●「マイティ・ハート/ 愛と絆 A Mighty Heart」
2007 アメリカ Paramount Vantage,Plan B Entertainment,Revolution Films,
108min.
原作:マリアンヌ・パール『マイティ・ハート 新聞記者ダニエル・パールの勇気ある生と死』
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ダン・ファターマン、アーチー・パンジャビ、イルファン・カーン他
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2003年1月、パキスタンでアメリカのウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)記者、
ダニエル・パール氏が誘拐され、惨殺された事件は日本でも当時相当話題になったことを
覚えている。ビデオに映っていた彼の処刑シーンは衝撃的(見たわけではないが)だった。

この映画は、同じジャーナリストの妻マリアンヌが夫の勇気あるジャーナリストしての人生を
書いたノンフィクションを映画化したもので、実話であるから、パール氏に対する当時の
パウエル国務長官やムシャラフ大統領のコメントも実写で出てくる。

映画は、パキスタンのカラチの街の姿のカットバックを挟みながら、淡々と進む。変化に
乏しい画面構成だが、ドキュメンタリー風だからそういうものか。9:11以降のアフガンと
アメリカの攻撃の始まり、タリバンの駆逐とムジャヒディンのパキスタンへの逃走、そして
パキスタンのイスラム原理主義者とタリバン、アルカイーダが組んで仕掛けるテロ。
そんな現状を取材に来たパール夫妻。夫のパール氏は聖戦派のイスラム教の師に会える
アレンジが成立し、わざわざアメリカ領事館にそうした取材での注意を聞いて、出かけた。

妊娠5か月のマリアンヌ夫人、一緒に住むインド系のWSJ記者アスラ、らが心配するなか
出かけた夫だったが、連絡を断った。後ほど、グアンタナモ基地に捕らえられているムジャヒ
ディンの解放を条件にした連絡が入ったが、アメリカは要求を飲まない。
しかし領事を筆頭に、CIA、FBI、パキスタン情報部などの国の威信をかけた捜査が始まる。
かなりイリーガルな捜査で、黒幕オマール他が次々と逮捕されるが、パール氏は、ついに
殺害されてしまう。処刑のビデオが送られてきたのだ。

一旦は悲嘆に暮れるマリアンヌだが、処刑の直前まで勇気ある姿だった夫の生き方に
勇気を貰い、パリに移り、息子アダムを出産し、今もジャーナリストとして活躍しているという。
パール氏殺害の実行犯と見られている犯人は、現在グアンタナモ基地の収容所い収監
されている。ここは最近オバマ大統領の命令で近く閉鎖されることになった。

基本的に、捜査する~誰ぞが逮捕される~警察一行がマリアンヌの自宅に車でやってくる
~家の中で情報が整理される、という構図の繰り返し。だが、事実が持つ重みとマリアンヌを
演じたアンジーの熱演で、平坦さを逃れている。
ただ、108分の中に、アフガンとアメリカ、タリバンやアルカイーダと米国の憎しみの構図、
パキスタンとアフガニスタンの関係、更にパール夫妻のこれにこだわる気持ち、などを
押し込めるのはやはり無理があり、帰結として、薄っぺらい感動に終わってしまっている。
パール氏はなぜ誘拐されたか、の答えは「アメリカ人だから」「WSJ」」が取材した9:11の
実行犯につながる情報をCIAに渡したから?そのあたりもサラリと流しすぎ。

夫を殺されたマリアンヌは気丈にもテレビインタビューに答え、ご主人が殺された今の感想は?
と尋ねられて曰く、「主人が誘拐されている間にも10人が殺害されました。すべてこの国の
人です。・・・」などとパキスタンを恨む気持がないことを表明するのだが、さすが一流の
ジャーナリストは言うことが違うわ、と思ってしまう。実際にこうした取材があったにしても
このシーンは不要だったのでは?勇気ある夫と、夫の勇気を胸に生きていこうと決めた妻の
姿ならば他の映像で表現できたはず。夫を殺されてここまで冷静でいられる女性って?

最後の30分だけみても、映画は理解できちゃう。私が一番感じたのは、繰り返し挿入される
カラチの街の様子、暮らしなどから、パキスタンの貧しさ、それゆえのイスラム原理主義の
浸透し易さなど。すべての世界から貧困が無くなると、もう少し平和になるのかもしれない。
この映画の情報は
こちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-01-28 22:50 | 洋画=ま行 | Comments(0)

●「名誉と栄光のためでなく Lost Command」
1966 アメリカ Columbia Pictures,Red Lion,129min.
監督:マーク・ロブソン 原作:ジャン・テラルギー
出演:アンソニー・クイン、アラン・ドロン、ジョージ・シーガル、クラウディア・カルディナーレ他
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出演者の名前を見ただけで時代が判るでしょ。43年前の映画です。この当時はこういう
戦争映画は珍しくなかったですね。物語としては、なかなか奥深いしっかりしたものですが、
なんか映画にしてみたら、今一つ説得性に欠けてしまったようです。

フランスがベトナムから撤退するころの戦闘シーンからスタート。アンソニー・クインは、
敵に囲まれ、応援を待つ部隊の隊長。そこに1機の空挺部隊が空から援軍として降りて
来るが、これは派遣した将軍の無謀な作戦だった。多くの空挺団員がベトナム軍に撃たれ
ラスペギー大佐(アンソニー・クイン)の隊も、応援部隊も囚われの身となっってしまう。
空挺部隊隊長の少佐は、将軍夫人あての手紙をもっていただけだった。
この応援の空挺部隊にいたのが記録係として付いてきたエスクラビエ大尉(アラン・ドロン)
だった。

終戦でフランスへ戻った一行だったが、仏領アルジェリアでまたしても内乱が勃発、軍の
要請で、ラスペギーは、かつての仲間を集め、アルジェへと向かった。ただ、ベトナムでは
仲間だったアルジェに住むアラブ人マヒディ(ジョージ・シーガル)は、隊に加わらなかった。

