カテゴリ:邦画・新作( 80 )

駆込み女と駆出し男

●「駆込み女と駆出し男」
2015 日本 松竹 143分
監督・脚本:原田眞人 原作:井上ひさし『東慶寺花だより』
出演:大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名、陽月華、キムラ緑子、樹木希林、堤真一、山崎努他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

いい映画だった。井上ひさしさんの原作とは知らず、もっとふざけたコメディっぽいものか、と
思っていたのだが、なんのなんの、井上文学をよくここまで映像化したな、と感服した。
プロデューサーに井上ひさしさんの三女麻矢さんの名がクレジットされているので、原作が持つ
ニュアンスは大切にされたと思う。それにしても15本の連作である原作をよくここまでの脚本に
仕立てあげたな、と原田眞人監督の筆力にも改めて驚いた。しかも原作が持つ味わいを失わず。
俳優陣も井上ワールドを体現するのに十分であった。大泉洋の戯作者ぶりが良かったし、戸田、
満島の二人も好演、また樹木希林、堤真一、陽月華、キムラ緑子、麿赤兒らのキャストも上手く
ハマっていた。それぞれのキャラクターが光っていたと思う。

加えて鎌倉の四季を織り込んだ映像は原田監督のコダワリが見えてカット割りからアングル、動き
まで工夫が凝らされていて美しく、様式美的な構成も綺麗である。ただ、江戸時代の言葉使いや
風俗や文学に関した単語などが物凄い勢いでセリフとなるので、理解するのが難しいという
難点がある。私は字幕付きで観た。響きとして耳に入ってくる単語も活字になるとまた細かい
ニュアンスがすっと入ってくるものだ。冒頭3分くらい観て、何言ってるんだかよく分からない、と
おもった方は迷わず字幕付きで観たほうがいい。それだけ井上ひさしさんの言葉使い、言葉遊び、に
忠実になろうとすると仕方のない事かもしれない。故に原作を読んだ見たくなる人も多かろう。
私もその一人だ。井上さんの著作は好きで結構読んではいるが、晩年の著作については縁遠くなって
しまったので、もう一度アプローチしてみたいなと思ったのだ。

さて映画だが、老中水野忠邦と、その忠実な配下であった南町奉行鳥居耀蔵による奢侈禁止を
謳った「天保の改革」の世。医師見習いにして戯作者希望の中村進次郎(大泉)の目を通して
見た、鎌倉の駆け込み寺「東慶寺」とその御用宿である「柏屋」で起きる縁切りの顛末を女性側からの
視点で綴る。主たる話の主は、練鉄(砂金を集めてフイゴで熱し鉄を作る)屋の女房、じょご(戸田)。
亭主は女遊びにうつつを抜かす。そしてじょごと一緒に東慶寺に飛び込むことになる、唐物問屋の
妾、お吟(満島)。さらに東慶寺の院代、法秀尼(陽月華)。そして進次郎。天保年間の風俗文化や
時代の雰囲気、尼寺の日常なども散りばめて背景もしっかりと描き上げて飽きることのない143分で
あった。日本アカデミー賞でもっと賞を獲っても良かった作品と思う。ただ一般受けするかというと
なかなか難しいかもしれない。一部紹介にあるが「コミカルな時代劇」というくくり方は当たらない。
井上文学の洒脱さ(「徒(あだ)」の定義や、「素敵」という言葉の使い方などが出てくるのを
初めとして)と原田監督の美学を解すべき作品である。
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<ストーリー>
井上ひさしの時代小説『東慶寺花だより』を原案に、江戸時代の縁切寺、東慶寺で繰り広げられる離婚を巡る
悲喜こもごもを描いた人情時代劇。主演は大泉洋、共演に戸田恵梨香、満島ひかり、樹木希林、堤真一、山崎努。
監督は「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」の原田眞人。

 時は天保十二年(1841年)、質素倹約令が発令され、庶民の暮らしに暗い影が差し始めた江戸時代後期。
この時代、夫が妻と離縁することは容易だったが、妻のほうから離縁することはほぼ不可能だった。鎌倉の尼寺、
東慶寺は、そんな妻たちの離縁を可能にする幕府公認の縁切寺。寺に駆け込み、2年を過ごせば離婚が成立した。
駆け込み女たちはまず御用宿に預けられ、そこで身元の調査が行われる。戯作者に憧れる見習い医師の信次郎は、
江戸を追われ、そんな御用宿のひとつ、柏屋に居候することに。そして、叔母である柏屋の主人、三代目源兵衛の
離縁調停を手伝い始める。そんなある日、顔に火ぶくれを持つじょごと、足を怪我したお吟が、東慶寺に駆け
込んでくるが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=350112こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2016-09-05 23:30 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

野火 Fires on the Plain

●「野火」
2015 日本 海獣シアター 87分
監督・脚本・製作・撮影・編集・主演:塚本晋也  原作:大岡昇平
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作、中村優子他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
原作は大岡昇平の戦争文学の傑作。そして1959年には市川崑監督、和田夏十脚本で
映画化もされ、評価が定まっている作品。これをほとんどインディーズのノリで
構想20年という塚本晋也が製作した。昨年のキネ旬年間ベストの2位にランクされて
いる。

原作は未読、市川版も未見という状態で、しかも塚本晋也という人をまるで知らない
状態での鑑賞となった。故に主役が塚本本人で、リリー・フランキーがどこに出てきた
のかすら分からなかった。★が8つだが、1つは塚本氏が「今」これを製作したという
気概に進呈したい。

本作が訴えるところ、というのは映画をみれば直截的に伝わってくる。戦争という
ものはかくも人間性を崩壊させるのだ、ということ。このコメントを書くにあたり、
どういう評判が本作に対してあるのか、ちょっと見させてもらった。
その中で、印象的だったのが、大林宣彦監督と塚本晋也監督の対談で、
大林監督曰く「戦争映画を見て感動などしてほしくない。この映画を見て辛かった。
そこが良かった。カタルシスを得るような戦争映画は絶対に作って欲しくない」という
コメントだ。本作を観て、痛い、辛い、気持ち悪い、残酷だ、不条理だ、とマイナスな
感情を持てたのなら、正しい観かたとして塚本監督の言いたいところが伝わった、
また大岡原作の言わんとすることころが伝わった、ということだろう。

