で終わったと
思う。

さて、戦時中に企画された本作は、当然軍部の指導下にあったわけで、その中で
題材を選択し、もののない時代にあれだけの衣装とセットを組んで作り上げた
黒澤の慧眼には感服せざるを得ない。本作の題材にもまた「時代にそのまま阿ない」
という黒澤の魂胆があるに違いないのだ。
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本作の公開が遅れた曰くなどはこちらのWikipediaを参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-03 21:20 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)