ラスペギーは、ベトナムで亡くなった空挺部隊の隊長夫人とねんごろになり、アルジェリアで
武功を立てて将軍になってと甘え、ラスペギーもそれを約束して結婚しようという。
そんななかでアルジェに到着した一行は、農園の警備とか依頼されるが、反乱軍の蜂起に
手を焼く。ついに仲間の一人が、ある村の女子供まで手をかけてしまう。これが周囲に知れ、
大人しくなる一方で、反乱軍の攻勢は激しさをましていた。

アルジェの街で、エスクラビエ大尉は、カスバの娼婦という女(カルディナーレ)と出会い、
愛してしまう。しかし、この女は、反乱軍の連絡係だった。
実は、反乱軍はかつての仲間だったマヒディに率いられていたのだった。そしてエスクラビエ
と知り合った女こそ、マヒディの妹だったのだ。

市長のヘリコプターを借りたりして、攻撃したものの、反乱軍は武器も豊富で手ごわい。
ラスペギーらはマヒディを捕らえようとするが行くえは判らない。しかし、妹に、マヒディを
殺すことは絶対しないから、という約束で居場所を聞き出すことに成功する。そしてマヒディは
絶対に殺さず捕まえるように、という指示をしたのにも関わらず、一人が、マヒディを見つけ
射殺してしまう。これで反乱軍は抑えられはしたのだが、ラスペギーらは妹との約束を
守ることは出来なかった。
ラスペギーらは、この武勲で勲章を受けることになり、ラスペギー自身はついに将官に
任命された。その式典には、あの結婚を約束した未亡人も来ていた。彼女との約束は守る
ことができたわけだ。

アルジェの一件が終わると、軍人として生きていくことがもともと嫌いだったエスクラビエは
部隊を去ることを決心する。

当時、植民地の独立という戦争は世界各地にあり、そんな中、「名誉と栄光のためで」ない
戦いもあったのだ、ということを言いたかったのだろう。戦争というのは皮肉と欺瞞に満ちて
いるんだな、ということが確認できました。

アラン・ドロンの役どころや、アンソニー・クインの背景などもう少し描かれると深みのある
映画になっていたのでは。そういう意味では、レジスタンスのリーダーとなったかつての
戦友マヒディの背景も希薄だった。戦闘シーンに重点が行き過ぎたウラミは逃れまい。
この映画の情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-01-27 22:50 | 洋画=ま行 | Comments(0)

●「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで Revolutionary Road」
2008 アメリカ Dream Works SKG,BBC Films,119min.
監督:サム・メンデス  原作:リチャード・イェーツ「家族の終わりに」
出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャシー・ベイツ、マイケル・シャノン他
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シネコンのハシゴ。午前中に「007慰めの報酬」を観て、お昼食べて、午後一番で、この映画
を鑑賞。まったくタイプの違う映画なので、苦痛もなく、楽しむことができた。
「タイタニック」のコンビで送る、人生ドラマ。監督のサム・メンデスはケイト・ウィンスレットの
実の夫で、二人の間には二人(一人はケイトの前夫との子)の子供がいる。そういう意味で、
ケイトのポジションはリアルであっただろう。

タイトルや宣伝から、サクセスストーリーか何かと思っていたが、割と地味な夫婦の心理劇で
あった。1955年のアメリカの夫婦の話ではあるが、どこにでもありうる話であり、日本の現在
でも、普遍性を持つ物語であると感じた。
夫婦、というよりも、その前に一人の人間としてどう生きるのか、私たちも悩んでいる重い問題
を、この映画は投げかけてくる。地味だが、主張しているところは、重く、観終わった後で
何かを考えなくてはならないと感じさせる作品であった。

女の憧れ、男のプライド、またその逆の、男の憧れ、女のプライド。人間として人生の達成感
とは?他人の嫉妬、他人を見る目、しかしながら計画通り、理想どおりには行かない人生、
挫折、蹉跌、絶望、秘密・・・いろんなテーマを投げてくる映画だ。
タイトルのレボリューショナリー・ロードは、街の名前だが「革新的な行く手」というほどの意味が
掛けてあるのに違いない。
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『「タイタニック」以来の再共演となるレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが理想と
現実の狭間で苦悩する夫婦に扮したヒューマン・ドラマ。
原作はリチャード・イェーツの『家族の終わりに』。1950年代のアメリカ郊外を舞台に、一見
理想的な夫婦が虚しい日々から脱却を図ろうともがく姿とその顛末を生々しく描く。
監督はケイト・ウィンスレットの夫でもある「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデス。

 1950年代のコネチカット州。“レボリューショナリー・ロード”と名づけられた閑静な新興
住宅街に暮らすフランクとエイプリルのウィーラー夫妻は、二人のかわいい子供にも
恵まれた理想のカップル。
しかし、その見た目とは裏腹に、彼らはそれぞれ描いていた輝かしい未来と現状の
ギャップに不満を募らせていた。元陸軍兵のフランクは事務機会社に勤めるもセールスマン
人生の我が身を嘆き、かつて女優志願だったエイプリルも大成せずに至っている。
するとフランクが30才の誕生日を迎えた夜、エイプリルが、家族一緒にパリで暮らしましょう、
と持ちかけ、パリでは自分が秘書として働くからフランクは気ままに暮らせばいい、
と言い出すのだった。はじめは妻の突然の提案に戸惑うも希望を膨らませ、ついには移住
を決意するフランク。それは間もなく、周囲にも知るところとなるのだが…。』(allcinema)