戦争を極限状態に置かれた一兵卒の目を通して物語り、そこで当たり前の如く
生と死を見つめつつも、戦場ならではの様々な葛藤と諦観に苛まれる様が「個」の
レベルで上手く表現出来ていたと感じた。

塚本監督は本作を作るにあたり「原作の追体験をしたかった。(主役を演じたことも)
作品を観る人にも、戦争というものはこういうふうになる、ということを追体験して
欲しいと思う」と語っている。そして、時代がきな臭くなり始めている「今」だからこそ
作りたかったし、観て欲しいとも語る。その心意気に賛同したい。

ただ、本作には原作にある聖書の世界という宗教性と、カニバリズムを拒否する
ことから、全ての草木にさえ命があると考えてしまった主人公が、何も食べられなく
なる、というところが省かれている(らしい。原作未読故未確認)それらが加えられたら
どういう感じになっていたのか、観てみたいところでもあった。

市川版の予告編を観たのだが、おそらくロケは国内だろう。塚本版はフィリピンに
ロケし、あの熱帯のジャングルと太陽、そして残酷な人間どもに対比される美しい
自然、その部分は塚本版カラー作品の方が圧倒的にモノを語っていた。

落ち込む映画であるが、そこが狙いである。「今」観て欲しい映画の一つである。
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<ストーリー>
大岡昇平の同名戦争文学を「六月の蛇」の塚本晋也が監督兼主演で映画化。
第二次世界大戦末期のフィリピンを舞台に、肺病を病んで部隊を追い出され
一人彷徨う兵士の姿を描く。
共演は「そして父になる」のリリー・フランキー、「蘇りの血」の中村達也、
オーディションで選ばれた新人・森優作、「ギリギリの女たち」の中村優子、
「童貞放浪記」の山本浩司。

第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。日本軍の敗戦が色濃くなった中、
田村一等兵(塚本晋也)は結核を患い、部隊を追い出されて野戦病院行きを
余儀なくされる。
だが負傷兵だらけで食料も困窮、少ない食料しか持ち合わせていない田村は
早々に追い出され、再び戻った部隊からも入隊を拒否される。行き場を失い、
果てしない原野を一人彷徨う田村。空腹と孤独、そして容赦なく照りつける
太陽の熱さと戦いながら彼が目撃したものは、想像を絶する地獄絵図であった……。
(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-08-02 22:30 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

シン・ゴジラ

●「シン・ゴジラ」
2016 日本 東宝 120分
総監督・脚本:庵野秀明  監督・特技監督:樋口真嗣  音楽:鷺巣詩郎
出演:長谷川博己、石原さとみ、竹野内豊、高良健吾、松尾諭、市川美日子、余貴美子、國村隼
    平泉成、柄本明、大杉漣、ピエール瀧、小出恵介、松尾スズキ、古田新太、光石研、他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
一部ネタバレを含みますのでご注意ください
東宝特撮シリーズはリアルタイムで観、ハリウッド版のゴジラもチェックしてきた私と
してはドキドキのシネコン。大きなスクリーンで夏休みの日曜ということもあったか、
上々の入りだった。年齢層はやや高め。
直近で見たのが2014年のギャレス・エドワーズ版「Godzilla」。渡辺謙さんが出た
やつ。前の爬虫類みたいなゴジラからオーソドック版に戻り、VFXもストーリー性を
重視した物語も、まあ良く出来ていたと思った。さて、庵野版。どうか。

面白かった。ゴジラファンも満足な出来ではないか。100%満足、とは参らない部分も
あるが、全体としてよく出来ている。VFXもそりゃ、大金かけたハリウッド張りとまでは
行かないけど、初のフルCGのゴジラも含めてよく頑張っていた。
1954年製初代ゴジラへのリスペクトは、冒頭の「東宝マーク」から始まり作中、そして
エンドロールに使われる伊福部昭氏のあの有名なゴジラのテーマ、そして「終」の文字
まで、しっかりと表現されていた。
劇場から「面白かったなあ」と思いながら出てきたのだが、何が面白かったのか、
考えてみた。構成が凄くシンプルであったこと、活劇として出来が良かったこと、
俳優陣が良かったこと、が挙げられよう。少年の心で本作に接しられたということは
初代のゴジラが持つ、プリミティブな分かりやすい魅力を持っていた、ということなのだ
ろう。すなわち、これまでコジラ映画なんて一度も観たことがない、という人にも
十二分に面白い。

冒頭から暫く続く会議の様子。政治家は責任を逃れ、役人は縦割りで融通がきかない。
会議ばかりで対応はさっぱり前に進まない。特に大杉漣演じる首相の主体性のなさ、
これらは、いざ対応したことのない災害などに対し、政治家や役人がさもありなん、の
現象であろう。これらに対して皮肉たっぷり。やがて乗り出してくる米国の有り様も
無理ばかり言ってくる様子が、これまたさもありなん、の風情。御用学者の有様も
思わずニヤリだ。役人の会議の手続きとかしっかりリサーチされていてリアリティが
あった。
自衛隊に武器を使わせて「除去」するときも、法解釈的に自衛隊が国内で武器使用を
することがどうなのか、などの侃々諤々も、現代の時事問題にフィットしかつ、
アイロニカルで面白かった。

初代のゴジラは原爆実験が産んだ時代の怪獣だった。そして本作のゴジラは、3.11の
原発事故が生み出した生物体であった。最終場面で、ゴジラは冷凍になるのだが、
まるで今の原発の冷凍土作戦のようだし、冷凍にしたまま死んではいない。そして
尾っぽの先には子どもと思しき姿が・・・。それは、そのまま原発の不気味さと表現している
と見られる。初代の持つメッセージが、60余年を経て、正しく伝えられたといえるのでは
ないだろうか。まず対決モノでないところがまず好ましい。

初代のゴジラは海に消えたわけだが、その末裔が原発の放射能を浴びて変容し、60余年
経過して現代の東京に現れたのだ(と私は解釈した)。なぜ東京に上陸したのか、それは
語られない。ひょっとしたら続編でその謎が解明されるのかもしれない。

一方、防衛省、自衛隊の全面協力を得て、自衛隊の活躍はかっこよく描かれる。かっこ
よすぎじゃねえか?と思うくらい。だが、自衛隊ではゴジラはやっつけることは叶わない
わけだな。ゴジラの動きを止めるのは、はぐれ科学者たちの一団だ。

見たことのないものの出現に慌てふためく政治家や役人。会議ばかり。役にたたない御用学者、
歯がたたない自衛隊、次第に被害は拡大するいっぽう。大きな口から放射線を吹き出す
ゴジラ。こうやって書いていると、その物語にはリアリティがあり、ゴジラと原発事故をそのまま
置き換えても成り立つなと。あれは福島原発のメタファーなのか?

