カテゴリ:邦画・新作( 80 )

●「超高速!参勤交代 リターンズ」
2016 松竹 「超高速!参勤交代リターンズ」製作委員会 119分
監督:本木克英  脚本:土橋章宏
出演:佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、寺脇康文、上地雄輔、知念侑李、柄本時生
   六角精児、古田新太、渡辺裕之、中尾明慶、陣内孝則、西村雅彦、市川猿之助他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
肩の力を抜いて、思いっきり楽しめる邦画ってあるようでなかなか無い。
「シン・ゴジラ」や「怒り」「64」などが評価されるのはそれはそれで良いが、
喜劇が一段下に観られていないか、気にかかる。本作は、良き原作を得て、これを
本木監督が見事に痛快喜劇映画に仕立て、私もめっぽう面白く観させてもらった。

さて、柳の下のドジョウではないが、続編はなかなか難しい。前作は超短期間で
貧乏藩が江戸へ出府する、という難題を知恵と勇気で成し遂げるというカタルシスで
あったが、今回はそれだけでは客は満足しないわけだ。そこで、本作では
前作で悪行がバレて蟄居中だった松平信祝(陣内孝則)を更に悪に仕立て、
8代将軍吉宗公の日光参内恩赦で老中首座に戻し、湯長谷藩に対しついには
百姓一揆を仕立ててそれを理由に藩をところ替えとして城を尾張柳生藩に渡して
しまい、帰ろうとする藩主内藤(佐々木)らを窮地に追い込む作戦に仕立てた。

新たに、大岡忠相、柳生一族らが登場、超特急の参勤交代というよりも、老中
松平信祝の悪行(ついには日光から帰る吉宗公をも討ち、天下人になろうという
野心さえ持っていた)にハイライトが当たり、あくまでも地元の民百姓を思う
内藤らとの知恵比べと前作以上の剣戟が見どころとなっている。
ラストはまるで7人の侍みたいだ。

時代劇の王道としての勧善懲悪(大岡忠相や吉宗公、松平輝貞らの存在)と
殿様であっても民を思う内藤の純真さ純朴さに見ている人は快哉を叫ぶであろう。
こうなって欲しい、というところでそうなるのが予定調和の快さ。
前作ほどの驚きはないが、本作も楽しい一編に仕上がった。
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<ストーリー>
老中・松平信祝(陣内孝則)の差し金により幕府から突然の参勤交代を命じられた
磐城国の湯長谷藩藩主の内藤政醇(佐々木蔵之介)ら一行は、金も時間も人手もない
知恵をこらし江戸へ参勤。
そして藩に戻る交代の路につくが、その途中、湯長谷で一揆が起きた旨が伝わる。
参勤のときに政醇たちに敗れた信祝が、さらに大きな権力と最強の刺客を使って
逆襲に出たのだった。
一揆を収めるためには2日以内に藩に戻らねばならず、また、交代であるからには
大名行列も必要に。行き以上の速さで宿役人の目をくらましながらなんとか湯長谷に
たどり着いたものの、すでに田畑は踏み荒らされ、城を乗っ取られた後だった。
城をおびただしい数の幕府軍が取り巻いているのに対し、藩主らはたったの7人。
湯長谷藩は再び絶体絶命の危機に陥る。(Movie Walker)






by jazzyoba0083 | 2017-09-13 23:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

後妻業の女

●「後妻業の女」
2016 東宝 「後妻業の女製作委員会」(毎日放送、読売テレビ他) 128分
監督・脚本:鶴橋康夫  原作:「後妻業」黒川博行
出演:大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ、風間俊介、余貴美子、ミムラ、松尾諭他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
鶴橋監督といえば、読売テレビディレクター時代からドラマの傑作を作る演出家で賞の常連だった。
同業に身を置くモノとしては、いかんのだろうけど、彼のドラマは観たことがない。なので、本作
一発での評価で彼を計るつもりは毛頭ないが、本作について言えば、どこか締まらない。脚本が。

原作は有名になった、実話をベースにした小説で、これを下敷きにして作劇しているわけだ。
大竹のたぬきぶりは確かにうまいものが有るし、ブルーリボン賞を受賞しただけのことはある力量と
思うが、昔からのファンとしては、最近はどうも「悪上手」「やりすぎ」という感じを受ける。
トヨエツの受け流しがなければ相当息苦しい映画になっていたかもしれない。

テレビ育ちの監督だけあって、テンポも良いし、話の転がし方も早いしビジュアルもテレビ的に工夫
されていて、面白い。けど、これは実話がベースにあるという観客の安心感によるところが大きいの
ではないか。

主人公、小夜子はいわゆる毒婦であり、同情の余地はない。したたかさ、たぬきっぷり、はよく出ていたし
大竹のそれについての演技も認めざるを得ないが、ラストのカタルシスの持って生き方が、喜劇で終わらそうと
したので、観ている方は鬱屈が溜まったまま劇場を出ることになるのではないか。
「したたかな小夜子は、これからも老人をだまくらかして金を巻き上げるのである!」というある種の
エールのように(彼女とコンビを組む結婚紹介所所長のトヨエツとて人殺しであるわけ)感じてしまい、
これでは、私としては溜飲の下げ場所、コメディとしてのパンチラインが見えず、極めていやな
鑑賞後感となってしまった。大竹の息子を演じる風間俊介は下手くそ。弁護士に雇われ小夜子の近辺を洗う
探偵、永瀬正敏の立ち位置も曖昧。唯一鶴瓶が演じたオヤジのキャラクターが光った。
それと多くの関東俳優が喋る大阪弁は、ネイティブからしてたら相当の違和感があるのではないか。

鶴橋監督も80歳近くなり、バイタリティは感じるが、ダッチロールはあきませんなあ。
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<ストーリー>
金持ちの男の後妻に入り、全財産を奪う“後妻業の女”と彼女に翻弄される人々を描く、大竹しのぶ主演の
ユーモラスな人間ドラマ。後妻業の女とグルになって人を騙す結婚相談所の所長を豊川悦司、ターゲットに
なる不動産王を笑福亭鶴瓶が演じるなど、実力派たちの演技が物語をより濃密なものにしている。
監督は『愛の流刑地』の鶴橋康夫