エイプリル(ウィンスレット)に背中を押されるように、パリへの移住を決意したフランク(ディカ
プリオ)だったが、会社の仲間には言えても、上司には言い出せない。やはりそれでも安定
している現在の生活をすべて投げうって、見知らぬ外国へ行き、可能性を1から見出すのは
不安であった。自分は「作家や画家じゃないから」というが、妻は「あなたはそこいらへんの
男とは違うのよ」と鼓舞するのだが・・・。
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そうこうしているうちに、フランクがいい加減に提案したアイデアが上司に大好評で、特別
編成の営業チームに昇給して加わるように言われる。

かつて兵士の時代にパリに駐屯し、人生を送るのならここのような街でとは、妻と話し合って
はいたが、実際にそう決意をしてみると、30年間のしがらみはそう簡単に絶てるわけでは
ない。しかし、妻は自分のアイデアに陶酔してしまって、周りが見えなくなっている。
現在住んでいる家をあっせんした不動産屋からは「やはりあなた方夫婦はどこか違うと
思っていたわ」と言われる。しかし、家族ぐるみで付き合うようになったこの不動産屋の
一人息子でいささか精神を病んでいる長男は、彼ら二人の悩みやエゴをズバズバと的確に
指摘してみせ、夫婦を激怒させる。

そうこうしているうちに、エイプリルが3人目を妊娠していることが判明。妻は自分の力で
堕胎させようとするが、夫に見つかり大ゲンカとなる。
昇給して現在の生活を続けようと思い始める夫、3人目はおろしてパリへの夢を実現させたい
妻。二人の幼い子供もパリ行きを子どもなりに納得し楽しみにしていたが・・・。
夫の向上心の低下(妻が勝手にそう決めている)を嘆いた妻は、次第に夫から気持が離れて
行く。そして、パリ行きを延期することを決めた夜、隣の夫婦とダンスに行き、先に帰った
夫と隣家の奥さんと別れ、かねてからエイプリルに心を寄せていた旦那とクルマのなかで
結ばれてしまう。(もっとも夫のフランクも会社の事務の女の子をつまみ食いしてたのだが)
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修復不可能なまでの大ゲンカをしたあくる日、不自然に元のエイプリルに戻っていたのだが、
彼女はこの日自分で堕胎する決心をしていたのだ。しかし、エイプリルの素人措置は失敗し
大出血を招き、救急車で病院に運ばれるが、不帰の人となってしまった。

夢を追うつもりが、なんという結末!フランクは街を離れ、会社も変えて、子供二人とニュー・
ヨークへと転居した。まだ30歳そこそこ。人生はこれからだ、というのに、公園で子供と
遊ぶフランクの顔は、老けて生気を失っていた。
現状に決して満足では無かったフランクだが、暮らしをパリに移してまで人生を変えようとは
思っていなかっただろう。しかし、愛し結婚したエイプリルの生き方に引きずられた感がある。
だが、あそこでの提案を、誰が断れただろうか。

無計画な妊娠、フランクの昇進と予期しない出来事を上手く自分たちの人生に取り込めなか
った2人。フランクの同僚が言うように「子供はフランスでも生める」し、アメリカを捨てる気が
あれば、フランクだってもっと積極的になれただろう。何でか知らないが、生き急ぎすぎた
エイプリルに、フランクは振り回された、といえるかもしれない。
思えば、冒頭のシーン。ダンスパーティーで知り合う二人だが、エイプリルは自分の夢の
実現を結婚の中に描いていたのだろう。そういう女性と結婚したフランクは幸せだったのか。

誰でも現状を打破したい、と思っているだろう。だが、それを判っていながら実行する勇気を
持つ人は少ない。みんなそうだろう。そんなやりきれない気持ちをこの夫婦の人生から
観取ることが出来た。

シーンの少ない(自宅、フランクの会社、ダンスホール、フランクの浮気相手の部屋、隣家、
海辺くらい)とセリフの多さから、舞台劇を見ているような気分もした。それが映画の閉塞感を
上手く表現しているとも言える。
ディカプリオ、ウィンスレット、ともにいい演技をしていた。特にウィンスレットの希望から絶望
への転落は、引き込まれるものだった。観客の批評的なポジションを不動産屋の息子が
代弁していたといえる。ただ、エンディングのカタルシスの持って行き方がいま一つ解決に
結びついていない不快さは残る。それがこの映画だといわれればそれまでだが・・。
(と、書いておいて、皆さんのブログを拝見、なるほどな、と思った。ラストシーン、不動産屋の
キャシー・ベイツの老旦那が、レボリューショナリー・ロードに住む人々のことをあれこれ
しゃべりまくる妻に対し、補聴器のボリュームを、絞っていく。これはエイプリルの言うことを
まともに聞いてしまったフランクへの、ものすごいアンチテーゼではないか!ということに気が
付きました!まだまだ観方が浅いなあ、俺。)

「この夫婦はこうだった。で、お前らはどうよ!」と問われているとすれば・・・!
この映画の情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2009-01-25 15:20 | 洋画=ら~わ行 | Comments(0)

●「007 慰めの報酬 QUANTUM OF SOLACE」
2008 アメリカ MGM,Columbia Pictures,106min.
監督:マーク・フォスター
出演:ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジュディ・デンチ他
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公開2日目のシネコンにての鑑賞。前日にWOWOWで「カジノロワイヤル」を観て復習。
前作のエンディングから1時間後からのスタート、というこの映画は、前作の筋を理解して
いたほうがより分かりやすいからだ。
続編というから、前作を見ていないと全く分からなくなると思っていたが、さすがにそうでも
なかった。別に前作を観ていなくても、十分楽しめるし、理解できる。

「カジノロワイヤル」が2時間20分を超える長さで、ストーリーが判りづらい、とこのブログ
でも書いたが、それに反省したか、今回は1時間46分と、全22作中最短となった。
で、出来だが、カーチェイス、屋根から屋根への追跡劇、飛行機の追跡、パラシュートでの
脱出、007の様々なアクションと、華々しいが、今一つ感動というか、「やるなあ」感が無かった。なんでかな。2回観てもなかなか理解しづらい「カジノロワイヤル」の方が、出来はいい
ような気がするが・・・。ダニエル・クレイグを見慣れてしまったからかな。