役者陣が凄い。初めてちゃんと見た長谷川博己が良かった。周りの渋目の配役たちも
映画にしまりとリアリティを与えていた。固めの配役がむしろ石原さとみを浮かせてみせた
ほどだ。小出恵介、片桐はいりワンカット、松尾スズキ2カットなど、贅沢な使い方。
そしてエンドロールに出てくる野村萬斎の名前。さてどこに出ていたのか。

テンポが凄く良い。2時間という上映時間も非常に適切だ。カットが工夫されていて
アップを効果的に使い、絵の流れに変化を出していた。そして時々使われる劇画風な
演出。VFX以外の画作りも工夫されていた。ただ、中世音楽のようなコーラスのBGMは
いかにも感が強かった。

全体的にみてとても良く出来たゴジラ映画であり、邦画である。是非映画館の大きな
スクリーンでご覧になることをお勧めしたい。
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<ストーリー>
「ヱヴァンゲリヲン」シリーズの庵野秀明が脚本と総監督、「のぼうの城」「進撃の巨人」の
樋口真嗣が監督と特技監督を務め、世界的怪獣キャラクター“ゴジラ”を日本版としては
12年ぶりに復活させた特撮アクション大作。

謎の巨大不明生物“ゴジラ”の出現という未曾有の国難に直面した現代の日本を舞台に、
全てが想定外の中でギリギリの決断を迫られる政府関係機関の緊急対応の行方と、
ゴジラに立ち向かう人類の運命を、綿密なリサーチに基づくリアルなストーリー展開と
迫力の戦闘アクションで描き出す。

主演は「地獄でなぜ悪い」「進撃の巨人」の長谷川博己、共演に竹野内豊、石原さとみ。
そのほか大杉漣、柄本明、高良健吾、余貴美子、國村隼、市川実日子はじめ実力派
キャストが多数出演。

 東京湾・羽田沖。突如、東京湾アクアトンネルが崩落する重大事故が発生する。すぐさま
総理以下、各閣僚が出席する緊急会議が開かれ、地震や火山などの原因が議論される中、
内閣官房副長官・矢口蘭堂は未知の巨大生物の可能性を指摘し、上官にたしなめられて
しまう。しかしその直後、実際に巨大不明生物が海上に姿を現わし、政府関係者を愕然と
させる。
のちに“ゴジラ”と名付けられるその巨大不明生物は鎌倉に上陸し、逃げまどう人々など
お構いなしに街を蹂躙していく。やがて政府は緊急対策本部を設置するが、対応は後手後手に。

一方、米国国務省が女性エージェントのカヨコ・アン・パタースンを派遣するなど、世界各国も
事態の推移と日本政府の対応に強い関心を示していく。そんな中、様々な思惑が交錯する
関係機関をまとめ上げ、ゴジラによるこれ以上の破壊を食い止めようと奔走する矢口だったが…。
(allcinema)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-07-31 11:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

天空の蜂

●「天空の蜂」
2015 日本 松竹映画 「天空の蜂製作委員会」:講談社、GYAO! 木下グループ他
監督:堤幸彦  原作:東野圭吾 「天空の蜂」
出演:江口洋介、本木雅弘、綾野剛、仲間由紀恵、國村隼、柄本明、光石研、佐藤二朗、石橋蓮司他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
原作は1995年だから福島よりずっと前のこと。しかし、これを今製作するにあたっては
福島を避けては通れないだろう。さらに、国民の原発を見る目も随分変わったはずで
映画では「新陽」といわれている高速増殖炉は「もんじゅ」であろう。これらの存在を含め
日本の原子力政策は大きく変わってしまったため、原作が出来た頃と中身が変わらざるを
得なかった。
その現在において原発テロを描くということは勇気がいただろうと思う。その点は松竹を
評価したい。故に製作委員会には常連のテレビ局や新聞社の名前はない。

ただ、結局、原発を止めろという犯人の要求、その犯人が事件を起こそうとした動機、
(綾野剛と本木雅弘、仲間由紀恵)片や、自衛隊の最新ヘリ(乗っ取られた)を開発した
江口洋介、(息子は長じて航空自衛隊に入りヘリのパイロットとなり福島で活躍する)らの
相剋は、原発が悪であるかどうか、についての結論を出していない。そこまでが精一杯
だったのだろう。

それであっても、反原発派の動きや主張、犯人の動機の裏側にあるもの、また原発を
止めろといわれて実施した政府の嘘、など今の原発政策(映画のコメントにも出て
来るが、「人の命より電気のほうが大切なんだ」というセリフなどは、日本の映画か?と
驚く。この映画を百田某が見たらどう思うだろうか。

冒頭から緊迫した展開が最後まで続くので、観させ方としては流石に堤監督である。
また大型ヘリを中心としたCGの出来もなかなかで、リアリズムを重要視する堤監督の
拘りであったであろう。綾野剛が手錠を外す痛いシーンも。
ただ、ひとつ残念だったのが、冒頭の子役(江口の息子で乗っ取られるヘリに乗りあわせて
しまう男の子)の演技が満足行くレベルではなかったので、それがとても残念だった。

主役の江口、本木、仲間、柄本、國村、竹中らの芸達者たちの演技については文句はない。
ただ、堤監督の地元であるので名古屋弁をしゃべる刑事が出るのだが、ネイティブからすると
微妙に違うんだよなあ。