結婚相談所主催のパーティーで可愛らしく自己紹介する武内小夜子(大竹しのぶ)の魅力に、男たちは
イチコロになっている。その一人、耕造(津川雅彦)と小夜子は惹かれ合い、結婚する。二人は幸せな
結婚生活を送るはずだったが、2年後、耕造が亡くなる。葬式の場で、小夜子は耕造の娘・朋美(尾野真千子)と
尚子(長谷川京子)に遺言公正証書を突き付け、小夜子が全財産を相続する事実を言い渡す。
納得のいかない朋美が調査すると、小夜子は後妻に入り財産を奪う“後妻業の女”であったことが発覚する。

その背後には、結婚相談所の所長・柏木(豊川悦司)がいた。朋美は裏社会の探偵・本多(永瀬正敏)とともに、
次々と“後妻業”を繰り返してきた小夜子と柏木を追及する。一方小夜子は、次のターゲットである不動産王・
舟山(笑福亭鶴瓶)を本気で愛してしまう……。(Movie Walker)



by jazzyoba0083 | 2017-09-02 23:10 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

関ヶ原

●「関ヶ原」
2017 日本 東宝映画、ジャンゴフィルム 149分
監督・脚本:原田眞人
出演:岡田准一、役所広司、平岳大、有村架純、東出昌大、北村有起哉、西岡徳馬、松山ケンイチ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想:ネタバレに近い感想です。ご注意ください。出来ればご覧になってからお読みください
原作既読。原田作品は前作の「日本のいちばん長い日」の出来が良かったのでキャストも含め
期待してシネコンへ。結構入ってましたね。

で、2時間半の上映が終わって、館内の人に訊きたかった。「分かりました?」と。
これは難しい映画だ。いきなり合戦前夜の全体像を要求される。「蔚山の戦い」と言われて観客の
何人が分かるでしょう?それに朝鮮出兵、秀次事件、前田利長事件、会津征伐など、関ヶ原の
背景になる重要な事柄の知識が要求される。なので、早口での会話は時として何を言っているのか
分からないときがあった。さらに、どちらが西軍でだれが東軍なのかも、相当わかりづらい。そもそも
秀吉恩顧の大名たちだから余計にだ。前作でもそうだが、事象よりも人間にスポットを当てて映画の
面白みを描いて見せる原田監督としては、確かに石田三成という人物は「仁」「義」に篤い忠義の
臣であり、彼の「義」と家康の「利」の戦いに負けた、ということは浮かび上がっては来たが、
周辺の事情が分かりづらかっただけに残念だった。島左近、大谷吉継との友情は分かったけど、
大谷がなんであんなカッコをして神輿に担がれて戦をしていたか、についても説明はない。

私が一番人として魅力があるな、と思ったのが小早川秀秋(東出昌大)。合戦時には15000の
大軍を要して西に付き松尾山に陣取ったが、結局東に寝返り、善戦していた島、大谷部隊を
襲い、合戦の趨勢を決めてしまった、Mr.裏切りだ。これも映画では描かれないが、小早川は
北政所(高台院)の甥っ子であり、かつては木下、羽柴を名乗っていたばりばりの豊臣親族だ。
だが、淀君に秀頼が生まれると秀吉いとたんに冷遇され、岡山小早川家に養子に出される。
その後もすったもんだあり、三成に恨みを持つ状況もあったのだが、血は豊臣。
 島左近の息子が決死の覚悟で小早川本陣を訪れ、兵を動かしてほしいと懇願するも、本人は
三成側に兵を動かしたかったが、家康に送り込まれた家老らに押しとどめられ、自らの意思とは
逆の動きをすることになってしまう。(あくまで映画での話)秀秋、この時18歳。彼はその2年後、
20歳で亡くなる。大谷吉継の呪いに狂死した、ともいわれる。

閑話休題。本作、まず良い点。映像。合戦のリアリズムを含め、画作りは秀逸。東本願寺や
彦根城といった国宝が舞台を貸すという画面。カット、編集も含め全編秀逸。特に金と時間を
掛けて(CGの力も借りたけど)作られた合戦シーンは迫力満点だ。
加えて、やはり上手い岡田准一、役所広司。これに味わいを加える島左近役の平岳大、大谷吉継役の
大場泰正らの脇を固める渋いキャスティング。これも素晴らしい。女性陣の配置も単なる彩りだけ
ではなく、きちんとした役が振られ、映画を面白くしていた。秀吉役の滝藤賢一の名古屋弁は
パーフェクト。北政所のキムラ緑子のほうはいまいち。

一方、残念だった点。原田監督自身、関が原を製作するに当たり、最初は島左近を、次には小早川秀秋を
さらに島津義弘を、主人公にしようと迷っていたように、この時代において人物を描くのは誠に難しい。
当時の時代背景を説明しようとすると、人物説明を含め長い長い前説が必要になるが、そうもいかず、
原田監督自身、その端折り方をどうするか悩んだのではないか。結果、相当予習をしていかないと全体像が
分からないことになった。本作は合戦を時系列的に追うのではなく、あくまでも石田三成の人生を
描くのが目的であるから、思い切って端折ったのだろうけど、やはなぜあの時代石田三成はああいう生き方を
したのか、を浮かび上がらせるのにはチカラが弱いと感じた。ただ、この題材を映画にした原田監督には
敬意を評したい。

本作を一度観ただけで、全体を把握出来て、三成の人生に深く思いを致した人がいたら、私は心から尊敬申し
上げる。そういう人には極めて面白い映画なんだろうなあ。かなり予習していったのに、映画の良さの半分も
分からなかったかも。
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<ストーリー>

戦国史上最大の合戦である関ヶ原の戦いを描いた司馬遼太郎のベストセラー小説を岡田准一、役所広司ら実力派

俳優の共演で映画化した時代劇。正義で世の中を変えようとする石田三成や、天下取りの野望を抱く徳川家康ら、

武将たちそれぞれの思惑がつづられる。監督は人間ドラマの描写に定評のある原田眞人。


1600年10月21日、長く混迷を極めた戦国時代を終わらせ、その後の日本の支配者を決定づけた戦国史上最大の

天下分け目の決戦“関ヶ原の戦い”は、たった6時間で決着した。石田三成(岡田准一)は豊臣家への忠義から

立ち上がり、圧倒的に有利と言われた西軍を率いて合戦に挑んだ。しかし、権力に燃え、天下取りの私欲の

ために戦う徳川家康(役所広司)に敗北を喫する。

そして、命懸けで三成を守り、愛し続けた忍び・初芽(有村架純)との許されない淡い恋の行方は……。





by jazzyoba0083 | 2017-08-28 14:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