前回、黒幕であったホワイト氏の足を射抜いて、名乗りを上げたボンド。コモ湖の畔であった。
このあとのイタリアで、アストンマーチンとアルファロメオとの激しい追跡シーンから映画は
始まる。
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ヴェニスの海で自殺同然に死んだ、ヴェスパーの気配りでホワイトを逮捕した
007、彼の更なる黒幕(ヴェスパーの彼氏を脅し彼女を悪に引き込み、結局ヴェスパーは
自ら命を絶つ形でボンドの前から永遠に消えた。その彼氏を脅していた黒幕)は、ボリビアに
いた。今度はグリーン氏だ。白だ緑だ。
彼は、環境保護の団体を隠れ蓑に、ボリビアの水の利権を独り占めにしようと企んでいた。
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まず手がかりを追ってハイチに飛んだボンドは、ボリビアの諜報員カミーユ(オルガ)を
パートナーに。黒幕がいると思われるボリビアに入りグリーンを追い詰める。
カミーユは幼い頃、時の政府に関わっていた父親を、反乱軍に目の前で
殺害され、母と姉はレイプされたうえに絞殺され、反乱軍の将軍に強い復讐心を抱いていた。
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最愛のヴェスパーを殺されたボンドも、復讐に燃えていた。そんなボンドに対しMは、
個人的な感情は除外して任務に当たれ、ときつく指示するが、ボンドはなかなかそうはいか
ない。

ついに牙をむいたグリーンは、現政権に水の利権を渡すように交渉したが上手くいかず、
かつての反乱軍の将軍に、話を持ちかける。利害の一致した両社は手を握ることになるが、
そこにボンドとカミーユが乗り込む。
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爆発と銃撃の果て、グリーンは脱出したが、砂漠の中。結局、彼は砂漠のど真ん中で死亡
する。家族の敵を討てたカミーユだった。しかし、グリーンを結果殺してしまったことで、
さらなる黒幕への糸が途切れた。一旦は、MI6をクビになったボンドだったが、Mは、また
戻ってほしいと頼む。「いつ辞めましたっけ」と、とぼけて去っていくボンド。そして
「James Bond will return!」のクレジット・・・・。
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なんかどんどん人間ドラマになっていき、かつての粋でお洒落で、女たらしで、アストン
マーチンにはいろんな仕掛けが満載で、もっている時計やライターにも色んな仕掛けがあった
かつてのボンドから離れていく。今回はアストンも登場するが、ガジェットはゼロ。というか
全編ガジェットはゼロ。セガールやヴァン・ダムばりの肉弾ファイトが中心で、人間臭さ
満点。
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諜報員を辞めようとまで決意させた最愛の女性を殺された復讐心を抑えきれない人間
ボンドに魅力を感じる人も多いだろう。これはこれで別の映画としてみれば、娯楽作としては
よく出来た映画だといえるだろうが、007を謳うにはいささかの無理を感じるようになってきた。
フォスター演出というよりも編集の腕前だろうが、ファイトのシーンがカットが短すぎて印象が
薄くなっている。観ているときは、ワクワクドキドキだろうが、あとに残らないんだよな、この手の
編集って。
さて、次のダニエル・ボンドはどんなことになるのだろうか。ポール・ハギスの脚本は?
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この映画の詳しい情報は
こちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-01-25 11:50 | 洋画=さ行 | Comments(0)

●プロヴァンスの贈り物 A GOOD YEAR」
2006 アメリカ FOX 2000 Pictures,Scott Free Productions,118min.
監督:リドリー・スコット 原作:ピーター・メイル「南仏プロバンスの12か月」
主演:ラッセル・クロウ、マリオン・コティヤール、フレディ・ハイモア、アルバート・フィーニー他
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ベストセラー「南仏プロバンスの12か月」(ピーター・メイル)を著者と仲の良いリドリーが
映画化。リドリーの映画には欠かせないラッセル・クロウが主演を務めた。

しかし、平板な映画だったなあ。時間も長すぎるし。冗漫って言うのかな、起伏の乏しい
作品であった。しかし「ロハス」「スローライフ」映画を標ぼうしているのであれば、こんな感じで
いいのかも知れない。原作は面白いのに映画化するとそうでもなものになっちゃうものの
典型か。

南仏プロヴァンス。幼いマックスは、毎夏ヘンリーおじさん(アルバート・フィニー)のシャトー・
ブドウ畑に行ってワインの話を聞いたり、プールで泳いだりするのが楽しみだった。
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成長してロンドンで名うての証券トレーダーとなったマックス。彼の元に、ヘンリーおじさんが
亡くなり、土地やシャトー(ブドウ畑)などが彼の相続となったとの知らせが届く。
10年以上も、あんなに世話になり人生訓を教えてくれたおじさんとは没交渉だった。
今や、打算家になったマックスは、当然、シャトーを売ろうと考えた。しかし、そうとうボロらしい。
折から、トレーダーとしての仕事に失敗したマックスは、懲戒的な休暇を与えられ、この機に
プロヴァンスに行き、遺産の品定めをすることになった。

久しぶりでプロヴァンスを訪ねると、シャトーはボロボロ。ブドウ畑は、マックスが少年の頃
からブドウ畑を守っているデフュロ夫妻が世話をしていた。
そこに、街でビストロを経営しているファニー(マリオン)と知り合う。更に、ヘンリーおじさんの
隠し子という若い女性が、シャトーを訪ねてくる。マックスはシャトーに滞在しているうちに
昔の思い出がよみがえり、ファニーとの仲も熱くなってくる。このシャトーを売ってしまおうと
いう彼の思いは、プロヴァンスの人々と触れ合うことで、次第に変化を見せていく。