自衛隊の全面協力も得られず、もちろん原発施設の協力もない。「亡国のイージス」の
ように海外からのテロではない部分での製作の苦労もあっただろう。
スペクタクルが好きな人は一度見てみるといいと思う。
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<ストーリー>
1995年8月8日、全長34メートル・総重量25トンを誇る自衛隊用超巨大ヘリ『ビッグB』が
遠隔操縦によりハイジャックされ、原子力発電所『新陽』の上空で静止。『天空の蜂』を
名乗る犯人は全ての原発の破棄を要求、さもなくば爆発物を大量に積んだヘリを『新陽』に
墜落させると訴える。ヘリの燃料が尽きるまではわずか8時間。『ビッグB』の機内には
子供が取り残されており、その父で『ビッグB』開発に携わったヘリ設計士・湯原(江口洋介)と
原子力発電所設計士・三島(本木雅弘)は子供の救出と日本が消滅しかねないこの
恐るべき危機を打開するために奔走する。
しかし政府は原発破棄に難色を示していた。タイムリミットが迫る中、見えざる敵との
攻防が始まる――。(Movie Walker)

この映画の詳細は
by jazzyoba0083 | 2016-06-19 17:30 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

ビリギャル

●「ビリギャル」
2015 日本 TBS 「ビリギャル製作委員会」 配給:東宝 117分
監督:土井裕泰  原作:坪田信貴「学年ビリのギャルが一年で偏差値を40上げて慶応大学・・」
出演:有村架純、伊藤淳史、吉田羊、田中哲司、野村周平、大内田悠平、安田顕、あがた森魚他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
昨年そこそこのヒットを記録し、坪田先生もすっかり有名人になった。名古屋が舞台という
こともあり、WOWOWで放映してくれたので、まあ話のネタだ、と思い観てみた。

名古屋弁の出来がどうとかは置いておくとして、話の結末が有名になってしまったので
驚きという点も無くなってしまい、新鮮味も薄れての鑑賞だったから批評的にはやや
辛くなるのは許していただきたい。まあ、この手の話は良くあるもので、ただセミドキュメント的な
アプローチがなされていたという面では惹きつけるものがあった。だがドラマとしてははやり
テレビ出身の監督だけに、テレビ的な引っ掛かりの少ない物語となっていた。

テンポがいいといえばいいが、逆に話を端折り過ぎて、面白いところのエッセンスが並ぶ、
という深みに欠ける出来、となったわけだ。(まあ、本作に深みを求めるな、ということかも
しれないけど) ただ全体を漫画を読むように眺めていれば話としてはまあよく出来ているので
面白く観ることも出来るだろう。
演者として、有村架純は頑張っていたが、ごく普通。やはり吉田羊の頑張りが
光る。一方の主役でもあろう。田中哲司は貴重な脇役で味がある俳優さんだが、下手な
名古屋弁で損をしていた。 

中高生になら受けそうな映画。だが、本格的な映画を期待するとダメなので長いテレビドラマを
観るつもり観ればいいかもしれない。主人公の「逃げないで挑戦する」という姿勢は共感
出来るだろう。ただし、この子はもともとデキる子だったのだろうな。中高と遊びまくり、高2から
慶応に現役合格するなんざ、並では出来ないわ。指導者も良かったのだろうが、そうだとしても
同じ状況の全員がこうなるとは思えないのだけれど。
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<ストーリー>
名古屋の女子高に通う工藤さやか(有村架純)は、勉強は一切せず友達と朝まで
遊びながら過ごす毎日。このままでは大学への内部進学すら危ういと心配した母・
ああちゃん(吉田羊)は、さやかに塾へ通うことを提案する。金髪パーマ、厚化粧、
耳にはピアス、極端に短いミニスカートにへそ出しルックというギャル全開の姿で
入塾面接に現れたさやかに一瞬面食らう教師の坪田(伊藤淳史)。

しかし、見た目は派手でも素直な性格だとすぐに気付いた坪田はさやかと打ち解け、
慶應大学への受験合格を約束するのだった。ところが当のさやかの成績は偏差値
30の学年ビリ。学力テストをしても聖徳太子を“せいとくたこ”と読み、高校2年生
にして小学4年生の学力しかない。

そんな彼女の教室大爆笑の珍解答の連続にも「君の発想は天才級だね」と坪田は
褒めるのだった。どうやって生きてきたのか理解できないほど知識の欠如を抱える
さやかであったが、坪田だけはこの愛すべきアホぶりの中に凄い可能性が秘められ
ていると踏んだのだ。

当初はノリで慶應大学合格という目標を掲げたさやかは、当然、絶望的な高い壁に
何度もぶち当たる。だがやがて自分のために必死になる坪田の姿を見てガッカリさせ
ないために、そして愛情を注ぎ応援してくれる母のために、さやかファンの不良少年・
森玲司(野村周平)の励まし、ギャル仲間の友情にも支えられ、さやかは本気で勉強に
取り組むようになっていく……。(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-04-12 22:40 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

凶悪

●「凶悪」
2013 日本 日活配給 ハピネット、フラミンゴ、カズモ、ディーライツ。128分
監督:白石和彌  原作:新潮45編集部「凶悪-ある死刑囚の告白-」
出演:山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴、白川和子、吉村実子、小林且弥他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
チカラのある邦画は見るようにしている。では本作を観るキッカケとなったのは何か、と
いうと、1つは事実をベースにした犯罪映画、という好きなジャンルであること。1つは
今注目のピエール瀧がどんな演技をするか、楽しみだったこと。

ピエール瀧に注目したのはごく最近で、昨年NHKテレビで放映された「64(ロクヨン)」で
主人公を演じたが、その渋い演技に打たれ、それ以来いわばファンとなったのだ。
リリー・フランキーもそうだがどちらかというと善人側の配役が多かったんじゃないかと
いう印象で(事実リリー・フランキーはこの年の日本アカデミ賞で助演男優賞を
「そして父になる」で獲得している)、逆に山田孝之の方が悪人に似合った雰囲気じゃ
ないか、と思っていたのだ。ところが本作は、山田は潜在的な凶悪犯罪を暴く、
(ある意味普通じゃない)、雑誌記者。リリー・フランキーが巨悪で、その走狗だった
粗暴犯がピエール瀧、という配置。