君の膵臓をたべたい

●「君の膵臓をたべたい」
2017 東宝映画 115分
監督:月川翔  原作:住野よる
出演:浜辺美波、北村匠海、大友花恋、矢本悠馬、桜田通、上地雄輔、北川景子、小栗旬ほか
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
原作は未読。去年の夏のように邦画にパンチが効いたのが少ないなあ、と思い、原作を読む
方を先にしたほうがいいじゃないか、と分かりつつ、アニメや青少年向け作品で比較的若い人が
多かったシネコンに行ってみた。映画を見た人からも「原作を是非」と言われていたが、やはり
そうすべきであったと観終わって思った。

泣きたいんだろうなあ、と思しき女子高生や若い女性が多い客席におじさん一人は大いに場違いな
感じではあった。^^;
さて、本作では小栗旬の案内で映画が進行する。で、現在母校の教師となった彼が、高校生時代を
振り返り、カットバックしながら話が進んでいく。今回映画を見終わって、この手のブログを書く
ものには禁じ手なれど、ネット上でどういう評価があるか覗いてみた。

だって、私にはそこら辺にある高校生悲恋映画と変わんないじゃないか?としか思えなかったし、
泣けなかったから。確かにラスト近く、主人公が相手の母親から日記をもらうところで号泣する
シーンではジーンと来るは来たけど、それだけだ。

本作、原作とは大きく異なって脚色されているのだね。原作には成長したあとの小栗旬や北川景子は
出てこない。あくまで高校生のお話として終えている。ダブル主役の二人がそれほど名前が売れて
いないから、製作サイドでは小栗や北川の名前で客を引きたかったのだろうけど、山内咲良を
演じた浜辺美波と、ボクを演じた北村匠海、恭子役の大友花恋、ガム君の矢本悠馬で突っ切れば
良かったのにと感じた人は原作を読んでいた人の感想として、もっとも(正しいとは言わない)だと
思う。演出にチカラがあれば彼らだけで原作通りの感激を持った作品が出来たと思うのだが。

俄然原作が読みたくなったわけだが、おそらく原作では「共病日記」の存在がもっと大きくて、
主役の二人の性格のやりとりが瑞々しく描かれているのだと思う。浜辺美波、頑張っていて
良かったと思うけど、ちょっとチカラ入り過ぎな感じ。
ストーリー進行も大人になってからの二人に重心がかかりすぎてしまい、高校生の恋愛観というか
主役二人の得意な立ち位置から発生する人格のやりとりのスリリングな点やみずみずしさが
だらけてしまって、どよ~んと感じ締まらないなあ、と感じたのだった。

ラスト、咲良が意外な結末になるあたりから話が締まってくるのだが、時すでに遅し。恭子の
結婚式に駆けつけたボクが恭子の前で「友達になってください」というシーンもいささか間抜けな
感じだった。咲良は不治の膵臓の病気であるが、その病気の詳細は明らかにされないので、どのくらい
重篤なのかが今ひとつ理解出来なかった。まあ、咲良の最期が最期だけに、どうでもいいといえば
いいんだけど、ボクの咲良に対する思いの加減を、病気の重篤加減からも知りたいと感じたのだった。

映画の出来とは全く関係ないけど、このタイトル、私は好きではない。気持ちは分かるのだけれど。
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<ストーリー>
“泣ける小説”として人気を博した住野よるのベストセラー小説を映画化。膵臓の病を患う少女と、彼女の言葉を
胸に後に教師となる少年の物語がつづられる。
浜辺美波と人気バンド、DISH//の北村匠海というフレッシュなキャストに加え、原作にはない12年後の現在を
描くパートでは主人公を小栗旬、ヒロインの親友を北川景子が演じる。

高校時代のクラスメイト・山内桜良(浜辺美波)の言葉をきっかけに母校の教師となった僕(小栗旬)は、教え子の
栗山(森下大地)と話すうちに、彼女と過ごした数ヶ月を思い出していく……。

重い膵臓の病を患う桜良が密かに綴っていた「共病文庫」(=闘病日記)を偶然見つけたことから、僕(北村匠海)と
桜良は次第に一緒に過ごすようになった。だが、眩いまでに懸命に生きる彼女の日々は、やがて終わりを告げる……。
桜良の死から12年。結婚を目前に控えた桜良の親友・恭子(北川景子)もまた、僕と同様に桜良と過ごした日々を
思い出していた。そして、ある事をきっかけに、僕と恭子は桜良が12年の時を超えて伝えたかった本当の想いを
知る……。(Movie Walker)




by jazzyoba0083 | 2017-08-11 13:00 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

この世界の片隅に

●「この世界の片隅に」
2016 日本 Mappa,Genco.126min.
監督・脚本:片渕須直  原作:こうの史代
声の出演:のん(能年玲奈)、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
良かったのだが、何が良かったのか自分として今ひとつ腹に落ちていないので、下記のように
とりとめのない感想になってしまった。恐らく私にとってこの映画は一度観たくらいじゃ
その良さが真に分からないのでしょう。また観ることにする。

「クラウドファンディング」「数少ない上映館」「口コミ」➤大ヒット!というこアニメ映画。
「君の名は。」との相乗効果もあったと思うのだけれど、あちらの超大ヒット、一大ブームに
比べれば地味な内容だったが、特に玄人筋に評判がよく、主要な賞は本作が獲得した。
映画館で観ようか、DVDが出るまでまてばいいか、迷っていたのだが、昨日時間が出来たので
まだ午前中に上映してくれているシネコンに出かけた。

本作は広島市と隣の軍港呉市を舞台にした、北條すず、という一人の女性を通じで、昭和10年代前半から
終戦、そして終戦直後までの時代の空気といったものを描いている。もっと「原爆」がフィーチャーされ、
悲惨な涙流れる映画か、と思ったのだが、さにあらず。原爆については、すずさんの実家がやられるのだが、
本人は呉市にいて、「あ、今なんか光った?」「うん、光ったね、なんだろう」くらいで、やがて大きく
なるきのこ雲が現れるくらいで、イメージとしての悲惨なカットはあるけど、それがメインではない。

「その時代の「ごく普通の庶民の生活」を「普通に」切り取ることによって、逆に「普通でいられることの
ありがたさ」「普通が一変してしまう恐ろしさ」が、映画を観終わってからじわじわと胸に迫る。」
(上記の感想が一回観た段階での私が総括出来る感想だ。まだ足りてないような気がする)
「戦争をしているのはいつも政治や軍人たちであり、庶民はそれに振り回されつつもなんとか暮らしを
楽しもうと工夫している」という見方も出来るかもしれない。