そして、マックスは遂に、ロンドンに戻ることをやめ、シャトーを売ることも止め、プロヴァンスに
ファニーとともに暮らす決心をしたのだ。ヘンリーおじさんのブドウ畑とワインを守ろうと。
愛のある世界で、ロハスな生活を決心したのだった。
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決して嫌味な映画でもないし、ゆったりと流れるプロヴァンスの時間の中で、マックスが
次第にロハスな思想に変化していく様子は、ちょいとご都合主義ではあるが(何も犠牲に
なっていない。大金持ちのマックスがプロヴァンスに移り暮らしても、お金に困ることもないし)
見終わって気分が悪くなるわけでもないが、何せ、その割に時間が長いので、飽きちゃうね。
リドリーという監督さんは、実に多方面な映画を作る人だが、私としては、アクション映画の
ほうが好きだな。
この映画の情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2009-01-21 22:50 | 洋画=は行 | Comments(0)

●「Once ワンス・ダブリンの街角で」
2006 アイルランド Summit Entertainment,Bórd Scannán na hÉireann,87min.
監督・脚本:ジョン・カーニー
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ、ヒュー・ウオルシュ、ビル・ホドネット他
<2007年度アカデミー賞歌曲賞受賞作品>

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製作日数17日、製作費1800万円、上映時間87分。という掌編だが、見応えというか
聴きごたえは十分。出演している人々は、私はまったく初対面となる。主人公の男性は
アイルランドで人気のグループ「ザ・フレイムス」のフロントマン、グレン・ハンサード、
対する女性にはチェコ出身の歌手マルケタ・イルグロヴァ。歌は上手いはずだ。

ダブリンの空はいつも曇り空。登場人物の心を表わすかのような状況で物語は始まる。
男はダブリンのストリートで穴のあいたギターで自作の歌を唄う。最近振られたばかりだ。
そんな心境を歌にして歌うのだ。そこに聴きに来た、花売りの若い女性。彼女はチェコ移民で
母親と娘と住んでいる。彼女の楽しみは楽器店の昼休みに店員の理解で引かせてもらうピアノ。そのうまさに、男は自分の歌を一緒に歌ってもらう。
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男にはいずれロンドンに出て、自作の曲をヒットさせ別れて行った女性を見返してやることだ
った。女性と男に淡い恋心が生まれたように見える。男は家業の電気修理店を手伝いながら
ストリートミュージシャンとして、夢を抱いて生きている。やがて、自分はロンドンに行き、
メジャーデビューにチャレンジすることを決心する。女性に一緒にくるか、と聞くが、彼女は
いい返事をしない。男はストリートミュージシャンの仲間と、デモテープの制作に乗り出す。
女性はバックでピアノとボーカルを担当した。徹夜作業で、ミキサーの男性の理解も得て、
完成させる。なかなかいい曲が出来上がった。

女性は、実はチェコに残してきた夫がいる、と告白。最初家にいたのは妹、と紹介したが、
実は自分の娘であることも。夫をチェコから呼び寄せてやり直したいとも。

男は父親に背中を押されてロンドンに向かう。後から女性が来るのでは・・・と淡い期待は
あったけれど。彼はいつも女性がピアノを弾いていた楽器店で彼女へピアノをプレゼント
していった。女性の夫もチェコからやってきて娘と母親と4人の暮らしが始まった・・・
そして男は夢をおってロンドンへ・・・・。

二人が結ばれればいい、とみている人は思うだろう。歌がヒットしてお金持ちになれればいいと
思うだろう。しかし、この映画で、そうしてしまうと、至極当たり前の映画になってしまうような
気がする。淡い恋、そして見果てぬ夢へのあこがれ、現実は厳しいが、夢を夢としておいて
置くことがこの映画の目的だったはず。最後に男を振った女に男が電話して今からロンドンへ
いく、と告げると、待ってる、早く来てね、というセリフにカタルシスを覚える。それで充分では
ないか。結局、男も女性も、元の幸せへと戻って行ったわけだ。

劇中の歌が、男と女性のセリフのように使われている。これらの歌が、何気にいいんですよね。
なかでも、女性のピアノに初めて合わせて歌った「Falling Slowly」は、アカデミー賞の
歌曲賞を獲得している。歌の間はほとんど1カットで回しっぱなしだ。奇をてらわない自然体の
映画だが、それがまた、飾らない感動をドキュメンタリーのように与えてくれる。
しみじみ系のいい映画でした。
この映画の情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2009-01-18 15:40 | 洋画=ら~わ行 | Comments(0)

●「ロンリー・ハーツ Lonely Hearts
2006 アメリカ・ドイツ Millennium Films,Equity Pictures Medienfonds GmbH & Co. KG III,107min.
監督・脚本:トッド・ロビンソン
出演:ジョン・トラヴォルタ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ジャレット・レトー、サルマ・ハエック他
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 この映画を観ていて、ブライアン・デ・パルマの「ブラック・ダリア」を思い出した。扱っている
事件が実際にあった殺人事件であること、映像表現がデ・パルマによく似ていたこともある。
この監督さんは、題材になっている、殺人鬼レイ&マーサ事件を捜査した(映画の中では
トラヴォルタ演じるエルマー・G・ロビンソン刑事の実の孫だそうだ。エンドクレジットにも、
じいちゃんへの献辞が出てくる。幼き日の少年である自分の父も表現されている。

アメリカ東部、1940年代後半。妻が謎の自殺を遂げ、それ以来すっかりやる気をなくして
いた刑事エルマー(トラヴォルタ)は、独身女性が謎の死を遂げる事件に何かあると感づいて、俄然やる気を起こす。理由が分からず死んでいった妻への思いのイライラを事件の解決で
晴らそうと見えた。相棒は長年連れ添ったチャールズ(ガンドルフィーニ)は、署内の数少ない理解者の一人。やがて彼らの捜査の網にかかってきたのが、レイ・フェルナンデス(レトー)とマーサ・ベック(ハエック)のコンビ。
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゛相棒、チャールズ=ガンドルフィーニ”