う~ん、何だかイメージと違うけど上手く観られるかな、と観始めた。だが、まず登場する
ピエール瀧のキレ芸を観ていると、ヤクザにぴったりだな、と思えてくるし、一見温厚な
不動産業者のおっさん風でありながら、実は嗜虐趣味を持つ極悪人であるリリー・
フランキーも、それなりに見えてくるから不思議だ。

本作は、死刑囚須藤(ピエール瀧)から雑誌社に面会を要請する手紙がくるところから
動きが出始める。つまり、自分は死刑になったのだが、実は一緒に悪いことをしていた
というかむしろ犯罪をリードしていた「先生」こと、木村孝雄がのうのうとシャバで生き
永らえているのが許せん、まだ表に出ていない事件を告白するから、記事にしてくれ、
と、いわゆる「潜在殺人」3件を告白したのだった。

雑誌記者藤井は、編集長の反対を聞き流しつつ、独自で事件の裏付けを始める。
すると、須藤の言っていることはほぼ信頼に足ることが明らかとなってくる。
その結果をまとめて編集長に記事にするように懇願するが、却下される。藤井は
その旨を面会で須藤に告げると、須藤は激怒。
藤井の家庭では認知症の母親を妻(池脇千鶴)が一人で診ているという状況で
仕事ばっかりで家庭を顧みない藤井に妻の我慢も限界で、ついに離婚届けをつき付ける
までになってしまった。「死んだ人間なんてどうでもいい。私は生きているのよ!」と。

映画では、須藤が「先生」木村と、保険金を狙い、須藤の手下らと組んで、家族とグルに
なって、あくまでも事故死、病死に見えるよう、しかし凄惨な手段(過度な飲酒の強要、
その上でのスタンガン責めなど)で、老人を殺し、保険金を家族と山分けにしていたの
だった。そんな事件が3件告白されたのだ。

藤井はまとめ上げた文書を編集長を伴い警察に持っていく。最初は興味がなさそうだった
警察も、あまりに克明な事件概要に動かざるを得なくなり、木村を始め、共謀した家族も
逮捕されたのだった。

映画の冒頭に描かれるのだが、須藤は裏切りを許さない気質で、チンピラに裸足で
鉄橋の上を歩かせ、足にタバコの火を押し当てて、川に転落させて殺したり、
殺しの現場から逃げたチンピラに対し目の前で情婦を犯しかつ共に焼き殺したり、
最後まで信頼していたチンピラもクルマの中で銃で殺したり、保険金狙いで殺した
老人をナタで解体して焼却炉で焼いたり、狂気としか言えない所業を繰り返したのだが、
死刑囚になると、キリスト教に入信し、裁判では上告し、「生きて罪を償う」とかのたまう。

記者藤井は、木村と大差ない極悪人の須藤が、心の平安を求めようとするのが
気に入らなかった。「お前なんかの心に平和が来てたまるか!」とか叫ぶのだった。
確かに、あの狂気の殺人鬼が刑務所に入った途端に善人になってしまう、そして
記者をして他人の罪まで暴いて自分は心の平安を得ようとする、その姿勢に我慢が
ならなくなるのは理解できる。
一方で、家庭を顧みず、(最後には母を施設に預け、離婚も無くなったように描かれるが)
こちらも狂気としか言えない執念で事件を追い続けた藤井も、何かただならなぬ不気味さを
感じてしまうのだ。山田孝之は終始笑顔が無い役柄を例の濃い髭面で演じてはいたが
やはり本作のハイライトはピエール瀧の須藤純次だろう。何を考えているのか分かりやすい
ようでいて、深い闇を抱えている男を上手く演じていたと思う。

映画を見終えて思うことは、須藤の同じ人間がやることか、と思える粗暴凶暴な行動、
「先生」木村の狂気、そして種類は違うけど、記者藤井の狂気。「人間の業の深さ」「深層に
隠された本性の恐ろしさ」に思いを致さざるをえないのだった。
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<ストーリー>
死刑囚の告発が未解決事件の真犯人逮捕につながった、衝撃のベストセラー・
ノンフィクションを、山田孝之主演で映画化した人間ドラマ。
殺人事件を犯しながら、裁きも受けずに生きながらえる悪人。そんな悪人を幅広い
ジャンルで活躍するリリー・フランキーが狂気を携えた演技で見せる。
監督は若松プロダクション出身の白石和彌。

ある日、雑誌『明朝24』の編集部に一通の手紙が届いた。それは獄中の死刑囚
(ピエール瀧)から届いた、まだ白日のもとにさらされていない殺人事件についての
告発だった。彼は判決を受けた事件とはまた別に3件の殺人事件に関与しており、
その事件の首謀者は“先生”と呼ばれる人物(リリー・フランキー)であること、“先生”は
まだ捕まっていないことを訴える死刑囚。
闇に隠れている凶悪事件の告発に慄いた『明朝24』の記者・藤井(山田孝之)は、
彼の証言の裏付けを取るうちに事件にのめり込んでいく……。(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2016-03-25 23:10 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

進撃の巨人 ATTACK OF TITAN

●「進撃の巨人 ATTACK OF TITAN」
2015 日本 講談社、製作委員会 東宝配給 96分
監督:樋口真嗣  原作:諫山創
出演:三浦春馬、長谷川博己、水原希子、本郷奏多、三浦貴大、石原さとみ、ピエール瀧、國村隼他
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<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
引き続きホノルル便の機内での鑑賞。「進撃の巨人」という単語やその劇画のカットは
当然知っていはいたが、どういう内容ななのかは知らなかった。おそらくこういう機会でも
ないと観ないタイプの作品だ。機内の暇つぶしに、どんなものか、という興味もあり観て
みた。これは続編というか後編を観ないとだめなんだな。リストにはあったけど観る気力が
わかなかった。ラストシーンで後がある、と分かるのだが、まあ、どうでもいいか、と。
いくら後編があってのものとはいえ、一本の映画として見に来てもらう以上、それだけで
ちゃんとした映画になっていなくては、観ている方がバカをみる。