本作を観た多くの人が、いい映画だった、と声を高らかに言っているわけだが、(評論家も素人も)
何がそんなに良いんだろう、という気分もあった。エンディングあたりで鼻をすする音も聞こえたが、
私は胸が一杯になることはあっても涙が流れる、というところまではなかった。
感動が無かった、ということでは全然ない。個人的な受け止め方の問題であろう。

北條すず、は、のほほんとしていておっちょこちょいで慌て者、天然。でも気がよく周囲からは嫌われる
ことのないタイプ。彼女を取り囲む広島の家族。そして嫁ぎ先の呉市の北条家の人々。特に北条家の兄嫁
径子とのやりとりなどを、その時代を覗いているかのようなリアルな庶民の生活を活写することにより
生き生きとした暮らしが目の前に広がる。食事はどんどん粗末になり配給は途絶え勝ち。そんななかでも
庶民は力強く「普通の生活」をしようと工夫し頑張る。
すずの兄が石ころ一つになって帰ってきたり、径子の娘とすずが散歩中、アメリカ軍の落とした時限爆弾で
娘が爆死し、自分も右腕の肘から先が吹き飛ばされるのだが、すずは泣きわめいたり誰かを恨んだりは
はしない。戦争だから、というどこか諦観のようなものは感じる。だが義姉の娘を殺してしまったことに
ついては自分を責めるのだった。それが時代のリアリティなのだろう。

原作を含めた主なスタッフに当時を知る人はいないから、そうとう時代考証し、現地を調査したのだろう。
まるで当時のその世界に自分が立っているような気にさえなる。軍事に関することも詳しい点まで調べてある。
家の中にある小物、衣服、などもキチンと嘘の無いように描かれている。それがないと物語全体が生み出す
リアリティは出ないのだ。片淵監督は、「最近の戦争映画は記号的になってしまい、当時のありのままの
世界を見せてくれる作品が少なくなっている」とし、さらに

「(『この世界の片隅に』の舞台となる)戦時中から終戦直後の混乱期にかけての世界が、あまりにも
自分たちの接している日常的な空間とは異質だからです。異質だからこそ、そこに説得力を持たせる必要が
あって、その日常的な空間を想像力で埋めてはいけないだろうな、と思った
。「私たちはこの時代のことを
こんなふうに想像しました。だから、この異質なものを受け止めてください」というのは、途中で理屈が
ねじ曲がっている。

だとしたら、すずさんを通じて、ここで描かれている世界も自分たちが今いる世界の一部なんだと認識し
直してほしい。71年前の世界を、自分たちのいる世界の一部として描かなければいけないと思ったわけです。
それはもう想像力を廃したところで成立しなければいけなかった。」(以上、引用「KAI-YOU」

まさに「想像力を廃したところ」での力強さがこの映画の身上だといえるだろう。それによって、観た人の
多くの心に「そのひとのすずさん」が生まれたのではないか。
原作のマンガが有ったとは言え、このような力強い作品を創り出した片淵監督の今後にも期待したい。
最後になったが声優、のん の存在はこの映画にとってとても大きなものであった。すずをすずたらしめた
功績の大きな部分は彼女の声にある。家族で観に行って鑑賞後語り合っていただきたい映画である。
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<ストーリー>
 戦時下の広島の軍港都市・呉を舞台に、この街に嫁いできたのんびり屋のヒロインが、物がなく苦労が
絶えない日々の中でも持ち前の明るさとしなやかさで、つましくも心豊かな生活を送っていくさまと、
そんなささやかな幸せが徐々に戦火に呑み込まれていく残酷な現実を、丁寧な日常描写の積み重ねで
描ききった、こうの史代の傑作漫画を「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督が長編アニメ映画化
した珠玉の感動作。TV「あまちゃん」で一躍国民的人気女優となった能年玲奈が“のん”名義でアニメ
映画に初挑戦し、ヒロインの声を好演。

 1944年(昭和19年)2月。絵を描くことが好きな18歳のすずは、急に縁談話が持ち上がり、あれよあれよ
という間に広島市から海軍の街・呉に嫁にやってくる。彼女を待っていた夫・北條周作は海軍で働く文官で、
幼い頃に出会ったすずのことが忘れられずにいたという一途で優しい人だった。
こうして北條家に温かく迎えられたすずは、見知らぬ土地での生活に戸惑いつつも、健気に嫁としての仕事を
こなしていく。戦況が悪化し、配給物資が次第に減っていく中でも、すずは様々な工夫を凝らして北條家の
暮らしを懸命に守っていく。
そんなある日、道に迷っていたところを助けられたのがきっかけで、遊女のリンと仲良くなっていく
すずだったが…。(allcinema)

<IMDb=★8.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:---- Audience Score:94%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=348641#1こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-03-12 13:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

殿、利息でござる!

●「殿、利息でござる!」
2016 日本 松竹・東日本放送 129分
監督・脚本:中村義洋   原作:磯田道史「穀田屋十三郎」
出演:阿部サダオ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、寺脇康文、キタロウ、千葉雄大、橋本一郎、中本賢、西村雅彦
   堀部圭亮、松田龍平、草笛光子、山崎努、羽生結弦(友情出演) ナレーション:濱田岳 他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
私は邦画の中でも時代劇が好きで、中でも事実に根ざした時代劇が特に好み。一方、先日の
「情熱大陸」で観た本作の原作を書いた磯田道史の凄さも確認したく、WOWOWでの放映を機に
観てみた。メガフォンを取った中村監督作品では一連の伊坂幸太郎ものが好きで、全部観ている。
本作も、脚本構成作家から叩き上げてきただけあり、作劇は確かで、面白く出来上がっていると感じた。
★は7.5。
冒頭の初代浅野屋(山崎努)が壺に銭を入れるシーン、更に夜逃げする一家に声を掛ける
シーンを始めとして、いろんなところに細かく埋められた伏線が、ストーリーの展開につれて
見事に回収されていくが、このあたり観ていて気持ちがいいものだ。オチは、浅野屋の正体。
そして宿場のだんな衆が寄進を競うお寺の住職が記録した本がこの作品の元になってますよ、
さらに主人公の穀田屋酒店は今も仙台にありますよ、というもの。これが歴史好きにはたまらない。

出てくる人が、伊達藩の収入役・松田龍平以外、(彼もそんなに非道な悪人ではない)基本的に
全員いい人で、それも、そこまで行くか!というくらいいい人だらけ。それがまたこの作品の
最大の魅力である「痛快さ」を創り出しているし、「売り」なポイントなんであろう。
現実社会への皮肉、とも取れる。