実は、新聞の恋人募集欄「ロンリー・ハーツ・クラブ」に偽の手紙を出しては、戦争未亡人や
独身女性と偽の付き合いをし、金を巻き上げるという恋愛詐欺を繰り返していたレイ。
この新聞に広告を出したマーサは、レイよりも一枚上手。レイに一目ぼれしたマーサはレイを
完全に尻に引き、自分をレイの妹ということにして、さらに戦争未亡人や独身女性から金を
巻き上げる犯行を率先してリードしていくのだった。
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“マーサ・ベック=サルマ・ハエック

レイにひっか方ことのある女性の証言などで、彼らの犯行は明らかになり、次第に包囲網が
狭められていく。映画の中にはジャネットという戦争未亡人で50を超えた女性と、デルフィンと
いう女の子を持つ女性に接近し、いずれも金を目当てに殺してしまうストーリーが描かれて
いく。しかし、マーサの嫉妬心は激しく、詐欺目的で女性に近づくのだが、ちょっとでも中よく
しているような雰囲気を見せると、私と彼女とどっちを取るの、私を愛している証に彼女を
殺して見せて、と迫るのだった。そう迫られると、マーサを愛しているレイは、ジャネットや
デルフィンも彼女の幼い女の子も容赦なく殺すのだった。
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“デルフィンに近づくレイとマーサ”

しかし、デルフィンの家にいるところをエルマー刑事ら警官隊に包囲され、あえなく逮捕されて
しまうのだった。逮捕されたのが死刑のないニュージャージーだったので、彼らはNYに
移され、そこで共に死刑の判決を受けるのだ。映画の冒頭は、死刑がこれから死刑の執行が
行われるというところから始まり、ラストが二人の死刑執行の様子を描く。
ジタバタして電気椅子に座るレイに対して、堂々と、「じゃ、さよならね」と言ってマスクを被せ
られるマーサの性根の座り具合が最後まで現われていた。

結局、しがない結婚詐欺師であったレイは、異常に惚れられてしまったマーサにより、自分の
意思に反して大犯罪者になってしまい、心から愛したレイとともに死ぬことを喜びと感じた
マーサの餌食になったといえる。「死ぬほど愛してる」「殺したいほど愛してる」という表現が
あるが、マーサの、レイに対する愛情はまさにそれであったわけだ。異常ではあったが。

一方で、妻に自殺されたエルマーは署内にレネ(ローラ・ダーン)という恋人が出来ていたの
だが、少年になっている息子の手前、なかなか彼女の存在を言い出せない。これがレネの
心も傷つけ、息子の心にもわだかまりを作ってしまうのだった。しかし、ある日、レネの提案で
刑事仲間のバーベキューパーティーが開かれ、そこでレネと息子は打ち解けることができた
のだった。結局家庭の愛情に恵まれず犯罪者になったレイとマーサ。妻を失い、自暴自棄に
なり家庭崩壊寸前であったがレネの登場で、再び温かい家庭を持つことができたエルマー。
レイを愛したエルマーの愛情も、エルマーを愛したレネの愛情も愛には変わりはないが、
彼女らの育ってきた家庭の愛情の注がれ方が、その愛情を歪んだ方向に進ませたか否か、
という点が浮かび上がってきたようだ。

トラボルタは、ちょっとデブすぎだが、亡くなった妻と息子、そして恋人レネ、さらに犯罪捜査に
打ち込む姿をそつなく演じていたが、悪人顔がどうも善人に見せきれない昨今の彼の
かわいそうな点がある。ガンドルフィーニといい、ローラ・ダーンといいレイ&マーサをやった
俳優さんといい渋い配役であるが、そのあたりが、実際にあった事件を冷静に見せる役割を
担うという点でメリットがあったと思う。
実際の犯罪史を見ると、レイは映画とよく似ているが、マーサは全然似ていない。実際はデブ
だし、美人でもない。内分泌腺異常で、幼いころから性欲亢進に悩まされていて、レイとの
犯罪も、この異常性欲がなしたもの、という見方も示されている。なるほど!
この映画の情報は

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by jazzyoba0083 | 2009-01-17 23:30 | 洋画=ら~わ行 | Comments(1)

●「レナードの朝 Awakenings」
1990 アメリカ Columbia Pictures,Parkes/ Lascar Productions,121min.
監督:ペニー・マーシャル  原作:オリヴァー・サックス
出演:ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムズ、ジュリー・カヴナー、ルース・ネルソン他
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実話に基づいたオリヴァー・サックスの小説を、役者出身の女流のペニー・マーシャルが監督。
なかなか骨太に出来ていて、かつ女流監督らしい愛情のきめ細やかな表現も見て取れた。
映画は、デニーロとロビンのガチンコの演技対決?なのだが、これが気持ちいいんだ。さすが
名優と呼ばれる人は違う、と思わせる。

1939年。ブロンクスに住む少年レナード・ロウは、成績優秀にも関わらず、奇病に侵され、
長期療養病院に30年に渡り入院することになる。その病院にセイヤーという精神病の医師が
仕事を求めてやってくる。パーキンソン病など、体が硬直し、精神も病んでしまうような患者
ばかりの病院だった。
その中で雇われたセイヤーは、熱心に治療に当たる。硬直した体でも、テニスボールを瞬時に
受け取る能力はあったりする発見をし、当時出始めたパーキンソン病の新薬を試してみる
ことになった。その実験台になったのが、レナードだった。かなり大量の薬の投薬効果で、
レナードは奇跡的に恢復。ほとんど普通の人と変わらななるまでになった。
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この治験に、他の患者にも同じ薬を投薬することにした。これには1万2000ドルかかるのだが、渋る院長に看護師やケースワーカーたちが募金。これに理事会も応じて、投薬が
始まった。そしてまたしてもほとんどの患者に奇跡的な効果が表れた。
みな普通の人間にもどったのだ。