原作を映画化するのは難しいと言われていたらしい。原作は読んでみたいとは思った。
そりゃあぶっとんだ未来の話、顛末は面白そう。しかしこれを動く実写にしてしまうと、
グロテスクな部分がクローズアップされてしまい、しかも三浦春馬くんのイジイジぶりが
酷くて、イライラしたし。全編冗長。これは続編で解決されていくのだろう。なにせ三浦くん、
巨人になっちゃうんだからね。続編というか後編があってこその「進撃の巨人」というタイトルが
ピンとくる仕掛けになっているのだろう。
演技陣はピエール瀧と國村以外の若手はみんななんだかなあ、の出来。かろうじて
石原さとみくらいかなあ、まだ良かったのは。

この映画、前後編まとめて尺を短くしてちゃんと纏めあげたら前編の冗長さがカットされ
もう少しマシな映画になっていたのではないか。樋口監督のがんばりは分かるのだけれど、
製作側の金儲けに、結局ぐだぐだなものになってしまったのではないか。
繰り返すが、原作は読んでみたい(観てみたい)とは思った映画だった。
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<ストーリー>
巨人が人間を食べるという衝撃的なテーマが話題を呼び、第35回講談社漫画賞少年部門に
輝いた諫山創の人気コミックを実写映画化。居住区の周りに巨大な壁を築き、つかの間の
平和を手に入れた人々の前に、突如、壁を超える大きさの巨人が出現したことから、人々に
訪れる変化を描く。

突如出現した巨人たちに人類の大半が捕食され、文明は崩壊。生き残った者たちは巨人たちに
侵攻されないよう巨大な壁を三重に築き、その内側で暮らしはじめた。それから100年以上経ち
惨劇の記憶が薄れていく中、壁の外の世界に憧れるエレン(三浦春馬)は安穏と暮らす人々に
苛立ちを募らせていた。

しかしある日突然想定外の超大型巨人により壁が崩され、侵攻してきた巨人たちに人々は
次々に食べられていく。2年後、人類はより内部への撤退を余儀なくされていた。
対巨人兵器、立体機動装置によって武装した調査団が結成され、エレンらは外壁を修復する
決死の作戦に赴く。その途中、巨人の襲撃にあい、仲間のアルミン(本郷奏多)をかばった
エレンは飲み込まれてしまうが……。(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2016-01-20 13:40 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

紙の月

●「紙の月」
2014 日本 松竹 Robot  紙の月製作委員会 126分
監督:吉田大八  脚本:早船歌江子  原作:角田光代「紙の月」
出演:宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、小林聡美、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司、平祐奈他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
昨年、「永遠の0」と並び、邦画界を賑わせた一作。「永遠の0」は映画館に行ったが、
こちらは宮沢りえがあまり得意でないので、WOWOWでの放映を待った。
原作未読、テレビ未見である。

で、どうしても、骸骨に渋皮が張り付いたような宮沢りえが気になってしまい、今ひとつ
のめり込めなかったのと、彼女の生き方に、へえ、こういう生き方もあるんだな、以上の
ものも感じ取られず、大金の横領犯がフィリピンだかの東南アジアに逃亡してしまうという
結末もなんだかなあ、銀行支店の誰かが処分されたという話も出てこないし(そういう事は
本作には意味がないということなんだろうね)。

映画から何か人生や意味を見出したい日本人にはとてもうってつけの作品じゃないか。
だいたいタイトルの「紙の月」というのが寓意の塊。つまり、本物ではない、作り物のことだ。
色んな人が色んなことをいうのだろうな。それはそれでいいのだけど、映画全体がメタファーの
塊のような作品は観ていて決して面白いとは思えないのだ。原作があるとは云え、活字の
世界と映像の世界は自ずと違うと思うのだが。

私個人としては、主人公がなんで、いとも簡単に浮気に走ったか、ということ。幼いころから
「与えることが幸せ」と育ってきたからか。奪っても与えることが幸せ、と思い込んできたからか。
そういう女がいましたさ、ということなのか。wikiによれば原作作家の角田は「お金を介在させて
しか恋愛が出来ない女」を描きたかったといっている。

家庭、お金、銀行、横領、浮気、露見、逃亡と一人の女を通して描くことが多すぎて、とっちら
かった感が否めなかった。池松壮亮と出会うまでは、普通のつましい家庭の妻であり、銀行の
パートさんであった若くもない女が、一人の男に心奪われることで世間を欺き、家庭を欺き
嘘で固めた世界に突っ込んでいくか、という病理が、クリスチャンの女学生時代の行動だけでは
説明しきれない病理であると感じたのだが。
即物的な満足でしか幸せを感じないある意味不幸な女の話、なのだろうか。

梅澤梨花(宮沢りえ)とは、何者? 結局そういう点において、私は腹に落ちるものが無かった。
敢えて1994年に時代を設定したのは原作重視だから?要らん時代考証不足を突っ込まれる
より現在にしてしまったほうが良かったんじゃないか。携帯だってあっても良かったと思う。
映画からは今から20年前での設定の意味が伝わってこなかった。

ラスト、大金横領が露見し、銀行から、家庭から、世間から、日本から逃げるわけだが
その主人公の走る様、何を言いたいのか?黒澤明じゃあるまいし。

確かに地味ーな女が金を掴むににつれ、服装が派手になる、若いツバメに掛ける金が
半端なくなる、嘘が嘘を呼ぶ、横領が巧妙になる、どんどん人を騙すという主人公の人格の
崩壊ぶりはお見事だったが、原作者が言いたかったのはそこではあるまい。

ああ、隔靴掻痒の作品だった! ※「本作をちゃんと観てないな、オマエ」という突っ込みは
ご勘弁ください。

あ、小林聡美と大島優子は良かったよ。
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<ストーリー>
直木賞作家・角田光代の同名作を『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八が、宮沢りえを
主演に迎えて映画化したサスペンス。
契約社員として銀行で働く平凡な主婦が、年下の大学生との出会いを機に、金銭感覚を
マヒさせていき、やがて巨額の横領事件を引き起こすさまを描く。相手役の大学生を演じる
のは若手実力派の池松壮亮。