更に役者が良い。阿部サダオ、瑛太、寺脇、キタロウ、西村、松田龍平、など個性派が揃い、
加えて、山崎、草笛のベテランが押さえる。だから千葉雄大(宮城県出身繋がり)やゲストの
羽生くんら若手が出てきても、それはそれとして観ていられる。(羽生くん、結構上手いけど)

貧乏な村の衆が、一所懸命にお金を集めて殿様に貸そうとする物語、丁寧に表現はしているが
一年一年経過を説明しすぎたんじゃないか、もう少し短くしても良かったんじゃないかな、とは
感じた。
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<ストーリー>
 『武士の家計簿』の磯田道史が江戸時代に貧しい町を救うために奇想天外なアイデアで藩主に立ち
向かった実在の商人の知られざる感動歴史秘話を綴った評伝『穀田屋十三郎』を「予告犯」「残穢【ざんえ】
 -住んではいけない部屋-」の中村義洋監督、「舞妓 Haaaan!!!」「夢売るふたり」の阿部サダヲ主演で
映画化した痛快人情時代劇コメディ。
共演は瑛太、妻夫木聡、竹内結子、松田龍平、山崎努。また、フィギュアスケーターの羽生結弦選手が
殿様役で映画初出演を果たしたことも話題に。

 江戸時代中期の仙台藩。百姓や町人には重税が課され、破産や夜逃げが相次いでいた。貧しい宿場町・
吉岡宿も例外ではなく、造り酒屋を営む穀田屋十三郎は、そんな町の行く末を深く案じていた。
ある時彼は、知恵者の篤平治から、町を救うあるアイデアを打ち明けられる。それは、藩に大金を貸し
付け、その利息で町を再建するという前代未聞の奇策だった。計画に必要な額は、なんと千両(約3億円)。
簡単につくれる額ではないが、宿場の仲間たちを説得し、必死の節約を重ね、家財も投げ打ってひたすら
銭集めに奔走する十三郎たちだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353460#1こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-02-22 22:22 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

俺物語!!

●「俺物語!!」
2015 日本 日テレ他「俺物語!!製作委員会」 106分
監督:河合勇人
出演:鈴木亮平、永野芽郁、坂口健太郎、森高愛、鈴木砂羽、寺脇康文他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

この手の邦画は普段あまり観ないのだが(バカにしているわけではなく、趣味・興味の
範囲外というだけの事)、鈴木亮平のメイクに興味があるのと、青春コメディは好きなので
(「アフロ田中」は面白かった!)WOWOWでの放映を機に観てみた。

これがなかなか面白いじゃないの!原作はコミックで、テレビでアニメになったりもしたが
映画になるまでは知らないお話だった。非常に単純かつ明快かつ率直かつ素直な青春映画で、
テレビや映画「鈴木先生」で活躍した河合監督の、コメディタッチの演出、いいじゃないかな。
「逃げ恥」の野木亜希子の本らしい、ムズキュン恋愛物語だ。

マドンナ役の永野芽郁(知らない人だったなあ)がめっぽう可愛い。主人公剛田猛男(鈴木)が
喉を絞った声で「好きだ!」というのも分かる。この剛田猛男←なんて漫画チックな名前!の
ストレートで愚直な青春恋愛物語。最近流行りの「ムズキュン」タッチな仕上がりである。

郷田は15歳の高校一年生なので、永野芽郁は別として鈴木亮平や坂口健太郎はいささか年齢的に
無理があるが、それは忘れられる面白さがある。剛田の両親が寺脇と鈴木砂羽なのだが、
3人が一緒だと親子とは思えないのも、あざといけど笑える。
「男の中の漢(おとこ)」思い込んだら一直線、純情・正義の味方の剛田猛男が、チンピラ
(中尾明慶)にカラマれた少女・大和凛子(永野)を助けたことから彼女にに惚れられ、
自分も強烈な一目惚れをする。しかし、一緒にいた超モテ男の大親友、スナこと砂川(坂口)が
いつものようにモテているに違いないと大きな勘違いをし、実直かつ一所懸命に、永野とスナを
くっつけようとする。凛子はもどかしくてしょうがない(好き、といえば済むんだけどねえ)
それとスナは分かっていて、親友剛田に凛子が好きなのはお前だ、と言ってやらない。
(おせっかいが嫌いなロンリーウルフ的存在なものでww)かくして、大和の思いの伝わらない
もどかしさと、剛田の真剣そのものの勘違いにイライラ、ムズムズしがら映画は進む。

このあたりは原作に有るんだろうけど、映画としての構成はさすがに、本年一番の評判ドラマ
「逃げるは恥だが役に立つ」の作家である野木亜希子の方程式に乗っかっている。
あのテレビドラマを観てからこの映画を観ると、根っこは同じだな、と思うだろう。
かく言う私も「逃げ恥」の大ファンであったから、同趣旨の本映画も好ましく観られた。

ここまでド直球に青春されると宮藤官九郎も真っ青な出来で、悪く言えない。年かさながら
体重を増やして剛田猛男を演じた鈴木亮平の存在無くして、またマドンナ永野芽郁の存在
なくして本作は語れない。スナの坂口健太郎も含め、テレビ「逃げ恥」の新垣結衣、星野源、
大谷亮平のトリオの構造とそっくりだ。「逃げ恥」が好きだった人は本作は面白く感じる事は
間違いないだろう。

心地よい「乾燥した(良い意味で)青春ラブ・コメディ」を味わえる一作だ。
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<ストーリー>
人気少女漫画家の河原和音とアルコがコラボし、少女漫画としては異色のイカツイ顔の
巨漢男子を主人公に王道ラブ・ストーリーを展開させた同名大ヒット・コミックスを実写映画化。

その見た目とは裏腹に純情な主人公とヒロインとのピュアで不器用な恋の行方を、主人公の
コミカルな豪傑エピソードを織り交ぜつつ甘酸っぱいタッチで綴る。
主人公の高校生・剛田猛男役には「HK/変態仮面」、TV「花子とアン」の鈴木亮平、
共演に永野芽郁、坂口健太郎。監督は「映画 鈴木先生」の河合勇人。

 高校1年生の剛田猛男は、その高校生離れしたルックスでほとんどの女子から恐れられていた。
しかし見た目に反して誰よりも純情で、優しく正義感にあふれた男だった。そんな猛男の無二の親友は、
隣家に住む幼なじみのイケメン同級生、砂川誠。昔から猛男が好きになった女子は、例外なく砂川が
好きだった。
そんなある日、街中でチンピラに絡まれていた女子高生・大和凛子を助けた猛男は、一目で恋に
落ちてしまう。しかし後日、大和と再会した猛男は、彼女もまた他の女子と同じように砂川が好きなのだと
悟ってしまう。激しく落ち込みながらも、大親友の砂川のために2人の仲を取り持とうと健気に奮闘する
猛男だったが…。

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353113こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2016-12-23 22:50 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

君の名は。your name.