しかし、30年、40年の間、人生が欠落している患者たちは、目覚めた時のタイムラグに
戸惑ってしまうのだった。ある婦人は1920年代から時間が止まっていたのだから。
治療の成功の中で、知能レベルがもともと高いレナードは中心的な役割を担っていくのだが、
普通の男に戻ったレナードは、患者の一人を見舞いにくる女性に恋してしまう。
長年看病してきた母は、戸惑うが、セイヤー医師は、レナードは男ですよ、当然のことでしょう、
と説明する。
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しかし、新薬は副作用も伴うし、効果も安定していない。まだ治験のれべるだったのだ。やがて
レナードにけいれん発作の副作用が出て、薬が効かなくなるようになったきた。またもとの
レナードに戻りかけていた。入院患者に悪いのは医師だ、とかのアジ演説をしたり、情緒が
不安定になってきた。ひそかに恋心を抱いていた女性にも、自ら、これが最後だよ、と
いって自分から別れを告げる。女性は、けいれんで震える彼の手を取り、食堂でダンスを
踊って上がるのだった。その時だけ、レナードのけいれんも収まるのだった。
鉄格子の入った窓から、去っていく女性を見送るレナード。その顔には涙。周りも見ていられ
ない状況だった。

結局、薬でいったん目覚めた患者たちも、レナードと同じように元に戻ってしまった。セイヤー
医師は、自分の取った治療が、彼らにとって本当に幸せだったのか、自らに問う。
しかし、彼は患者たちの自分を取り戻してあげたいという医師としての愛情の発露を実現した
にすぎない。彼自身、レナードから、看護師のエレノアが、セイヤー医師は優しい人だと
言っていた、と聞き、自らの内なる愛情に気が付き、(エレノアはとっくにセイヤーを見る目つきは変わっていたのだが)、エレノアの元に駆けつけ、「今晩約束がなければ、コーヒーでも、」と
あまり気が利かない言葉をかけるのだった。エレノアの返事は、もちろん「よろこんで」。

セイヤーは、レナードたちの治療を通して、自らの「女性に対する愛情」に気付かされたのだ
った。

批評を読むと、「涙を禁じえなかった」というけど、私はそうでもなかった。とはいえ当然
感動したことは間違いないし、事実の持つ重さに受け止めるものは重かった。
デニーロの難病に取り組む演技は、難しかっただろうに、快演。ロビン・ウィリアムスについては
私としてはこの映画の翌年に撮られた「フィッシャー・キング」のラストの病院での「How
about you?」の合唱シーンの方が泣けましたけど。

しかし、いずれにせよ、とても充実した映画であることは確かです。
この映画の情報は

こちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-01-17 18:00 | 洋画=ら~わ行 | Comments(0)

ジャイアンツ  GIANT

●「ジャイアンツ GIANT」
1956 アメリカ Warner Bors.Pictures,Giant Priductions,208min.
監督:ジョージ・スティーブンス 原作:エドナ・ファーバー
出演:エリザベス・テイラー、ロック・ハドソン、ジェームス・ディーン、
    マーセデス・マッケンブリッジ、キャロル・ベイカー、デニス・ホッパー他

<1956年度アカデミー賞監督賞受賞作品>

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2日続けて、古い名画の鑑賞です。これは、あまりの長さ(3時間30分ほど)に恐れをなして
なかなか観る勇気が起きなかったものです。最近はインターミッションが入る長編大河ドラマ
が作られなくなりましたね。

この映画もストーリー上は難しいことはない映画です。テキサスのベネディクト家の人々を
通して、東部対南部、旧世代対新世代、カウボーイスタイルの経営対油田採掘による経営、
白人対有色人種、男性対女性、などこの映画が作られた時期のアメリカの道徳観を色濃く
提示していきます。

長編なので、ストーリーは下記のリンクに任せるとして、ベネディクト家を構成するのは
3台続く59万エーカーもの牧場を経営するビック・ベネディクトにロック・ハドソン、
馬好きのビックが東部に馬を見に行った時に知り合い、結婚するレズリーにエリザベス・
テイラー、ベネディクト家の使用にだが、石油採掘に一攫千金の夢を見、ついに油田を
掘り当てて億万長者になるジェット・リンクにこの映画が遺作となったジェームズ・ディーン。
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最初は、東部のお嬢さんが荒くれの南部の風土の中で、男女の役割や使用人の扱いに
戸惑いながら、一家のおかみさんとなっていく様。そして生まれた1男2女のそれぞれの
進路や結婚相手に戸惑う。牧場を継がそうと思っていた長男ジョーディは医学を希望し
しかも、貧しいメキシコの村で医者として貧しい人々の医療を助けたいと主張して譲らず、
しかも、メキシコ人の女性と結婚してしまう。
一方、長女は、レズリーがスイスの女学校に行かせようとするが、自分はテキサス大学の
畜産科に進学し、やがて結婚するボブと、小さな牧場を経営したい、という。
さらに次女のラズは、使用人だったが、今や石油成り金となり、ホテルを建て自分の名前を
冠した空港を作るまでになったジェット・リンクと、親子くらいの歳の差があるのに、くっつきそう
な雰囲気だった。ジェットが石油を掘り当てたことから、ビックも最初は牛飼いの生業を
離すことに反対だったが、押し寄せる石油ブームに、自分の牧場でも石油採掘に乗り出し、
自分も石油成り金になっていく。