1994年。梅澤梨花(宮沢りえ)は、子どもには恵まれなかったものの夫(田辺誠一)と
穏やかな日々を送っている。契約社員として勤務する「わかば銀行」でも、丁寧な仕事
ぶりで上司の井上(近藤芳正)からも高評価。支店では、厳格なベテラン事務員の
隅より子(小林聡美)や、まだ若くちゃっかり者の窓口係・相川恵子(大島優子)ら、
様々な女性たちが梨花と共に働いている。だが一見、何不自由のない生活を送って
いる梨花であったが、自分への関心が薄く鈍感なところのある夫との間には空虚感が
漂い始めていた。

ある夜、梨花の顧客で裕福な独居老人の平林(石橋蓮司)の家で一度顔を合わせた
ことのある孫の光太(池松壮亮)と再会した梨花は、何かに導かれるように大学生の
彼との逢瀬を重ねるようになる。

そんな中、外回りの帰り道にふと立ち寄ったショッピングセンターの化粧品売り場。
支払い時にカードもなく、現金が足りないことに気づいた梨花が手を付けたのは、
顧客からの預かり金の内の1万円だった。銀行に戻る前にすぐに自分の銀行口座から
1万円を引き出して袋に戻したが、これが全ての始まりであった。

学費のために借金をしているという光太に梨花は「顧客からの定期の申し込みが
キャンセルになった」と200万を渡す。さらに顧客から預かった300万を自分の通帳に
入れ、自宅で定期預金証書や支店印のコピーを偽造する……。

やがて横領する額は日増しにエスカレートしていくのだった、上海に赴任するという夫
には同行せず、梨花は光太と一緒に高級ホテルやマンションで贅沢な時間を過ごすが、
光太の行動にも変化が現れ、ある日、光太が大学を辞めたことを告げられる。
そんな折、隅が、銀行内で不自然な書類の不備が続いていることを不審に感じ始め
ていた……。」(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2015-11-25 23:40 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

超高速!参勤交代

●「超高速!参勤交代」
2014 日本 松竹 製作委員会(テレビ東京、博報堂、ケイファクトリー他) 119分
監督:本木克英  原作・脚本:土橋明宏
出演:佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、寺脇康文、上地雄輔、知念侑李、柄本時生、六角精児
    市川猿之助、石橋蓮司、陣内孝則、西村雅彦、甲本雅裕 他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
面白かった。奇抜なアイデア、(実際にこんなことがあったのかどうかは寡聞にして知らないが)
土台の土橋氏の発想・脚本が素晴らしい。昨年度の日本アカデミー賞脚本賞、ブルーリボン賞
作品賞を獲っている。

出演者も、所謂重鎮やビッグネーム、例えば最近の邦画の常連である佐藤浩市、役所広司、
中井貴一といったところがでておらず、そういう意味で言えば軽めの配役だが、それが物語に
功を奏している。殿様の佐々木、家老の西村、近習の寺脇、上地、知念、柄本、六角、忍びの
井原、幕府老中の陣内、将軍の猿之助と、それぞれキャラクターが生きた配役と演出である。
そこに紅一点、深キョンが花を添える。 

帰ったばかりの参勤交代。田舎の弱小藩に降って湧いた5日間での江戸城出府、という
無理難題に敢然と挑戦する武士たちの物語が、奇想天外な設定で、後の周囲にある
エピソードは水戸黄門にも出てくるような勧善懲悪のものだ。故に彼らの苦労は報われ
正義は勝ち、悪は懲らしめられるので、見ている方は溜飲を下げることが出来る。

仲間に加わったものの、金さえ貰えれば途中で一行から逃げるつもりだった、忍びの
雲隠段蔵(井原)も、殿様の人柄に惚れて、最後は味方に付く。また兄弟藩の殿様
(甲本)が、自分の行列を佐々木らに貸して幕府の役人がいる宿を突破する、など
友情が嬉しい場面もあつらえられている。ラスト、悪老中の悪巧みを暴くことになった
殿様に引導を渡し、将軍吉宗から親しく褒められる殿様という、観客を嬉しくするシーンも
多く用意されていて、観終わって気持ち良い。

加えて、剣戟もきちんとしていて、田舎侍たちだが殿様以下、みな武芸百般に秀で、
一騎当千の武士であり、強いのなんのというものスッキリする。片や、強行軍になる
ため、重い刀を竹光にしたばっかりに、危ない目にあったり、とても江戸城までは無理、
と覚悟した家老が腹を切ろうにも竹光ではどうしようもなかったりのユーモア。
更に女郎である深キョンを殿様が惚れてしまい、最後には側室になる、というオマケ
までつく。

全体にテンポがよく、演出、演技、物語それぞれに出来がよく、満足できる映画となった。
それこそ、佐藤浩市や役所広司が出てくる髷物は重厚で見応えがあるものが多いが
こうしたコメディタッチの作品を見応えあるように作るのは難しいのではないか。
軽すぎても重すぎても、嘘っぽくてもいけないわけだし。そういう点では本木監督は
手堅くまとめたといえる。
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<ストーリー>
優秀な映画向けの脚本に与えられる城戸賞に輝き、小説化されるやベストセラーとなった
土橋章宏の同名作を映画化したコミカルな時代ドラマ。
幕府から無理難題を押しつけられた小藩の藩主が藩と領民を守るため、知恵を絞って、
逆境に立ち向かっていくさまが描かれる。
藩主を佐々木蔵之介が務めるほか、個性派俳優が多数顔を揃えている。

元文元年春、磐城国の湯長谷藩は徳川八代将軍吉宗の治める江戸幕府から、通常8日
かかる道のりにも関わらず突然5日以内に参勤交代をするよう命じられる。
湯長谷の金山を手中に入れようとする老中・松平信祝(陣内孝則)の策略によるものだった。