●「君の名は。your name.」
2016 日本 東宝 「君の名は。製作委員会」(東宝、コスミック・ウェーブ・フィルム、KADOKAWA、
ジェイアール東日本企画、アミューズ、ローソンHMV)107分
監督・原案・脚本・コンテ・編集・撮影:新海誠
声の出演:神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、成田凌他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

今年8月末に公開されるや、たちまち大ヒットとなり、現時点で日本国民の10人に1人が観た勘定、
興行収入も日本映画の歴史に残る記録となりそうな本作、いまだにその勢いは衰える様子がない。

個人的には積極的に観に行きたい、という範疇の映画ではなかったので、これまでパスして来たが、
ここまで国民的な話題となり、今年度を、いや邦画を代表する一作となることは確実なので、
映画好きとしては、劇場鑑賞はしておかなくてはなるまいと、ほとんど評論家のノリで出かけた。

日曜午後のシネコンの一番大きなスクリーン。小学校高学年から中高生、若いカップルと全体的に
これまで映画館なんかあんまりこないだろう、という人たちで埋め尽くされていた。ちょっと驚き。

この映画がここまでヒットする要因は何か?という鑑賞者としてはいささか不純な動機での鑑賞だったが
全体として、よく出来た映画、と言わざるを得ない。個人的には2つのバイアスがかかるので評価が
甘めに流れるのをお許し頂きたい。一つは、主人公のカタワレ、宮水三葉の生活するところが岐阜県の
飛騨市を模してあると思われ、私が今住んでいるエリアにごく近いこと。もう一つが、もう一方のカタワレ、
瀧くんが生活するところが、東京の四ツ谷で、私が卒業した大学があるこころで、この2つのことで
シンパシーが湧いてしまうところがあり、それは仕方のないこととしてご理解頂きたい。後述するが
見たことのある風景がバリバリ出てくるので・・・。(プロデューサーの川村元気が卒業大学の学科の
後輩であることは鑑賞後に判明)

で、ヒットの要因。ヒットが大ヒットに転換する臨界点というか爆発点というのは統計学上の理論に
なっていて、ある程度の量に達すると、一気にブームが起きる、というもの。本作の大ヒットを
見ていると、映画の出来がどうの、というより、みんなが見ているから観てみよう、という、いわば
「無党派層」を動かしている、ということが出来るだろう。「ポケモンGO」などと同じだ。

それはそれとして、映画の出来として、どの当たりに大衆のコロロを捉える力があるのか、ということを
考えながら観ていたのだが、
「アニメだから出来たこと」「アニメなのに出来ていること」が大きな括りとしてあるだろう。
今やCGで映画が出来てしまうので、精細な画像を作ろうと思えばできるのだが、新海監督は従来の
アニメタッチを崩さず、かと言って、PIXAR系のカリカチュアライズもせず、日本のアニメらしい仕立てと
したことによる安心感がまず来た。

監督自身が云うように本作は究極の「ボーイ・ミーツ・ガール」である。これに「パラレルワールド・
タイムパラドックス」、「純愛・謎解き、サスペンス」という映画のヒット法則を加え、さらにその太いラインに
「若い人たちには恋愛・友情に見られる同世代のシンパシーを、年配層にはかつての夢を重ねられる」のであり、
「都会と田舎(郷愁)」、「スマホやSNSという同世代に共振するガジェット」を配合した、いわば
ヒットすべくしてヒットした、とも見方が出来るのである。嫌な言い方をすればマーケティングの勝利、というか。

そして本作の最大の見どころであり、二度三度と鑑賞するコアファンを獲得しているのが、作画の
「リアリティ」であり、「再現性の高さ」であろう。
「神は細部に宿る」という言葉があるが、まさにこの言葉が鑑賞中に脳裏を横切った。これにより
「聖地巡礼」をするファンを獲得し、これがまたブームアップに寄与しているのである。
おそらく小学生とか中学生らの鑑賞法とはズレるとは思うが、在京者、あるいは東京に一度は生活した
ことがある人に取って、本作に出てくるリアルな光景は、メインストーリーを強力に補完する力と
なり得ているのである。また三葉らが暮らす町で喋る言葉は中京圏の人なら一発で愛着を覚えるで
あろう。

観た方にはくどくなるが、リアルな背景として挙げられるのが、東京・四ツ谷、信濃町、代々木、青山一丁目、
などの景色、またそこに含まれる交通標識などの再現性(リアリティ)、一方、岐阜県は飛騨の古川駅、
図書館などもファンの間では有名になっている。また、教室での板書のチョークの質感とそれを持った指の
動き、サントリーの自販機、雨の道路の質感、岐阜に向かう瀧くんら三人の乗る新幹線車内と車窓の景色、岐阜で
旅館に泊まった時の奥平先輩のネマキから少し見える下着、走る三葉のスカートの中の白いパンツまで、
このアングルからは見えるだろうと思うものが再現性高く、きちんと見えているのだ。普通のアニメなら
いい加減にしてしまう、ノートの中身、書籍やパンフレット、ポスターのデザイン、交通標識の細部に至るまで、
線の精密さというより、再現性の高さ、こだわりに唸るのである。「創りもの」と「現実」の間にある遊び、
というものも見えてきたのだった。
また、三葉の家の、JRの電車や新幹線の、ドアをアップかつローアングルでシーンの転換を図る点、
俯瞰や意識的なローアングルの設定など、画作りの工夫も上手いと思った。
全編を通して光のトーンの再現性が極めて高い作画でもある。

個人的なことだが、通った大学があるJR四ツ谷駅、東京メトロ四ツ谷駅の光景では、背後にイグナチオ教会や
大学校舎の一部が、また新宿方向のビル街には「綿半野原」の文字がキッチリ描かれていて感激してしまった。
タイアップスポンサーは実名で、そうでないものは少し変えて表記されている。

映画は後半に向かって、ストーリーが怒涛のように展開していくが、ラストシーンを含め時空の整合性の
付け方が小さい子たちにはちょっと頭をつかう必要があるものの、安堵するハッピーエンディングがタイトルの
意味と、さらにいえば読点の意味さえも理解できる仕立てとなっているのだ。

