カテゴリ:邦画・旧作( 53 )

清作の妻

●「清作の妻」
1965 日本・松竹映画 93分
監督:増村保造 製作:永田雅一 脚本:新藤兼人 撮影:秋野友宏
出演:若尾文子、田村高廣、成田三樹夫、紺野ユカ、殿山泰司ほか。

日清戦争と日露戦争の頃。地方の農村で起きた事件を通して、
増村監督は何を言いたかったのだろうか。製作は昭和40年だ。

清作が日清戦争から帰ってきた。彼は模範兵で軍隊から表彰を受ける
ほどのまじめ青年。村が怠惰に流れてると観て、軍隊の給料を
貯金して、釣鐘を作り、毎朝早く、村中に響く音を立てて、住民を起す。
自らも畑にでて、農作に精を出す。

一方、街の旦那の囲われものだった「おかね」は、旦那が風呂場で
頓死してしまったことから、1000円という大金を貰って、母と故郷へ
帰ってきた。周りからは白い目で見られている。

そんなおかねに、まじめは清作は惚れてしまう。もちろん、おかねも。
二人で暮らす生活は続かず、今度は日露戦争が勃発。清作は
召集される。しかし、2年で怪我をして後送となり、家に帰ってくる。
まじめな清作は、傷が治ればまた戦場に行く、と主張、村人は
「こんどこそは戦死して来い」と声を掛ける。
もう、離れたくないおかねは、出発壮行会の席で、五寸釘で清作の両目を
潰してしまう。村人にリンチ同然にされるおかね。警察に突き出された。
最初、兵役逃れの自作自演か、と疑われたが、戦場に行くことは無かった。
おかねの行動に激怒した清作だったが、懲役2年の刑期を終えて出所した
おかねは、清作の元に帰り、一生かけて罪を償いますから、殺そうと
どうしようと、好きにしてくださいと申し出る。
すでに怒りも静まっていた清作は、おかねをそばに置くことにする。

明治時代の閉塞した農村と戦争。いつも衆人環視の中に居る男と女。
戦死してしまうくらいなら、目を潰しても自分のそばに置きたいと思った
おかねの心情は、空恐ろしいくらいの激情だ。明治時代だからこそ、
だろう。安倍定事件を思い出した。
目を潰され全盲になった清作も、結局おかねを許すわけだが、これも
私にしてみれば不可解だ。そんなに安気なものでもあるまいに。
しかし、当時の農村の閉鎖的な封建的な暴力的な環境は良く表現できて
いたのではないか?若尾文子が良かったです。

増村監督という人、こんな映画を撮っていたと思うと、その後、
テレビの世界にも進出、「ザ・ガードマン」や、堀ちえみの「スチュワーデス
物語」の脚本を書いたりしているのですね。振幅の激しい多作な人です。
尚この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2006-09-03 16:21 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

日本の夜と霧

●「日本の夜と霧」
1960 日本 松竹 107分
監督:大島渚、製作:池田富雄、脚本:大島渚、石堂淑朗、撮影:川又昴
出演:桑野みゆき、津川雅彦、小山明子、渡辺文雄、芥川比呂志ほか。

最近、こんなにイデオロギー臭い映画を観たことがなかった。あまりにも
直接的な共産党批判や礼賛、「破防法」や「安保体制」を巡る思想の
激突。これじゃ、4日で上映禁止、大島渚が松竹を飛び出すハズだ。

大島は京大で学生運動に深くかかわっていたことがあるので、自らの
総括として書いた、とも云われる。これで芸術祭に参加したんだから
大した度胸だ。

全編に流れる「若者よ~、体を鍛えておけぇ~」というコミンテルンの歌
ですか?
大学の寮に生活する学生運動家たち。それぞれのスタンスの思想を
抱えながら、体制に批判的である。その温度差がさまざまな軋轢を産む。
まず渡辺と桑野の結婚式のシーンからスタート。それが、思想をぶつけ
あい、イデオロギーで相手を罵倒する修羅場と化していく。
そんな中で、樺美智子死亡事件が起きる。そして、寮に警察のスパイと
いう男が忍び込み、捕らえられる。
口先ばかりでアジる男、カラ元気なだけの男、日和見の男、穏健派、
武闘派さまざま入り乱れて、ある意味青春が描かれていく。
「破防法が制定されてしまうと、また戦前に戻るような気がするのだが」と
のセリフは、破防法を別な言葉に入れ替えると今でも十分通用する。

津川や渡辺、小山らの俳優以外の学生役が、カミカミだったりするのだが
それが、変にリアリティをかもしだしていている。大島の狙いなんだろう。
それと昭和35年の時代の雰囲気を判っていないと、今の若い人には
理解が難しかろう。昔の大学生って、こんな感じでもあったのだよなあ。
それにしても、珍作ではある。川又昴の長回しの映像が独特の味付け
になっている。
この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2006-08-28 23:13 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

その男、凶暴につき

●「その男、凶暴につき」
1989 日本 松竹 103分
監督:北野武、監修:黒井和男、製作:奥山和由、脚本:野沢尚
出演:ビートたけし、白竜、川上麻衣子、佐野史郎、芦川誠ほか。

いまや、伝説になってしまった感のある北野武監督第1回作品。
北野監督の今日まで続く、虚無の暴力の原点。
初め、深作欣二監督がメガフォンを取る予定だったが、都合で
折り合いがつかず、たけしが監督をすることになったのだが、
野沢台本に注文つけまくり、製作の奥山和由とも意見の対立が
あったとか。奥山はこの直後に撮る「RANPO」でも、黛りんたろう
作品を自ら監督をして作り変えてしまったりしている。

東京のある警察署の刑事、吾妻は、トラブルの多い問題児。
そんな彼が、新人の菊池刑事と共に、麻薬組織に迫る。
吾妻の妹は少し精神がおかしいのだが、組織のチンピラたちが
彼女を誘拐しクスリを打ち輪姦していしまったことから
吾妻の暴力性が加速される。
見所は吾妻の対極に位置づけらる白竜が演ずる清弘という
ヤクザ。こいつも狂気を含んだ男で、たけしの狂気と対峙する。

映画全体としては、荒っぽいつくりで、スプラッタか、と思うほど
血が飛び、暴力が荒れ狂う。
どこか、この暴力を見ながらカタルシスを感じているのは人間は
深いところで、暴力性をこらえにこらえて生きているのだな、と
共感を覚えるからか。たけしの作品は「血と骨」以外に観ていないが、
多分、どの映画も、暴力描写から伝わるものは同じじゃないか、と
感じる。完成度は、随分あがっているけど。
最後に、白竜に撃たれまくっても倒れないたけし。日本映画だなあ。
この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2006-08-05 01:20 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)