わずか1万5千石の小藩にとって、ただでさえ貯蓄も人手もない上にあまりにも短い日程を
強いられたこの参勤交代は到底できようもないものだった。あまりの無理難題に憤りながらも、
藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)は家老の相馬兼嗣(西村雅彦)に対策を講じさせる。
そして、藩の少人数のみで山中を近道して駆け抜けていき、道中の人が見ているところでは
渡り中間を雇って大人数に見せかけるという作戦を立てる。
さらに東国一の忍びと言われる戸隠流の抜け忍・雲隠段蔵(伊原剛志)を道案内役に任じるが、
一方で幕府の老中らはこの参勤交代を阻もうと手をのばしてくる……。」(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2015-09-09 23:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

日本のいちばん長い日

●「日本のいちばん長い日」
2015 日本 松竹 アスミック‥エース 製作委員会 136分
監督・脚本:原田眞人  原作:半藤一利
出演:役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、山崎努他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
封切られてしばらく経つが、シネコンの比較的小さい小屋は、私くらいの初老のご夫婦で
ほぼ満員。もっと若い人に観てもらいたいものだ。

さて、本作は1967年に橋本忍~岡本喜八の組み合わせで東宝オールスターにより
製作されたものの別バージョン。東宝は当時「東宝8・15」シリーズと称して、6本の
大東亜戦争ものを製作した。その意義は当時、深いものがあったろう。
私も、WOWOWなどでほとんどは観ている。本作も当時は原作が大宅壮一名義で
あったが、もちろん半藤一利の作品の映画化である。

本作だが、おそらく大判レンズを使った陰影とボケ味のある独特の映像の中に
軍服のカーキ、宮内省役人の黒、など、モノトーンの色彩が強調され、バストショット
以上を多用しているように思える迫力、など映像へのチカラの入れようが良く
分かった。8月15日の玉音放送に至るまでの数日を時系列に追いかけていくのは
ドキュメントの性格上まぬがれぬところだが、岡本版に比べて、取り上げる人物を絞り、
その人間性を深く描くことにより、大東亜戦争とは何であったか、を短時間の出来事で
描ききる。原田眞人監督の代表作に入る映画だと思う。

特に昭和天皇と鈴木首相、阿南陸相の思いに更に重点が置かれ、二時間強の
映画の中で、先の大戦に対する個人的な思いがさまざまに去来する。
阿川弘之の「米内光政」「井上成美」を読んでいたので、陸軍と海軍の対立も
理解しながら観ることが出来た。陸軍の作戦に米内が黒板を叩いて抗議する、
という理屈も知っていればこそなのだ。というわけで、大東亜戦争に至る経過を
ひと通りおさらいしてから観ると、更に映画の深みが理解できるだろう。

個人的に印象的だったのが、帝国陸軍の戦地の経験のない若い参謀たちの精神論のみで
突っ走ろうとする一見純粋に見えて、浅はかな行動、彼らを感化した(当時の若者の殆どは
そうであった訳だが)皇国史観という「洗脳」の恐ろしさ。
天皇自身が一日も早い終戦を主張するのに、「日清日露以来負けたことのない帝国陸軍」の
面子や体面に拘り、「一億玉砕」「七生報国」というカルトな世界から抜けられない彼らの
恐ろしさを思った。その点、阿南が「軍を廃して、国を残す、ということさ」という見識は
天皇の考えと同じであったわけだ。

半藤もその後何度も指摘しているように、2度まで聖断を仰がなくては決められない
軍人や政治家、そして誰も責任を取らないままに、ずるずると同じような人が国政に
携わるという悲劇。

上記のことどもを思うとき、今の状況と極めて近いということができよう。だからこそ
今観て欲しい、今観るべき映画だと思う。

一度走りだすと「熱狂した狂気は止まらない」ということ。参謀本部に「一億玉砕」と書かれた
幟があったが、日本人を全部滅ぼして、何が「國體護持」(天皇制維持)か、ということだ。
天皇を始めとした国政に関る人物を通して観るとき、戦争を終わらせるのがどのくらい
難しいか、ということがよく分かる。あと数日終戦が早ければポツダム宣言を早く受け入れて
いれば、せめて東京大空襲で覚悟を決めておけば、広島も長崎も無かったのだ。
終戦のタイミングは沢山あった。
最終防衛線であるサイパンが陥落した段階で、和平に持ち込むべきだったと
思うのだが、何でそれが出来なかったのか、沖縄までめちゃくちゃにせずに済んだのにと、
国民が思考を停止し、マスコミが体制の宣伝部隊と成り果て、政治が暴走を始める事の怖さを
改めて思う。あの熱狂に身をおくと、恐らく私でも何も出来なかったのだろう。
(歴史に、タラレバは無いのだが、歴史に学ぶことは出来る。「ポツダム宣言は詳らかに読んで
いない」と悪びれず国会で言ってのけ、しゃあしゃあとしている総理大臣がいることに背筋が寒くなる。

出演者では、77歳の耳の遠い宰相を演じた山崎努が出色。役所と本木はやや持ち上げて
描かれすぎな感じ。反乱部隊の中心人物、畑中参謀を演じた松坂桃李も狂気を良く
演じていたと思う。

全体として、テンポも良く、描く人物を絞ることでストーリー(歴史そのもの)も追いやすく、
映像も演者も良かった。大東亜戦争を予習して、是非観ていただきたい作品だ。
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<ストーリー>
混迷極める太平洋戦争末期の日本において国の行く末を模索する人々の姿を描いた、
半藤一利のノンフィクション小説を映画化。陸軍大臣、天皇陛下、総理大臣など閣議に
参加した人々の姿と、クーデターを企む青年将校たちの姿が描かれる。
監督は『駆込み女と駆出し男』など、人間ドラマに定評のある原田眞人。

1945年7月、戦局が厳しさを増す中、日本に無条件降伏を求めるポツダム宣言が
発表された。連日閣議が開かれ議論に議論が重ねられるが、降伏かそれとも
本土決戦か結論が出ないまま8月に突入。
広島、そして長崎に原爆が投下され『一億玉砕論』の声も上がる中、日本最大の決断が
くだる。しかし降伏に反対する若手将校らは玉音放送を流させまいとクーデターを企て
皇居やラジオ局占拠に向け動きはじめる……。」(Movie Walker)
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この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-08-23 12:05 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)