おじさんは涙は出なかったが、色んな意味で「唸る」映画ではあった。昨年観た「風立ちぬ」より、インパクトの
強いアニメ映画であった。三葉の実家が神社の宮司ということもあり、純和風な光景、また先進的な東京の光景、
若者の間で決定的なガジェットとなるスマホなどの現代風俗も描かれていることから、作画の美しさも含め
海外の賞を獲ることも多くなるのではないか。
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<ストーリー>
 「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」の新海誠監督が、夢の中で入れ替わる少年と少女を主人公に贈る
青春SFファンタジー・アニメーション。入れ替わりが巻き起こす思春期ならではのコミカルで甘酸っぱい
青春模様と、2人を待ち受ける思いも寄らぬ運命の顛末を美しい映像とともに綴る。
声の出演は神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子。

 千年ぶりとなる彗星の接近を1ヵ月後に控えた日本。山深い田舎町で鬱屈した毎日を過ごし、都会の生活に
憧れを抱く女子高生の三葉。ある日、夢の中で自分が東京の男子高校生になっていることに気づき、念願の
都会生活を満喫する。一方、東京の男子高校生・瀧は、山奥の田舎町で女子高生になっている夢を見る。
そんな奇妙な夢を繰り返し見るようになった2人は、やがて自分たちが入れ替わっていることに気がつく。

戸惑いつつも、メモを残してやりとりしながら、少しずつ事実を受け止めていく瀧と三葉。ところが、
互いに打ち解けてきた矢先、2人の入れ替わりは突然起こらなくなってしまう。そこで瀧は、夢の記憶を
頼りに三葉に会いに行こうと決心するのだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355058こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2016-10-16 16:40 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

グラスホッパー

●「グラスホッパー」
2015 日本 KADOKAWA、松竹、「グラスホッパー製作委員会」 119分
監督:瀧本智行 原作:伊坂幸太郎
出演:生田斗真、浅野忠信、山田涼介、麻生久美子、波瑠、菜々緒、吉岡秀隆、宇崎竜童、石橋蓮司他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

伊坂幸太郎の原作モノも早くも11作目だ。彼の著作は村上春樹と並んで大好きなのでほとんど読んで
いるが、映像化は村上作品と同様に作品を選ぶな、という感じを受けていた。これまで観た伊坂幸太郎原作
映画のうち、「アヒルと鴨のコインロッカー」や、「重力ピエロ」「ポテチ」は原作のニュアンスを上手く活かせて
いたと感じたし、「ゴールデンスランバー」もなかなかだった。思えば中村義洋監督作品が多い。また
濱田岳や岡田将生の存在も大きいと感じる。そういった点、本作はどうか。

伊坂作品の持つニュアンスは、殺し屋を描いてもどこか乾いていて、どこか浮世離れしたポップな抽象感が
あるのだが、それが映像を通して表現できるだろうか、ということだろう。事実、本作は映像化不可能と
云われていたそうで、渋谷交差点の再現性というテクニカルな部分だけではなく、大きいのは蝉だの鯨だの
出てくる殺し屋の世界は、スプラッタも含めて見え過ぎではだめで、読者の頭の中で想像させる面白さがあるのだ、
というところが映像化が難しいという点でもあろう。

結論からういうと、先述のような原作が持つニュアンスは活かしきれていなかったな、ということだ。
殺したやつが見えてしまう自殺お手伝い屋、鯨(浅野忠信)、ナイフ使いの殺し屋、蝉(山田涼介)、押し屋の
元締め槿(吉岡秀隆)らの殺し屋たち、またボス(石橋蓮司)や部下の女殺し屋比与子(菜々緒)、謎の主婦
すみれ(麻生久美子)など。
彼ら上に、主人公である鈴木(生田斗真)と婚約者百合子(波瑠)の物語が乗っかっていく。
本作の面白さは、「殺し屋互助会」みたいなものの存在の物語を読者が頭のなかで綴っていくところにあると
思うのだが、それが具象化されてしまうと、抽象化の面白さが殺されてしまうと感じた。
「頭のなかで物語を綴る」という特性は、伊坂作品に共通のものであるが、本作は特にそれが強いということ。
(ちなみに村上春樹作品はほとんどすべてがそうであろう。「1Q84」などは絶対に映像化して欲しくない。
ま、出来ないだろうけど。というか村上春樹が許可を与えないだろうけど)
これは監督やキャストの力量不足というより、原作が持つ特徴がなせる技、というべきであろう。
確かにジャニーズや人気タレント系女優に頼っている部分が無いではないが、標準以上の演技演出は出来ている
と思うのだが。

最後の観覧車の中での鈴木と主婦百合子の会話まで、なんのことだかよく分からない、という向きもあろう。
そういうお話なのだ。
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<ストーリー>
人気作家・伊坂幸太郎の同名ベストセラーを「脳男」「予告犯」の生田斗真主演で映画化したクライム・エンタ
テインメント。恋人を殺され復讐に燃えるごく普通の男が、いつしか裏社会で繰り広げられる殺し屋たちの闘いの
渦に飲み込まれていくさまを描く。共演は浅野忠信、山田涼介。監督は「脳男」の瀧本智行。

 ハロウィンの夜。渋谷のスクランブル交差点に一台の暴走車が突っ込み、次々と人をはねとばす。犠牲者の中には
心優しい中学教師・鈴木の婚約者も含まれていた。悲しみに暮れる鈴木は、何者かから“本当の犯人は別にいる”との
メッセージを受け取り、その指示に従ってフロイラインという会社に潜入、裏社会に君臨する会長の寺原と二代目の
寺原Jr.をマークする。そんな矢先、彼の目の前で、寺原Jr.が“押し屋”と呼ばれる殺し屋に殺されてしまう。
復讐の相手を横取りされた上、組織から犯人の“押し屋”を追いかけるよう命じられる鈴木だったが…。

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=351200こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2016-09-29 22:50 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

●「怒り」(あるいは日本映画の限界、『君の名は。』ヒットのワケ)
2016 日本 東宝 142分
監督・脚本:李相日
出演:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、宮崎あおい、妻夫木聡、広瀬すず、作久本宝
   ピエール瀧、三浦貴大、高畑充希、原日出子、池脇千鶴ほか。
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