ビックとレズリーは、何一つ思うようにいかなかったな、とつぶやくが、子供の成長とはそうした
ものだということを言いたかったのだろう。
ビックは自らの中に長男の嫁がメキシコ人であることが、頭では理解できても、心から差別なし
に接しているわけではないことを長男から指摘され、そんな思いで入ったレストランで
メキシコ人を排他する主人と殴り合いのケンカをする。これは、自らの心にある
メキシコ人への偏見に対する訣別の宣言だったのだろう。

そしてジェットが作ったホテルの完成式では、美容院で長男の嫁がメキシコ人だということで
セットを断られることに激怒した長男が、祝典会場でジェットを殴ろうとするが、結局、これが
ジェットとビックの対決になる。しかし、若い時からの飲酒で、すでにふらふらのジェットに
「もうお前は終わりだ」と宣言し、ビックは去っていく。

そして、だれもいなくなった祝典会場で、ジェットは、レズリーへの思いをつぶやくのだった。
彼は、彼女がベネディクトに嫁いできたときから、彼女に恋心を抱いていたのだった。
2女ラズは、これを聞いてしまい、ジェットの自分への愛情が母への恋心の代償行為だった
ことを知り、涙ながらに彼から去っていったのだ。

ビックとレズリーも自分たちで昔の伝統やらを打ち破って生きてきたのだが、同じ輪廻は
自分たちの子供の世代でも起きて、自分らの世代が変わっていくことをいやがおうでも
強く認識させられることになるのだった。

ジェームス・ディーンだた、終始よっぱらいを演じていた。石油を掘り当てて、ビックのもとに
やってきて、噴出した油にまみれた体で、「これからはおれも大金持ちだ」と言ってビックに
殴りかかるが、逆に殴られて去っていくシーンまでは、影のある役柄でそれなりだったが、
成り金となってからは、田代まさしみたいで、その演技が冴えているとは言い難い。役柄が
アル中の成功者だから難しかったのかもしれないが。
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冒頭から画角が計算されつくしたカメラワークが美しい。どれも一幅の画を見ているようだ。
アメリカのよき時代の、家族愛や、社会の仕組みの苦悩を1つの家族の中で集約してみせる。
こんな映画はもう作られないだろうし、作る必要もないのかもしれない。
長男ジョーディを演じたデニス・ホッパーにはビックリ。イージーライダーを撮るころの面影が
ないんだもの。エリザベス・テイラーは綺麗なんだけど、くどい美しさは私にはちょっと。

この映画の情報は
こちら
まで。
また詳細なストーリーは、

こちらをご一読を。
by jazzyoba0083 | 2009-01-11 00:30 | 洋画=さ行 | Comments(2)

●「アフリカの女王 The Afircan Queen」
1951 イギリス Horizon Pictures,Romulus Films,104min.
監督:ジョン・ヒューストン  原作:C・S・フォレスター
出演:ハンフリー・ボカート、キャサリン・ヘップバーン、ロバート・モーレイ、ピーター・ブル他

<1951年度アカデミー賞主演男優賞受賞作品>

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アカデミー賞の季節が近づくと、必ずWOWOWかNHK-BS2で放送される受賞作品の
うちの一つですね。気楽に楽しめる娯楽作品ではありますが、私が生まれる1年前の
作品なので、思想的には、これも無邪気な二元式(イギリス=善、ドイツ=悪)という構図の
中であまり悪意なく描かれています。

第一次世界大戦下の東アフリカ。「アフリカの女王」という蒸気船で川を上り下りし、物資を
届ける仕事をのんびりとしているチャーリ・オルナット。(ボガート)そして未開の土地で
兄とキリスト教の布教を続けているイギリス人のローズ・セイヤー(キャサリーン)。

この地にも乗り込んできたドイツ兵の乱暴で兄が死亡してしまう。これを見たオルナットは
ローズを船に乗せ、彼の地を脱出、船に乗って川を下っていく。
その途中で、厳格なクリスチャンであるローズと、無頼漢だが、気のいいやつ。次第に
お互いに惹かれていく。ローズは最初、積んであったバーボンを全部捨てちゃったりしたが、
次第にオルナットの人間性に触れるに従い、宗教家から「女」に変身していく。
ここが最大の見ものだろう。冒頭のシーンで賛美歌のオルガンを必死で弾いていた彼女が、
アフリカの女王に乗って川を下るうちに、女へと変化していく。そのあたりのキャサリンの演技
は見ものだ、。ボギーは、一件ノンシャランと見えていて、どこか男としての芯が通っている
魅力ある男を上手く演じている。

川下りで大きな瀑布に遭遇したり、危機を味わうのだが、それはご都合主義で何とか助かる。
ただ、最後にドイツの戦艦に体当たりする段になり、酸素ボンベで作った急ごしらえの魚雷を
船の喫水線あたりに穴をつけて取り付け、体当たりを決めるのだが、大波を食らって転覆。
目的を果たせぬまま、ドイツ軍艦に収容され、裁判の結果2人は縛り首に処せられる運命に。

だが、アフリカの女王は、転覆したまま浮遊し、ついにはドイツ軍艦にぶつかり大爆発。
処刑寸前の2人は、まんまと脱出していくのであった。このあたりは何かあるな、と思わせて
おいて、そう来たか、というカタルシスは感じることができた。
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この映画はボギーとキャサリーンの演技に尽きる。ストーリーはどうということはない。特に
宗教家として清い生活をしてきたキャサリーンがドイツ軍に兄を殺され、人間としての激情に
目覚め、イギリス人としての愛国心に火が付き、かつボギーと知り合うことで女として生きる
ことの楽しさを理解し変化していく様が最大の見どころであろう。HDDには未見の
「カサブランカ」「キーラーゴ」とボギーの映画が2本ある。いずれも名作の誉れ高い作品。
ぼちぼち観ます。
この映画の情報は

こちら
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by jazzyoba0083 | 2009-01-08 22:55 | 洋画=あ行 | Comments(0)