最初にお断りしておくが、掲げたタイトルは「怒り」のみである。原作は、吉田修一の同名の
小説。「悪人」も同じ監督で映画になった。しかも妻夫木聡主演であった。
本作、面白いストーリー建てであったし、3つの話を綾織るように映像表現できていたのも
良かったと思う。
但し、本ブログの表題に書いたような感想を持ったのだ。それを説明したい。ご覧頂きたい。
出演者の名前を。オールスターであることはそうなんだが、私としては普段テレビで観ている役者
さんがずらりと並んだという感じである。それでどうなったか。こうした現代社会の生々しくも
現実的なストーリーを展開する上で、テレビで見慣れた役者さんの存在がじゃまして、映画の
物語に没頭できなかったのだ。普段テレビで観ている顔が深刻な場面を演じても、バラエティ番組に
映画の宣伝に出てきて、明るい顔で、「是非映画館へ」などという顔が浮かんでしまうのだ。

例えば、ゲイの妻夫木聡と同じゲイの綾野剛の裸のカラミなどは、痛々しくて観ていられない。
渡辺謙、宮崎あおいなどは民放の連ドラなどにはあまり出ないが、その他のキャストはテレビドラマの
常連だ。
翻ってハリウッド映画を考えてみる。アメリカとは映画やテレビの産業としての成り立ちが違うので
責めどころを間違わないようにしなくてはならないが、ハリウッドのムービースターたちは原則
テレビドラマに出ない(というかギャラが高くてテレビはキャスティングできない)またCMにも
出てこない。それ故、映画館というハレの舞台で観客はその作品に頭から没入できるのである。
モーションピクチャーに重みがある理由が存在すると感じるのだ。

テレビドラマだって同じような役者が1クールごとに演じているじゃない、それだって没入できない
んじゃないか?という声もあろう。確かに理屈としてはそうである。だが、お茶の間のテレビは
映画とは比較にならないある種の「手軽さ」があり、また連ドラは10話なりで完結するものである
が故に2時間そこそこで話を完結させなくてはならない、「わざわざお金を払って見に出かける」
映画とは根本的に映像表現としての構造が異なるのである。

そうした日本独特の「映画とテレビの境界線の曖昧さ」が、幾らいい演出が出来、素晴らしい演技が
出来る役者がいたとしても、作品に没入できる力を削ぐ要因になっていると思ったのだった。
断っておくが、これは役者や監督のせいではない。日本の映画というシステムが負うところだ。
これは誰かが改革しようとして出来るものでもないだろう。背景が警察、探偵もの、時代物、未来ものなど
キャラクター付けが強烈にできるものは除くのであり、あくまでも、シリアスな現代劇、という点に
絞られると思う。どうしても昨日見た綾野剛であり、一昨日見た広瀬すずなのだ。映画はそう毎日観るもの
でもない。だが逆に言えば、地味なストーリーを名前をあまり知らないような役者が演じたとしたら
どうなのか、みんな観てくれるのだろうか、というところは付いて回るだろう。何度も云うが、本作から
私が感じた点は役者・監督が悪いわけではないことをお断りする。(妻夫木くんは軽いなあとは思うけど)
本作でそれぞれの俳優たちプロ意識の下、最大限体当たりの演技をしていたとは思う。それに上記の考えは
テレビを普段観ない人には関係のない話だ。(だが、役者の層の割にはたくさん映画が作られるので
その点に関する演者のイメージのダブリはあるだろう)

それ故に、生身の人間が登場しないアニメ作品『君の名は。』を筆頭に、「いつも見る人」があまり
登場せず、ジャニーズも登場せず、サイドストーリーを徹底して削いだ『シン・ゴジラ』がヒットする
理由の一つに上記の理由があるような気がするのだ。つまりハレの舞台に「日常」が紛れ込んでいないと
いう。

上記を踏まえて本作の感想を述べたい。全体の構成だが、つかみはOKだが、その後、八王子殺人犯の
プロフィールが明らかになるまでが間延びした。つまり、人間に等しく存在する「怒り」そしてその
裏側にある「信頼」ということを、この映画は言いたいのだが、そうした趣旨が後半40分くらいしないと
見えてこないのが残念。個人的には渡辺謙と宮崎あおい+松山ケンイチ+池脇千鶴のパートが一番こころ動いた。
次が広瀬すず+作久本宝+森山未來のパート。そして状況的にも生々しく、しかも一番テレビで見る顔の
組み合わせであった妻夫木聡+綾野剛+高畑充希+原日出子のパート、ここが弱い。これに狂言回し的な警察の
ピエール瀧と三浦貴大が加わる。骨太の原作に従い、誰の心にも普遍的に潜む狂気としての「怒り」と、
「信頼」がキチンと映像として表現されていたのは良かったと思う。3つの一見関係のない物語が、一つの
殺人事件の真犯人は誰か、という点に薄皮を剥ぐように次第に収斂していく具合も良かった。
 ラスト近く、電車の中の宮崎あおいと松山ケンイチ。宮崎がカメラ目線になるのはイリニャトウあたりの
マネか。「あなたはどうなのだ」という問いかけなのだろうか。禁じ手だろう。もう李監督はこの演出は
使えない。
一方で、狂気を表現させて上手い崔洋一監督だったら本作をどう表現しただろうか、とも考えた。
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<ストーリー>
「悪人」の李相日監督が再び吉田修一の小説を原作に、実力派俳優陣の豪華共演で贈るヒューマン・ミステリー・
サスペンス。残忍な殺人事件が発生し、犯人が逃亡して1年後、千葉・東京・沖縄に現われた前歴不詳の若い男
3人が、やがてその土地で新たな愛を育んでいく中、真犯人を巡る謎と犯人ではとの疑念が思わぬ波紋を周囲に
広げることで生じるそれぞれの葛藤のドラマを描き出す。
出演は渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡。

 八王子で残忍な夫婦殺人事件が起こるが、犯人の行方は杳として知れず、整形して日本のどこかで一般の市民に
紛れて逃亡生活を送っていると見られていた。
事件から1年後、千葉・東京・沖縄に素性の知れない3人の青年が現われる。歌舞伎町の風俗店で働いている
ところを発見され、千葉の漁港で働く父・洋平に連れ戻された愛子。漁港にふらりと現われ働き始めた青年・
田代と恋に落ちるが…。

東京の大手通信会社に勤めるゲイの優馬は、クラブで出会った直人を気に入り家に連れ帰るが…。

母に連れられ、東京から沖縄の離島に引っ越してきた高校生の泉は、無人島に1人で住みついている謎めいた
バックパッカー田中に心惹かれていくが…。
そんな中、TVでは1年前の事件に関して逃亡中の犯人の情報を求める公開捜査番組が放送されていたのだが…。
(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=356389こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2016-09-19 12:10 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)